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平成11年(ワ)第20392号 損害賠償請求事件
(口頭弁論終結の日 平成14年2月19日)
          判         決
     原      告        A
訴訟代理人弁護士    伊東大祐
     同               向井千景
     同               坂井大輔
     被      告        B
     被      告        有限会社アイプロダクション
     上記被告2名訴訟代理人弁護士  花岡 巌
同               唐澤貴夫
同               本橋光一郎
同               小川昌宏
同               下田俊夫
     被      告        株式会社ダンエンタープライズ
     被      告        サンブライト株式会社
     上記被告2名訴訟代理人弁護士  伊藤 真
     被      告        タニイ株式会社
訴訟代理人弁護士        桝井信吾
訴訟復代理人弁護士       柳井健夫
     被      告        有限会社アース・プロジェクト
     訴訟代理人弁護士        北村行夫
同               前田裕司
同               市毛由美子
同               鈴木隆文
同               内田法子
同               渡邉良平
同               杉浦尚子
同               大江修子
同               古本晴英
          主         文
  1 被告Bは,原告に対し,金2952万1242円及び内金106万240
0円に対する平成10年6月30日から,内金557万6360円に対する平成1
0年11月30日から,内金867万3495円に対する平成10年12月31日
から,内金371万4441円に対する平成11年1月31日から,内金879万
4546円に対する平成11年3月3日から,内金170万円に対する平成11年
5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2 被告有限会社アイプロダクションは,原告に対し,金2952万1242
円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から,内金557万
6360円に対する平成10年11月30日から,内金867万3495円に対す
る平成10年12月31日から,内金371万4441円に対する平成11年1月
31日から,内金879万4546円に対する平成11年3月3日から,内金17
0万円に対する平成11年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
  3 被告株式会社ダンエンタープライズは,原告に対し,金2845万884
2円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から,内金86
7万3495円に対する平成10年12月31日から,内金371万4441円に
対する平成11年1月31日から,内金879万4546円に対する平成11年3
月3日から,内金170万円に対する平成11年5月31日から,各支払済みまで
年5分の割合による金員を支払え。
  4 被告サンブライト株式会社は,原告に対し,金2845万8842円及び
内金557万6360円に対する平成10年11月30日から,内金867万34
95円に対する平成10年12月31日から,内金371万4441円に対する平
成11年1月31日から,内金879万4546円に対する平成11年3月3日か
ら,内金170万円に対する平成11年5月31日から,各支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
5 被告タニイ株式会社は,原告に対し,金1040万5998円及び内金1
99万1577円に対する平成10年11月30日から,内金96万8433円に
対する平成10年12月31日から,内金158万6210円に対する平成11年
1月31日から,内金585万9778円に対する平成11年3月3日から,各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告有限会社アース・プロジェクトは,原告に対し,金106万2400
円及びこれに対する平成10年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
7 原告のその余の請求を,いずれも棄却する。
8 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの
連帯負担とする。
9 この判決のうち,第1項ないし第6項は,仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請求
 1 被告Bは,原告に対し,金5551万4866円及び内金1000万円に対
する平成10年6月1日から,内金160万4000円に対する平成10年6月3
0日から,内金941万3800円に対する平成10年11月30日から,内金1
457万5690円に対する平成10年12月31日から,内金631万0600
円に対する平成11年1月31日から,内金1311万0776円に対する平成1
1年3月3日から,内金50万円に対する平成11年5月31日から,各支払済み
まで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告有限会社アイプロダクションは,原告に対し,金5001万4866円
及び内金450万円に対する平成10年6月1日から,内金160万4000円に
対する平成10年6月30日から,内金941万3800円に対する平成10年1
1月30日から,内金1457万5690円に対する平成10年12月31日か
ら,内金631万0600円に対する平成11年1月31日から,内金1311万
0776円に対する平成11年3月3日から,内金50万円に対する平成11年5
月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告株式会社ダンエンタープライズは,原告に対し,金5371万0866
円及び内金980万円に対する平成10年6月1日から,内金941万3800円
に対する平成10年11月30日から,内金1457万5690円に対する平成1
0年12月31日から,内金631万0600円に対する平成11年1月31日か
ら,内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から,内金50万円に
対する平成11年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
 4 被告サンブライト株式会社は,原告に対し,金4821万0866円及び内
金430万円に対する平成10年6月1日から,内金941万3800円に対する
平成10年11月30日から,内金1457万5690円に対する平成10年12
月31日から,内金631万0600円に対する平成11年1月31日から,内金
1311万0776円に対する平成11年3月3日から,内金50万円に対する平
成11年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 5 被告タニイ株式会社は,原告に対し,金2326万6126円及び内金71
1万円に対する平成10年6月1日から,内金343万9160円に対する平成1
0年11月30日から,内金173万3920円に対する平成10年12月31日
から,内金276万3550円に対する平成11年1月31日から,内金821万
9496円に対する平成11年3月3日から,各支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
 6 被告有限会社アース・プロジェクトは,原告に対し,金5001万4866
円及び内金450万円に対する平成10年3月1日から,内金160万4000円
に対する平成10年6月30日から,内金941万3800円に対する平成10年
11月30日から,内金1457万5690円に対する平成10年12月31日か
ら,内金631万0600円に対する平成11年1月31日から,内金1311万
0776円に対する平成11年3月3日から,内金50万円に対する平成11年5
月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,連載漫画のストーリーの創作を担当した著述家である原告が,原告
に無断で行われた同連載漫画の登場人物の絵の商品化事業について,原告が同連載
漫画について有する原著作者としての権利を侵害すると主張して,同商品化事業に
関与した被告らに対し,著作権侵害を理由とする損害賠償等の支払を求めたもので
ある。これに対して,被告らは,単にストーリーを創作したにすぎない原告は連載
漫画の登場人物の絵の使用について権利を主張することはできないと主張して,著
作権侵害を争い,過失の存在を争うとともに,損害賠償の額を争っている。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実,弁論の全趣旨に加えて該当部分
末尾掲記の各証拠により認められる。)
(1)当事者
 ア 原告は,漫画の原作,児童文学作品等を主な活動領域とする著述家であり,
本件で問題とされている連載漫画(「キャンディ・キャンディ」)のストーリーの
創作を含め,その活動に関して「a」のペンネームを使用している。
 イ 被告B(以下「被告B」という。)は,漫画家であり,「b」のペンネーム
を使用している。また,被告有限会社アイプロダクション(以下「被告アイプロ」
という。)は,被告Bを代表取締役とするアニメーションの著作及び制作販売を主
たる業務とする会社であり,被告Bの有する著作権等の権利について専属的にその
管理を行っている。
 ウ 被告株式会社ダンエンタープライズ(以下「被告ダン」という。)は,工業
所有権,映像,文芸,美術,音楽に関する著作権等の取得,譲渡及び貸与等を主た
る業務とする会社であり,被告サンブライト株式会社(以下「被告サンブライト」
という。)は,商標権,実用新案権,意匠権の売買,仲介及びリース業等を主たる
業務とする会社である。
 エ 被告タニイ株式会社(以下「被告タニイ」という。)は,衣料品,服飾品の
製造販売並びに日用雑貨品の販売及び意匠権,商標権,特許権,実用新案権の取得
等を主たる業務とする会社である。
 オ 被告有限会社アース・プロジェクト(以下「被告アース」という。)は,著
作権,著作隣接権の取得,管理,譲渡を主たる業務とする会社である。
(2)連載漫画の制作の経緯
   漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件連載漫画」という。)は株式
会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」(以下「なかよし」という。)の
昭和50年4月号から同54年3月号までに連載された連続したストーリーを有す
る漫画であるところ,本件連載漫画は,連載の各回ごとに,原告がストーリーを創
作し,小説形式にした原稿(以下「原作原稿」という。)を作成してこれを被告B
