弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決のうち上告人X1及び同X2に関する部分を破
棄し,同部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し
戻す。
2その余の上告人らの上告を棄却する。
3前項に関する上告費用は,前項記載の上告人らの負
担とする。
理由
上告代理人宮國英男ほかの上告受理申立て理由第4の2及び同3について
1原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)沖縄県のA村(現在のA町及びB村)A部落(現在のA区)の住民らは,
古来,「杣山」と呼称される林野(以下「本件入会地」という。)に入って薪を採取
したり,材木を伐採するなどしていた。
本件入会地は,明治32年公布の沖縄県土地整理法によりいったん官有地とされ
たが,明治39年,当時のA部落の住民(以下「A部落民」という。)らに対し,
30年間の年賦償還で払い下げられた(以下,この払下げを「本件払下げ」とい
う。)。本件払下げに係る代金は,A部落の村頭(区長)が,昭和8年まで正規のA
部落民である各戸主から賦課徴収して支払った。その後,本件入会地の一部は昭和
12年ころにA村の公有財産(昭和57年以降はA町の公有財産)に編入され,残
りの土地は部落代表者の個人名で登記された(以下,本件入会地のうち公有財産と
された部分を「公有地部分」といい,部落代表者の個人名で登記された部分を「部
落有地」という。)。
(2)入会集団であるA部落(以下,「A部落」とは入会集団としてのA部落をい
い,「A部落民」とは入会集団としてのA部落の構成員をいう。)は,本件払下げ後,
A部落の旧来の慣習及び規則に基づいて本件入会地の管理を行い,昭和12年ころ
以降,公有地部分については,A村と締結した協定等に基づいて管理を行ってきた。
そして,明治40年から昭和20年までの間にA部落の地区外から地区内に移住
してきた者については,各戸につき木草賃として毎年50銭をA区事務所に納入す
ることにより本件入会地の木草の採取が認められ,また,各戸につき20円を納付
するなどすればA部落民の資格を取得することができた。
(3)昭和31年9月16日,本件入会地の入会権者から成る団体としてA共有
権者会(昭和61年に名称をA入会権者会に変更)が設立され,以後,本件入会地
のうち部落有地については,同団体の名で管理が行われてきた。また,公有地部分
については,昭和57年7月12日,「旧慣によるA町公有財産の管理等に関する
条例」(昭和57年A町条例第1号)の制定に対応してA部落民会(被上告人の前
身。以下「A部落民会」という。)が設立され,同条例に規制される形で,A部落
民会の名で管理が行われてきた。しかし,部落有地を管理するA入会権者会と公有
地部分を管理するA部落民会とは実態が同一であったことから,平成12年5月1
9日,両会が合併して被上告人が設立された。
(4)本件入会地の入会権の得喪についてのA部落における慣習(以下「本件慣
習」という。)は,次のようなものであり,被上告人は,本件慣習に従って入会権
者とされる者を会員としている。なお,A共有権者会,A入会権者会及び被上告人
の会則は,おおむね本件慣習に基づいて定められていたが,A部落民会の会則は,
本件慣習とは異なり,会員資格を男子孫に限定していなかった。
ア本件払下げを受けた当時,A部落民として世帯を構成していた一家の代表者
は,いずれも本件入会地につき入会権を有する。
イ明治40年から昭和20年3月までの間にA部落の地区外から地区内に移住
してきた一家の代表者であって,一定の金員を納めるなどしてA部落民の資格を認
められた者も,本件入会地につき入会権を有する。
ウ入会権者たる資格は,一家(1世帯)につき代表者1名のみに認められる。
そして,一家の代表者として認められるためには,単に住民票に世帯主として記載
されているだけでは足りず,現実にも独立した世帯を構えて生計を維持しているこ
とを要する。
エ入会権者の死亡や家督相続によって一家の代表者が交替した場合には,新た
な代表者が後継者として入会権者の資格を承継する。入会権者の資格を承継する代
表者は,原則として男子孫に限られるが,男子孫の後継者がいない場合や幼少の場
合には,例外的に旧代表者の妻が資格を取得することもあり(ただし,幼少の男子
孫が成長して入会権者の資格を取得すれば,妻は資格を失う。),また,旧代表者が
死亡し男子孫がない場合には,女子孫が入会権者の資格を承継することも認められ
るが,入会権者として認められるのは当該女子孫1代限りである。
