弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差戻す。
         理    由
 上告代理人豊沢秀行の上告理由第一点乃至第三点について。
 上告人は、本訴において、被上告人が上告人を悪意で遺棄したこと及び被上告人
に不貞行為があつたこと(単なる不貞行為の域を越えたものとも主張している)を
理由として、被上告人に対し離婚を求めていることは記録に徴し明白である。
 そして、原判決は、被上告人は、嘗つて特殊飲食店に働いていて、同人の許に四
年来遊びに来ていた上告人と昭和二八年九月婚姻をしたこと、上告人は、被上告人
と婚姻した後日が経つにつれて、飲酒して帰宅が遅れたり、はては一ヶ月のうち三、
四日は帰宅しないことがあるようになり、次第にその度を増してゆき、夫婦の間に
口論が絶えず、夫婦仲が漸次冷たくなつていつたこと、昭和三一年二月夫婦間に長
男が出生した頃から上告人の外泊は更に頻繁となり、しかも、上告人は被上告人に
満足な生活費を支給せず、ために、被上告人は、僅かな手持衣料品を入質したり、
近隣から日常の支払に充てるための金借をしたりして、糊口をしのいでいたこと、
被上告人から媒酌人に、上告人が必要な生活費を支給するよう、頼んで貰つたが、
その効果がなかつたこと、被上告人は、右のようにその日の生活にも事欠く状況で
あったので、将来の生活について相談するため、上告人の外泊不在中着のみ着のま
まで長男を連れて実家に帰つたこと、被上告人は、上告人と別れる積りで実家に帰
つたわけではなかつたけれども、前記のように近隣に不義理をしている関係から上
告人の許に帰えることができず、さりとて、行商で細々生活している老母の許で無
為に過ごすこともできなかつたので、自己と長男の生活を支えるため、飲食店、焼
鳥屋、夜店の飲み屋、バー等を転々としたが、収入が少ないため、異性と情交関係
を持つたり、街頭に立つたりして、生活費を補つていたこと、被上告人はその間昭
和三四年四月頃父親不明の子を分娩したこと等の事実を認定した上で、被上告人が
右のような不貞行為を行うに至ったことの原因と責任の大部分は上告人に在るとの
理由から、被上告人の不貞行為を原因とする上告人の本訴離婚の請求を排斥してい
る。
 ところで、民法所定の離婚原因たる事由があり、婚姻関係が破綻したと認めらる
場合においても、その破綻についてもつぱら又は主として責任のある当事者は、自
らその事由を理由に離婚の請求をすることをえないものと解するのを相当とすると
ころ、本件につきこれをみるに、被上告人が原審認定のごとき事情の下に、長男を
連れて実家に帰つたまま、上告人の許に帰ることができず、しかも、自己と長男の
生活を支えるため、飲食店等を転々し、街頭に立つて生活費を補う等のことをしな
ければならなくなつたことは、まことに同情を禁じえないものがあり、そのように
なつたことについては、夫たる上告人に相当の責任があることはこれを認めなけれ
ばならないが、およそ、妻の身分のある者が、收入をうるための手段として、夫の
意思に反して他の異性と情交関係を持ち、あまつさえ父親不明の子を分娩するがご
ときことの許されないのはもちろん、被上告人と同様、子供を抱えて生活苦にあえ
いでいる世の多くの女性が、生活費をうるためにそれまでのことをすることが通常
のことであり、またやむをえないことであるとは、とうてい考えられないのである。
しからば、事ここに至つたことについては、婚姻関係の維持のためかくべつの努力
を払つたことも窺われず、ことに被上告人の前歴を知つている上告人としても、そ
の責任は決して軽くないが、他に特段の事情が認められないかぎり、上告人に、も
つぱら又は主としてその責任があるものと断定することは困難である。したがつて、
右のごとき事情の下においては、上告人に対し婚姻の継続を強いることは相当でな
く、婚姻の解消により被上告人のこうむる不利益の救済は、被上告人が上告人に対
し財産分与の請求をすることができるかどうかの問題として、別途、考慮すれば足
りるものと考えられる。
 従つて、原判決が、被上告人の不貞行為を認定しながら、他に首肯するに足りる
特段の事情の存在を審理判断することなく、たやすく上告人の本訴離婚の請求を排
斥しているのは、結局、審理不尽、理由不備の違法を犯すものといわざるをえず、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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