に渡し,被告Bが同原稿に基づいて漫画を作成するという手順で制作された。なか
よしにおける本件連載漫画の各連載分には,その扉絵に,作者として,被告Bのペ
ンネームである「b」と共に,「原作 a」という形で原告のペンネームが表示さ
れていた(甲8~10,乙9,10)。
(3)商品化事業をめぐる紛争の経緯
   原告は,平成7年11月15日,被告Bとの間で,本件連載漫画の登場人物
の絵の使用については両名で許諾をし,使用料については両名の間で分割して取得
する旨の合意をしていた(以下,「平成7年合意」という。)。しかしその後,原
告は,被告Bとの間で本件連載漫画の著作権の帰属をめぐって紛争を生じ,平成9
年,被告Bらを相手方として,本件連載漫画の登場人物を描いた絵の販売の差止め
等を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(東京地裁平成9年(ワ)第19444
号事件)。東京地方裁判所は,平成11年2月25日,同事件について,原告の請
求を認容する判決を言い渡した。被告Bは,同判決に対して控訴したが(東京高裁
平成11年(ネ)第1602号事件),東京高等裁判所は,平成12年3月30日,
被告Bの控訴を棄却する判決を言い渡した(甲8)。同被告は,同判決に対して上
告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成13年10月25日,同被告の上告
を棄却する判決を言い渡した(以下「先行訴訟上告審判決」という。)。
(4)被告らの行為
 ア 被告Bは,被告アイプロに対し,本件連載漫画について被告Bの有する著作
権を管理しその商品化事業を遂行することを委任した。これに基づき,被告アイプ
ロは,被告ダンとの間で,本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対
する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結して(甲1,戊1),被告ダンが被告
サンブライトに対し(甲2,戊1,2),被告サンブライトがその傘下の販売業者
及び被告タニイに対し(丙3,戊3),被告タニイがその傘下の販売業者に対し
(戊4),それぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。前記各販売
業者は,これに基づき,本件連載漫画の登場人物の絵の付された玩具,文具,衣料
品等のキャラクター商品(以下,これと後記の株式会社サンメールの販売に係る商
品を併せて「本件商品」と総称する。)を製作して,平成10年10月から平成1
1年5月にかけて販売した。
 イ 被告Bの前記委任に基づき,被告アイプロは,被告アースとの間で,本件連
載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化
契約を締結して(丁2),被告アースが株式会社サンメール(以下「サンメール」
という。)に対し,本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。サンメール
は,これに基づき,レターセット,メモ等のキャラクター商品(前記のとおり,サ
ンメールの販売に係る商品を含めて「本件商品」という。)を製作し,平成10年
3月から同年6月にかけて販売した(なお,被告アースの本件商品化事業への関与
が上記にとどまるものかどうかについては,後記のとおり,争いがある。)。
(5)被告らの本件連載漫画の登場人物の絵についての使用料
 ア 被告サンブライト傘下の販売業者は,本件商品を販売したときは,被告サン
ブライトに対し,販売した本件商品の上代価格(小売価格を指す。以下,同じ。)
の6%に相当する金員を,本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として支払うこと
とされていた(甲30,丙12)。被告タニイは,自己又はその傘下の販売業者が
本件商品を販売したときは,被告サンブライトに対し,販売された本件商品の上代
価格の6%を支払うこととされていた。なお,被告タニイの傘下の販売業者が被告
タニイに支払っていた使用料は,上代価格の6%を下回るものではないと認められ
る。
 イ 被告サンブライトは,前記ア記載の販売業者(被告タニイを含む。)が本件
商品を販売したときは,被告ダンに対し,販売された本件商品の上代価格の4%に
相当する金員を支払うこととされていた(甲2)。
 ウ 被告ダンは,前記イ記載の販売業者が本件商品を販売したときは,被告アイ
プロに対し,販売された本件商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うことと
されていた(甲1)。
 エ サンメールが本件商品を販売したときは,サンメールは被告アースに対して
販売された本件商品の上代価格の5%に相当する金員を支払い,被告アースは被告
アイプロに対して同商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うこととされてい
た(甲19の1~3,丁1~3)。
2 争点
(1)本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して,原告の本件連載
漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか(争点1)
(2)本件商品の販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について,被告ら
が責任を負うかどうか(争点2)
 ア 被告アースの関与行為の内容
 イ 被告らの過失の有無等
(3)原告の被った損害額等(争点3)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して,原告の
本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか)
 【原告の主張】
   本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対しても,原告の本件連
載漫画の原著作者としての権利が及ぶというべきである。
   そもそも,著作権法28条は,二次的著作物の使用について,その使用され
ている部分が原著作物に依拠しているかどうかに関わりなく,原著作物の著作者
は,二次的著作物の著作者が有する権利と同一の種類の権利を有するとしたもので
ある。そして,本件商品に付された「キャンディ・キャンディ」の絵は,本件連載
漫画の主人公等の絵であることは明らかである。したがって,当該絵に本件連載漫
画の原作のストーリーが表れているかを検討するまでもなく,原著作物の著作者で
ある原告は,本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為である本件商品の製
造販売に対し,著作権(複製権)を行使することができるというべきである。
   被告らは,ある漫画の登場人物を全く別の漫画の登場人物として使用するこ
ともできるから,登場人物の絵のみの使用については,その絵が言語の著作物であ
る原作のストーリーを反映しているかどうかを個別具体的に判断する必要があるな
どと主張する。
   しかし,本件連載漫画は原告作成の原作を漫画化したものであり,原告は,
本件連載漫画全体について,原著作者としての権利を有している。そして,本件商
品に付された絵が本件連載漫画の登場人物の絵であることは,外観上からも明らか
であるが,加えて,商品の箱に「陽気なキャンディは孤児院育ち。」と記載された
り(甲18),広告に「とってもなつかしいキャンディキャンディの登場だよ!」
と記載されたりしていること(甲25)に照らしても,明白であるから,それが本
件連載漫画のどのコマ絵を複製したものかを特定するまでもなく,それぞれの絵は
本件連載漫画を複製したものと認められる。
著作権法28条の趣旨は,二次的著作物がその性質上原著作物の創作性に依
拠してそれを引き継ぐ要素と二次的著作物の著作者独自の創作性のみが発揮されて
いる要素の双方を有するものであるところ,そのような両要素を区別することが困
難又は不可能であり,この区別を要求することになれば権利関係が著しく不安定に
なること,二次的著作物である以上それを形成する要素で原著作物の創作性に依拠
しないものはないとみることが可能であることから,二次的著作物の使用につい
て,その使用されている部分が原著作物に依拠しているかどうかに関わりなく,原
著作物の著作者が権利を有するとしたものである。
   したがって,著作権法28条により,当該絵が原告作成の原作原稿に依拠し
ているかどうかに関わりなく,原告が当該絵の使用について原著作者としての権利
を有するというべきであるから,被告らの主張は失当である。
 【被告B及び被告アイプロの主張】
   本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して,原告の本件連載
漫画の原著作者としての権利は及ばない。
 ア 漫画原作者の漫画に対する権利と個々の絵(コマ絵,登場人物の絵等)に対
する権利とは,峻別すべきである。したがって,個々の絵は,言語著作物を原著作
物とする二次的著作物とは当然にはいうことができず,漫画中の絵画部分が言語著
作物(ストーリー原作)の二次的著作物といえるかどうかは,個別に判断しなけれ
ばならない。
   そして,漫画作品の登場人物の絵が言語著作物(ストーリー原作)の二次的
著作物といえるためには,その絵が言葉で書かれた原稿のストーリーにおける表現
形式の本質的特徴を直接感得できるものであることを要するというべきであるとこ
ろ(最高裁昭和51年(オ)第923号同55年3月28日第三小法廷判決・民集3
4巻3号244頁),これを本件連載漫画における主人公キャンディを始めとする
登場人物の絵についてみると,キャンディ等の登場人物の絵だけを見ても,原告の
作成に係る原作原稿のストーリーの本質的特徴を表現していることを感得すること
はできないから,キャンディ等の登場人物の絵をもって原告の原作原稿を原著作物
とする二次的著作物と認める余地はない。
 イ ある著作物が原著作物との関係で二次的著作物といえるためには,同著作物
が原著作物に「依拠」していることを要する。
   本件においては,被告Bは,昭和49年秋に講談社の編集者からなかよしに
新たな連載漫画を描くことを依頼され,編集者との間で,おてんばで元気な孤児の
女の子を主人公とする連載漫画を描くことを決めた。被告Bは,同年11月にスト
ーリーライターである原告と新たな連載漫画についての打合せを始めたが,第1回
目の打合せの際に,そばかすのある女の子のラフスケッチ(以下「キャンディ原
画」という。)を描いて編集者と原告に示した。原告及び編集者は,その場で直ち
に同キャンディ原画に基づいて漫画を描くことに賛成し,これにより,原告の役割
は,キャンディ原画に描かれたキャラクターの主人公をめぐるストーリーを書くこ
ととなった。そして,被告Bは,同年末から翌昭和50年初めにかけて,同年2月
3日発売予定のなかよし3月号に掲載する本件連載漫画の新連載予告用のキャンデ
ィのキャラクター画4枚(以下,これらを「キャンディ予告原画」という。)を描
き,これらを同年1月8日ころまでに編集者に渡した。原告の作成に係る本件連載
漫画の連載第1回目分の原作原稿が被告Bに渡されたのは,その後の同月20日こ
ろである。
   したがって,本件連載漫画の主人公キャンディの絵については,キャンディ