オ男子孫が分家し,A区内に独立の世帯を構えるに至った場合は,その世帯主
からの届出により,入会権者の資格を取得する。独身の女子孫については,50歳
を超えて独立した生計を営み,A区内に居住しているなど一定の要件を満たす場合
に限り,特例として,1代限りで入会権者の資格を認められる。なお,A部落民以
外の男性と婚姻した女子孫は,離婚して旧姓に復しない限り,配偶者が死亡するな
どしてA区内で独立の世帯を構えるに至ったとしても,入会権者の資格を取得する
ことはできない。
(5)被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体の中には,近
年会則を変更するなどして,世帯主である限り,男子孫と女子孫とで差異を設けな
い取扱いをするようになった団体もある。
(6)被上告人においては,本件慣習に基づいた会則(Y会則)を有しており,
新たに入会する者については,届出又は申出に基づき役員会の議を経ることを要す
ることとし,入会資格の審査が行われてきた。そして,入会の申請者には戸籍謄本,
住民票等の提出を義務づけ,これに基づいて審査を行うが,単に書類上世帯主とし
て記載されているだけでは足りず,現実にも独立して生計を営んでいることが必要
とされるため,審査に当たっては必要に応じて生活実態の調査等も行われてきた。
(7)上告人ら(なお,上告人X3は,当審係属中の平成16年11月28日死亡
し,その夫と子3名がその地位を承継した。以下においては,亡X3を含めて「上
告人ら」ということがある。)は,いずれも,本件払下げ当時のA部落民であって
本件入会地について入会権を有していた者の女子孫であり,遅くとも平成4年以降
現在に至るまでA区内に住所を有し居住している。上告人X1及び同X2(以下
「上告人X1ら」という。)は,いずれも,A部落民以外の男性と婚姻したが,そ
の後夫が死亡したことにより,現在は戸籍筆頭者として記載され,世帯主として独
立の生計を構えるに至っている。上告人X4らその余の上告人(以下「上告人X4
ら」という。)は,いずれも,戸籍筆頭者ではない。
(8)本件入会地は,第2次世界大戦後,国が賃借した上でアメリカ合衆国の軍
隊(以下「駐留軍」という。)の用に供するために使用され,その賃料は,被上告
人により収受・管理され,その一部が入会権者である被上告人の構成員らに対し,
補償金として分配されている。
2本件は,上告人らが,被上告人に対し,本件慣習(本件慣習に基づいて定め
られた被上告人の会則を含む。以下同じ。)のうち入会権者の資格を世帯主及び男
子孫に限り,A部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り
資格を認めないとする部分が公序良俗に反して無効であるなどと主張して,上告人
ら(ただし,上告人亡X3関係を除く。)が被上告人の正会員であることの確認を求
めるとともに,平成4年度から平成14年度までの補償金として各306万円の支
払(ただし,上告人亡X3訴訟承継人X5については153万円の,同X6,同X7
及び同X8については各51万円の,上告人X9については,平成13年度及び平
成14年度の補償金として120万円の各支払)を求めるものである。
3原審は,前記事実関係の下で,次のとおり判断し,上告人らの請求をいずれ
も棄却した。
(1)被上告人は,本件入会地の入会権者らを構成員とする入会団体であるから,
上告人らが被上告人の構成員の地位を有するというためには,上告人らが本件入会
地の入会権を取得したことが認められる必要がある。そして,入会権については各
地方の慣習に従うとされているから,上告人らが入会団体である被上告人の構成員
の地位を有するというためには,上告人らが当該地方(A部落)の慣習,すなわち
本件慣習に基づいて本件入会地の入会権者の資格を取得したことが認められなけれ
ばならない。なお,本件入会地は,第2次世界大戦後は駐留軍の用に供するために
使用されていて,現在は個々の入会権者が直接入会地に立ち入ってその産物を収得
するといった形態での利用が行われているわけではないけれども,入会権に基づく
入会地の利用形態には様々なものがあり,入会団体が第三者との間で入会地につい
て賃貸借契約等を締結してその対価を徴収したとしても,その収入は入会権者の総
有に帰属するのであって,入会権が消滅するわけでも,入会権の内容や入会団体と
しての性質が変容するものでもない。
(2)本件慣習のうち,本件入会地の入会権者の資格要件を一家の代表者として
の世帯主に限定する部分(以下,この資格要件を「世帯主要件」という。)は,入
