弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原判決中控訴人日本国有鉄道の敗訴部分を取り消す。
被控訴人P1、同P2および同P3の各仮処分申請を棄却する。
控訴人P4の控訴を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じ、控訴人P4、被控訴人P1、同P2および同P3の負担
とする。
       事   実
 控訴人P4、被控訴人P1、同P2、同P3(以下申請人という)代理人は、昭和四
六年(ネ)第一四三号事件につき、「原判決中申請人P4に関する部分を取り消す。
同申請人が被申請人に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
訴訟費用は第一、二審を通じ被申請人の負担とする。」との判決を、同年(ネ)第
二〇九号事件につき、「本件控訴を棄却する。控訴費用は被申請人の負担とす
る。」との判決を求め、被控訴人兼控訴人日本国有鉄道(以下被申請人という)代
理人は、同年(ネ)第一四三号事件につき、主文第三項同旨と「控訴費用は申請人
P4の負担とする。」旨の判決を、同年(ネ)第二〇九号事件につき、主文第一、二
項同旨と「訴訟費用は第一、二審を通じ申請人P1、P2およびP3の負担とする。」
旨の判決をそれぞれ求めた。
 当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、こ
れを引用する。
一 (証拠関係省略)
二 申請人ら代理人は次のとおり述べた。
1、入換速度規制について。
(一) 岩見沢駅構内における入換速度の最高時速は、運転の安全性を確保する点
からいえば、岩見沢機関区長の定めた「入換機関車乗務員作業指針」の規定してい
る二〇キロメートルでは危険であつて、平常これによつて行われているのは、当局
の一方的な業務命令によつて、危険をおかしながら、やむを得ず実施しているので
ある。これによる職員の死傷事故は跡を絶たない。すなわち、「平常の入換速度」
が危険なものであつて、その安全性からはとうてい許容できない当局の業務命令に
もとづくものである以上、本件のように安全な速度で作業したことをもつて怠業的
行為ということはできない。
(二) 原判決認定のような未仕訳車は、本件闘争によつてのみ生じたものと断言
できない。また、操車場において未仕訳のためにその貨車が一列車遅れて継送され
るとしても、列車密度の高い岩見沢駅の現状からは、僅かに数時間後において後続
列車によつて継送されることになるので、貨車の遅延もその程度に止まることは明
らかであつて、国民に与えた影響のごときはほとんど問題にするにたりない。
2、組合員の機関車への乗込みについて。
 機関車乗務員が当局側に断ることなく一時交替するのは慣習であり、争議中であ
るからだけではなく、平常でも組合のオルグが適時機関車に立ち入つて活動するこ
とも常例である。したがつて、平常黙認してきていることを問題視して、それが特
に入換作業に影響したと判断することは当を得ない。
3、休暇請求について。
 原判決は、本件休暇請求は列車運行に重大な支障を与えることを目的とすると
か、休暇請求と列車運休との間に因果関係が存在する、と認定している。
 しかしながら、岩見沢機関区における当時の乗務員定員に比し必要とされる予備
員数が過少であつて、同区における有給休暇の未消化が七〇パーセントという好ま
しくない結果を生じていた。そこで組合は、かねてから右有給休暇の消化に関し
て、当局に強く要請してきたが、当局は一向に善処しなかつた。そこで組合は本件
入園闘争に際して、争議行為の手段に訴えて、右要求の実現を企図したのである。
そして実際の休暇請求件数も、当時当局が平常保有した予備員数に比して過当では
なく、当局としては、非組合員を動員することにより容易に対処できる範囲内のも
のであつた。したがつて、列車運行に支障を与える目的であつたとすることは、全
く理由がなく、その責任はかかつて当局が負うべきである。
 また、休暇請求につき、本件闘争の目的からみて、組合側としてある程度の圧力
を加えたとしても、決して不当ではなく、かつ休暇を拒否されたものは若干の例外
を除いて殆んど勤務についたのであるから、休暇請求と列車運休との間に因果関係
のないことは明らかである。
4、入換速度規制と休暇請求の各闘争は公労法第一七条により禁止された争議行為
に該当しない。すなわち、
本件争議行為が同条に違反するかどうかについては、最高裁昭和四一年一〇月二六
日大法廷判決(いわゆる全逓中郵判決)の趣旨に従い、時間、規模、態様、結果等
を、実態に即して検討すべきものである。しかるに原判決は、かかる点についてな
んら具体的検討をなさずに、漫然、国民生活に重大な影響がある、と判断したこと
は、審理不尽であり、独断的判断である。本件争議行為は右中郵判決の立場からみ
ても、なんら違法ではなく、正当な団体行動である。
5、申請人P4の懲戒免職の相当性について。
 同申請人が本件闘争において行なつたすべての行為は、全く支部執行委員会の決
議とP5委員長代行の指揮に基くものであつて、右決議と指揮の範囲をなんら逸脱し
なかつた。したがつて、自らは、単に書記長としての役割を忠実に実行しただけ
で、他の支部執行委員と少しも異るところがなく、その最高の指導責任について
は、どこまでもP5委員長代行が負うべきものである。よつて、同申請人に対する懲
戒の相当性はとうてい認められない。
三 被申請人代理人は次のとおり述べた。
1、申請人P1、P2およびP3に対する本件懲戒は、適法である。すなわち、
 懲戒は、総裁がその責任において裁量権を行使し最も効果的にこれを行うべきも
のであつて、濫りに部外者がその当否を判断すべきではない。右申請人らの行為は