原画及びキャンディ予告原画が,連載第1回目分の原作原稿が原告から被告Bに渡
される前に,それに依拠することなく被告Bにより創作・完成されていたものであ
るから,本件連載漫画において描かれたキャンディの絵を,原告の原作原稿を原著
作物とする二次的著作物と認める余地はない。また,本件連載漫画におけるキャン
ディ以外の登場人物の絵についても,原告の原作原稿に依拠することなく描かれた
ものであるから,二次的著作物ではない。
 【被告ダン及び被告サンブライトの主張】
 ア 本件連載漫画は,被告Bが描いたキャンディ原画,キャンディ予告原画及び
原告が作成した原作原稿の双方を原著作物とする二次的著作物であると考えられ
る。そして,二次的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創
作的部分のみについて生じ,原著作物と共通しその実質を同じくする部分について
は生じないと解される。これを本件についてみれば,本件連載漫画の一部としての
登場人物の絵に生じる著作権は,キャンディ原画,キャンディ予告原画に対して新
たに付与された創作的部分に限られるが,キャンディ原画,キャンディ予告原画
と,本件商品に付された本件連載漫画の登場人物の絵とは,その実質を同じくする
ものであるから,本件連載漫画において固有に付加された部分は全くないというべ
きである。したがって,本件商品に付された絵は,キャンディ原画,キャンディ予
告原画について,被告Bが複製又は翻案したものというべきであり,本件連載漫画
の一部としての登場人物の絵を複製又は翻案したものではない。
 イ 著作権法28条の趣旨は,例えば小説が映画化された場合に原著作物である
小説の本来的な使用には含まれない映画の上映権という二次的著作物の使用権をそ
の小説の著作者が持つというように,原著作物の使用態様を超えた使用に原著作物
の著作者の権利が及ぶことを明確にする点にある。そして,原作者の著作物が実質
的に使用されていると観念できないような態様による二次的著作物の使用行為につ
いてまで,原作者の権利を拡張して原作者の著作権が及ぶとするものではない。こ
れを本件についてみるに,本件商品に付された絵は,いずれも本件連載漫画の登場
人物の容貌や容姿を描いたものにすぎず,そこからは,何らのストーリーも会話も
看取することができない。したがって,本件商品に本件連載漫画の登場人物の絵を
付する行為に対して,原告が本件連載漫画に対して有している原作者の権利は及ば
ない。
 【被告タニイの主張】
   著作権法28条が二次的著作物の使用につき原著作物の著作者が二次的著作
物の著作者と同一の権利を有すると定めるのは,二次的著作物に原著作物の創作的
表現が再生されているからであるが,二次的著作物(本件連載漫画の登場人物の
絵)において原著作物(原作原稿)の創作的表現が再生されているといえるために
は,二次的著作物から原著作物の創作性を看取し得ることが必要となる。
   ストーリーから切り離して漫画の絵画部分を取り上げる場合,独立した個々
の絵画部分から原作の創作性を看取し得るというためには,原作におけるセリフや
場面設定等が個々の絵画に表現され,個々の絵画全体として原作の創作性が具体的
に表現されていることが必要となる。そして,個々の絵画にまで原作者の著作権が
及ぶといい得るためには,原作において,どのような漫画家が描いても,ほぼ類似
した絵画を描くであろう程度の漫画表現上の詳細な指示をしていることが必要であ
る。原作において,漫画表現上の詳細な指示がなく,いかような絵画でも描くこと
ができるのであれば,個々の絵画に原作の創作的表現が再生されているとはいえな
いからである。
   しかるに,本件において,原告は,原作原稿においてどの程度詳細な指示が
されているかについて主張立証をしないから,本件連載漫画の登場人物の絵は,原
作の創作的表現が再生されているということはできず,原作の二次的著作物ではな
いというべきである。したがって,本件連載漫画の登場人物の絵には,原告の原著
作者としての権利は及ばない。
 【被告アースの主張】
   本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して,原告の原著作物
の著作者としての権利が及ぶといえるためには,当該登場人物の絵から原告の原作
(ストーリー)を覚知し得れば足り,読者が一見して物語のどの場面かを知りうる
必要まではないというべきであるが,二次的著作物内のキャラクターを用いたすべ
ての場合に,原告の著作権が当然に及ぶということはできない。
   すなわち,キャラクターとは,連載漫画における登場人物に,連載の集積の
結果等として一定の性格が付与されたものをいうが,かかるキャラクターを原作か
ら切り離し,原作に依拠することなしに単なるキャラクターとして使用することが
可能であることを考えると,二次的著作物の創作によって生じた登場人物の絵をキ
ャラクターとして使用するすべての場合が,原著作物の創作性への依拠を意味する
ものではない。二次的著作物として作られた漫画が,二次的著作物として原作に依
拠しているのか,単なるキャラクターとして用いられているかを判断するために
は,原著作物の依拠といえるかどうかという見地から判断すべきである。
   これは,著作権法28条の解釈からも裏付けられる。けだし,同条は,二次
的著作物の使用に関し,原著作物の著作者が,二次的著作物の権利者と同一の種類
の権利を有すると定めるが,これは,二次的著作物が原著作物に依拠して成立して
いることを根拠として,当該二次的著作物を使用することがすなわち原著作物を使
用することになることを理由に,その使用について原著作者の権利を及ぼすことに
したものであるからである。
   これを本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為についてみると,原
告は,登場人物の絵に原告作成の原作のどのような部分が表れているかという個別
具体的な主張立証を何らしておらず,単に時代が似ているとか複数の登場人物が似
ているとかいうだけで原作の反映とみるべきではないから,当該絵が原著作物に依
拠していると認めることはできない。すなわち,本件は,単なるキャラクターの使
用であって,著作物の使用ではないというべきであるから,原告の原著作物の著作
者としての権利が及ぶとはいえない。
(2)争点2(本件商品の製造販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用につ
いて,被告らが責任を負うかどうか)
 ア 被告アースの関与行為の内容
 【原告の主張】
   被告アースは,サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても,
他の被告らと共に責任を負う。被告アースは,平成10年夏ころに被告アースが被
告アイプロと被告ダンとの間の契約から実質的に外されたので,サンメールの販売
分を除く本件商品の製造販売については責任を負わないと主張する。しかし,被告
アースは,平成10年3月に本件連載漫画について原告が権利を主張していること
を知りながら,事実関係を確かめることなく,同年5月15日に被告ダンに対して
本件連載漫画の商品化を再許諾することの内諾を与えており,その後,被告ダン
は,年末商戦に間に合わせるべく一気に営業を行い,現実に商品化を行っているも
のである。したがって,被告アースが被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再
許諾することの内諾を与えたことにより(内諾は,被告アースが本件商品の商品化
事業から外されたと主張する日(被告アースの主張によれば平成10年夏ころ,被
告ダン代表者の陳述書〔丙3〕によれば,平成10年7月27日)よりも前の日で
ある。),被告ダンらと共同して,本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾及び本
件商品の製造販売という一連の行為を行ったとみるべきである。したがって,被告
アースは,サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても責任を免れな
い。
 【被告アースの主張】
   被告アースは,サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については,
責任を負わない。
   すなわち,被告アースは,平成9年10月28日,被告アイプロから「キャ
ンディ・キャンディ」の絵の使用について許諾を受けたところ(丁2),平成10
年6月1日,被告ダンとの間で著作物使用についての覚書を交わし(丁5),被告
アースが被告ダンに対し,「キャンディ・キャンディ」の登場人物の絵をウィンド
ブレーカー等の商品に複製して使用することを許諾した。しかし,被告アースは,
同年夏ころ,上記覚書に基づく商品化が実行されて使用料の支払を受ける前に,キ
ャンディキャラクター事業から外されてしまった。このことは,被告アイプロの被
告ダンに対する使用許諾契約書(甲1)において,被告アースが被告アイプロの代
理人という形で署名していることからも明らかである。これにより,被告アイプロ
が,被告アースを介さずに,改めて直接被告ダンに対して使用許諾したこととな
り,以後,被告アースは,被告ダンを中心とするキャンディキャラクター絵の商品
化事業から撤退した。したがって,被告アースは,サンメールの販売分を除く本件
商品の製造販売については,責任を負わない。
 イ 被告らの過失の有無等
 【原告の主張】
(ア)被告B及び被告アイプロは,原告が本件連載漫画の原作者であることを知っ
ていたが,本件連載漫画の登場人物の絵の使用に関しては原告は権利を有しないと
軽信し,原告の承諾を得ることなく,被告アース,被告ダンに対して本件連載漫画
の登場人物の絵の使用について許諾し,これらの許諾に基づいて,販売業者が本件
連載漫画の登場人物の絵を付した本件商品を製造販売するに至った。したがって,
被告B及び被告アイプロには,本件商品の製造販売について,故意又は過失がある
というべきである。
(イ)被告ダン及び被告サンブライトは,被告アイプロと取り交わした「キャンデ
ィ・キャンディ」の使用に関する覚書において,被告ダンらが「(b・a)」と
いう著作権表示をしなければならないという条項に合意している(戊1)。する
と,被告ダン及び被告サンブライトは,原告が本件連載漫画について著作権を有す
ることを認識しており,少なくとも当然認識することができたにもかかわらず,安
易に被告B及びその代理人弁護士の説明を信用したものであるから,前記被告両名
に過失があることは明らかである。被告タニイについても,「a」という表示を
することを了解していた以上,同様である。
(ウ)被告アースは,被告アースが被告アイプロと使用許諾契約を締結した際,使
用許諾の対象となる絵が本件連載漫画の登場人物の絵であることや,原告が本件連
載漫画の原作者であること,原告と被告Bとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の
使用について紛争が生じていることを知っていた。また,被告アースは,原告と被
告Bとの間で,かつて,絵のみの使用についても原告が利益配分を受ける平成7年
合意が存在したことも聞いていた。
そうすると,被告アースは,原告が本件連載漫画について原著作権を有する
ことを認識しながら,本件連載漫画の絵の複製をサンメールに許諾するなどしたも
のであるから,原告の本件連載漫画に対する原著作者としての権利の侵害につい