会権の本質に合致するものであって,公序良俗に反して無効とはいえない。
上告人X4らは,家の代表者としての世帯主であることの主張立証がなく,本件
入会地の入会権を取得したものとはいえない。
(3)本件慣習のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限り,A部落民以
外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めな
いとする部分(以下,この資格要件を「男子孫要件」という。)も,それなりの合
理性があり,公序良俗に反して無効とはいえない。もっとも,男子孫と女子孫とで
取扱いに差異を設ける必要性ないし合理性は特に見当たらないし,被上告人と同様
に杣山について入会権を有する他の入会団体の中には,近年会則を変更するなどし
て,世帯主である限り,男子孫と女子孫とで差異を設けない取扱いをするようにな
った団体もあることが認められる。しかし,入会権は,過去の長年月にわたって形
成された地方の慣習に根ざした権利であるから,そのような慣習がその内容を徐々
に変化させつつもなお存続しているときは,これを最大限尊重すべきであって,そ
の慣習に必要性ないし合理性が見当たらないということから直ちに公序良俗に反し
て無効ということはできない。そして,入会権が家の代表ないし世帯主としての部
落民に帰属する権利であって,当該入会権者からその後継者に承継されてきたとい
う歴史的沿革を有すること,歴史的社会的にみて,家の代表ないし跡取りと目され
てきたのは多くの場合男子,特に長男であって,現代においても,長男が生存して
いる場合に二男以下又は女子が後継者となったり,婚姻等により独立の世帯を構え
た場合に女子が家の代表ないし世帯主となるのは比較的まれな事態であることは公
知の事実といえること,被上告人以外の入会団体の中にも会員資格を原則として男
子孫に限定する取扱いをしているところが少なからず存在することなどに照らせば,
家の代表ないし世帯主として入会権者の資格要件を定めるに際し男子と女子とで同
一の取扱いをすべきことが現代社会における公序を形成しているとまでは認められ
ない。これに加え,男子と女子とで入会権者の資格が認められる要件に差異がある
ことにより1世帯の内部において男子と女子の間で生じ得る不平等については,相
続の際の遺産分割協議その他の場面で財産的調整を図ることも可能であることをも
併せ考慮すれば,本件慣習のうち男子孫要件が公序良俗に違反するとまで認めるこ
とはできない。
そうすると,上告人X1らは,A部落民以外の男性と婚姻した後に配偶者の死亡
により世帯主として独立の生計を構えるに至ったものであるから,本件入会地の入
会権を取得したとはいえない。
4しかしながら,原審の上記(1),(2)の判断は是認することができるが,(3)
の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)前記事実関係によれば,被上告人は,本件入会地の入会権者で組織され,
本件入会地の管理・処分を行うこと等を目的とする入会団体(権利能力なき社団)
であると認められる。また,本件入会地は,戦後,国が賃借した上で駐留軍の用に
供するために使用されているが,その賃料は,入会団体である被上告人により管理
されているというのであるから,本件入会地について,いまだ入会権が消滅したも
のともその性質を変容したものともいうことはできない。そうすると,上告人らは,
被上告人の会員の地位を有するというためには,本件入会地について入会権者の地
位を有すること,すなわち,本件慣習に基づいて本件入会地についての入会権者の
地位を取得したことを主張立証しなければならないというべきである(最高裁昭和
35年(オ)第1244号同37年11月2日第二小法廷判決・裁判集民事63号
23頁参照)。
そして,本件慣習によれば,上告人らが被上告人の会員の地位を取得したという
ためには,原則として,①上告人らが本件払下げ当時のA部落民又は明治40年か
ら昭和20年までの間に一定の要件を満たしてA部落民と認められた者の男子孫で
あり,現在A区内に住所を有し居住していること,②上告人らがA区内に住所を有
する一家の世帯主(代表者)であり,被上告人に対する届出等によってその役員会
の議を経て入会したことという要件を満たす必要があるということになる。
(2)ところで,入会権は,一般に,一定の地域の住民が一定の山林原野等にお
いて共同して雑草,まぐさ,薪炭用雑木等の採取をする慣習上の権利であり(民法
263条,294条),この権利は,権利者である入会部落の構成員全員の総有に