就業規則六六条一七号の懲戒事由に該当するものであるから、総裁が国鉄部内の厳
正な規律を維持するため、右行為を重視し、特に免職を選んだことは全く首肯し得
るところで、なんら懲戒権の著しい逸脱ないし濫用をもつて目すべきではない。
2、原判決は、機関助士入園問題について、動労札幌地本と被申請人との間に昭和
四〇年二月二三日申請人ら主張の優先入園に関する合意が成立した、と認定してい
る。
 しかしながら、動労札幌地本は第一六回地方大会において昭和四〇年度経過報告
書(甲第一一号証の一および二)を提出したが、これには右合意成立の記事はどこ
にもない。また札鉄管理局においては、労働条件その他に関し、労働協約とまでい
かなくとも、地本との間に合意があつたときは、その旨の書面を作成していたので
あるが、右合意と主張するものについてはなんらの文書も存在しない。これらの事
実と鉄道学園入園の資格問題が団体交渉事項ではないことからすれば、右のような
合意が成立しなかつたことは明らかである。
3、申請人P1およびP2に関する事実誤認について。
 原判決は、申請人らに関する処分の相当性の判断について、被申請人が前述の二
月二三日の合意に反して入園試験を強行しようとしたこと、P6助役のその場しのぎ
の判断により組合側委員を札幌に赴かせたなどの事情をもつて、当局側に「非」が
あるとしているが、右合意の存在しなかつたことは前述のとおりであり、また、P
6助役が右のような態度を措らざるを得なかつたのは、申請人らの節度を欠いた激し
い抗議行動に基づくものであつたから、当局側にはなんら非難すべき点はない。
4、原判決は、国民生活に影響を及ぼさないような、内部規律違反、施設管理権侵
害等の行為については、重い懲戒権を行使し得ない趣旨の判断をするが、かかる行
為であつても、その程度如何により重い懲戒を相当とするものである。また、腕章
等の着用、その指導とか、無許可掲示等の行為が懲戒事由を定めた就業規則六六条
一七号に該当しない、とする判断は、右規則の解釈を誤るものである。
5、申請人P3の指導的役割について。
 仮りに、同申請人が支部委員長を辞任ないし解任されたとしても、外形的にも実
質的にも、本件闘争の開始から終結まで、支部委員長として行動し、他の組合員を
指導したものである。すなわち、
(イ) 昭和四〇年二月一七日午後四時五〇分頃動労札幌地本岩見沢支部委員長と
して、岩見沢機関区長P7に対し、本件闘争に入る旨を通告し、同区長の警告にかか
らず、これを開始せしめた。
(ロ) 同月二六日の無許可職場集会において、組合員約四〇名に対し、「当局は
年休請求に対し診断書を要求するという愚行をおかし、さらに今回診療所の診断を
持つてこいといつて、我々の切なる要求を踏みにじつている。三月一日の入所に向
け総力を結集して闘いたい。」と演説した。
(ハ) また同月二一日より三月六日までの間数回にわたつて、無許可大会を開催
して演説をなし、原判決認定のように、同月六日には施錠してある講習室の戸を自
ら外して、多数の組合員を入室せしめた。
(ニ) さらに、原判決認定のように、有給休暇請求者に同道して担当助役に抗議
した。
 以上の事実からすれば、同申請人は特に指導的役割を果したとみられる。
四 (証拠省略)
       理   由
 当裁判所は、申請人らの本件仮処分申請はいずれも理由がないものと判断する。
その理由は、次のとおり付加、訂正して、原判決理由冒頭から第四までの理由説示
を引用する。
一 原判決三三枚目裏八行目、九行目および一二行目の各「証人」を、それぞれ
「原審証人」に訂正する。
二 原判決三五枚目表五行目から同六行目にかけての「年令三四歳以上」から同七
行目の「約し」までを、「、年二回施行のうちの一回は機関助士在職年数一〇年以
上の者、他の一回は同一四年以上の者を、それぞれ優先的に受験させることを約
し」に訂正する。
三 同末行の「優先合格」を、「優先受験」に訂正する。
四 同三六枚目裏三行目の「強硬に反対し」から同九行目の「成立した。」まで
を、次のとおりに訂正する。
 当局運転部との間に右優先入園について折衝を続けていたが、同年二月二三日に
は、従前のように正式の団体交渉としてではなく、関係担当部門との交渉の席上に
おいて(出席者は、地本側三役他二名、当局側は運転部長、運転部総務課長、機関
車課長他二名)、当局側に対し、「(1)同年四月の機関士科入園の際には機関助
士在職九年以上の者を優先的に受験させ、この段階で在職一〇年以上の者を全員合
格させる。(2)同年一〇月の機関士科入園の際には同八年以上の者を、(3)昭
和四一年一月機関士科入園の際には同七年以上の者を、(4)同年二月機関士入園
の際には同五年以上の者を、それぞれ優先的に受験させる。」ことを強く要求し
た。当局側においては、当時輸送が増加して乗務員関係の要員が特に不足している
状態であつて、この乗務員の確保(具体的には年次有給休暇請求をできるかぎり差
控える)につき、従前以上に組合側の協力を必要としていたところから、譲歩を余
儀なくされ、結局当局運転部としては、遅くとも同年三月六日までに、地本側の右
提案どおり努力する旨を約するにいたつた。
 なお、右約定については、被申請人主張のように正式な文書が作成されてはいな
い。しかし、当局側は、従前から入園の受験資格の問題は管理運営事項であるから
正式な団体交渉の対象にはならない、との前提をとつていたところから、関係担当
部門と地本との間に、実際上これについて取極めがなされても、双方が確認した事
項は必ず実行するとの約束のもとに、右取極めを文書に作成しないのを慣例として
いたことが前掲証人P8の証言によつて疎明されるから、右約定の文書が存在しない
ことは、なんら右認定を妨げるものではない。また、被申請人主張の地本の昭和四
〇年度経過報告書(甲第一一号証一および二)も、右約定がなされたことを前提と
