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平成18年(ワ)第178号交通事故による損害賠償請求事件
主文
1被告は,原告に対し,金409万6915円及び内金372万6915円に
対する平成14年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを10分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負
担とする。
4この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,金1389万2011円及び内金1289万2011
円に対する平成14年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,自転車を運転中に被告の運転する大型貨物自動車(山梨100か○
○○○,以下「被告車両」という。)に衝突されて負傷した原告が,自動車損害賠
償保障法(以下「自賠法」という。)3条による損害賠償請求権に基づき,前記事
故によって原告の被った損害の賠償を求めている事案である(附帯請求は,弁護士
費用を除く損害に対する前記事故の日の翌日から民法所定年5分の割合による遅延
損害金請求である。)。
2前提となる事実
(1)当事者等
ア原告は,昭和61年○月○○日生まれの女性である。
イ被告は,平成14年5月9日当時,自己のために被告車両を運行の用に
供していた。
(争いがない。)
(2)本件事故の発生
原告は,平成14年5月9日午前9時25分ころ,自転車を運転して甲府市
上町1119番地先道路を走行していた際,被告の運転していた被告車両と衝突し
て負傷した(以下,この交通事故を「本件事故」という。)。
(争いがない。)
(3)原告の入通院状況
原告は,上記受傷以降,その治療のため,次のとおり市立甲府病院に入通院
した。
ア整形外科
(ア)診断名
右脛骨骨幹部骨折(開放性),右腸骨翼骨折,右大腿部打撲及び右上腕
部打撲
(イ)入院
a平成14年5月9日から同年6月1日まで(24日間)
b平成15年3月27日から同年4月1日まで(6日間)
(ウ)通院
a平成14年6月14日から同年10月18日まで(通院日数3日)
b平成15年1月22日から同年4月11日まで(通院日数4日)
イ形成外科
(ア)診断名
右大腿皮膚壊死
(イ)入院
平成14年6月26日から同年7月14日まで(19日間)
(ウ)通院
a平成14年6月3日から同年9月27日まで(通院日数8日)
b平成14年11月15日から同年12月20日まで(通院日数2日)
c平成15年4月4日から平成16年7月14日まで(通院日数7日)
(甲2ないし5,弁論の全趣旨)
(4)症状固定
原告は,本件事故によって負った傷害について,次のとおり症状固定の診断
を受けた(以下,この後遺障害を「本件後遺障害」と総称する。)。
ア右脛骨骨幹部骨折平成15年4月11日
イ右大腿部瘢痕及び瘢痕拘縮平成16年7月14日
(甲3,5,弁論の全趣旨)
(5)後遺障害等級の認定
原告は,平成16年12月28日,次のとおり後遺障害等級の認定を受けた。
ア右大腿部の瘢痕12級00号
イ右脛骨骨折部の神経症状14級10号
ウ併合12級
(争いがない。)
(6)損害の填補
原告は,現在までに,本件事故によって被った損害の填補として,次のとお
り,合計415万0484円の支払を受けた。
ア自賠責保険から224万円
イ日本興亜損害保険株式会社から191万0484円
(アにつき争いがなく,イにつき弁論の全趣旨)
3争点
(1)本件事故によって原告の被った損害の内容及び額
ア原告の主張
原告は,本件事故によって,次のとおりの損害を被った。
①治療費70万1918円
②看護費18万4888円
③通院費29万7473円
④診断書代,母の看護費用等6万3285円
⑤休業損害55万1410円
⑥入院雑費7万3500円(=49日×1500円)
⑦入通院慰謝料150万円
⑧逸失利益575万9537円
(ア)全女性平均年間賃金330万1200円
(イ)20年間のライプニッツ係数12.462
(ウ)労働能力喪失率0.14(後遺障害別等級表12級)
3,301,200×12.462×0.14=5,759,537.616
⑨後遺障害慰謝料600万円
原告は,若い女性で大腿部に著しい醜状を残しており,その重大な精神
的苦痛を慰謝するには,600万円の支払をもってするのが相当である。
⑩弁護士費用100万円
イ被告の主張
(ア)上記ア①ないし⑤の事実は認める。
(イ)上記ア⑥の事実のうち,入院日数は認めるが,1日当たりの入院雑費
の額は争う。
(ウ)上記ア⑦の事実は否認する。入通院慰謝料は120万円が相当である。
(エ)上記ア⑧の事実は否認する。原告の後遺障害のうち,右大腿部の瘢痕
については労働能力の喪失は認められないというべきである。また,右脛骨骨折部
の神経症状についても,労働能力喪失率は5%,喪失期間は3年と解するのが相当
である。
(オ)上記ア⑨の事実は否認する。原告の後遺障害慰謝料は290万円が相
当である。
(カ)上記ア⑩の事実は否認する。
(2)過失相殺の可否
ア被告の主張
自転車を運転していた原告は,道路を横断するに際して,例え青信号に従
った横断であっても,左右の安全を確認すべき義務があり,本件事故の発生につい
ては,右方の確認を全くしないで横断を開始した原告にも一定の過失(落ち度)が
あるというべきであって,原告に生じた損害の1割を過失相殺すべきである。
イ原告の主張
上記アの主張は争う。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件事故によって原告の被った損害の内容及び額)について
(1)争点(1)ア①ないし⑤の各損害について
争点(1)ア①ないし⑤の事実,すなわち,原告が本件事故によって次のとお
りの損害を被った事実は,当事者間に争いがない。
①治療費70万1918円
②看護費18万4888円
③通院費29万7473円
④診断書代,母の看護費用等6万3285円
⑤休業損害55万1410円
(2)入院雑費(⑥)について