て,故意又は過失があったというべきである。
この点,被告アースは,原作付き漫画の絵のみの使用の場合における原作者
の権利について裁判所の判断が出ていなかったことや,被告Bの顧問弁護士から問
題ないとの回答を得ていたことをもって,過失がないと主張するが,これは,被告
アースも認識していた紛争の一方当事者の代理人から,問題ないと言われただけで
あり,単に法律の解釈について誤った認識を持っていたことをいうにすぎない。そ
して,被告アースが,平成7年合意の内容についても聞いていたことを考えれば,
被告アースには少なくとも過失があったといわなければならない。
 【被告B及び被告アイプロの主張】
   被告B及び被告アイプロは,平成10年3月当時,原告が本件連載漫画の原
作者であることを知っていたことは争わないが,前記争点1に関する被告B及び被
告アイプロの主張の欄に記載したとおり,本件連載漫画の登場人物の絵の使用につ
いては原告の原著作権は及ばないので,著作権の侵害行為自体が存在せず,故意過
失も問題とならない。
 【被告ダン及び被告サンブライトの主張】
   被告ダン及び被告サンブライトは,本件商品の製造販売について過失がな
く,責任を負わない。すなわち,被告ダン及び被告サンブライトは,平成10年9
月ころ,原告が本件連載漫画について著作権の主張をしていることを知った。被告
ダン及び被告サンブライトは,その後,被告Bに権利関係について確かめたとこ
ろ,被告B及び被告B代理人弁護士から,「本件各商品化用キャラクター画の使用
は原告の権利を侵害するものではない」との説明を受け,これを信用していたもの
である。
 【被告タニイの主張】
   被告タニイは,著作権者である被告B及び使用許諾権者である被告アイプロ
の許諾を受けて,本件商品の製造販売を行ったのであるから,過失がなく,責任を
負わない。すなわち,被告タニイは,著作権者である被告Bの許諾を得られるのか
懸念を抱いていたところ,平成10年6月1日,被告B,被告ダン代表者,被告サ
ンブライト代表者が被告タニイを訪れ,その際,被告Bは,商品化権使用許諾契約
を締結することに問題がない旨を告げ,被告Bが代表者を務める被告アイプロが被
告ダン及び被告サンブライトに対して「キャンディ・キャンディ」の絵の使用を許
諾した書面(戊1),被告ダンが被告サンブライトに対して「キャンディ・キャン
ディ」の絵の使用を許諾した書面(戊2)を示した。
 【被告アースの主張】
   被告アースは,被告アイプロから「キャンディ・キャンディ」の登場人物の
絵の使用許諾を受けた際も,サンメール,被告ダンに対して「キャンディ・キャン
ディ」の絵の使用を再許諾した際も,登場人物の絵につき原告が権利を有するとの
認識はなく,かつ認識しなかったことにつき過失はなかった。
   すなわち,被告アースは,原告が本件連載漫画の原作者であることは認識し
ていたが,本件連載漫画の登場人物につき被告Bが本件連載漫画とは別に書き下ろ
した絵について権利を有するのは被告Bのみであり,原告は権利を有しないと信じ
ていた。そしてこれは,被告B及び被告アイプロからの説明及びその顧問弁護士の
意見書に基づくものであったから,被告アースがそのように信じたことについて過
失はない。
 ア 被告アースは,被告アイプロから本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾を
得るに当たっての打合せの際,被告Bから,原告が株式会社フジサンケイアドワー
ク(以下「フジサンケイアドワーク」という。)に対し,被告Bが書き下ろした本
件連載漫画の登場人物の絵についての権利を主張して,その販売の差止めを請求し
ているという話を聞いた。しかし他方,本件連載漫画の登場人物の絵の使用につい
ては被告Bの同意のみ得ればよく,原告の同意を得る必要はないとの見解を顧問弁
護士から文書で得ていること,本件連載漫画の商品化については,すべて被告Bが
本件連載漫画とは別個に書き下ろしたものとし,本件連載漫画中の絵は使用しない
ことなどを説明された。
 イ 被告アースは,平成10年3月ころ,原告代理人弁護士から,サンメールの
商品製造には原告は許諾をしていないから製造を中止するよう連絡を受けた。同連
絡について,被告アースが被告アイプロの指示を仰いだところ,「アイプロとして
は漫画作品の出版でなければ原作者の許諾を得なくても問題ないとの認識でいる。
顧問の弁護士から何かあればすべて先生に連絡するようにし,ライセンシー独自に
は対応させないように言われているのでそのようにしてほしい」と言われ,その後
間もなく,被告アイプロから,弁護士作成の被告B宛報告書の写し(丁6)が送ら
れてきた。報告書の内容は,被告アースが被告アイプロから顧問弁護士の見解とし
て説明を受けていたのと同様であり,第三者が本件連載漫画の登場人物の絵を使用
するに当たって原告の同意を得なかったとしても何ら違法ではないと結論付けるも
のであった。
 ウ 漫画家とは別に原作者が存在する漫画作品について,当該漫画作品とは切り
離して,当該漫画作品の登場人物の絵について原作者の権利が及ぶかどうかが裁判
上問題とされたのは,原告と被告Bとの間の本件連載漫画についての争いが初めて
のケースであった。
 エ 以上のア~ウの事情の下においては,被告アースが,本件連載漫画の登場人
物の絵の商品化事業について原告の同意を得なかったとしても,過失があるとはい
えない。
(3)争点3(原告の被った損害額等)
 【原告の主張】
   原告は被告らに対し,著作権法114条2項により著作物使用料相当額の金
銭の支払を請求する。
 ア 被告B及び被告アイプロの許諾に基づき,販売業者が本件商品を販売するに
至った行為によって生じた損害の額
(ア)被告ダン作成の売上報告書(甲13の1~5)によれば,被告ダン及び被告
サンブライトが本件連載漫画の登場人物の絵の使用を許諾した販売業者(被告タニ
イ及びその傘下の販売業者を含む。)による各期間ごとの本件商品の売上額は下記
のとおりであり,その合計額は8億6821万7320円を下らない。
  ① 平成10年10月,11月分   1億8827万6000円
  ② 平成10年12月分       2億9151万3800円
  ③ 平成11年1月分        1億2621万2000円
  ④ 平成11年2月分        1億5759万2800円
  ⑤ 平成11年3月1日から3日   1億0462万2720円
(イ)上記売上報告書に加えて,被告ダン及び被告サンブライトから許諾を受けた
販売業者であるビッグベンのジグゾーパズルについては,平成11年5月の販売予
定リスト(甲17)から,その売上高は,1000万円を下らない。
(ウ)上記販売業者の商品の製造販売について原告が受け取るべき著作物使用料相
当額は,本件商品の売上額の5%が相当である(なお,被告ダン及び被告サンブラ
イトから許諾を受けた販売業者が,本件連載漫画の登場人物の絵の使用について本
件商品の上代価格の6%に相当する金員の使用料を支払っていることに鑑みると,
仮に上代価格の5%が認められない場合であっても,少なくとも6%の半額である
上代価格の3%は認められるべきである。)。
(エ)以上より,被告ダン及び被告サンブライトが使用許諾をした販売業者の売上
額は,合計8億7821万7320円(上記(ア)①~⑤と(イ)の合計額)であるか
ら,原告の被った損害額(使用料相当額)は,その5%である4391万0866
円を下らない。
 イ 前記アのうち,被告タニイの傘下の販売業者の本件商品の販売によって生じ
た損害の額
(ア)被告タニイの傘下の販売業者の本件商品の販売にかかる各期間ごとの売上額
(被告タニイ自身による売上額も含む。)は下記のとおりであり,その合計額は3
億2312万2520円を下らない。
  平成10年10月,11月         6878万3200円
  平成10年12月             3467万8400円
  平成11年1月              5527万1000円
  平成11年2月,3月         1億6438万9920円
  合計                 3億2312万2520円
(イ)使用料としては,本件商品の売上額の5%が相当である(被告タニイが被告
サンブライトに対して支払った使用料は,本件商品の上代価格の6%に相当する額
の金員であるから,仮に上代価格の5%が認められない場合であっても,少なくて
も6%の半額である本件商品の上代価格の3%が,原告の通常受けるべき使用料で
ある。)。
(ウ)以上のとおり,被告タニイ及び同被告の傘下の販売業者の売上額は,合計で
3億2312万2520円であるから,原告の損害額は,その5%である1615
万6126円を下らない。
 ウ 被告アースの関与行為によって生じた損害の額
(ア)被告アースが商品化を許諾した業者であるサンメールの売上額は,3208
万円であり(甲19),その商品の製造販売について原告が受け取るべき著作物使
用料相当額は,本件商品の上代価格の5%が相当であるから,原告の損害額は,3
208万円の5%である160万4000円を下らない。
(イ)被告アースが,被告アイプロと被告ダンとの間の契約締結に関与したことに
よる損害額については,前記販売業者の売上額である8億7821万7320円の
5%である4391万0866円を下らない。
 エ 精神的損害
   被告Bは,平成7年合意を一方的に破棄し,その後の訴訟において,原告は
本件連載漫画の大まかなストーリーを作っただけであるなどという虚偽の主張をし
た。また,被告ダン及び被告タニイは,原告が本件連載漫画の絵を使用した商品の
販売について同意しないと伝えていたにもかかわらず,これを無視して一方的に「
a」等の表示を商品に付し,原告の氏名表示権を侵害した。被告ダンは,同表示
は,上記契約に基づく使用に際して広く行われていた氏名表示であるから原告の氏
名表示権を侵害しないと主張するが,同表示は,商品の販売について原告の同意が
あることが前提であり,また,原告が本件連載漫画の登場人物の絵が使用される際
に,包括的に「a」という表示をすることを許諾していたものでもないから,被
告ダンの主張は失当である。
   これらの行為による原告の精神的損害は,被告Bの行為について500万
円,被告ダン及び被告タニイの行為について,それぞれ500万円を下らない。
 オ 本件訴訟の弁護士費用は,上記の損害額の1割を下らない。
 カ 損害額のまとめ
(ア)被告Bの行為による損害額
  平成10年3月~6月の販売に係る分につき    160万4000円
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  941万3800円
  平成10年12月の販売に係る分につき     1457万5690円
  平成11年1月の販売に係る分につき       631万0600円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   1311万0776円
  平成11年5月の販売に係る分につき        50万0000円
  精神的損害                   500万0000円
  弁護士費用                   500万0000円
  合計                     5551万4866円
(イ)被告アイプロの行為による損害額
  平成10年3月~6月の販売に係る分につき    160万4000円
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  941万3800円