している趣旨に窺われるから、右認定に沿うものである。
五 同三七枚目表二行目および同三八枚目表一一行目の各「二月二三日」の次に、
それぞれ「提案」を加入する。
六 同三九枚目表八行目から同九行目にかけての「しかして」から同一三行目の
「抗議するため」までを、「次いで、同月一四日支部代表者会議を開いて、当局の
一方的方針により入園者の募集を強行しようとする態度に抗議するため、」に訂正
する。
七 同三九枚目裏四行目の「乙第九二、一〇八号証」を、「、弁論の全趣旨により
成立の認められる乙第九二号証、前掲証人P9の証言により成立の認められる乙第一
〇八号証」に訂正し、同五行目の「及び」の次に、「前掲」を加入する。
八 同三九枚目裏一〇行目、一一行目および一三行目の各「証人」を、それぞれ
「原審証人」に訂正し、同一四行目の「及び」の次に、「原審における」を加入す
る。
九 同四一枚目表一一行目の「○○○」を、「○○○」に訂正する。
一〇 同四二枚目表一二行目の「区長室」の次に、「(広さ約九坪)」を加入す
る。
一一 同四三枚目裏一〇行目の「至つた。」の次に、「右抗議が始まつてから間も
なく、組合員は四、五〇名に増え、区長室に入りきらず、隣りの部屋に溢れていた
状態であつた。」を加入し、同一一行目の「午前」を、「午後」に訂正する。
一二 同四四枚目裏七行目の「検討した結果」の次に、「、組合員を札鉄管理局に
赴かせて両名に会わせないかぎり、どのような事態に立ち至るか計りしれない、と
判断し、やむなく、」を、同九行目の「こととし、」の次に、「P10ら組合三役の
ほか組合員五、六名を区長室に入れ、」を、同行目の「そこで、」の次に、「午後
一一時四五分頃」を、それぞれ加入する。
一三 同四五枚目裏二行目の「加えていつた。」の次に、次のとおり加入する。
 この間における組合員らの抗議のうち、申請人P1、P2の態度は殊に激しく、度
々机を叩き、「貴様死んでしまえ、お前らの家族、追分にいられなくしてやる、一
体どういう形で責任をとるつもりだ」などと大声で発言していた。
一四 同四六枚目表五行目の「結局」から同七行目の「入つた。」までを、次のと
おりに訂正する。
 区長らに対しP11らの家族を捜すように強く要求した。かくて、午前三時一〇分
頃当局側二名(P12、P13両助役)と組合側二名(P14、P15)が家族を捜しに出
掛けた(なお、P12ら両助役はP11ら両名の住所、その親戚宅を尋ねたが家族の所
在を確認することができず、なおP11の妻の実家宛に、機関区に連絡を依頼する趣
旨の電報を打つて、午前五時頃区長室に戻つた)。
一五 同四六枚目表九行目の「依頼した。」の次に、次のように加入する。
 なお、申請人P1も派出所に同行したのであるが、区長が捜索を依頼して派出所を
出てからも、執拗に「労働課に電話せよ」と要求したので、区長において追分駅の
事務室から札鉄管理局の労働課P16首席に家族の問合わせの電話をしたところ、前
記電話による問合わせの時と同様に、「心配ない、捜す必要がない」との趣旨の返
事であつた。この電話の際に同申請人は電話に耳をあてながら、P16首席に、「こ
の嘘つき野郎」と大声で発言していた。
一六 同四六枚目裏の一行目から同二行目にかけての「区長らの申し入れにより」
を削り、同五行目から同六行目にかけての「責任を追及した。」を、「謝罪文を要
求した。」に訂正する。
一七 同四七枚目表五行目の「そして」から同九行目の「返した。」までを、次の
ように訂正する。
 そこでP6がやむを得ず「助役をやめる」と答えると、組合員が隣りの調査室から
用紙と硯を持ち出してきた。申請人P2がこれをP6の前につきつけて、「さあ辞職
願を書け」といい、P6が躊躇していると、申請人P1、P2らにおいて、「さあ書
け」とせき立てて、P6に辞職届(前掲乙第一三号証)を書かせ、これに印を押させ
たうえ、さらに一回読み上げさせた(この時は、午前五時一〇分頃であつた)。そ
して、P17書記長がこれを受け取り、他の組合員にその「コピー」をとらせたう
え、後記のように午前八時頃組合側が区長室を最後に引きあげる際に、P10が右辞
職届をP6に返した。
一八 同四七枚目裏八行目の「しかして」から同四八枚目表二行目の「入つた。」
までを、次のとおり訂正する。
 ひきつづいて、組合側は、午前五時三〇分頃から同六時すぎ頃まで各助役に対し
て、一人づつ順次に、次のように全く一方的に抗議をなし、いずれも助役らの意に
反した、なんらかの謝罪の言葉を述べさせた。
(イ) P18助役に対し。申請人P1、P2らが、「検査助役立て」といつて椅子か
ら立たせ、「検査助役は機関助士の仕事をしてきたこと(P11と交替したことを指
す)についてどう責任をとるんだ」などと抗議し、「混乱を招いて申訳けない」と
の趣旨の言葉を述べさせた。
(ロ) P12助役に対し。申請人P1が、「立て、立て」、「お前は機関助士なんだ
ぞ(P19と交替したことを指す)、立て、立て」といつて椅子から立たせ、組合員
P20において、「顔が見えない前に出なさい」といつて区長の横に進み出させて、
「あんたどう思うんだ、この事態についてだ」といつて追及した。同助役が答えな
いでいると、申請人P1において、「何時つんぼになつたんだ」と責め、同助役に
「残念に思う」といわせたうえ、かかる言葉は気にいらないということで、さらに
「まだそんな馬鹿なことをいう」、「人非人め」、「当局の犬」などといつて非難
した。
(ハ) P13助役に対し。組合員らが、「立て」といつて立たせて、組合員P20、
P21において、P11らを途中交替をさせたことについて詰問し、結局「混乱させた
ことについて、管理者の一人として残念だ」との趣旨をいわせた。
(ニ) P22助役に対し。組合員らが、「指導助役、お前立て、ちやんと手をのば
せ、足をのばせ」といつて立たせ、申請人P1において、「お前は指導助役ではない
