弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 「特許庁が昭和63年審判第20043号事件について平成6年12月16日に
した審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
2 被告
主文と同旨の判決
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、別紙(1)の構成よりなり、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第
299号による改正前)別表第17類(以下単に「第17類」という。)「被服、
その他本類に属する商品」とする登録1635394号商標(昭和55年9月4日
登録出願、昭和58年11月25日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者
であるが、被告は、昭和63年11月17日、本件商標について登録無効の審判を
請求し、昭和63年審判第20043号事件として審理された結果、平成6年12
月16日、本件商標の登録を無効とするとの審決があり、その謄本は平成7年2月
8日原告に送達された。
2 審決の理由の要点
(1)本件商標の構成、指定商品は前項記載のとおりであり、平成5年11月29
日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
(2)請求人(被告)の引用する登録第1258978号商標(以下「引用商標」
という。)は、別紙(2)に示した構成よりなり、第17類「被服、布製見回品、
寝具類」を指定商品として、昭和47年4月26日に登録出願、同52年3月14
日に登録されたものである。
(3)請求人は、本件商標の登録無効の理由として次のとおり述べた。
 本件商標は、デザイン化された筆記体の欧文字「Pli Rossetti」の
文字よりなるものであるから、これより「プリロセッティ」の称呼を生ずるもので
あり、引用商標からは「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。
 両称呼は、ともに6音からなり、中間に位置する第2番目において「リ」と
「レ」の音の相違を有するのみで、それ以外の各音を共通にするものである。しか
も、相違する「リ」と「レ」の音は、ともにラ行に属する同行音で、その音韻が非
常に似ているから、両称呼を一連に発声、比較検討した場合、両称呼の語感、音韻
上の印象が極めて似ているため、両称呼は相粉らわしい。
 したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似するものであり、指定商品も同
一であって、引用商標は、本件商標より先行商標であるから、本件商標は、商標法
4条1項11号の規定に該当し、その登録を無効にされるべきである。
(4)被請求人(原告)は、本件審判請求不成立の審決を求め、その理由を次のと
おり述べた。
 本件商標は、欧文字の筆記体をもって表記されているとはいえ、「Feli R
ossetti」を表記したものであることは一見して容易に看取できる。してみ
ると、本件商標は、欧文字「Feli Rossetti」に照応して「フェリー
ロセッティ」の称呼を生じる。
 一方、引用商標は、「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。
 本件商標より生ずる「フェリーロセッティ」の称呼と引用商標より生ずる「プレ
ロセッティ」の称呼は、「ロセッティ」を共通にするとはいえ、前半部において
「フェリー」と「プレ」の顕著な相違が称呼全体に与える影響の大きさに鑑みれ
ば、彼此相粉れるおそれはない。
 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼類似でなく、外観上、又は観念上類
似するものではないから、本件商標は、商標法46条1項1号の規定に該当しな
い。
(5)よって、本件商標と引用商標の類否について検討する。
 本件商標は、前記構成のとおり、欧文字を筆記体で表記したものであるところ、
該文字中、左端に書された文字は、左に大きく曲がっている先端より書き始めた
「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるとみるのが相当であって、全
体として、「Pli Rossetti」の文字を表したものと認められる。
 そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「プリロセッティ」の称
呼を生ずるものといわなければならない。
 これに対して、引用商標は、前記構成よりなるものであるところ、それ自体独立
して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るといえる「PLEROSSET
TI」の文字部分より、「プレロセッティ」の称呼を生ずるものである。
 そこで、本件商標より生ずる「プリロセッティ」の称呼と引用商標より生ずる
「プレロセッティ」の称呼を比較すると、両称呼は、第2音目において「リ」と
「レ」の音の差異を有する以外他の音をすべて共通するものである。そして、相違
する「リ」と「レ」の音とても、調音の方法、位置において音質が近似した音とい
えるから、語頭に位置する「プ」が強く響く破裂音で、該差異音が聴者に与える印
象が薄れがちになることも相俟って、それぞれ一連に称呼するときには、その語
調、語感が極めて近似したものとなり、両称呼は互いに聞き誤られるおそれがある
ものである。
 してみると、本件商標と引用商標とは、観念、外観について論ずるまでもなく、
称呼において類似するものであって、指定商品も同一のものと認められる。
 したがって、本件商標は商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたもの
であるから、同法46条1項1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきもので
ある。
3 審決を取り消すべき事由
審決の理由の要点(1)ないし(4)は認める。同(5)は争う。
 審決は、本件商標を構成する文字についての認定を誤り、その結果、引用商標と
の類否判断を誤って、本件商標の登録を無効としたものであるから、違法として取
り消されるべきである。
(1)審決は、本件商標の構成中、左端に書された文字は、左に大きく曲がってい
る先端より書き始めた「P」の文字の一筆書きを表現したものと認識されるとみる
のが相当であると認定しているが、以下述べるとおり、この認定は誤りである。
①(a) 一般に、「P」の文字を一筆書きするときは、「P」の文字を構成する
縦棒部を、筆先を上から下に引き、筆先がそのまま縦棒部の下端からその左側又は
右側を通って縦棒の上部に返り、縦棒部の上半右側に半円形部分を円弧状に描いて
「P」の筆記体に形成される。
 しかし、本件商標の左端の文字は、縦棒部の下端からその右側を上方に向かう線
が、縦棒部の下半寄りの中間で左側にカーブして縦棒部を斜めに横断し、横断した
あとすぐに縦棒部の右側に向きを変えてそこで縦棒部と交叉し、そこでループ状を
なす円に描かれているので、上記の一般的な「P」の一筆書きとは、筆の運び、つ
まり、描かれた文字の形態が全く異なっている。
 審決は、縦棒部の下部右側に描かれたカーブ部分に続いてその縦棒部とクロスし
て描かれた円の部分までを「P」を描いたものと認定しているが、「P」をそのよ
うに描く筆記体の筆法はない。
(b)被告は、アルファベットの書体において、「P」の文字を左に大きく曲がっ
ている先端より書き始め、上方に大きな半円弧を描く、ペン・スクリプト書体やバ
ンク・スクリプト書体が用いられていることからも、本件商標の左端の文字につ
き、左に大きく曲がっている先端より書き始めた「P」の文字の一筆書きを表現し
たと捉えるのが自然である旨主張する。
 しかし、いずれのスクリプト体の「P」も、上方の半円弧状部分と縦棒状の部分
とは一旦筆の運びが途切れて描かれており、仮に、これらを一筆書きで描いたとし
ても、本件商標の左端の文字のように、左上部から右回りに略円弧を描きそのまま
縦棒部に連続し、しかも、縦棒部下端からの筆の返しによるクロス部分を持った筆
の運びには描かれないから、原告の上記主張は失当である。
 また被告は、本件商標の左端の文字は、一般的な筆記体の文字の中では小文字の
「p」の筆記体と一番類似しているし、ブラッシュスクリプト書体における「P」
と形態が極めて近似している旨主張するが、そのようなことはない。
②(a) アルファベットの文字を筆記体で書く場合、運ばれた筆の軌跡の描く形
態がその書かれた文字の外観を形造り、また、書く文字について運ばれる筆の軌跡
は、人が描くものである以上、その書き手がそれまでに習得した一般的な筆法に依