  平成10年12月の販売に係る分につき     1457万5690円
  平成11年1月の販売に係る分につき       631万0600円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   1311万0776円
  平成11年5月の販売に係る分につき        50万0000円
  弁護士費用                   450万0000円
  合計                     5001万4866円
(ウ)被告ダンの行為による損害額
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  941万3800円
  平成10年12月の販売に係る分につき     1457万5690円
  平成11年1月の販売に係る分につき       631万0600円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   1311万0776円
  平成11年5月の販売に係る分につき        50万0000円
  精神的損害                   500万0000円
  弁護士費用                   480万0000円
  合計                     5371万0866円
(エ)被告サンブライトの行為による損害額
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  941万3800円
  平成10年12月の販売に係る分につき     1457万5690円
  平成11年1月の販売に係る分につき       631万0600円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   1311万0776円
  平成11年5月の販売に係る分につき        50万0000円
  弁護士費用                   430万0000円
  合計                     4821万0866円
(オ)被告タニイの行為による損害額
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  343万9160円
  平成10年12月の販売に係る分につき      173万3920円
  平成11年1月の販売に係る分につき       276万3550円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき    821万9496円
  精神的損害                   500万0000円
  弁護士費用                   211万0000円
  合計                     2326万6126円
(カ)被告アースの行為による損害額
  平成10年3月~6月の販売に係る分につき    160万4000円
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき  941万3800円
  平成10年12月の販売に係る分につき     1457万5690円
  平成11年1月の販売に係る分につき       631万0600円
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   1311万0776円
  平成11年5月の販売に係る分につき        50万0000円
  弁護士費用                   450万0000円
  合計                     5001万4866円
(キ)損害額についての遅延損害金の起算日
 平成10年3月~6月の販売に係る分につき   平成10年 6月30日
  平成10年10月,11月の販売に係る分につき 平成10年11月30日
  平成10年12月の販売に係る分につき     平成10年12月31日
  平成11年1月の販売に係る分につき      平成11年 1月31日
  平成11年2月,3月の販売に係る分につき   平成11年 3月 3日
  平成11年5月の販売に係る分につき      平成11年 5月31日
  精神的損害                  平成10年 6月 1日
  弁護士費用(ただし,被告アースの分を除く。)
   被告アイプロと被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾契
約が締結された日である平成10年6月1日
  弁護士費用(被告アースの分)
   被告アースが関与する製造販売行為の最初の日である平成10年3月1日
 【被告B及び被告アイプロの主張】
   原告の主張は,争う。
 【被告ダン及び被告サンブライトの主張】
 ア 被告サンブライトは,キャラクター商品を製造販売する販売業者から上代価
格の6%のロイヤリティを受領し,被告ダンに対し,上代価格の4%を支払ってい
る。被告ダンは,被告サンブライトから受領した同上代価格の4%のロイヤリティ
のうち,被告アイプロに対し,同上代価格の3%を支払っている。
イ 被告ダンが,上記アに基づいて被告アイプロに対して支払うべき額の合計額
は,2651万7663円である(このうち,被告タニイを介した販売業者の分
が,969万3675円である。)。また,販売業者に請求をしたが実際には支払
われていないロイヤリティに相当する分の額は,298万3518円であるから,
これを控除すべきであり,控除後の被告Bに対する支払額は,2353万4145
円である。
ウ 被告ダンが関与した販売業者の在庫分,返品分の合計額は,5億2782万
2630円であるから,この分も控除すべきである。
 エ 使用料相当損害金(著作権法114条2項)の算定に当たっては,被告Bが
ライセンサーとして実際に受領していた著作物使用料率である3%が基準となるも
のであり,原告の受領すべき額は,これに2分の1を乗じた額(使用料率としては
1.5%)である。なぜなら,ライセンシーは,著作物使用料だけでなく,著作権管
理会社の費用等も含んだものとしてライセンス料を支払うのであり,著作権法11
4条2項の文言も「その著作権の行使につき受けるべき金銭の額」と定められ,使
用者がその著作権の使用につき支払うべき金銭の額とは定められていない。そし
て,被告Bも,自らの会社において直接商品化許諾を行った際の著作物使用料は3
%であったのであり,この金額は,一般の漫画キャラクターの商品化に当たって受
ける使用料としては,十分に高額な部類に属するからである。
 オ 原告の精神的損害についての主張は争う。「a」の記載は,原告と被告B
との間の平成7年合意に基づく使用に際して広く行われていた氏名表示であり,同
表示を行うことは,原告の氏名表示権の侵害にならない。
 【被告タニイの主張】
 ア 被告タニイが関与した販売業者による本件商品の販売業者別の売上額は,以
下のとおりであり,その合計額は,2億0918万7720円である。
  ① 丸八タオル株式会社          4012万1200円
  ② 株式会社ドリームズカムトゥルー    4452万9760円
  ③ 株式会社ニシオ          1億1505万0760円
  ④ 田口帽子株式会社            948万6000円
  なお,被告タニイが自ら販売した商品もあるが,被告タニイが販売した商品は
すべて上記4社から仕入れた商品であって,これを上記4社が販売した商品と区別
することが困難であることから,上記の上代価格には被告タニイが販売した商品の
分も含めている。
  そうすると,上記①~④の小売価格(上代)の合計額は2億0918万772
0円であり,これの3%(被告Bの受領額)は,627万5631円となる。
 イ 被告タニイと被告サンブライトとの間には,本件商品であるキャンディ・キ
ャンディを扱ったキャラクター商品以外にも取引が存在する。被告ダンは,被告タ
ニイの売上額(上代)の3%に当たる額は969万3675円であるとするが,こ
の中には,本件商品以外の商品も含まれていると考えられる。
 ウ 被告タニイが関与した販売業者の返品分,値引分の合計額は,958万92
25円である。
 エ 原告の受領すべき使用料に相当する額は,被告Bがライセンサーとして受領
していた著作物使用料(本件商品の上代価格の3%)に,2分の1を乗じた額であ
る上代価格の1.5%と考えるべきである。
 オ 原告の精神的損害についての主張は争う。
 【被告アースの主張】
 ア 被告アースの使用許諾に基づいて,サンメールが製造販売した本件商品の売
上額は,多くても3208万円を上回らない。そして,被告アースがサンメールか
ら支払を受けた使用料の合計額は,3208万円の5%に当たる160万4000
円であり(甲19の2),被告アースは,このうちの60%の金額を,使用料とし
て被告アイプロに支払った。
 イ 原告の受領すべき通常使用料相当の損害金を計算するに当たっては,その使
用料率については,被告Bがライセンサーとして受領していた著作物使用料率であ
る上代価格の3%に,2分の1を乗じた額である1.5%と考えるべきである。
 ウ なお,被告アースは,前述したとおり,被告ダンを中心とする商品化事業か
らは撤退したものであるから,サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売につ
いては責任を負わず,この分についての損害賠償義務を負担することはない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して,原告の本
件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか)について
   前記第2の1(前提となる事実)(2)に記載した本件連載漫画の制作の経
緯によれば,本件連載漫画は,原告の創作した原作原稿を原著作物とする二次的著
作物に当たると認められるから,原告は,本件連載漫画について原著作者の権利を
有するというべきである。そして,二次的著作物である本件連載漫画の使用に関
し,原著作物の著作者である原告は本件連載漫画の著作者である被告が有するもの
と同一の種類の権利を専有し,本件連載漫画の登場人物の絵の使用についても,権
利を有するものというべきである(最高裁平成12年(受)第798号同13年10
月25日第一小法廷判決・裁判集民事203号285頁,判例時報1767号11
5頁。先行訴訟上告審判決)。
   なお,被告B及び被告アイプロは,本件においては,原告から被告Bに本件
連載漫画の第1回連載分の原作原稿が交付される前に,被告Bによりキャンディ原
画及びキャンディ予告原画が作成されていたから,本件連載漫画における主人公キ
ャンディの絵は,原告作成の原作原稿に依拠することなく作成されたものであり,
原作原稿を原著作物とする二次的著作物に当たらないと主張する。しかし,証拠
(甲8~10,乙9,10)及び弁論の全趣旨によれば,キャンディ原画は,本件
連載漫画における主人公キャンディの絵との関係でいえば,下書きないし習作とい
うべきものであり,キャンディ予告原画も,本件連載漫画の予告掲載のため,昭和
50年1月初めに,原告,被告,なかよしの編集者との間での打合せの結果を踏ま
えて主人公キャンディの暫定的な予定画として作成されたものであって,いずれ
も,原作原稿において予定されていた主人公の性格等の特徴に合致するように,本
件連載漫画の制作作業の一環として作成されたものである。これによれば,キャン