か、こんな未熟者を機関助士として乗務させて良いか、悪いか、どうなんだ」と詰
問し、「二度とこのような事をしないといえ」などといつて追及した。
(ホ) P23助役に対し。組合員らが同様に椅子から立たせて、混乱を招いたとし
て抗議し、この間申請人P1、P2が「P23にやにやするな、不謹慎だぞ、どうなん
だ」といい、ついに「助言したがすまない、札幌に行つたのも力が及ばなくてすま
ない」といわせた。
(ヘ) P24助役に対し。申請人P1が、「P24お前眠つているのか」、「P24立つ
んだ」といつて立たせ、申請人P2が、「お前の恰好なんだ」、「気をつけをせ」、
「するんだ」、「こんな事態になつてすまないと思わんのか」といつて非難し、結
局「混乱を起してすまないと思う」と述べさせた。
 右のように、各助役に対する追及が終ると、また組合員らは区長に対し抗議を繰
返し、区長が沈黙していると、申請人P1、P2らが、「おいP25何んとかいつたら
どうだ」と発言を迫り、ついに区長も、「混乱を招き申訳けない」と答えるにいた
つた。
 かくするうちに、午前六時二〇分頃派出所から、「P11らの家族は留守だが、P
19の父の話しでは、今すぐ捜索願を出すことは考えてはいない」との趣旨の電話連
絡があつた。これにより組合側は一時静かになつたが、すぐまた、申請人P1、P
2らは、区長に対し、「家族の居所を捜せ」と要求し、再び家族捜索のことが蒸し返
えされてきた。そこで、家族を再度捜すということで、午前六時三〇分頃休憩に入
つた。区長は、午前七時頃、再び、P12、P13両助役をP11の妻の実家に捜索に向
わせた(なお、両助役は、この時は、家族らが親戚に遊びに行つていることを確
め、午前九時四五分頃区長室に戻つた)。
一九 同四八枚目表四行目の「考え」の次に、「組合員約五〇名で」を加入し、同
行目の「午前六時」を、「午前七時」に、同五行目の「交渉が開始すると、」を、
「交渉を開始した。」に、同行目の「区長ら」から同一三行目の「引揚げた。」ま
でを、次のとおりに、それぞれ訂正する。
 まず、区長らに対し、組合側が右休憩中に作成した謝罪文に捺印するよう強硬に
要求した。すなわち、洋罫紙二枚に、表題を謝罪文として、区長から組合追分支部
宛てにしたもので、その下に区長および各助役毎に、先刻の発言内容をもとにし
て、例えば区長の欄には「職場を騒がせ、町中を騒がせ、家族にも迷惑をかけた責
任を感じている」、P6助役の欄には「今回の入所問題で辞職願を提出した」、P
22助役の欄には「今回の入所問題では遺憾に思う、信号、駅名の知らない者を乗車
させない、今後このような事態が発生しても指導員を絶対使わない」などといつた
趣旨の、謝罪の内容をあらかじめ記載したものであつた。そしてP10が座つたまま
でこれを一回読み上げ、申請人P1、P2らが、「早く押せ、早く押せ」と要求し
た。そこでやむなく、はじめにP6助役がこれに押印し、次いで区長、以下P22、P
24、P26およびP18の各助役がこれに押印した。その際、区長が押印を拒否してい
ると、申請人P2が、「責任をどうする」と迫り、また組合員のなかから、「殺して
やるぞ」といつた発言も飛び出す状況であつた。(なお、この時印鑑を所持してい
なかつたP23助役は、抗議終了後、P17から執拗に要求されて押印し、家族を捜し
にでていたP12助役は、区長室に戻つてきた際に、P17他一名の組合員に要求され
てこれに押印した)
 続いて、組合側は、(イ)P11らの家族の所在を明らかにすること、(ロ)P
11らを呼び戻すこと、もし試験が終了しているのであれば、この両名の試験を無効
にするように手配すること、(ハ)徹夜の交渉で疲れのでている組合員に対して年
休を与えること、等を要求した。これに対し、区長は、右(イ)および(ハ)の点
は努力する旨答え、(ロ)の点は拒否した。
 かくして、午前八時頃、組合側は、右(ロ)の点について「善処を求める」とい
うことで最終的に抗議を打ち切つて、区長室を引揚げた。なお、その際申請人P
1は、立つていた区長の後からその両肩を押しながら、「話にならん、組合事務所に
来い」と呼んだが、P10らに制されたため、肩から手を離し、「どうするか覚えて
いろ」と捨科白を残して区長室を出た。
二〇 同四八枚目裏七行目の「入院し、」を「入院した。」に、同九行目の「通院
加療することとなつた。」を、「同年三月二八日頃まで通院加療した。」に、それ
ぞれ訂正する。
二一 同四九枚目裏七行目の「二月二三日」の次に、「提案」を加入する。
二二 同五〇枚目表八行目の「しかし」から同裏二行目の「いうべきである。」ま
でを削る。
二三 同五〇枚目裏三行目冒頭から同五二枚目表一一行目までを、次のとおりに訂
正する。
2、ところで、前記疎明事実によれば、組合側の本件抗議行動は、当初において
は、当局側がP11、P19両機関助士を受験さすべく、その乗務途中でそれぞれP
12、P18両助役と交替させて札幌に赴かせたことに対する抗議と、P11ら両名に会
わせるよう要求することであり、その後、P11らに会うことが許されないことがわ
かつてからは、組合側が札幌に赴いたことは徒労であつたこと、当局がP11らの家
族に連絡し或いはその所在を確認していなかつたことに対する抗議を加え、さらに
はその捜索を要求し、その挙句、これらの点につき当局側に対し謝罪を述べさせ、
謝罪文に押印させた、ものであつた。
 しかしながら、P11らは組合側の説得にかかわらず、受験を希望していたのであ
るが、当時の組合側の強い統制からすれば、その希望を実現させるためには、両名
を途中で交替させて受験に赴かせざるを得ない状況にあつたと認められるのであ
る。したがつて、当局側が両助役(いずれも機関士、機関助士の経験、資格を有す
ることは前掲証人P25の証言によつて疎明される)と交替させて右の措置をとつた
