弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。                    
       上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人萩原平,同田中永司,同後藤邦春,同横堀晃夫の上告理由第一点ない
し第三点について
 1 本件は,参加人が,栃木県公文書の開示に関する条例(昭和61年栃木県条
例第1号。以下「本件条例」という。)に基づき,本件条例の実施機関である被上
告人に対し,上告人が宇都宮市内に建設を予定していたD大学E学部の施設整備費
補助金の交付申請に際して栃木県に提出した文書の開示を請求したところ,被上告
人が,上告人の前年度収支計算書のうち資金収支計算書及び消費収支計算書におけ
る各決算欄の大科目部分並びに貸借対照表における昭和63年度末欄,同62年度
末欄及び増減欄の各大科目部分を開示する旨の決定をしたため(以下,同決定によ
り開示するとされた部分に記載された情報を「本件情報」という。),上告人が,
本件情報は法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報につい
ての非開示事由を定めた本件条例6条2号に該当するなどと主張して同決定の取消
しを求める事案である。
 2 本件条例は,3条前段において,実施機関は,県民の公文書の開示を求める
権利が十分に保障されるようこの条例を解釈し,運用すべき旨を規定した上で,同
条後段において,個人に関する情報についてのみ通常他人に知られたくない情報が
みだりに公開されないように配慮すべきことを規定しているのであって,この規定
の趣旨に照らせば,本件条例6条2号にいう「法人その他の団体(国及び地方公共
団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事
業に関する情報であって,公開することにより,当該法人等又は当該事業を営む個
人に不利益を与えることが明らかであると認められるもの」とは,単に当該情報が
「通常他人に知られたくない」というだけでは足りず,当該情報が開示されること
によって当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益が害されること
を要すると解すべきであり,また,そのことが客観的に明らかでなければならない
ものと解される。
 3 原審は,この点について,以下のとおり認定判断した上,本件情報は本件条
例6条2号に該当するものではないと判示している。
 (1) 本件情報は,大科目部分に限られ,その分析によって上告人の経営規模
,資産運営規模,収支の均衡状態,大科目の記載の範囲内での経営方針の方向性等
を把握することができるとしても,どの点に重点を置いてどのような経営方法で経
営がされているかを知るためには,大科目の検討のみでは不十分というべきであり
,更に小科目をも検討しなければ,それが容易に判明するとはいい難い。
 (2) 大科目部分の分析結果を公表されている標準比率と比較することはでき
るが,その標準比率は幾つかの法人の単なる平均値であって,望ましい経営に比し
てどの程度の状況を示しているかが明らかにされていないため,経営の絶対的判断
はできず,部外者が財務分析を行ったとしても正確かつ細部にわたる判断は計算書
類の作成者から詳細な説明を受けない限り困難である。
 (3) 上告人が加入する日本私立大学協会等によって組織される日本私立大学
団体連合会が平成元年7月3日に定めた指針では,「学校法人の経理の開示につい
ては,学園関係者に,資金収支計算書,消費収支計算書,貸借対照表を,大科目を
中心とするなどの方法で行う。」とされ,これを受けて,自主的な判断によるもの
とはいえ,一般第三者に容易に伝播する可能性のある広報等によりこれらの情報を
開示している学校法人が多数ある。
 (4) 本件情報が開示されることによって上告人に対する悪意の宣伝等がされ
ることを具体的に裏付けることをうかがわせる特別の事情も認められない。
 4 原審の上記(1)ないし(4)の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照ら
せば,いずれも肯認することができ,その過程に所論の違法があるとはいえない。
【要旨】これによれば,本件情報から得られる分析内容からは,上告人の競争上の
地位を害するような上告人独自の経営上のノウハウ等を看取することは困難であり
,本件情報の内容は,客観的にみて,上告人の学校運営等を阻害したり,その信用
又は社会的評価を害するものということはできない。また,本件情報が経理に関す
る情報であることから,直ちに上告人が本件情報を管理することに正当な利益を有
するということはできず,そのような利益を認めるに足りる特段の事情が存すると
もいえない。したがって,本件情報が本件条例6条2号に該当するとはいえないの
であって,これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。
 所論は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するか,又は原
判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず,採用することができない。
 同第四点について
 原審の適法に確定した事実関係の下においては,所論の点に関する原審の判断は
,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 濱田
邦夫)

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