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平成25年(あ)第508号覚せい剤取締法違反被告事件
平成25年11月19日第三小法廷判決
主文
原判決中「当審における未決勾留日数中90日を原判決
の懲役刑に算入する。」との部分を破棄する。
その余の部分に対する本件上告を棄却する。
理由
弁護人中地充の上告趣意は,事実誤認,量刑不当の主張であり,同内山成樹の上
告趣意は,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認,量刑不当
の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
職権をもって調査すると,記録によれば,被告人は,第1審判決判示第1の覚せ
い剤の営利目的所持の事実と同一性のある事実につき,起訴前である平成23年1
0月13日,勾留状の執行を受け,その後第1,2審を通じて勾留を継続されてい
たものであるが,その間,第1審は,平成24年9月26日,被告人を懲役3年及
び罰金50万円に処するなどとする判決を言い渡し,これに対し,被告人が同年1
0月1日控訴を申し立てたところ,原審は,平成25年2月27日,第1審判決中
第1審における訴訟費用を被告人に負担させた部分を破棄し,その余の部分に関す
る控訴を棄却するとともに,原審における未決勾留日数中90日を第1審判決の懲
役刑に算入する旨の判決を言い渡したことが認められる。そして,原判決が,上記
のとおり,原審における未決勾留日数中90日を第1審判決の懲役刑に算入する旨
を言い渡した点は,その理由中の記載に照らし,被告人の控訴申立後の未決勾留の
日数の一部を,刑法21条により裁量によって算入した趣旨であることが明らかで
ある。
しかし,本件のように控訴審が被告人の控訴に基づいて第1審判決を破棄する場
合には,控訴申立後の未決勾留日数は,刑訴法495条2項2号により,判決が確
定して執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであって,控訴裁判所に
は,上記日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられておらず,刑法21条に
より判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきでないこ
とは,当裁判所の判例(最高裁昭和25年(あ)第1477号同26年3月29日
第一小法廷決定・刑集5巻4号722頁,最高裁昭和45年(あ)第1776号同
46年4月15日第一小法廷判決・刑集25巻3号439頁)の示すところであ
る。したがって,原判決中控訴審における未決勾留日数の一部を本刑に算入した部
分は,上記判例に違反して刑法21条を適用したものである。
よって,刑訴法405条2号,410条1項本文,413条ただし書により,原
判決中「当審における未決勾留日数中90日を原判決の懲役刑に算入する。」との
部分を破棄し,その未決勾留日数を算入しないこととし,原判決中その余の部分に
対する上告は,同法414条,396条により棄却し,当審における訴訟費用は,
同法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととし,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官慶徳榮喜公判出席
(裁判長裁判官木内道祥裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官
寺田逸郎裁判官大橋正春)

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