ディ原画及びキャンディ予告原画は,いずれも,本件連載漫画のストーリーと無関
係に独立して作成されたものということができず,本件連載漫画の制作経過を全体
としてみれば,キャンディ原画及びキャンディ予告原画は,本件連載漫画における
主人公キャンディの絵と一体として,原告作成の原作原稿に依拠して作成されたも
のというべきである。したがって,結果的に,本件連載漫画において描かれた主人
公キャンディの絵がキャンディ原画及びキャンディ予告原画と同一ないし類似する
ものであったとしても,本件連載漫画の絵が,これらに依拠して作成されたという
ことはできないから,被告B及び被告アイプロの主張を採用することはできない。
また,その他の被告らの主張も,上記に照らし,いずれも採用することができな
い。
2 争点2(本件商品の製造販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用につい
て,被告らが責任を負うかどうか)について
(1)本件商品の商品化事業について
   前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠(甲1,2,丙3,1
2,戊1~6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告Bは被告アイプロに対し本件
連載漫画について被告Bの有する著作権を管理しその商品化事業を遂行することを
委任し,被告アイプロは被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵について第
三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約(甲1,戊1)を締結し,被
告ダンが被告サンブライトに対し(甲2,戊1,2),被告サンブライトがその傘
下の販売業者及び被告タニイに対し,被告タニイがその傘下の販売業者に対し,そ
れぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾したものであって,被告タニイ
及び前記各販売業者は,これに基づき,本件連載漫画の登場人物の絵の付された本
件商品を製造して,平成10年10月から平成11年5月にかけて本件商品を販売
したことが認められるから,これによれば,被告B,被告アイプロ,被告ダン,被
告サンブライト及び被告タニイは,一体として,末端の販売業者をして本件商品の
製造販売を行わせるという商品化事業を遂行したものというべきである。加えて,
前掲証拠(甲1,2,丙3,12,戊1~6)及び弁論の全趣旨によれば,同商品
化事業において,被告Bは被告アイプロ,被告ダン,被告サンブライト及び被告タ
ニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを,被告アイプロは被告ダン,
被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者まで
を,被告ダンは被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の
販売業者までを,被告サンブライトは自ら又は被告タニイを通じて被告タニイを含
む販売業者を,被告タニイはその傘下の販売業者を,それぞれ把握し,それぞれ本
件商品の売上数量,売上額等を報告させることによってその販売状況を掌握してい
たことが認められる。したがって,上記被告らは,上記商品化事業を一体として遂
行したものとして,それぞれが関与しているルートの傘下に属する末端の販売業者
(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為について,著作権侵害
の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
   また,証拠(甲19の1~3,丁1~3)及び弁論の全趣旨によれば,被告
アースは,平成9年10月28日,被告Bから本件連載漫画の登場人物の絵につい
て著作権管理代行,再許諾権等を付与されていたフジサンケイアドワーク及び被告
アイプロから,本件連載漫画の登場人物の絵につき第三者の使用に対する再許諾権
の付与を含む商品化事業の許諾を受け(丁1,2),これに基づいてサンメールに
対して当該絵の使用を再許諾し,サンメールが本件商品を製造して平成10年3月
から同年6月にかけて販売したこと,サンメールは,本件商品を販売したときは,
その売上数量,売上額等を被告アースに報告し,これに基づいて,被告アースから
フジサンケイアドワークに対し,使用料が支払われ,被告アイプロ,被告Bがこれ
を把握していたことが認められるから,これによれば,被告B,被告アイプロ,被
告アース,サンメールは,一体として,末端の販売業者であるサンメールが本件商
品の製造販売を行うという商品化事業を遂行し,同商品化事業において,被告Bは
被告アイプロ,フジサンケイアドワーク及び被告アースを通じて末端の販売業者で
あるサンメールまでを,被告アイプロは被告アースを通じてサンメールまでを,被
告アースはサンメールを,それぞれ把握し,それぞれ本件商品の売上数量,売上額
等を報告させることによってその販売状況を掌握していたことが認められる。した
がって,被告B,被告アイプロ及び被告アースは,上記商品化事業を一体として遂
行したものとして,サンメールが本件商品の製造販売を行った行為について,著作
権侵害の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
(2)争点2ア(被告アースの関与行為の内容について)
   原告は,被告アースの関与行為に関して,被告アースは,被告ダンを中心と
する商品化事業についても,被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再許諾する
ことの内諾を与えたことにより関与したものであるから,サンメールの販売分を除
く本件商品の製造販売についても責任を負うと主張する。
 そこで検討するに,証拠(丙3,丁3,5)及び弁論の全趣旨によれば,被
告アースは,平成10年5月15日ころから被告ダンに対して本件連載漫画の登場
人物の絵の商品化事業に参加することを持ちかけ,同年6月1日には,被告アース
が被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の使用を許諾し,被告ダンが被告
アースと共同して商品化事業を遂行する旨の契約を,被告ダンとの間で締結したこ
とが認められる。しかし,証拠(甲1,丙3,丁3,戊1,2)及び弁論の全趣旨
によれば,被告アイプロ及び被告ダンは,被告アースを除外して被告アイプロから
の窓口を被告ダンに一本化して商品化事業を遂行する旨を合意し,同年7月27日
に,被告アイプロ,被告ダン及び被告アースの三者の間で,以後は,被告アイプロ
から直接被告ダンが許諾を受けて同被告に窓口を一本化して商品化事業を遂行し,
被告アースは商品化事業の系列から外れる旨の合意が成立し,これに伴って,後
日,同年6月1日にさかのぼった日付で,被告アイプロを許諾者,被告ダンを被許
諾者とし,被告アースを被告アイプロの代理人として表示した「商品化権使用許諾
書」(甲1)が作成されるとともに,被告アースを当事者から除外した形での被告
サンブライトに対する使用許諾契約書(戊1,2)も作成されたこと,被告ダンを
中心とする商品化事業における販売業者による本件商品の販売(すなわち,サンメ
ールの販売分を除く本件商品の販売)は,同年7月27日以前には行われておら
ず,被告アースは,サンメールの販売分を除く本件商品の販売については,販売店
からの使用料支払の経由者となっておらず,その分配にもあずかっていないことが
認められるものであり,これらの事情を総合すれば,被告アースは,サンメールの
販売分を除く本件商品の製造販売については責任を負わないというべきである。原
告の主張は,採用できない。
(3)争点2イ(被告らの過失の有無等)について
 ア 前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠(甲1,2,4,丙
3,丁1~3,5,6,戊1~4)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が
認められる。
(ア)被告アースは,平成9年10月28日にフジサンケイアドワーク及び被告
アイプロから本件連載漫画の登場人物の絵の使用についての許諾を得て,本件連載
漫画のキャラクターの商品化事業を遂行し,サンメールに対して本件商品の製造販
売を許諾した。
  被告アースは,本件連載漫画の原作者が原告であると知っていたが,被告ア
イプロとの同契約の締結に当たり,被告Bから,キャンディの絵をめぐって原告と
フジサンケイアドワークとの間で裁判になっており,同裁判において原告が,キャ
ンディの原画についての権利を主張して,その販売の差止めを求めていると告げら
れた。被告アースは,同時に,被告Bからも,絵のみの使用であれば原告の権利は
及ばないこと,その旨の代理人弁護士の見解も文書で得ていること,原告との争い
の実態は利益の配分の問題にすぎないことを告げられ,この結果,被告アース代表
者は,被告Bの書き下ろしの絵であれば原告の権利は及ばないと考えて,被告アイ
プロとの契約締結に至った。
  その後,被告アースは,平成10年3月初め,原告から,「商品化には原作
者である原告の許可が必要であるところ,被告アースが許諾したサンメールは原告
の許可を得ていないので,商品の製造を中止してほしい」旨の通知を受けた。そこ
で,被告アースは,被告B及び被告アイプロに連絡をとったところ,被告B及び被
告アイプロからは,漫画作品の出版でなければ問題ないとの認識でいると言われ,
第三者が本件連載漫画の登場人物の絵を使用するに当たって,原告の同意を得なか
ったとしても何ら違法ではないとの趣旨の代理人弁護士の意見書の写し(丁6)を
交付された。
(イ)被告ダンは,平成10年7月27日ころ,被告アイプロから本件連載漫画
のキャラクターの商品化事業について許諾を得,被告ダンは同被告の営業部門を担
当している被告サンブライトに対し,被告サンブライトはその傘下の販売業者及び
被告タニイに対し,それぞれ本件商品の製造販売を再許諾して,本件連載漫画の登
場人物の絵の商品化事業を遂行した。
  被告ダン及び被告サンブライトは,被告Bと原告が係争中ということを知っ
ていたが,被告B及び被告アイプロから,本件連載漫画の登場人物の絵の著作権は
被告Bが持っているので心配ないとの説明を受け,絵を使用するだけであれば原告
の権利は及ばない旨の被告B及び被告Bの当時の代理人弁護士の見解が記載された
文書の交付を受けていた。そのようななかで,被告サンブライトから商品化許諾を
受けていた被告タニイは,平成10年8月26日,原告から,「本件連載漫画の商
品化には原作者の承諾がいるので,被告Bの許諾だけでは商品化はできない」旨の
内容証明郵便の送付を受けた。被告タニイからの連絡を受けた被告ダン及び被告サ
ンブライトが,被告B及び被告アイプロに対してこれを報告したところ,被告B及
び被告アイプロの当時の代理人弁護士から,被告Bの許諾だけで商品化はできる旨
を再度説明された。被告ダン及び被告サンブライトは,同被告両名の代理人弁護士
から原告の許諾も受けた方がよい旨のアドバイスを受け,商品化事業の遂行につい
ては進める一方,原告の許諾も得るべく努めたが,結局原告の許諾を得ることはで
きなかった。
 イ 上記認定事実によれば,被告らは,本件連載漫画について著作権を有するの
