弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       1 原判決中,被上告人が上告人に対し平成2年8月2
         日付けで前渡金出納簿及び領収証書についてした非
         公開決定(同3年7月22日付け決定により一部取
         り消された後のもの)のうち次の部分につき上告人
         の控訴を棄却した部分を破棄し,同部分につき本件
         を名古屋高等裁判所に差し戻す。
       (1)第1審判決別紙(2)残高欄の前渡金出納簿欄に
          ○印が記載され,かつ,摘要欄に接遇,賛助,生
          花,記念品又は賞品と記載された番号の情報が記
          録されている前渡金出納簿中の部分を非公開とし
          た部分
       (2)第1審判決別紙(2)残高欄の領収書欄に○印が
          記載され,かつ,摘要欄に接遇,賛助,生花,記
          念品又は賞品と記載された番号(番号841及び
          1030を除く。)の情報が記録されている領収
          書を非公開とした部分
       (3)第1審判決別紙(2)残高欄の支払証明書欄に○
          印が記載され,かつ,摘要欄に接遇,賛助,生花,
          記念品又は賞品と記載された番号の情報が記録さ
          れている支払証明書中の部分を非公開とした部分
       2 上告人のその余の上告を棄却する。
       3 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理    由
 第1 上告代理人滝田誠一の上告理由一ないし三について
 1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成2年7月19日,名古屋市公文書公開条例(昭和61年
名古屋市条例第29号。以下「本件条例」という。)に基づき,平成元年4月1日
から同2年3月31日までの間の市長交際費の使途について細目を記載した支出決
裁書,資金前渡精算書,支払計算書,前渡金出納簿,領収証書等一切の文書の公開
を請求したところ,本件条例の実施機関である被上告人は,同年8月2日,上記期
間の市長交際費に係る支出決裁書,支出命令書(控),資金前渡精算書,支払計算
書,前渡金出納簿(以下「本件前渡金出納簿」という。)及び領収証書(領収書及
び支払証明書をいう。以下,「本件領収証書」といい,このうち領収書を「本件領
収書」,支払証明書を「本件支払証明書」という。)が同請求に対応する公文書に
当たるとした上,そのうち支出決裁書,支出命令書(控)及び資金前渡精算書につ
いてはこれを公開したが,支払計算書,本件前渡金出納簿及び本件領収証書につい
ては,本件条例9条1項1号及び6号に該当するとして,これを非公開とする旨の
決定(以下,この非公開決定を「本件処分」という。)をした。これを不服として
,上告人が異議申立てをしたところ,被上告人は,同3年7月22日,本件処分の
うち,本件前渡金出納簿の摘要欄中の支出に関する記載のうち支出項目の部分及び
支払計算書を非公開とした部分を取り消してこれらを公開し,その余の異議申立て
を棄却する旨の決定をした。
 (2) 本件条例9条1項は,「実施機関は,第6条の規定による公開の請求が
あった公文書に次の各号の一に該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記
録されているときは,当該公文書の公開をしないことができる。」と規定し,同項
1号は「個人の意識,信条,身体的特徴,健康状態,職業,経歴,成績,家庭状況
,所得,財産,社会活動等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報
を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもののうち通常他人に知られたく
ないと認められるもの」と,同項6号は「試験,契約,争訟,交渉,監視,取締り
,立入検査,統計,職員の身分取扱いその他の本市の機関又は国等が行う事務事業
に関する情報であって,公開することにより,当該又は同種の事務事業の目的の達
成が損なわれるおそれがあるもの,公共の安全及び秩序の維持に支障を生ずるおそ
れがあるもの,情報を保有する第三者との信頼関係を著しく損なうおそれがあるも
のその他本市の行政の公正又は円滑な運営に支障を生ずるおそれがあるもの」と規
定している。
 (3) 名古屋市における市長等の交際費の支出については,資金前渡の方法が
採られている。前渡金受領者に指定された秘書課長は,毎月初めに支出見込額に相
当する現金の前渡しを受け,必要に応じてこれを支払に充て,その都度,相手方か
ら領収書を徴するか,領収書の徴収が不適当又は困難な場合には支払証明書を作成
した上,前渡金出納簿に支出に係る事項を記載している。交際費の具体的な支出に
当たっては,交際の相手方である個人又は団体の地位の高低,市とのかかわりの濃
淡,市への貢献度の大小等を考慮し,市長等の裁量により決定している。
 (4) 本件前渡金出納簿は,年月日,摘要,前渡受高,支払高,戻入高,残高
の各欄からなっており,摘要欄には,支出項目,支出又は交際の相手方,支出又は
