弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原判決中横浜地方裁判所昭和四二年(ワ)第一九三一号事件に関する部分を取り消
す。
右事件につき被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
同庁昭和四三年(ワ)第七四号事件に対する本件控訴を棄却する。
訴訟費用中同庁昭和四二年(ワ)第一九三一号事件について生じた部分は第一、二
審とも被控訴人らの負担とし、同庁昭和四三年(ワ)第七四号事件について生じた
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴代理人は、「(一)原判決を取り消す。(二)横浜地方裁判所昭和四二年
(ワ)第一九三一号事件につき、被控訴人らの請求を棄却する。(三)同庁昭和四
三年(ワ)第七四号事件につき、被控訴人らは控訴人に対しそれぞれ金二五六、六
九七円およびこれに対する昭和四三年一月二八日以降支払ずみまで年五分の割合に
よる金員を支払え。(四)訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」
との判決および第三項につき仮執行の宣言を求め、被控訴人らは控訴棄却の判決を
求めた。
 当事者双方の主張および証拠の関係は、つぎに附加、訂正するほか原判決事実摘
示のとおりであるからこれを引用する。
一、原判決書三枚目裏一行目「詰二〇米」とあるのを「約二〇米」と訂正する。
二、控訴人は、原判決書六枚目裏六行目「金二三三、一九四円」を「金二三三、三
九四円」、同九行目「金二二八、三九四円」を「金二二五、三九四円」、同七枚目
裏四行目「金五一六、三九四円」を「金五一三、三九四円」、同八行目「金二五
八、一九七円」を「金二五六、六九七円」とそれぞれ訂正する、と述べ、被控訴代
理人は、右訂正に異議はない、と述べた。
三、控訴代理人は、昭和四三年(ワ)第七四号事件につき、仮りに、本件事故が訴
外亡Aの運転中に生じたものでなく、訴外Bの運転中、同訴外人の過失により発生
したものとしても、当時の運行に当つては、訴外Aが本件バキユーム車の運転手と
して、訴外Bが助手として乗務していたのであるから、訴外Aは運転手として本件
バキユーム車の運行を管理する責任を負つていたのであり、訴外Bの運転上の過失
についても運行管理者としての責任を免れることはできず、本件事故により控訴人
の蒙つた損害を賠償する義務があるというべきである、と述べた。
       理   由
一、横浜地方裁判所昭和四二年(ワ)第一九三一号事件について
(一) 本件事故について、訴外Aの遺族である被控訴人らに対し、控訴会社が労
働基準法(昭和四〇年法律第一三〇号による改正当時のもの)に定める労働者災害
補償としての遺族補償をすべき立場にあつたことは、原裁判所の判断のとおりであ
るから原判決書理由欄中のこの点の記載(原判決書九枚目表七行目から同裏八行目
まで)内容を引用する。
(二) ところで、右法律の第八四条第一項によれば、同法に定める労働者災害補
償の事由について、同法の災害補償に相当する給付が、労働者災害補償保険法(昭
和四〇年法律第一三〇号による改正当時のもの)に基づいて行われるべきものであ
る場合には、使用者は、補償の責を免れる旨を規定し、右労働者災害補償保険法第
一六条において遺族補償給付として年金または一時金が定められ、本件においては
その一時金給付の場合に該当するものとして、すでにその支給がなされたことは被
控訴人らのみずから主張するところである。そうとすれば、右一時金の給付は前記
労働基準法の災害補償に相当する給付に当り、控訴人は右災害補償の責を免れてい
るものというのほかはない。
(三) もつとも、労働基準法第七九条においては、遺族補償の額は死亡労働者の
平均賃金の一、〇〇〇日分と規定されているのに、右労働者災害補償保険法第一六
条の六、同条の八及び同法別表第二によれば、遺族補償一時金の額は右平均賃金の
四〇〇日分と規定されていて、(イ)労働者保護の基本法である労働基準法が使用
者の責任として定めた範囲を、その責任保険としての性格をもつ筈の労働者災害補
償保険法が軽減するという不合理を招き、(ロ)死亡労働者の勤務していた事業が
労働者災害補償保険に加入していたときは、遺族補償一時金が前記四〇〇日分とな
り、これに加入していなかつたときは右一時金が前記一、〇〇〇日分となるとい
う、右加入、不加入という労働者または遺族に無関係な事情による著しい不公平が
生ずるという問題がある。そして、昭和四〇年法律第一三〇号による右二法の改正
前における労働基準法第八四条第一項は、右保険給付があつても、使用者は「その
給付の限度において」補償の責を免れる旨を規定していたことからすれば、右の不
合理、不公平は一層明瞭であるようにみえる。
(四) しかし、右(イ)の点は、労働基準法自体において、一方で遺族補償につ
いての一般的な定めをし、他方で前記保険に加入している事業の場合の特例を定め
て、その保険給付の額を前記保険法の定めに譲つているのであるから、必ずしも不
合理であるとはいえないし、(ロ)の点も、なる程遺族補償一時金の額は、事業が
前記保険に加入していない場合より、その加入している場合の方が少いけれども、
反対に、右加入のない場合には前記一般の例によるほかに遺族補償年金支給の途が
ないのに、右加入の場合には右年金支給によるより厚い保護があるのであつて、こ
の保険加入の有無による結果の相違は遺族補償そのもののなかでの公平、不公平の
問題ではなく、保険制度のなかでの給付の仕方にかかるものであり、その保険制度
の改善、工夫によつてやがてより保護の厚い方向に進む過渡的な一現象とみるべき
ものである。そして、現に、右現象は昭和四〇年法律第一三〇号による前記二法の
改正によつて始めて生じたのであるが、その後、昭和四五年法律第八八号によつて
労働者災害補償保険法が改正され、以上の問題が解消されたのである。
(五) 以上の考えと異る見解に立ち、被控訴人らの前記受給済の遺族補償一時金
を超える補償を求める本訴請求は失当というのほかはなく、これと相異する原判決
の部分は不当であるから、その部分を取り消し、被控訴人らの請求を棄却すること
とする。
二、横浜地方裁判所昭和四三年(ワ)第七四号事件について
(一) 当裁判所の判断は、次の(二)のとおり付加するほか、原判決書理由欄の
記載(原判決書一二枚目裏七行目から同一三枚目表八行目まで)内容と同一である
からこれを引用する。
(二) 訴外Bは本件事故を起した控訴人所有自動車に、助手として乗務したとし
ても、成立に争いのない乙第一号証によれば、右訴外人も普通及び大型自動車の運
転免許を受けていたことが明らかであり、原審における控訴会社代表者本人尋問の
結果によれば、訴外B及び訴外Aが交替して右自動車を運転していたこともあり、
そのこともありうることが認められるので、本件事故当時訴外Bが運転していた可
能性もないとはいえず、また、その運転の交替を非難することもできず、特別の事
情がなければ、たとえ助手の訴外Bがその運転中に過失で本件事故を起したとして
も、その責任を直ちに正運転手であつた訴外Aに帰することもできないところ、右
特別事情を知るべき資料もないので、いずれにしても本件事故の責を訴外Aに帰す
ることは困難である。
(三) したがつて、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、この部分
の本件控訴を棄却することとする。
三、そこで、民事訴訟法第九五条、第九六条及び第八九条を適用して主文のとおり
判決する。
(裁判官 畔上英治 下門祥人 兼子徹夫)

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