ことについては、特段の非はない。当局側、組合間に、あらかじめ受験希望者の氏
名を組合側に知らせるとか、鷲別機関区のような強引なやり方はしない、との約束
が存したといつても、同時に、当然のことながら受験希望者本人の自由意思を尊重
すべきことが確認されているのであり、右交替もP11らの意思を尊重してのやむを
得ない措置であつてみれば、右強引なやり方をしないとの約束に反したものとはい
えないし、氏名を明かさなかつたことをもつて当局側を責めるのは当を得ない(な
お、組合側は、当局側からP11らの氏名を知らされなかつたが、P11らが受験を希
望していることを窺知し、説得に及んでいるのであるから、これにより、組合側の
方針が不当に害されたとはいえないわけである)。
 また、P11らの家族への連絡、所在の確認等をしていなかつたことについても、
当局側がこれをなすべきであつたとする合理的根拠は見当らない。
 さらに、P6助役が札鉄管理局機関車課長からP11らを組合員に会わせられない趣
旨の電話を受けていながら、P10らを札幌に赴かせたことについても、前記認定事
実に徴し、組合側の強硬な態度から、事態収拾を期待して、やむを得ずなされたも
のであることが明らかであるから、かかる事実をもつて、一方的に当局側に責任を
追及することは相当でない。
 要するに、組合側が本件抗議の対象とした事項は、当局側に特段非違がないこと
か、又は少くとも当局側に対し一方的に責任を追及すべき事柄ではなかつたとみな
ければならない。
3、しかるに、本件抗議の時間は、二月一七日午後九時三〇分頃から翌一八日午前
八時頃までの夜を徹して長時間にわたり、この間、午後一〇時一〇分頃から約一〇
分間、午後一一時すぎ頃から翌朝午前一時すぎ頃までの約二時間、午前六時三〇分
頃から約三〇分の中断があるにすぎない。なお、午前三時一〇分頃から同四時頃ま
では、抗議は中断したものの、区長らに対し、警察官派出所にP11らの家族の捜索
を依頼させに赴かしめたものである。
 また、その抗議方法も、組合員四、五〇名が僅か約九坪の部屋につめかけて、全
く一方的に怒声、罵倒を加え、多数の不当な威圧のもとに、P12、P13両助役をし
て二度も長時間家族の捜索にあたらせ、区長らを派出所に捜索依頼に赴かせ、P6助
役に辞職届を書かせ、かつ助役らを順次一人づつ起立させて、区長および助役らに
謝罪の言辞を述べさせたうえ、謝罪文に押印させたのである。そして、区長らがい
ずれも組合側の威圧に押され、或いは畏怖し、或いは心身の疲労のあまり、意に反
して右のような行為をなすにいたつたことは、前記疎明事実と前掲乙第一〇、一一
各号証、乙第一二号証の二ないし八によつて疎明できるところである。
 もつとも、当局側はあらかじめ組合側の抗議を予想し、当時公安職員四名を配置
させていた(この点は前掲乙第一二号証の二により疎明される)にもかかわらず、
その出動を要請していないわけであるが、前掲乙第一二号証の二および七による
と、当局側としては、出来るかぎり平穏裡に事態を収拾する意思であり、また僅か
四名にすぎない公安職員の出動を求めれば却つて混乱を招くものと判断して、その
出動を要請しなかつたことが疎明される。また警察官に対して出動を求めなかつた
ことも右と同様に平穏裡の収拾を考慮したためであつたと推測される。したがつ
て、公安職員或いは警察官の出動を要請しなかつたからといつて、組合側の不当な
圧力と区長らの畏怖等の存在を否定するわけにはいかない。
 しかして、右のような抗議の結果、区長およびP6助役をして過労により可成り長
期の入院又は通院加療を要させるにいたつたことも、無視できないところである。
なお、右両名とも翌朝も勤務に追われているが、これをもつて、本件抗議と右身体
傷害との間の因果関係を否定できない。
4、右2および3によれば、本件抗議行動は、正当な組合活動の範囲を著しく逸脱
したものであつて、極めて違法性の強いものと評価せざるを得ない。
 しかして、かかる抗議行動における申請人らの役割行動をみるに、申請人らの言
動自体極めて不当であつたばかりでなく、申請人P1は追分支部の青年部長、申請人
P2は札幌地本の青年副部長の地位にあつて、抗議行動の際には、P10ら三役ととも
に常に区長らの近くに位置し(この位置からみても、抗議行動において重要な立場
にあつたことが推認できる)、いつも一般組合員らに先んじて、極めて不当な威圧
的言動により区長らに対し種種の強要をなし、参加者が疲れて静かになると、当局
側に対して「なんとか言え」と迫り、組合側にも「みんなどんどん言つてくれ」な
どといつて、椅子から立ち上がつて大声を出すなど終始不当な罵言、雑言による威
圧的雰囲気を醸成せしめた主導的地位にあつたとみられる(前記疎明事実と前掲乙
第一〇、一一各号証、乙第一二号証の二ないし八、前掲証人P25、P23の各証言に
より判断できる)。
 なお、P10ら三役が本件抗議行動における抗議事項等について一応の方針を決定
していることは、前記疎明事実と前掲証人P10の証言によつて窺われるところであ
るけれども、申請人らの言動はもはや三役の統制内のものとは、とうてい解されな
い。
5、以上説示したところによれば、申請人らの行為が懲戒事由を定めた被申請人の
就業規則(成立に争いがない乙第二三号証の五)六六条一七号「職員として著しく
不都合な行為」および国鉄法第三一条に該当し、これにより懲戒に付しうることは
明らかである。そして、その程度、態様からすれば、前記1の入園問題に関する当
局側の慣行無視の事実(かかる事実は、本件のような違法な抗議行動とは特段の関
聯があるわけではなく、その情状を軽からしめるものではない)が存在したところ
で、被申請人が申請人らを懲戒免職に付したことをもつて、社会通念上著しく均衡
を失した処分とまでは断定できず、したがつて右免職を無効とみるわけにはいかな
い。