存するので、この観点から本件商標の左端の文字をみると、「左端から右方向へ描
き始めた半円弧状部に続けて下方に向けて縦棒部を描き、その下端からこの縦棒の
右側を通って上方へ筆を返し前記縦棒部の中間部分を左側へ斜めにクロスし、クロ
スした直後に右斜め上へ筆を返して再クロスさせた形態で描かれている」ように見
受けられ、この筆の運びが描く軌跡、特に下方へ向いた縦棒部とその下端から返し
た筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証の135頁に記載の
「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の18頁に記載の
「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の左端の文字は、
「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるというのが最も自然で
ある。
 次に、本件商標の左端の文字は、上記の縦棒部と再クロスしたあとの筆がそのま
ま縦棒部の上半部分と重なる形で「左回りの円」を描くように運ばれ表現されてい
るが、この「左回りの円」の部分は「e」の筆記体が描かれたものである。
 したがって、本件商標において左端に書された文字は、「F」の小文字「f」を
筆記体で大きく描き、その縦棒部に重ねて「e」の筆記体を描くことにより、
「f」と「e」の2文字を一筆書きで表現したものと見るのが自然である。
 上記のとおり、本件商標は、その左端が「F」の小文字「f」と「e」の2文字
を大きく、かつ一部重複させて一筆書きで表現したものであるから、全体として、
「Feli Rossetti」と構成され、「フェリーロセッティ」の称呼を生
じるものである。
(b)被告は、原告が上記のとおり「e」の筆記体が描かれていると主張している
部分につき、その隣にある「l」よりも大きい円に近いループ状であり、また、
「Rossetti」の中の「e」とは大きさ及び形態が全く相違している旨主張
する。
 上記部分が、被告がいうように、その大きさ及び形態からみて「e」に見えない
とすれば、それは右隣りの「l」と同様に「l」を表記したものとみるのが、本件
商標の全体の形態を考察する上ではより自然である。
 そうであれば、本件商標は、全体として「Flli Rossetti」又は
「flli Rossetti」の文字が筆記体で表現され、「フルリーロセッテ
ィ」の称呼が生じるものというべきである。
(2)以上のとおり、本件商標は、「Feli Rossetti」又は「fel
i Rossetti」、もしくは「Flli Rossetti」又は「fll
i Rossetti」の文字を表したものとみるべきであり、これらからは「フ
ェリーロセッティ」又は「フルリーロセッティ」の称呼が生じるから、引用商標
「PLEROSSETTI」から生じる称呼「プレロセッティ」とは、非類似であ
る。
 したがって、本件商標と引用商標は称呼において類似するとした審決の判断は誤
りである。
第3 請求の原因に対する認否及び反論
1 請求の原因1のうち、原告に対する審決謄本の送達日は不知、その余の事実は
認める。同2は認める。同3は争う。
審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。
2 反論
(1)① 本件商標は欧文字を筆記体で表現したものであり、欧文字の筆記体は型
にはまらない様々なバリエーションで表現されるのが常であるから、筆記された文
字がいかなるスペルのものと判読されるかは、筆記された一連の文字の全体を見た
上、該部分が一般人においてどのように認識されるのが自然であるかという観点か
ら捉えるべきものである。そして、本件商標の左端部分をこのような観点から見た
とき、審決が認定するように、「左に大きく曲がっている先端より書き始めた
『P』の文字の一筆書きを表現した」と捉えるのが自然である。
 このことは、アルファベットの書体において「P」の文字を左に大きく曲がって
いる先端より書き始め、上方に大きな半円弧を描く、ペン・スクリプト書体やバン
ク・スクリプト書体が用いられていることからも明らかである。
 原告は、本件商標の左端の文字は、一般的な「P」の一筆書きとは、筆の運び、
つまり、描かれた文字の形態が全く異なっている旨主張するが、本件商標の左端の
文字は、一般的な筆記体の文字の中では小文字の「p」の筆記体と一番類似してい
