弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
一 被告が、昭和四四年一月一七日付をもつてなした原告の昭和四〇年分の所得税
の所得金額を九八四、四一九円(異議申立決定により一部取消された後の額)とす
る決定処分のうち、九四三、五四一円を超える部分及び無申告加算税一〇、九〇〇
円(異議申立決定により一部取消された後の額)の賦課処分のうち、右所得金額九
四三、五四一円を超える部分に対応する部分は、いずれもこれを取消す。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二〇分し、その一九を原告、その余を被告の各負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
(原告)
一 被告が昭和四四年一月一七日付をもつてなした原告の昭和四〇年分、昭和四一
年分、昭和四二年分の各所得税課税更正処分及び昭和四〇年分につき無申告加算
税、昭和四一年分、昭和四二年分につき各過少申告加算税の各賦課決定処分はこれ
を取消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
(原告の請求原因)
一 原告は、肩書地において皮革業を営む、いわゆる白色申告者であるが、被告に
対し昭和四一年分及び昭和四二年分の所得税に関して次表のとおり確定申告をした
ところ、同表記載の決定あるいは増額更正及び無申告加算税あるいは過少申告加算
税の各賦課決定の各処分(以下右各処分を一括して本件各処分という)を受け、同
表記載の経緯でこれに対する行政不服申立手続を経由した。
二 しかしながら、本件各処分は違法であるからその取消を求める。
(被告の認否及び本件課税処分の根拠)
一 認否
請求原因一は認める。
同二は争う。
二 本件課税処分の根拠
原告の係争各年分における所得金額算出根拠は次のとおりであり、本件各処分はい
ずれもその範囲内であるから適法である。
(昭和四〇年分事業所得)
1 原告の係争年分の事業所得金額及びその内訳は次表のとおりである。
2 収入金額 二、六七三、〇〇三円
収入金額は、原告の取引先調査の結果による調査資料に基づいて算定した。その取
引先別内訳は、次のとおりである。
3 一般経費 六一八、五三六円
経費のうち一般経費(事業専従者控除額及び特別経費以外のものをいう。以下同
じ。)については、原告は原処分・異議申立及び審査請求において具体的に申し立
てをせず、かつ証拠書類も提出しなかつたので、その算定は、右収入金額に、審査
請求の裁決にあたつて所轄の向島税務署及びその近隣署である本所・葛飾・足立・
荒川税務署五署の各管内に事業所を有する個人のうちで、「皮革加工」を業種目と
してネツト式皮革乾燥機を使用して張革加工を営んでおり、かつ青色申告書により
正確に収支計算をしている者(以下「青色同業者」という。)につき、調査した結
果得られた別表一の(一)のAの青色同業者の経費率(収入金額に対する一般経費
の占める割合。以下同じ。)二三・一四%(小数点三位以下切捨て。以下同じ。)
を乗じて算出した。
なお、原告の事業は特殊な業態であるため、右要件を満たす青色同業者は一件のみ
しか存在しなかつた。
4 特別経費 七六一、七二五円
特別経費(事業の用に供する建物の減価償却費・地代・雇人費及び支払利息のよう
に納税義務者の個別事情を反映する経費をいう。以下同じ。)の内訳は、つぎのと
おりである。
(一) 雇人費 七四三、八九六円
前記収入金額に前記一般経費の項で述べたとおり、別表一の(一)のAの青色同業
者の雇人費率(収入金額に対する雇人費の占める割合。以下同じ。)二七・八一二
%(小数点三位以下切捨て)を乗じて算出した。
(二) 建物減価償却費 一二、八五二円
建物につき、調査の結果判明した建物の種類、構造並びにその取得年月日・取得価