交際の趣旨が記載されている。本件支払証明書には,支払年月日,金額及び内容の
各欄からなる支払明細書の欄があり,本件前渡金出納簿の記載内容と同様の記載が
されている。そして,本件前渡金出納簿の各支出の記載1行に対しては,本件領収
書又は本件支払証明書のいずれかが必ず対応している。
 (5) 交際費の支出項目は,接遇費,賛助金,せん別金,弔慰金,生花代,見
舞金,見舞品,祝金,記念品代,賞品代及び購読料とされている。具体的には,訪
問の際の手土産代,懇談会の経費,各種あいさつ状の経費等が接遇費に,各種大会
,講演会及び行事の協賛金,会費等が賛助金に,就任祝い,叙勲祝い,優勝祝い等
が祝金にそれぞれ当たる。
 (6) 本件前渡金出納簿に記録されている情報合計1079件のうち,第1審
判決別紙(2)残高欄の前渡金出納簿欄に×印の記載された番号の情報199件は
,交際の相手方が識別され得ないが,同欄に○印の記載された番号の情報880件
(支出項目を購読料とするものを含む。)は,交際の相手方が識別され得るもので
ある。
 本件支払証明書に記録されている情報423件のうち,第1審判決別紙(2)残
高欄の支払証明書欄に×印の記載された番号の情報210件は,交際の相手方が識
別され得ないが,同欄に○印の記載された番号の情報213件(支出項目を購読料
とするものを含む。)は,交際の相手方が識別され得るものである。
 本件領収書合計656件のうち,第1審判決別紙(2)残高欄の領収書欄に×印
の記載された番号の情報が記録されている領収書161件並びに同別紙(2)残高
欄の番号841及び1030の情報が記録されている領収書2件(合計163件)
は,交際の相手方が識別され得ない。同別紙(2)残高欄の領収書欄に○印の記載
された番号の情報が記録されている領収書495件(支出項目を購読料とするもの
を含む。)のうち,上記番号841及び1030の情報が記録されている領収書2
件を除いた493件は,交際の相手方が識別され得るものである。
 2 原審は,上記事実関係の下において,本件各文書に記録されている交際に関
する情報のうち,交際の相手方が識別され得ない情報及び交際の相手方が識別され
得る情報中の購読料に係るものは本件条例9条1項1号及び6号のいずれにも該当
しないが,交際の相手方が識別され得る情報中の接遇費,賛助金,せん別金,弔慰
金,生花代,見舞金,見舞品,祝金,記念品代及び賞品代に係るものは少なくとも
同号に該当すると判断した。
 3 原審の上記判断のうち,交際の相手方が識別され得る情報中のせん別金,弔
慰金,見舞金,見舞品及び祝金に係るものが少なくとも本件条例9条1項6号に該
当するとした部分は是認することができるが,交際の相手方が識別され得る情報中
の接遇費,賛助金,生花代,記念品代及び賞品代に係るものが少なくとも同号に該
当するとした部分は是認することができない。その理由は次のとおりである。
 (1) 市長の交際は,本件条例9条1項6号にいう交渉その他の事務に該当す
ると解されるから,同号によれば,これらの事務に関する情報を記録した文書を公
開しないことができるか否かは,これらの情報を公開することにより,当該若しく
は同種の交際事務の目的の達成が損なわれるおそれがあるか否か,公共の安全及び
秩序の維持に支障を生ずるおそれがあるか否か,情報を保有する第三者との信頼関
係を著しく損なうおそれがあるか否か,又は行政の公正若しくは円滑な運営に支障
を生ずるおそれがあるか否かによって決定されることになる。
 ところで,市長の交際事務は,相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増
進を目的として行われるものであるところ,相手方の氏名等の公表,披露が当然予
定されているような場合等は別として,相手方を識別し得るような文書の公開によ
って相手方の氏名等や支出金額が明らかにされることになれば,一般に,交際費の
支出の要否,内容等は,市の相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定さ
れるという性質を有するものであることから,不満や不快の念を抱く者が出ること
が容易に予想される。そのような事態は,交際の相手方との間の信頼関係あるいは
友好関係を損なうおそれがあり,交際それ自体の目的に反し,ひいては交際事務の
目的を達成することができなくなるおそれがあるというべきである。また,これら
の交際費の支出の要否やその内容等は,支出権者である市長自身が,個別,具体的
な事例ごとに,裁量によって決定すべきものであるところ,交際の相手方や内容等
が逐一公開されることとなった場合には,市長においても上記のような事態が生ず
ることを懸念して,必要な交際費の支出を差し控え,あるいはその支出を画一的に
することを余儀なくされることも考えられ,市長の交際事務の公正又は円滑な運営
に支障が生じるおそれがあるといわなければならない。したがって,本件各文書の
うち交際の相手方が識別され得るものは,原則として本件条例9条1項6号により
公開しないことができる公文書に該当するというべきである。
 もっとも,市長の交際事務に関する情報で交際の相手方が識別され得るものであ
っても,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定されている