るといわざるを得ないし、アルファベットの書体においても、ブラッシュスクリプ
ト書体における「P」と形態が極めて近似している。
② 原告は、本件商標の左端の文字における、特に下方へ向いた縦棒部とその下端
から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証の135頁に記
載の「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の18頁に記載の
「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の左端の文字は、
「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるというのが最も自然で
ある旨主張するが、上記乙各号証に記載の「f」はいずれも2箇所のクロス部分が
描かれていない形態のものであるし、上半分部分の筆の運びと形態が本件商標の左
端文字と全く相違するから、上記主張は失当である。
 また、原告が「e」の筆記体に該当すると主張している部分は、本来その隣にあ
る「l」の半分程度の大きさでなければならないにもかかわらず、これより大きな
むしろ円に近いループ状をしている上、本件商標の後半部分である「Rosset
ti」において表現されている「e」とは大きさ及び形態が全く相違している。
(2) 以上のとおり、本件商標は、全体として「Pli Rossetti」の
文字を表したものとみるべきであり、これより「プリロセッティ」の称呼が生じる
から、引用商標より生じる称呼「プレロセッティ」とは、子音を共通とする第2音
の1音違いとなるので、本件商標と引用商標は称呼において類似するとした審決の
判断に誤りはない。
第4 証拠(省略)
       理   由
1 請求の原因1(特許庁における手続の経緯。但し、審決謄本の送達日を除
く。)、2(審決の理由の要点)、及び、審決の理由の要点(1)(本件商標の構
成、指定商品等)、(2)(引用商標の構成、指定商品)、(3)(請求人主張の
登録無効理由)、(4)(被請求人の主張)については、当事者間に争いがない。
 原告に対する審決謄本の送達日が原告主張のとおりであることは、弁論の全趣旨
により認める。
2 そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。
(1)本件商標は、別紙(1)に示した構成よりなるものであって、欧文字を筆記
体で表現したものであるが、左端の文字は、左側から斜め右上方向に描き始め、半
円弧状を形成するように屈折して下方に向けて縦棒部を描き、その下端から縦棒部
の右側に折り返してやや左斜め上方に向かい、縦棒部の中間よりやや下方寄りの箇
所を斜めに横断し、横断した直後に右斜め上方に向きを変えて再度縦棒部を横断し
た後、縦棒部の上方に、左側の一部が縦棒部にかかるようなループ状の円を描いた
ものである(縦棒部の右側の円弧状部分は、縦棒部の左側の円弧状部分より相当大
きく表されている。)。
 ところで、文字商標において、ある部分がどのような文字を表現するものとして
用いられていると判断すべきかは、当該部分を見た一般人がどのように認識するの
が普通であるかという観点から決せられるべきである。
 しかして、本件商標の左端の文字には、縦棒部と、縦棒部の上方に、左側の一部
が縦棒部にかかるようなループ状の円が描かれており、縦棒部の右側の円弧状部分
は、縦棒部の左側の円弧状部分より相当大きく表されていて、欧文字「P」を構成
する縦棒部と縦棒部上半右側の半円形部分を備えていると見られること、乙第3号
証(東京書籍編集部編「NEW HORIZON ペンマンシップ」)に記載され
ている「P」の大文字及び小文字の筆記体では、左側から斜め右上方向に描き始め
た後、下方に向けて屈折して縦棒部が描かれており、本件商標の左端の文字のよう
に、左側から斜め右上方向に描き始めた後、下方に屈折させて縦棒部を描く筆法
は、「P」の筆記体に見られるものであり、「P」の小文字の筆記体では、縦棒部
の下端からその左側を上方に向かい、縦棒部の中間付近を斜めに横断している線が
描かれていることからすると、本件商標の左端の文字は、「P」の筆記体に、縦棒
部の下端から縦棒部の右側に折り返してやや左斜め上方に向かい、縦棒部の中間よ
りやや下方寄りの箇所を斜めに横断し、横断した直後に右斜め上方に向きを変えて
再度縦棒部を横断する線、及び、縦棒部の左側の円弧状部分を装飾的に付加して、