属し,個々の構成員は,共有におけるような持分権を有するものではなく(最高裁
昭和34年(オ)第650号同41年11月25日第二小法廷判決・民集20巻9
号1921頁,最高裁平成3年(オ)第1724号同6年5月31日第三小法廷判
決・民集48巻4号1065頁参照),入会権そのものの管理処分については入会
部落の一員として参与し得る資格を有するのみである(最高裁昭和51年(オ)第
424号同57年7月1日第一小法廷判決・民集36巻6号891頁参照)。他方,
入会権の内容である使用収益を行う権能は,入会部落内で定められた規律に従わな
ければならないという拘束を受けるものの,構成員各自が単独で行使することがで
きる(前掲第一小法廷判決参照)。このような入会権の内容,性質等や,原審も説
示するとおり,本件入会地の入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属
する権利として当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を
有するものであることなどにかんがみると,各世帯の構成員の人数にかかわらず各
世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認めるという慣習は,入会団体の団体として
の統制の維持という点からも,入会権行使における各世帯間の平等という点からも,
不合理ということはできず,現在においても,本件慣習のうち,世帯主要件を公序
良俗に反するものということはできない。
しかしながら,本件慣習のうち,男子孫要件は,専ら女子であることのみを理由
として女子を男子と差別したものというべきであり,遅くとも本件で補償金の請求
がされている平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法9
0条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は,次のとおりで
ある。
男子孫要件は,世帯主要件とは異なり,入会団体の団体としての統制の維持とい
う点からも,入会権の行使における各世帯間の平等という点からも,何ら合理性を
有しない。このことは,A部落民会の会則においては,会員資格は男子孫に限定さ
れていなかったことや,被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団
体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。被
上告人においては,上記1(4)エ,オのとおり,女子の入会権者の資格について一
定の配慮をしているが,これによって男子孫要件による女子孫に対する差別が合理
性を有するものになったということはできない。そして,男女の本質的平等を定め
る日本国憲法の基本的理念に照らし,入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見
いだすことはできないから,原審が上記3(3)において説示する本件入会地の入会
権の歴史的沿革等の事情を考慮しても,男子孫要件による女子孫に対する差別を正
当化することはできない。
(3)上告人X4らについては,前記のとおり世帯主要件は有効と解すべきであ
り,家の代表者としての世帯主であることの主張立証がないというのであるから,
本件入会地の入会権者の資格を取得したものとは認められず,上告人X4らが被上
告人の会員であることを否定した原判決は,正当として是認することができる。こ
の点についての論旨は,採用することができない。
他方,上告人X1らは,A部落民以外の男性と婚姻した後に配偶者の死亡により
世帯主として独立の生計を構えるに至ったものであるというのであるから,現時点
においては,世帯主要件を満たしていることが明らかである。もっとも,上告人X1
らが,被上告人の会則に従った入会の手続を執ったことについては,その主張立証
がないけれども,男子孫要件を有する本件慣習が存在し,被上告人がその有効性を
主張している状況の下では,女子孫が入会の手続を執ってもそれが認められること
は期待できないから,被上告人が,上告人X1らについて,入会の手続を執ってい
ないことを理由にその会員の地位を否定することは信義則上許されないというべき
である。したがって,男子孫要件を有効と解して上告人X1らが被上告人の会員で
あることを否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。この点をいう論旨は,理由があり,原判決のうち上告人X1らに関する