額及び事業専用割合に基づき定額法により算出したもので、その計算明細は別表二
のとおりである。
(三) 地代 四、九七七円
地代につき、調査した結果判明した金額で、昭和四〇年中に原告が訴外地主aに対
して支払つた地代である。
5 事業専従者控除額 一一二、五〇〇円
昭和四〇年分の白色申告者の事業専従者控除額は一一二、五〇〇円であるが、原告
の場合同人の妻が事業専従者であるため、同人分として右金額を認めた。
(昭和四一年分事業所得)
1 原告の係争年分の事業所得金額及びその内訳は次表のとおりである。
2 収入金額 三、九一五、八八七円
収入金額は原告の取引先の調査の結果による調査資料に基づいて算定した。その取
引先別内訳は、次のとおりである。
3 一般経費 一、一〇五、八四七円
一般経費については昭和四〇年分について述べたと同様、収入金額に向島・本所・
葛飾・足立及び荒川税務署五署管内の青色同業者を調査した結果得られた別表一の
(二)のAの青色同業者の経費率二八・二四%を乗じて算出した。
4 特別経費 一、四九八、九三八円
特別経費の内訳は、つぎのとおりである。
(一) 雇人費 一、三七〇、五六〇円
前記収入金額に前記一般経費の項で述べたとおり、別表一の(二)のAの青色同業
者の雇人費率三五・〇〇%を乗じて算出した。
(二) 建物減価償却費 一六、九一五円
建物につき、調査の結果判明した建物の種類・構造並びにその取得年月日、取得価
額及び事業専用割合に基づぎ定額法により算出したもので、その計算明細は別表二
のとおりである。
(三) 借入金利子 一〇七、七三〇円
調査の結果判明した金額で、昭和四一年中に原告が訴外中ノ郷信用組合寺島支店に
支払つた同組合からの借入金三、〇〇〇、〇〇〇円に対する支払利息である。
(四) 地代 三、七三三円
昭和四一年中に原告が訴外地主aに対して支払つた地代である。
5 事業専従者控除額 一四二、五〇〇円
原告が確定申告書に記載した金額によつたものである。
(昭和四二年分事業所得)
1 原告の係争年分の事業所得金額及びその内訳は次表のとおりである。
2 収入金額 五、三六三、一九一円
収入金額は、原告の取引先の調査した結果による調査資料に基づいて算定した。そ
の取引先別内訳は、次のとおりである。
3 一般経費 一、二七二、六八六円
一般経費については昭和四〇年分について述べたと同様、収入金額に向島・本所・
葛飾・足立及び荒川税務署五署管内の青色同業者を調査した結果得られた別表一の
(三)のAないしCの青色同業者の経費率二三・七三%を乗じて算出した。
なお、昭和四二年分は青色申告を承認された青色同業者は二件である。
4 特別経費 一、九五六、一二〇円
特別経費の内訳は、つぎのとおりである。
(一) 雇人費 一、七〇二、八一三円
前記収入金額に前記一般経費の項で述べたとおり、別表一の(三)のAないしCの
青色同業者の平均雇人費率三一・七五%を乗じて算出した。
(二) 建物減価償却費 二〇、〇三四円
建物につき調査の結果判明した建物の種類・構造並びにその取得年月日、取得価額
及び事業専用割合に基づき定額法により算出したもので、その計算明細は別表二の
とおりである。
(三) 借入金利子 二三三、二七三円
昭和四二年中に原告が訴外中ノ郷信用組合寺島支店に支払つた原告の同組合からの
借入金三、〇〇〇、〇〇〇円及び五〇〇、〇〇〇円に対する支払利息である。
5 事業専従者控除額 一五〇、〇〇〇円
原告が確定申告書に記載した金額によつたものである。
(被告の本件課税根拠の主張に対する原告の認否及び本件各処分の違法事由)
一 被告の本件課税根拠の主張に対する原告の認否
(昭和四〇年分)
1 収入金額
認める。
2 一般経費
原告が、原処分・異議申立及び審査請求において一般経費につき具体的に申立なせ
ず、かつ証拠書類を提出しなかつたことは認めるが、被告の主張にかかる一般経費