は被告Bのみである旨及び仮に原告に何らかの権利があったとしても本件連載漫画
のストーリーを用いないで登場人物の絵を使用するだけであれば著作権法上の問題
を生じない旨の共通認識の下で,共同して,本件連載漫画の登場人物の絵を使用し
た商品化事業を遂行したものと認められるから,前述したとおり,本件商品の製造
販売による著作権の侵害については,被告らは,それぞれが関与したルートの傘下
に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)による本件商品の販売について,
共同不法行為者として責任を負担するものというべきである。
 ウ 被告らは,いずれも自己の過失を争うが,本件連載漫画の登場人物の絵の使
用については,それにより著作権法上の問題を生じないかどうかを,各自が,事業
の遂行に当たって自己の責任により判断すべきものであるところ,被告らは,いず
れも,本件連載漫画について原告が原作原稿を著述していることについては認識が
あったものであり,また,本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告から実
際に権利主張がされていることを認識していたものである。加えて,なかよしにお
ける本件連載漫画の各連載分に「原作 a」という形で原告のペンネームが表示さ
れていたこと(前記第2の1(前提となる事実)参照)に照らしても,本件連載漫
画の登場人物の絵の使用につき原告が何らかの権利を有することは容易に知り得べ
きものであった。これらの点に照らせば,被告らに過失のあったことは明らかであ
る。被告アース,被告ダン,被告サンブライト及び被告タニイは,被告B及び同被
告の当時の代理人弁護士から本件連載漫画の登場人物の絵の利用については原告の
権利は及ばない旨の説明があったことをもって過失の存在を争うが,前記の事情に
照らせば,被告B及びその代理人弁護士の説明を軽信したことには,過失があった
というべきである。
3 争点3(原告の被った損害の額等)について
(1)著作権法114条2項に基づく損害額
 ア 本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告が受けるべき金銭の額
(ア)上述したとおり,被告らは,被告Bを頂点とし販売業者を末端とする商品化
事業を一体となって行ったものとして,それぞれが関与しているルートの傘下に属
する末端の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為に
ついて,著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものであるところ,証拠
(甲30,丙12,戊4)及び弁論の全趣旨によれば,被告ダンの関与するルート
に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)は,本件商品の製造販売につき,
本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として,商品の上代価格の少なくとも6%に
相当する金額を直接のライセンサーに対して支払っていることが認められる。本件
商品の上代価格の6%という合意は,被告Bが本件連載漫画の登場人物の絵の使用
についてのすべての権利を有することを前提として,商品化契約としての通常の交
渉の結果合意された額と認めることができるから,同合意により定められた本件商
品の上代価格の6%に相当する額をもって,本件連載漫画の登場人物の絵を商品化
した場合に第三者から支払われるべき使用料と認めるのが相当である。なお,証拠
(丁3)及び弁論の全趣旨によれば,被告アースは,サンメールとの間で,本件商
品の上代価格の5%を使用料として受け取る旨を合意していたことが認められる
が,この点を考慮しても,上記のとおり,被告ダンの関与するルートに属する多数
の末端の販売業者が上代価格の6%を著作物使用料として支払っていたことに照ら
せば,本件連載漫画の登場人物の絵の使用について著作権者が受けるべき金銭の額
(著作権法114条2項)は,商品の上代価格の6%と認めるのが相当というべき
である。
   本件連載漫画については,原告は原著作物の著作者として,被告Bは二次的
著作物の著作者としてそれぞれ権利を有するものである。本件連載漫画の商品化事
業に当たって第三者から支払われる著作物使用料の両者の間での分配割合は,特段
の事情のない限り各2分の1と解されるところ,玩具,文具,衣料品等の通常のキ
ャラクター商品である本件商品における著作物の使用については,この分配割合を
変更すべき事情は見当たらない。
   そうすると,被告らの商品化事業における本件連載漫画の登場人物の絵の使
用について原告が受けるべき金銭の額(著作権法114条2項)は,商品の上代価
格の3%(上記認定の6%の2分の1)と認めるのが相当である。
(イ)この点につき,被告ダン及び被告サンブライトは,使用料相当損害金(著作
権法114条2項)の算定に当たっては,被告Bがライセンサーとして実際に受領
していた著作物使用料率である3%が基準となり,原告が請求し得る損害額はその
2分の1に当たる1.5%であると主張し,その理由として,ライセンシーは,著作
物使用料だけでなく,著作権管理会社の費用等も含んだものとしてライセンス料を
支払うのであり,著作権法114条2項の文言も「その著作権の行使につき受ける
べき金銭の額」と定められ,使用者がその著作権の使用につき支払うべき金銭の額
とは定められていないこと,被告Bも自らの会社において直接商品化許諾を行った
際の著作物使用料は3%であったことを指摘し,被告タニイ,被告アースも同旨の
主張をする。
   しかし,原告が原著作物の著作権者として本件連載漫画の登場人物の絵につ
いて有する権利を侵害されたのは,末端の販売業者により本件商品に登場人物の絵
が付されて販売されたこと(複製権の侵害)によるものであり,原告の権利に対す
る侵害行為である販売業者による複製行為について,上記のとおり侵害行為者であ
る販売業者から上代価格の6%が対価として支払われていることが認められるので
あるから,この金額が著作権者が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に該当す
るというべきであり,末端の販売業者に対して絵の使用を再許諾した再許諾権者
は,販売業者による著作権侵害行為(複製行為)についての共同不法行為者とし
て,この金額について販売業者と連帯して賠償の責に任ずるものと解するのが相当
である。本件において,末端の販売業者から支払われる使用料につき,著作権者で
ある被告Bに支払われるまでの間に,被告アース,被告ダン,被告サンブライト及
び被告タニイが中間に再許諾権者として関与して,その分配にあずかっているとい
う事情は,単に共同不法行為者の間で侵害によって得られた利益を分配していると
いうだけのことであり,著作権侵害により権利者が被った損害額を減額する理由と
なるものではない。また,被告アース,被告ダン,被告サンブライト及び被告タニ
イが,著作権侵害行為の対価として末端の販売業者から支払われた使用料から,そ
の一部を自己の利益として手元にとどめることについて,これを正当化する何らの
理由を見いだすこともできない。
 イ 各被告の行為による原告の損害額
(ア)証拠(甲13の1~5,17,丙12,戊5)及び弁論の全趣旨によれば,
被告ら(被告アースを除く。)が関与した商品化事業についての販売業者(被告タ
ニイを含む。)の売上額の合計は8億6862万8095円であると認められ,こ
れに3%を乗じた額は2605万8842円である。このうち,被告タニイ及びそ
の再許諾先の売上額の合計は3億1353万3295円であると認められ,これに
3%を乗じた額は940万5998円である(なお,証拠(戊5)及び弁論の全趣
旨によれば,被告タニイが再許諾した販売業者の販売分について合計958万92
25円の返品分,値引分が認められるから,この分については,売上額から控除し
て計算した。被告タニイ及び被告サンブライトの主張するこれを超える在庫分,返
品分については,これを裏付けるに足りる証拠がない。)。
   また,証拠(甲19の2,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告B,被告ア
イプロ及び被告アースが関与したサンメールの売上額は3208万円と認められ,
これに3%を乗じた額は96万2400円である。
(イ)これを,前掲各証拠により認められる販売業者による各月別の売上額に基づ
いて,各月別に分けて記載すると,次のとおりである(被告タニイの返品値引分に
ついては,被告タニイの再許諾先の販売が行われた平成10年10月~同11年3
月の期間に案分して計算した。)。
  ① 被告B
   平成10年3月~6月の販売に係る分につき    96万2400円
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 557万6360円
   平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
   平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   779万4546円
   平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
   合計                    2702万1242円
  ② 被告アイプロ
   平成10年3月~6月の販売に係る分につき    96万2400円
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 557万6360円
   平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
   平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   779万4546円
   平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
   合計                    2702万1242円
  ③ 被告ダン
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 557万6360円
   平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
   平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   779万4546円
   平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
   合計                    2605万8842円
  ④ 被告サンブライト
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 557万6360円
   平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
   平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   779万4546円
   平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