6、なお、申請人らは右懲戒免職をもつて不当労働行為というけれども、申請人ら
の行為はとうてい正当な組合活動といい得ないし、被申請人が申請人らの平素の組
合活動を嫌悪するが故に右措置に及んだものとの疎明はない。もつとも、P10ら三
役は申請人らのように重い懲戒をうけてはいない(前掲証人P10の証言によれば、
支部委員長のP10は、本件抗議行動のほか、二月一八日以降の休暇闘争について停
職六月の懲戒を受けたにすぎないことが疎明される)し、申請人らが平素熱心に組
合活動を行つていたことは、申請人ら本人尋問の結果によつて疎明できるけれど
も、前説示のように申請人らの役割、行動は、P10ら三役の統制内のものとはいえ
ないし、その程度、態様に鑑みれば、右事実が存するとしても、本件懲戒免職をも
つて、未だ申請人らの組合活動を主たる動機、理由とするものとはいえないところ
である。したがつて申請人らの右主張は採用できない。
二四 同五二枚目裏一行目および二行目の各「証人」を、「原審証人」に、同一〇
行目の「証人」から「P27」までを、「原審証人P16、P27、原審および当審証人
P5、P28」に、同一一行目の「申請人」を、「原審における申請人」に、それぞれ
訂正する。
二五 同五三枚目裏末行の「四両」を、「四一両」に訂正する。
二六 同五四枚目表四行目と同五行目の間に、「二八日 一四、一五便の小運送中
止」を加入する。
二七 同五四枚目表七行目から同八行目にかけての「また」から同一二行目の「行
なつた。」までを、次のとおりに訂正する。
 右二月二一、二六、二八日の乗務員詰所における集会の際には、参集した組合員
の労働歌高唱などによつて、隣接の運転助役室における電話連絡などの執務に支障
を生ぜしめた。
 また、二月一九日講習室における集会の終了後、同日午後七時三〇分頃から約三
〇分間、申請人P4、P3ら組合員約七〇名が運転助役室に詰掛け、執務中のP29助
役を取り囲んで、同助役が前日自宅待機を命ぜられて出勤しなかつたこと、同助役
のとつた勤務変更の措置が不当であつたことを取り上げて、申請人P4において、
「交番を間違つたのを、そのまま済まされるか」、「お前も体具合が悪いときは休
みをとつた、我々も体が悪るけりや休む権利があるんだ、助役は休めても我々乗務
員の休暇を承認しないのか」などと大声で非難し、また同助役の机を叩き、他の組
合員もこれに同調して同助役を野次り、吊し上げを行つた。この間同助役はもとよ
り、運転助役室にいた他の助役も、右の騒ぎによりその執務が妨げられた。
二八 同五四枚目裏末行の「この結果」の次に、次のように加入する。
(イ) 多数の者が運転助役室において同時に、しかも長時間にわたつて休暇請求
をなすため(同時に二、三〇名の者が請求に押しかけたり、また二時間近くも執拗
に休暇請求、抗議をすることもあつた)、少くとも二月二一、二三、二六日には運
転助役室は喧騒を極めて助役らの執務に支障を生ぜしめた(これらの日には、公安
職員を出動せしめて組合員らを退去させている)。さらに(ロ)、
二九 同五五枚目表四行目から同五行目にかけての括弧内の記載を、「二五日六
本、二六日三本、二七日二本。運行距離四〇八・三キロメートル以上」に訂正す
る。
三〇 同五五枚目表六行目の「同年」から同一〇行目の「いやがらせをした。」ま
でを、次のとおりに訂正する。
(イ) 同年二月二〇日午後二時三〇分頃から約一五分間、出発点呼中の第四七八
列車代務乗務員のP30を、(ロ)、同月二一日午前一一時四二分頃から約二〇分
間、出区準備のため機関車整備中の第一八五列車代務乗務員P31を、(ハ)、同日
午後七時二五分頃から約一〇分間、出発点呼中の第二八八列車代務乗務員のP
32を、それぞれ取り囲んで、「信号知つているか」、「こんなのが機関助士で乗る
のでは危くて乗れない」、「タービンのつけ方もわからない者と一緒に行くのは不
安だ」などと口々に野次つて、右代務者三名の業務を妨害した。
三一 同五六枚目表一三行目の「申請人P3」から同裏八行目の「参加していた。」
までを、次のとおりに訂正する。
 申請人P3は、地本の闘争指令により、岩見沢支部執行委員長として、昭和四〇年
一二月八日受験拒否指令を発し、再三職場集会等を開催し、支部組合員の入園闘争
を指導してきていたが、地本から役職停止を内容とする統制処分をうけ、昭和四一
年二月一六日開催された支部執行委員会において執行委員長を辞任した。しかし、
当局側に対してはもとより、支部組合員らに対してさえ、右辞任を知らせることな
く、同月一七日、副委員長P5および書記長申請人P4とともに、組合を代表して、
岩見沢機関区長P7に対し、「地本指令によつて翌一八日正午から無期限順法闘争に
入る」旨通告し、具体的に、次のように積極的、指導的な行為を実行した。すなわ
ち、前記1の(三)の集会に参加し、そのうち、二月二六日ないし二八日の各集会
において、当局が休暇請求に診断書を要求したことおよび当局の試験方法等につい
て非難し、団結して本件闘争をなすよう参加組合員に要請する趣旨の演説をした
(集会において演説したものは、P3のほか、二六日はP5副委員長、地本委員長P
33、二七日は申請人P4、二八日はP5副委員長、動力車労組中央委員P16であり、
いずれも指導的立場にある者で、一般組合員は演説をしてはおらず、この点と申請
人P3の演説内容からしても、申請人P3の指導的役割が推認できる)。右三月六日
の講習室における集会に際しては、他の組合員ととも施錠してあつた同室の戸を外
して組合員を入室させた。右二月一九日のP29助役の吊し上げに参加し、なおこの
吊し上げの事態を収拾するため、当局側の要請により、ひき続いて区長室で行われ
た、休暇請求の取扱い等に関する交渉において、P5副委員長、申請人P4らととも
に、組合側の交渉者として参加した。また前記1の(五)の代務乗務員P31に対す