もの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交
際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがある
とは認められないようなもの(以下「6号の例外要件」という。)は,例外として
同号に該当しないと解するのが相当である。上記の交際の相手方及び内容が不特定
の者に知られ得る状態でされる交際に該当するか否かは,当該交際が,その行われ
る場所,その内容,態様その他諸般の事情に照らして,その相手方及び内容がそれ
を知られることがもともと予定されている特定の関係者以外の不特定の者に知られ
得る性質のものであるか否かという観点から判断すべきである。そうであれば,市
長と相手方との交際の事実そのものは不特定の者に知られ得るものであっても,支
出金額等,交際の内容までは不特定の者に知られ得るものとはいえない情報は,他
に相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがあるとは認められないよ
うな事情がない限り,同号に該当するものと解される(最高裁平成3年(行ツ)第
18号同6年1月27日第一小法廷判決・民集48巻1号53頁,最高裁平成8年
(行ツ)第210号,第211号同13年3月27日第三小法廷判決・民集55巻
2号530頁参照)。
 (2) 本件条例9条1項1号は,私事に関する情報のうち性質上公開に親しま
ないような個人情報が記録されている公文書の公開をしないことができるとしてい
るものと解されるが,市長の交際の相手方となった私人としては,その具体的な費
用,金額等までは通常他人に知られたくないと望むものであり,そのことは正当で
あると認められる。そうすると,このような交際に関する情報は,その交際の性質
,内容等からして交際内容等が一般に公表,披露されることがもともと予定されて
いるもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされ
る交際に関するもの(以下「1号の例外要件」という。)を除いては,同号に該当
すると解するのが相当である。したがって,本件各文書のうち私人である相手方に
係るものは,相手方が識別され得るようなものであれば,原則として,同号により
公開しないことができる公文書に該当するというべきである(上記各判決参照)。
 (3) そこで,以下,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得
る情報のうち接遇費,賛助金,せん別金,弔慰金,生花代,見舞金,見舞品,祝金
,記念品代及び賞品代に係るもののそれぞれについて,これらが本件条例9条1項
6号に該当するか否かを検討し,これに該当するとはいえない場合には,更に同項
1号に該当するか否かを検討する。
 ア 接遇費
 前記事実関係によれば,接遇費に関する情報は,訪問の際の手土産代,懇談会の
経費,各種あいさつ状の経費等に係るものである。このうち懇談会の形式で行われ
る市長の交際には,様々な趣旨・内容のものがあり,例えば,市長が他の地方公共
団体の長等との間で協力関係を維持,発展させるために公式に開催する定例の会合
,市政に対して功労のあった者等を市長が公に表彰するに際して行う祝宴等は,そ
の相手方及び内容が明らかにされても,通常,これによって相手方が不快な感情を
抱き,当該交際の目的に反するような事態を招くことがあるとはいえないから,懇
談会の経費に関する情報の中には,相手方の氏名等を公表することによって前記(
1)のおそれがあるとは認められないものとして,本件条例9条1項6号に該当し
ないものが含まれている蓋然性がある。
 【要旨】そうすると,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る
情報のうち接遇費に係るものの中には,6号の例外要件に該当するものが含まれて
いる蓋然性が高いのであるから,被上告人としては,抽象的に公表,披露を予定し
たものはない旨を主張立証するだけでは足りず,接遇費の具体的な類型を明らかに
した上で,これが上記例外要件に当たらないことを主張立証すべきであり,この点
について審理を尽くさずに交際の相手方が識別され得る情報のうち接遇費に係るも
のが少なくとも同項6号に該当するとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤っ
た違法がある。そして,原審は,接遇費に関する情報が私人である相手方に係るも
のであるかどうかを認定しておらず,6号の例外要件に該当する情報が同項1号に
該当するかどうかを確定することができないから,上記違法は判決に影響を及ぼす
ことが明らかである。
 イ 賛助金
 前記事実関係によれば,賛助金に関する情報は,各種大会,講演会及び行事の協
賛金,会費等に係るものであるところ,このうち各種大会,講演会及び行事の協賛
金については,その性質上,市と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要
否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額
等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられないから,