部分は破棄を免れない。そして,以上の見解の下に上告人X1らの請求の当否につ
いて更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すのが相当
である。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官滝井繁
男,同古田佑紀の各補足意見がある。
裁判官滝井繁男の補足意見は,次のとおりである。
地域社会における人々の生活関係の中で形成された慣習であっても,今日の市民
社会において合理性を持たないものに規範性を認めることはできず,そのことはそ
の内容が地方の慣習により定まるものとされている入会権においても例外ではない。
したがって,本件慣習の一部を公序良俗に反するものとした法廷意見に賛成するも
のであるが,本件事件においてその意味するところにつき若干の意見を補足して述
べておきたい。
入会団体を構成する基本単位は当該地域集団における家ないし世帯であって,そ
の権利義務は家ないし世帯に属し,地域に居住することのみから権利の主体となり
得るものではない。そして,その権利は原則として家ないし世帯の代表者から代表
者へと承継されていくものであって個人的相続原理に服さないが,そのことは入会
権という権利の性質に照らして合理性を失っているものということはできない。
入会権者は地域を退出したとき,その資格を失うが,その家ないし世帯が残って
いる限り,その中で代表者を自由に選ぶことができるのであって,世帯の代表者に
女性を選んでも,そのことのみを理由として構成員として資格を失うものではなく,
そのような内容の慣習があるとすればそれは良俗に反し,その効力を持ち得ないも
のである。
しかしながら,入会団体が形成されたときからの構成員に加えてどのような者に
新規の権利者としての資格を認めるかについての慣習は,性によって差別するなど
今日の普遍的な平等原理に反するものでない限り,その合理性を失うものではない。
原判決によれば,本件入会権の資格取得に関する慣習によれば,男子孫が分家し,
A地区内に独立の世帯を構えるに至った場合は,その世帯主からの届出によって入
会権者の資格を認められるとされているというのである。しかしながら,分家は,
家族制度の下で,家族が戸主の同意を得てその家から分離しその家と同じ氏を創立
する行為とされており,家の制度と不可分に結びついたものであった。
家制度が認められなくなった今日,本件入会地において,男子孫がどのような条
件の下で独立の世帯を構えたものとして新規にその構成員として承認されることに
なっているのか,原判決の認定からは必ずしも明らかではない。
従来,入会団体の構成員としての資格は,入会権者が共同財産を維持するために
必要とする無償の負担に応じることが要請されることから,そのこととの関連にお
いて決定されることが多かったと思われるが,本件入会地にみられるように権利者
が入会地自体の共同利用に代えて入会地を第三者に使用させてその対価を分配する
という収益形態をとるようになった場合においては,入会団体の構成員としての資
格を画する上で重要な意味を持つ入会権者の負担が事実上消滅しているのである。
本件において,このような入会地の利用形態の変化と家制度の消滅という状況の
変化の中で,本件入会地において男子孫の間で行われてきた入会団体構成員として
の新規加入がどのような条件の下で認められているのかがまず明らかにされ,その
上で本件入会地における女子孫についても同じ条件での加入が認められるべきもの
である。
したがって,上告人X1らはいったん他部落の男性と結婚した後に配偶者が死亡
したことに伴い独立の生計を構えることになったというのであるが,いったん部落
を出た後帰村して独立して生計を立てるに至ったとすれば,そのような男子孫がど
のように扱われているのかが検討された上で,上告人X1らが女性であることのみ
によって差別されたのかどうか,その時期はいつかが明らかにされなければならな
いものと考えるのである。
裁判官古田佑紀の補足意見は,次のとおりである。
私は,本件における入会権者の資格に関し,独立の生計を営むに至った男子孫で
あっても直ちに入会権が認められているわけではないことにかんがみ,前記1(4)
オの「分家」の意義等男子孫について入会権が認められる条件を更に明らかにして
検討する必要があるという趣旨において,滝井裁判官の補足意見に同調する。
(裁判長裁判官津野修裁判官滝井繁男裁判官今井功裁判官
中川了滋裁判官古田佑紀)

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