一筆書きしたものであり、本件商標を見た一般人も上記のように認識するのが普通
であると認めるのが相当である。
 したがって、本件商標の左端に書された文字は、「P」の文字の一筆書きを表現
したものと認識されるとみるのが相当であるとした審決の認定に誤りはなく、本件
商標は、全体として、「Pli Rossetti」の文字を表したものと認めら
れる。
(2)① 原告は、本件商標の左端の文字は、一般的な「P」の一筆書きとは、筆
の運び、つまり、描かれた文字の形態が全く異なっている旨主張する。
 確かに、本件商標の左端の文字の筆の運びや形態は、通常われわれが目にする
「P」のそれらとは若干相違しているが、「P」の文字の一筆書きを表現したもの
と認識されるのが普通であることは上記説示のとおりである。
② 原告は、本件商標を構成する文字の筆の運びが描く軌跡、特に下方へ向いた縦
棒部とその下端から返した筆が描く2箇所のクロス部分が描く形態は、乙第1号証
の135頁に記載の「f」、乙第2号証の191頁に記載の「f」、乙第3号証の
18頁に記載の「f」のそれぞれの筆の運びと殆ど同じに見えるから、本件商標の
左端の文字は、「F」の小文字「f」の筆記体を大きく書いたものに見えるという
のが最も自然であること、縦棒部と再クロスしたあとの筆がそのままその縦棒部の
上半部分と重なる形で描くように運ばれ表現されている「左回りの円」の部分は
「e」の筆記体が描かれたものであることを理由として、本件商標において左端に
書された文字は、「F」の小文字「f」を筆記体で大きく描き、その縦棒部に重ね
て「e」の筆記体を描くことにより、「f」と「e」の2文字を一筆書きで表現し
たものと見るのが自然である旨主張する。
 しかし、本件商標における下方へ向いた縦棒部とその下端から返した筆が描く2
箇所のクロス部分が描く形態が、上記乙各号証に記載の「f」の筆の運びと殆ど同
じに見えるということはなく、したがって、左端の文字が、「F」の小文字「f」
の筆記体を大きく書いたものに見えるということはないし、上記「左回りの円」の
部分が「e」の筆記体を描いたものであるとも認められない。まして、本件商標の
左端が、「f」と「e」の2文字の筆記体を大きく、かつ一部重複させて一筆書き
で表現したものと見ることは到底できない。
 また原告は、上記「左回りの円」の部分が「e」に見えないとすれば、それは右
隣りの「l」と同様に「l」を表記したものとみるのが、本件商標の全体の形態を
考察する上ではより自然であり、そうであれば、本件商標は、全体として「Fll
i Rossetti」又は「flli Rossetti」の文字が筆記体で表
現されるものというべきである旨主張する。
 しかし、上記「左回りの円」の部分が「l」を表記したものとみることもできな
いことは明らかであって、原告の上記主張は採用できない。
 したがって、本件商標は、「Feli Rossetti」又は「feli R
ossetti」、もしくは「Flli Rossetti」又は「flli R
ossetti」の文字を表したものとみるべきである旨の原告の主張は採用でき
ない。
(3)本件商標は、その構成文字より「プリロセッティ」の称呼を、引用商標は、
その構成文字より「プレロセッティ」の称呼をそれぞれ生ずるものと認められる。
 そこで、両称呼を比較すると、両称呼は、第2音目において「リ」と「レ」の音
の差異を有する以外他の音をすべて共通するものである。そして、「リ」と「レ」
の音は、調音の方法、位置において音質が近似した音ということができるから、そ
れぞれ一連に称呼するときには、その語調、語感が極めて近似したものとなり、両
称呼は互いに聞き誤られるおそれがあるものと認められる。
 したがって、両商標は称呼において類似するものであるとした審決の判断に誤り
はない。
 そして、両商標の指定商品が同一であることは、当事者間に争いがない。
(4)以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、審決に取り消
すべき違法はない。
3 よって、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件
訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤博 濱崎浩一 市川正巳)
別紙
<29900-001>

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