弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人塚崎直義、同村上信金の上告趣意(後記)第一点及び弁護人表権七の上告
趣意(後記)第三について。
 原判決の認定した事実によると、被告人は自転車競争施行者でないのに、京都市
内に営業所として本店及び支店を設け、昭和二六年九月四日A外二百数十名から同
日施行された京都市主催B競輪の勝者投票券合計約九〇〇枚の購入方委託を受ける
名義の下に、投票番号特記の会員申込書と題する証票合計約三百数十枚を投票券一
枚につき一一〇円(投票券額面金額に手数料として金一〇円を加算したもの)の割
合による現金と引換に交付したものであつて、右交付の際の契約によれば、たとえ
被告人において委託にかかる投票券を現実に購入しなかつた場合でも右申込書に特
定した勝者投票が的中した場合には自転車競争施行者が払戻すべき金額と同額の金
員を前記金員申込書と引換に被告人から払戻すべく、的中しなかつた場合には投票
券代金を返還するに及ばない約旨であり、現金の授受は被告人と委託者との間にお
いて終始する関係にあつたというのである。以上原判決の認定した事実だけから見
ても、被告人は自転車競争施行者でないのに、勝者投票券発売類似の行為をなした
者であること明らかであり、改正前の自転車競技法一四条一号に該当すること多言
を要しない。そして前記認定のような約旨で本件行為に出でた以上、被告人が現実
に委託者の委託したとおりに勝者投票券を購入したか否かは、右違反行為の成否に
関係がないものと解すべきであるから、この点に関する原判決の説示には適切を欠
くものがあるけれども、被告人の行為が前記法条に該当することは原判決の認定事
実自体により明らかであるから、原判決の判断は結局において正当である。従つて、
被告人が委託どおり投票券を購入したか否かに関する証拠上の論難はすべて問題と
ならない。また、論旨中には原判決が論旨引用の東京高等裁判の判決と相反する判
断をしたと主張しているが、論旨引用の東京高等裁判所の判決は、本件と認定事実
を異にするので適切でないばかりでなく、その後当裁判所の判決(昭和二七年(あ)
六四三〇号昭和二九年一〇月八日第二小法廷判決)により変更されているのである
から、刑訴四〇五条三号の判例に該当しない。なお原判決は、被告人の本件行為を
改正前の自転車競技法一四条一号に該当するものとして行為時法により処断したの
であり、所論のように行為当時適法であつた行為につきその後に制定された改正後
の法規を適用して処断したものではないこと前説明により明らかであるから、憲法
三九条違反の主張はその前提を欠き理由なく、また憲法三一条違反の主張も所論の
ような法規適用の違法がないので、これまた前提を欠き理由がない。
 被告人の上告趣意(後記)弁護人表権七の上告趣意第一及び第二、弁護人塚崎直
義同村上信金の上告趣意第二点ないし第四点について。
 論旨は、いずれも事実誤認又は量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由
に当らない。そして、本件には同法四一一条を適用すべき事由も認められない。
 よつて、同法四〇八条に従い主文のとおり判決する。
 以上は、原判決が第一審判決を破棄して自判した点についての裁判官小林俊三の
少数意見を除き裁判官全員の一致した意見である。
 裁判官小林俊三の少数意見は、昭和二七年(あ)五九七号同二九年六月八日第三
小法廷判決記載の同裁判官の意見のとおりである。
  昭和二九年一二月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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