   合計                    2605万8842円
  ⑤ 被告タニイ
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 199万1577円
   平成10年12月の販売に係る分につき      96万8433円
   平成11年1月の販売に係る分につき      158万6210円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   485万9778円
   合計                     940万5998円
  ⑥ 被告アース
   平成10年3月~6月の販売に係る分につき    96万2400円
(ウ)各被告が支払義務を負う上記の各債務の連帯関係(不真正連帯債務)は,次
のとおりである。
  ① 被告B,被告アイプロ及び被告アースは,同被告の販売に係る分である9
6万2400円につき,連帯して支払義務を負う。
  ② 被告B,被告アイプロ,被告ダン及び被告サンブライトは,次の金額につ
き,連帯して支払義務を負う。
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 557万6360円
   平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
   平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   779万4546円
   平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
   合計                    2605万8842円
  ③ 被告タニイは,上記②の金額のうち次の金額につき,被告B,被告アイプ
ロ,被告ダン及び被告サンブライトと連帯して,支払義務を負う。
   平成10年10月,11月の販売に係る分につき 199万1577円
   平成10年12月の販売に係る分につき      96万8433円
   平成11年1月の販売に係る分につき      158万6210円
   平成11年2月,3月の販売に係る分につき   485万9778円
   合計                     940万5998円
(エ)被告ダンは,業者に請求したが実際には払われていないロイヤリティが存在
し,これに相当する分の額を損害の額から控除すべきであると主張するが,本件連
載漫画の登場人物の絵を使用したことによる著作権法114条2項の損害は,販売
業者から中間の再許諾権者に使用料が支払われたか否かにかかわらず発生するもの
であるから,被告ダンの主張は失当である。
(オ)被告タニイは,被告ダンの提出している金額には,本件商品以外の商品も含
まれているから不正確であるとして,被告タニイ及びその傘下の販売業者の売上額
は,2億0918万7720円であり,これの3%(被告Bの受領額)は,627
万5631円である旨主張する。
   しかし,被告タニイ関係として被告ダンが提出している売上額(合計額3億
1353万3295円)は,丙12に記載があるのに対し,被告タニイの本件商品
以外の商品も含まれているとの主張には,裏付けとなる証拠がないうえ,その主張
する内容も具体性を欠く部分を含むものであり,被告タニイの主張は採用できな
い。
(2)精神的損害について
  原告は,被告ダン及び被告タニイの行為により氏名表示権(著作権法19条
1項)が侵害されたと主張する。しかし,既に著作者によって表示されている著作
者名をそのとおり表示して著作物を使用すること自体は,著作者から別段の意思表
示がない限り,著作者の人格を傷つけるものではないから(著作権法19条2項参
照),被告らが「a」との表示を使用したことをもって,氏名表示権の侵害とみ
ることはできない。原告の主張は,採用できない。
   また,被告Bの行為を理由とする慰謝料請求については,本件で提出されて
いる証拠によっては,原告主張の事実を認めるに足りない。
(3)弁護士費用について
   本件における原告の請求の内容,本件事案の性質,本件訴訟の審理経過その
他の事情を考慮すれば,被告らによる著作権の侵害行為と相当因果関係があるもの
として被告らに負担させるべき弁護士費用としては,次の金額をもって相当と認め
る。被告ら(被告アースを除く。)の負担する弁護士費用は,それぞれの額におい
て相互に連帯関係(不真正連帯債務)に立つ。また,被告アースの負担する弁護士
費用は,被告B及び被告アイプロの負担する弁護士費用と連帯関係(不真正連帯債
務)に立つ。
     被告B              250万円
     被告アイプロ250万円
     被告ダン240万円
     被告サンブライト240万円
     被告タニイ100万円
     被告アース10万円
(4)遅延損害金の起算日について
   著作権法114条2項に基づく損害額については,遅延損害金の起算日とし
て原告が主張している各販売期間の末日をもって,当該侵害行為の後の日として遅
延損害金の起算日と認めることができる。
   不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用について,原告は,被告ら(被告
アースを除く。)については被告アイプロと被告ダンとの間で本件連載漫画の登場
人物の絵の使用許諾契約が締結された日である平成10年6月1日,被告アースに
ついては平成10年3月1日を遅延損害金の起算日と主張する。しかし,不法行為
と相当因果関係に立つ損害としての弁護士費用の賠償債務は当該不法行為の時に履
行遅滞となるところ(最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日第三小
法廷判決・民集37巻7号901頁),本件において原告に対する著作権侵害によ
る損害は,単に著作物使用許諾契約が締結されただけでは足りず,末端の販売業者
により本件商品に本件連載漫画の登場人物の絵が付されて販売された時に発生する
ものであるから,各被告についてその関与する販売業者による商品の製造販売行為
がすべて行われた時点(最終の販売期間の末日)をもって,遅延損害金の起算日と
解するのが相当である。したがって,被告アースはその関与する製造販売行為の最
終日である平成10年6月30日から,被告タニイはその関与する製造販売行為の
最終日である平成11年3月3日から,被告ダンは100万円については被告タニ
イと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日,140万円に
ついては被告ダンが関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日か
ら,被告サンブライトは100万円については被告タニイと共に関与する製造販売
行為の最終日である平成11年3月3日,140万円については被告ダンが関与す
る製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から,被告Bは10万円につ
いては被告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30
日,100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である
平成11年3月3日,140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為
の最終日である平成11年5月31日から,被告アイプロは10万円については被
告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日,10
0万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11
年3月3日,140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為の最終日
である平成11年5月31日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払義務を負う。
(5)損害額についての結論
   上記によれば,原告は,被告らに対して,共同不法行為による損害賠償とし
て,以下のとおりの支払を求めることができる。
 ア 被告Bは,2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成
10年6月30日から,内金557万6360円に対する平成10年11月30日
から,内金867万3495円に対する平成10年12月31日から,内金371
万4441円に対する平成11年1月31日から,内金879万4546円に対す
る平成11年3月3日から,内金170万円に対する平成11年5月31日から,
各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
 イ 被告アイプロは,2952万1242円及び内金106万2400円に対す
る平成10年6月30日から,内金557万6360円に対する平成10年11月
30日から,内金867万3495円に対する平成10年12月31日から,内金
371万4441円に対する平成11年1月31日から,内金879万4546円
に対する平成11年3月3日から,内金170万円に対する平成11年5月31日
から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
 ウ 被告ダンは,2845万8842円及び内金557万6360円に対する平
成10年11月30日から,内金867万3495円に対する平成10年12月3
1日から,内金371万4441円に対する平成11年1月31日から,内金87
9万4546円に対する平成11年3月3日から,内金170万円に対する平成1
1年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
 エ 被告サンブライトは,2845万8842円及び内金557万6360円に
対する平成10年11月30日から,内金867万3495円に対する平成10年
12月31日から,内金371万4441円に対する平成11年1月31日から,
内金879万4546円に対する平成11年3月3日から,内金170万円に対す
る平成11年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
 オ 被告タニイは,1040万5998円及び内金199万1577円に対する
平成10年11月30日から,内金96万8433円に対する平成10年12月3
1日から,内金158万6210円に対する平成11年1月31日から,内金58
5万9778円に対する平成11年3月3日から,各支払済みまで年5分の割合に
よる遅延損害金
 カ 被告アースは,106万2400円及びこれに対する平成10年6月30日
から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
   よって,主文のとおり判決する。
     東京地方裁判所民事第46部
 
           裁判長裁判官   三 村 量 一
              裁判官   和久田 道 雄
              裁判官   田 中 孝 一

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