る業務妨害に直接参加し、制止に入つた区長らに対し、自ら、「事故が起きたら責
任をもつか」、「機関士は機関助士を変えてもらわないと不安で行けぬ、といつて
いる、発電機器もわからないようではどうにもならぬ」などといつて、P31の代務
乗車について抗議した。また有給休暇請求者に同行して右請求が拒否されると担当
助役に抗議し、再三助役室に入つて診断書を要求することは不当であると非難し、
さらには当局の勤務変更について抗議することもあつた(なお、二月二四日午前一
一時すぎ頃P34助役に対しこの抗議を行つていた際、傍でこれを現認していた札鉄
管理局人事課員P35に対し、「あなたはそちらに離れていなさい。私はこの支部の
責任者だし、大声を出させないで欲しい」と、自ら指導的立場を表明しているので
ある)。さらに、二月一八日から三月三日まで公休を除き自らも有給休暇を請求
し、そのうち二月二一日から三月二日までの間「急性喉頭気管支炎、安静加療を要
する」旨の診断書を提出して休暇を得ながら、右のように本件闘争に参加したので
ある。
 要するに、執行委員長を辞任したというものの、当局に対しては勿論、一般組合
員にこれを知らしめていないのであるから、依然一般組合員に対して執行委員長と
しての指導力を及ぼしていたわけであり、この事実と右のような積極的指導的行為
からすれば、事実上執行委員長としての役割を遂行したものということができる。
しかも、本件闘争は、従前からの入園闘争の一環であり、申請人P3は委員長として
積極的に活動してきたもので、その経緯に詳しく、特別の経験を有するわけであ
り、この事実と右のような積極的行為からみれば、本件闘争全般に関する執行委員
会の企画、決定についても、これに参加し、重要な影響を与えたものと推認され
る。
三二 同五八枚目裏八行目の「差支えない。」の次に、「(なお、申請人らは、平
常時の入換速度自体が危険を伴うものである趣旨を主張するけれども、当審証人P
5の証言によつても、未だこれを疎明するにたりない)」を加入する。
三三 同五九枚目裏六行目の「証人」を、「前掲証人」に訂正する。
三四 同六〇枚目裏五行目と同六行目の間に、次のとおり加入する。
 なお、申請人らは、休暇請求は列車業務を阻害する目的ではないし、また列車運
休との間に因果関係はないとの趣旨を主張する。しかしながら、右説示のように、
担当助役が列車運行上の支障を理由に、休暇請求を拒否し、或いは診断書の提出を
要求して不当な請求を制限するにかかわらず、したがつて列車運行上支障の生ずる
ことを容認して、争議行為の一手段として休暇請求をなし、その結果当局側にやむ
なく休暇を承認せしめて(自己の職場における争議行為のために有給休暇請求をな
すことは、権利の濫用であつて、当局側がこれを拒否し、或いは制限できること
は、次に説示するとおりである)、札鉄管理局や他の機関区からの代務者の助勤が
あつた(前掲乙第四七号証の一および二)にもかかわらず、列車の運休を生じたの
であるから、本件休暇請求は、列車乗務に支障を生ぜしめることを目的とするもの
と解することができ、かつ列車運休との間に因果関係の存することは当然といわな
ければならない。また予備要員の不足から生じた結果(列車運休)については当局
側が責を負うべき旨主張するけれども、本件のような異常事態までを予定して予備
員を整備する必要のないことは多言を要しないところであつて、右主張もとうてい
採用できない。
三五 同六一枚目表一一行目の「である。」の次に、次のとおり加入する。
 なお、申請人らは、右入換速度規制と休暇請求は公労法一七条により禁止された
争議行為には該当しない趣旨を主張する。しかしながら、前説示のように国鉄業務
の貨物列車の運行は、国民生活に重大かつ密接な関連を有し、その業務の停廃は国
民生活全体の利益を害するおそれの強いものであるから、その運行業務を直接担当
する者の職務は極めて公共性が大である。しかるに、右職務に従事するものが、直
接その業務に支障を来たすような争議方法により、七日間にわたり一〇両ないし一
一九両の未仕訳車等とか、三日間にわたり二両ないし六両の運休列車を発生せしめ
るにいたつた(なお、これにより、その後の列車の運転計画等に影響を生じている
ことは当然推測できる)のであるから、かかる争議行為は、その態様、結果などか
らみて、同条によつて禁止された、国民生活に対し重大な影響を及ぼすおそれのあ
る行為と判断するのが相当である。なお、当審証人P5は、岩見沢機関区操車場で
は、一日に取り扱う貨車は平均五、四二〇両であり、平常でも一日に三〇両ないし
四〇両の未仕訳車が発生したことがあるとか、貨車の仕訳けに要する時間は約三〇
両について二〇分ないし二五分位にすぎない旨証言するが、たとえ右証言どおりで
あるとしても、これをもつて、未だ右判断を左右するにたりない。成立に争いない
甲第一二号証(貨物営業規則)も通常の場合の貨物取扱期間を定めるものであり、
本件のような争議行為の場合についての判断資料とはなし難い。したがつて、申請
人らの右主張は採用できない。
三六 同六一枚目裏一一行目冒頭以下を削り、次のとおり加える。
1、前説示一、1の(一)の、勤務中に鉢巻、腕章等の着用を指導した行為は、職
員服務規程(成立に争いがない乙第二三号証の三)九条「服制の定めのある職員
は、定められた服装を整えて作業しなければならない」および安全の確保に関する
規程(前掲乙第八四号証)一四条「従業員は定められた服装を整えて作業しなけれ
ばならない」の各規定に違反し、懲戒事由を定めた前記就業規則六六条一号「日本
国有鉄道に関する法令、令達に違反したとき」に該当する。
 同(二)の、入換速度規制によつて未仕訳車等を生ぜしめたこと、入換速度規制
のためになされた同(六)の組合員の機関車への無断乗込みと交代、同(四)の
(イ)の休暇請求の際に運転助役室における助役らの執務を妨げたこと、同(ロ)