原告が本件事故によって負った傷害の治療のために合計49日間入院したこ
とは当事者間に争いがないところ,1日当たりの入院雑費は1500円とするのが
相当であるから,原告は,本件事故によって,入院雑費として,7万3500円
(=49日×1500円)の損害を被ったと認めることができる。
(3)入通院慰謝料(⑦)について
上記前提となる事実(3)の原告の入通院状況等にかんがみると,原告が本件
事故によって負傷し,入通院せざるを得なくなったことに対する精神的苦痛は,少
なくとも150万円の支払をもって慰謝するのが相当である。
(4)逸失利益(⑧)について
ア原告の後遺障害のうち,右大腿部の瘢痕については,大腿部というその
部位,甲12号証(写真)から認められる現在の状態,原告の職業,年齢などにか
んがみると,原告の労働能力を喪失させるとは認め難い(この点は,後遺障害慰謝
料の算定において考慮すべきである。)。
イ次に,右脛骨骨折部の神経症状について検討するに,証拠(甲10,1
3,証人C,原告本人)によると,①原告は,本件事故の後,リハビリ等に務め
て,平成16年3月,A高校を無事卒業し,同校の推薦を受けて,同年4月,第一
志望であったB医院に就職したこと,②原告は,現在も,本件事故による骨折が
原因で,骨折箇所や膝に痛みが走ることがあり,痛みが著しいときには,休息時間
を取らせてもらうことがあること,③原告は,B医院に就職した後,最初の1年
目は,本件事故によって負った傷害の治療のために欠勤したことなどから皆勤手当
の支給が受けられなかったこと,④しかしながら,現在は,原告と同時期に就職
した同僚との間に基本給の差はなく,本件後遺障害が原因で皆勤手当の支給が受け
られないということもなくなったことを認めることができる。
上記認定事実及び本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると,原告は,
本件事故によって,少なくとも就労の始期である18歳から23歳までの5年間,
労働能力の5%を喪失したと認めるのが相当である。
そうすると,本件事故による原告の遺失利益は,次のとおり,71万95
25円となる。
(ア)賃金センサス平成15年第1巻第1表産業計・女性労働者学歴計
349万0300円
(イ)症状固定時(平成15年4月11日)17歳
①23年−17年に対応するライプニッツ係数5.075
②18年−17年に対応するライプニッツ係数0.952
③①−②=4.123
(ウ)労働能力喪失率0.05%
3,490,300×4.123×0.05=719,525.345
(5)後遺障害慰謝料(⑨)について
証拠(甲7,10,12,13,証人C,原告本人)及び弁論の全趣旨によ
ると,①原告は,本件事故によって右大腿部に瘢痕が残ったことから,大腿部が
露わになるような服装を避けるようになり,職場での旅行や友人との旅行において
も,水着になったり,温泉に入ったりすることを避けていること,②原告は,こ
の大腿部の瘢痕を将来夫となるべき男性がどう思うかなど,自己の将来に対して不
安を抱いていること,③原告は,身長約167センチメートルの細身の体型で,
本件事故の前,ファッションモデルになることを希望しており,周囲の人間からも
その旨勧められたこともあったが,本件事故によって大腿部に瘢痕が残ったことか
ら,ファッションモデルを目指すことを断念したことが認められる。そして,これ
らの事実に加えて,上記(4)アで判示したとおり,右大腿部の瘢痕による逸失利益
が認められないことなど,本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると,本件事
故によって本件後遺障害を負ったことによる原告の精神的苦痛は,420万円の支
払をもって慰謝するのが相当である(以上の損害額を合計すると829万1999
円となる。)。
(6)弁護士費用(⑩)について
本件事故と相当因果関係のある損害として認めるべき弁護士費用については,
争点(2)(過失相殺の可否)について検討した後に検討する。
2争点(2)(過失相殺の可否)について
(1)証拠(甲10,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,本件事故の態様は,
自転車を運転する原告が,信号機の設置されている交差点において,青信号に従っ
て北から南に直進していたところ,同交差点を左折しようとしていた被告車両が原
告を確認することなく左折したことから,原告が被告車両に巻き込まれたというも
のであったこと,また,原告は,被告車両が自己の右側で左折の機会をうかがって
いることには気付いていたが,自身が優先すると思い直進したところ,被告車両が
左折を開始してしまったため被告車両に巻き込まれたことが認められる。
(2)以上のような本件事故の発生態様にかんがみると,本件事故発生の責任の
大部分は被告にあるというべきであるが,原告にもわずかながら一定の落ち度があ
るといわざるを得ず,原告の損害の5%を過失相殺するのが相当である(過失相殺
後の損害額は,787万7399円となり,これから既払額である415万048
4円(上記前提となる事実(6))を控除すると372万6915円となる。)。
3弁護士費用について
本件訴訟の難易の程度や認容額などを考慮すると,本件事故と相当因果関係
のある損害として認めるべき弁護士費用は,37万円をもって相当と認める。
4結論
以上によると,原告の被告に対する請求は,自賠法3条による損害賠償請求
権に基づき,本件事故によって原告が被った損害である409万6915円及び弁
護士費用を除く損害である372万6915円に対する本件事故の日の翌日である
平成14年5月10日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の
支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄
却すべきである。よって,主文のとおり判決する。
甲府地方裁判所民事部
裁判官岩井一真

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