これらの交際に関する情報は,少なくとも本件条例9条1項6号に該当すると解す
るのが相当である。
 これに対し,会費については,これが何らかの団体等の会員として定期的に支払
われたものであるか,それとも,何らかの会合等に出席した際に徴収された費用で
あるかは前記事実関係からは明らかではないが,いずれにしても,その性質上,相
手方が一定の金額を定めるのが通常であり,市長が市と相手方とのかかわり等をし
んしゃくして個別に金額を決定するようなものではない。そして,市長が団体等に
加入するかどうか又は会合等に出席するかどうかは,市と相手方とのかかわり等を
しんしゃくして個別に決定されるものであるが,例えば,市長がポスト指定として
団体等の会員となっている場合やその会合に出席する場合等,市長の団体等への加
入や会合等への出席が不特定の者に知られ得る状態で行われることも少なくないと
考えられるのであって,このような場合の会費に係る交際に関する情報は,本件条
例9条1項1号及び6号のいずれにも該当しないというべきである。
 以上によれば,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報の
うち賛助金に係るものの中には,6号の例外要件及び1号の例外要件に該当するも
のが含まれている蓋然性が高いのであるから,被上告人としては,抽象的に公表,
披露を予定したものはない旨を主張立証するだけでは足りず,賛助金の具体的な類
型を明らかにした上で,これが上記各例外要件に当たらないことを主張立証すべき
であり,この点について審理を尽くさずに交際費の相手方が識別され得る情報のう
ち協賛金に係るものが少なくとも同項6号に該当するとした原審の判断には,法令
の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであ
る。
 ウ せん別金,弔慰金,見舞金,見舞品及び祝金
 せん別金,弔慰金,見舞金,見舞品及び祝金は,その性質上,市と相手方とのか
かわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈
呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われると
いうことは通常考えられない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相
手方が識別され得る情報のうちせん別金,弔慰金,見舞金,見舞品及び祝金に係る
ものは,少なくとも本件条例9条1項6号に該当するというべきである。
 エ 生花代
 本件における生花がどのような趣旨で贈られたものであるかは前記事実関係から
は明らかではないが,例えば,葬儀の際に弔意を表すために贈られるものは,市長
の名を付して一般参列者の目に触れる場所に飾られるのが通例であり,これを見れ
ばそのおおよその価格を知ることができるものであるから,贈呈の事実及びその内
容が不特定の者に知られ得るものであると考えられるのであって,このような場合
の生花に係る交際に関する情報は,本件条例9条1項1号及び6号のいずれにも該
当しないと解するのが相当である。
 そうすると,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のう
ち生花代に係るものの中には,6号の例外要件及び1号の例外要件に該当するもの
が含まれている蓋然性が高いのであるから,被上告人としては,抽象的に公表,披
露を予定したものはない旨を主張立証するだけでは足りず,生花代の具体的な類型
を明らかにした上で,これが上記各例外要件に当たらないことを主張立証すべきで
あり,この点について審理を尽くさずに交際費の相手方が識別され得る情報のうち
生花代に係るものが少なくとも同項6号に該当するとした原審の判断には,法令の
解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。
 オ 記念品代及び賞品代
 本件における記念品及び賞品がどのような趣旨で贈られたものであるかは前記事
実関係からは明らかではないが,一般に,記念品や賞品は,贈呈者である市長の名
を付して公表,披露され,これを見ればそのおおよその価格を知ることができるこ
とも少なくないから,贈呈の事実及びその内容が不特定の者に知られ得るものであ
ることも少なくないと考えられるのであって,このような場合の記念品及び賞品に
係る交際に関する情報は,本件条例9条1項1号及び6号のいずれにも該当しない
というべきである。
 そうすると,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のう
ち記念品代及び賞品代に係るものの中には,6号の例外要件及び1号の例外要件に
該当するものが含まれている蓋然性が高いのであるから,被上告人としては,抽象
的に公表,披露を予定したものはない旨を主張立証するだけでは足りず,記念品代
及び賞品代の具体的な類型を明らかにした上で,これが上記各例外要件に当たらな
いことを主張立証すべきであり,この点について審理を尽くさずに交際費の相手方
が識別され得る情報のうち記念品代及び賞品代に係るものが少なくとも同項6号に
該当するとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は
判決に影響を及ぼすことが明らかである。