の休暇請求によつて貨車運休を生ぜしめたことを、それぞれ指導した行為は、いず
れも懲戒事由を定めた右就業規則六六条一七号の「著しく不都合な行為」に該当す
る。
 同(三)の乗務員詰所内外および講習室における無許可集会、三月六日の講習室
における集会の際の施錠した戸の取り外し(但し、この点は申請人P3についてのみ
該当する)、同(七)の無許可掲示行為を、それぞれ指導した行為は、いずれも被
申請人の施設管理権を侵害するものであつて、右の「著しく不都合な行為」に該当
する(なお、右(三)の集会の際に隣接の助役室における助役らの執務を妨げてい
ることは、右施設管理権侵害の違法性を強めるものである)。
 同(三)の執務中のP29助役に対する抗議行為、同(五)の代務乗務員に対する
業務妨害を、それぞれ指導した行為も、右「著しく不都合な行為」に該当する(な
お、右P29助役に対する抗議は、運転助役室に詰掛けてなされたもので、そのため
に他の助役らの執務まで妨げていることは、その態様において極めて悪質なもので
ある)。
 したがつて、申請人らは、いずれも右の各指導責任により、国鉄法第三一条、就
業規則六六条一七号により懲戒を受けざるを得ないものである。
2、ところで、申請人らは、闘争中鉢巻、腕章等を着用することは正当な組合活動
であり、集会、掲示等については、平常当局において業務に支障のないかぎり自由
にその施設の利用を認めてきたのが慣行であるから、右の点はいずれも懲戒事由と
はならない旨主張する。
 しかしながら、前説示のように、組合の本件闘争の中心は入換速度規制と有給休
暇請求であつて、本件においては、これを公労法第一七条に違反する違法な争議行
為とみるべきところ、右勤務中における鉢巻等の着用、集会、掲示等は、いずれも
右違法争議を強力に推進せしめるためのものといえるから、かかる行為は、もはや
正当な組合活動とは認められないところであるし、また本件全資料によつても、当
局が、本件乗務員詰所や講習室を許可なしに自由に使用させてきたものとは疎明で
きないから、右主張は採用できない。また、申請人らは、乗務員が機関車乗務中に
許可なく、一時交替し、或いはこれに乗り込むことは慣行上容認されている旨主張
するけれども、これを疎明すべき資料が存在しないばかりでなく、右行為は、前説
示のように入換速度を規制するための行為であるから、その違法であることはいう
までもないところであつて、右主張もまた理由がない。
3、しかして、まず、その有する職務の公共性の故に法律上禁止された争議行為を
敢えて遂行し、国民生活上の利益を侵害した責任は特に重大であるうえ、かかる違
法行為を遂行するために、又はこれに関連して、服務規程に違背し、かつ再三にわ
たつて、施設管理権を侵害し、しかも、積極的に不当な圧力によつて当局側の業務
を妨害したのである。総じて本件闘争は、程度、態様等極めて違法性の強いものと
いわなければならない。
 申請人P4は、書記長として、これが企画、決定に参加したのは勿論、自ら率先そ
の実行を指導したのであつて、懲戒免職に付されるのもやむを得ないところと考え
られる。また申請人P3は一応執行委員長を辞任したというものの、実際上は本件闘
争の企画、決定に重要な影響を及ぼしたものと推認されるうえ、その実行にあたつ
ても、事実上委員長として指導的役割を果したとみられるから、その指導責任にお
いて、申請人P4との間にはなんら差異はなく、懲戒免職をもつて重きにすぎるとは
いい難い。
 ところで、本件闘争は、入園問題に関する当局側の慣行違反を直接の動機として
いるわけであるが、組合側要求の入園方法が必ずしも合理性を有するものとはいえ
ないわけであるから、本件闘争に至る経緯を考慮しても、とうてい右判断を左右す
るわけにはいかない。
 また、申請人P4は、同申請人の行動はすべて支部執行委員会の決議とP5委員長
代行の指示に従つたものであり、本件闘争の最高の指導責任はP5委員長代行が負う
べきであり、懲戒免職は処分の相当性を逸脱する旨主張し、当審証人P5の証言によ
れば、P5は本件闘争により停職六月の懲戒にとどまつたことが疎明できる。しかし
ながら同申請人は執行委員会の企画、決定に参画し、前説示のように積極的に本件
闘争を指導したことからすれば、P5の処分の相当性の如何にかかわらず、右懲戒免
職が不当であるとはいえない。したがつて、右主張は理由がない。
4、なお申請人らは本件免職が不当労働行為である旨主張するが、既に述べたこと
から明らかなように、本件闘争における申請人らの行為は正当な組合活動と認める
ことはできないから、本件懲戒免職は不当労働行為ではない。他に、被申請人が申
請人らを組合活動の故に嫌悪して本件処分をなしたと認めるべき資料はない。した
がつて、右主張も理由がない。
三七 してみると、被申請人が申請人ら四名に対し、国鉄法第三一条、就業規則六
六条一七号に基づいてなした懲戒免職は有効であるから、同申請人らは、いずれも
これにより雇傭契約上の地位を喪失したものといわなければならない。
 したがつて、本件仮処分申請は、いずれも被保全権利の存在を欠き、その必要性
の有無を検討するまでもなく、理由のないものであり、本件事案、疎明関係のもと
では、保証をもつて疎明に代えることも相当ではない。
 そこで、原判決中、申請人P4に関する部分は相当であるから、同申請人の控訴は
棄却を免れず、申請人P1、P2、P3に関する部分は不当であるから、これを取り消
し、その各申請を棄却すべきである。
 よつて、訴訟費用につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条に従い、主文
のとおり判決する。
(裁判官 渡辺一雄 小川昭二郎 山之内一夫)

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