 (4) 以上によれば,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の
相手方が識別され得る情報のうちせん別金,弔慰金,見舞金,見舞品及び祝金に係
るものが少なくとも本件条例9条1項6号に該当するとした部分は,正当として是
認することができ,原判決に所論の違法はない。この部分に関する上告人の論旨は
理由がなく,上記違法のあることを前提とする所論違憲の主張は,その前提を欠く。
しかしながら,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の相手方が識
別され得る情報のうち接遇費,賛助金,生花代,記念品代及び賞品代に係るものが
少なくとも同号に該当するとした部分には,法令の解釈適用を誤った違法があり,
この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。この部分に関する上告人の論
旨は理由があり,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説
示したところに従って,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る
情報のうち接遇費,賛助金,生花代,記念品代及び賞品代に係るものが同項1号又
は6号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を
原審に差し戻すのが相当である。
 第2 上告理由四について
 1 本件条例9条2項は,「実施機関は,公開の請求に係る公文書に,非公開情
報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,非公開情報に係る部
分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,かつ,当該分離により公開の
請求の趣旨が損なわれることがないと認めるときは,非公開情報に係る部分を除い
て,当該公文書の公開をするものとする。」と規定している。
 本件条例9条2項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録さ
れている場合において,それらの情報のうちに非公開情報に該当するものがあると
きは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開することを実施機
関に義務付けているにすぎない。すなわち,本件条例には,公開請求に係る公文書
に記録されている情報が条例所定の非公開情報に該当するにもかかわらず,当該情
報の一部を除くことにより,残余の部分のみであれば非公開情報に該当しないこと
になるものとして,当該残余の部分を公開すべきものとする定めは存在しない(個
人識別情報に関するこのような定めの例として,行政機関の保有する情報の公開に
関する法律6条2項参照)。そうすると,上記のような定めを欠く本件条例9条2
項の解釈としては,同条1項各号のいずれかの非公開事由に該当する独立した一体
的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開
事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまで
をも実施機関に義務付けているものと解することはできない。したがって,実施機
関においてこれを細分化することなく一体として非公開決定をしたときに,住民等
は,実施機関に対し,同条2項を根拠として,公開することに問題のある箇所のみ
を除外してその余の部分を公開するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該
非公開決定の取消訴訟において,実施機関がこのような態様の部分公開をすべきで
あることを理由として当該非公開決定の一部を取り消すことはできないというべき
である(前掲平成13年3月27日判決参照)。
 2 本件各文書についてこれをみると,前記第1の1(4)の事実関係等によれ
ば,本件前渡金出納簿及び本件支払証明書については,各交際費の支出ごとにその
年月日,金額,摘要ないし内容等の関係記載部分が当該交際費に係る市長の交際に
関する独立した一体的な情報を成すものとみるべきであり,本件領収書については
,各交際費の支出ごとにこれに対応する本件領収書に記録された情報が全体として
当該交際費に係る市長の交際に関する独立した一体的な情報を成すものとみるべき
であるから,これらを更に細分化して相手方識別部分等その一部のみを非公開とし
その余の部分を本件条例9条2項に基づいて公開しなければならないものとするこ
とはできない。以上と同旨の見解に立って,同項に基づき当該独立した一体的な情
報を更に細分化してその一部のみを非公開としてその余の部分を公開すべきものと
することはできないとした原審の判断は,正当として是認することができ,原判決
に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
(裁判長裁判官 町田 顯 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 深澤
武久)

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