の金額は否認し、その余は不知。
3 特別経費
(一) 雇人費、(二)建物減価償却費とも金額否認、算出方法はいずれも不知。
(三) 地代は認める。
4 事業専従者控除額
認める。
(昭和四一年分)
1 収入金額
認める。
2 一般経費
金額は否認し、その算出方法は不知。
3 特別経費
(一) 雇人費、(二)建物減価償却費とも金額否認、算出方法はいずれも不知。
(三) 借入金利子、(四)地代は認める。
4 事業専従者控除額
認める。
(昭和四二年分)
1 収入金額
認める。
2 一般経費
金額は否認し、その算出方法は不知。
3 特別経費
(一) 雇人費、(二)建物減価償却費とも金額否認、算出方法はいずれも不知。
(1) 借入金利子は認める。
4 事業専従者控除額
認める。
二 本件各処分の違法事由
本件各処分には次のとおりの違法があるから、取消されるべきである。
1 被告が本件各処分をなすに際して実施した税務調査は違法である。
税務署長が更正または決定をするための調査は、申告納税制度を原則としている以
上、例外的な場合に限られ、しかも合理的な根拠、理由がなくてはならない。所得
税法二三四条は、「所得税に関する調査について必要があるとき」は質問検査権を
行使しうる旨規定するが、単に当該職員が調査の必要があると判断したというだけ
では足りず、その調査の必要性が客観的合理的に是認される場合にのみ調査をなし
うるものと解すべきである。従つて、調査に際しては、調査事項を特定して被調査
者の承諾を求め、要求があれば、調査理由を開示すべきである。これは、質問検査
権の行使について当該職員の恣意に基づく調査が許されないこと、また、被調査者
にとつては調査をうけること自体が、営業活動や取引の信用等に対し損害を与える
ものであること、さらに、調査が徴税の便宜に偏して行なわれるならば、納税者の
基本的人権を害う危険をもたらすことになるからである。また、所得税法が自主申
告納税制度を採用している以上、申告内容に対する求釈明には、申告にかかる諸事
項金額のどの部分を調査するのか特定しなければならない。もしこれらの調査事項
の特定あるいは調査理由の開示を全く不要とすれば、自主申告納税制度における自
主申告権を否定するもので許されない。そうだとすると、調査の方法も右に述べた
観点に基づき進められなければならない。
しかるに、被告所属の職員b及びcの両名は、昭和四三年九月九日原告方に来訪
し、原告に対して身分証明書も提示せずに、単に「調査させてもらいます。」と告
げただけで、原告が再三要求したにもかかわらず調査の理由を全く説明せず、執拗
に調査に応ずるよう迫つた。同職員らは、その後も二回原告方に来たが、このとき
も全く調査理由を告げず、原告の取引先につき反面調査を強行した。
このように被告職員の調査は強権的であり、明らかに違法なものといわなければな
らない。
2 被告は本件各処分をなすにつきその必要性がないにもかかわらず推計課税を行
なつたものであり、違法である。
被告は原告に対し前記のとおり正常な調査をなそうとはせず、調査理由も告げない
でただ一方的に帳簿の提示を求めるので、原告としては、調査理由を明らかにする
ことが先決であるから帳簿をみせる段階ではないと応答したもので、帳簿の提示を
拒否したとか、帳簿はないなどと言つたことはない。また、被告の職員が来訪して
原告の事業経費の内容につぎ教示を求めてきたことがあるが、原告としては予告な
しの来訪であつたから都合が悪いと答えたまでで、大声でどなつたことはない。
さらに、異議申立の段階において、被告職員が原告方に来訪した際、民主商工会
(以下「民商」という。)員が同席したことはあるが、原告側において職員をやゆ
したり、調査を拒否したことはない。原告としては、職員が原決定の理由やその内
容を示すものと考えて質問したのであるが、全く答弁がえられなかつた。
また、審査請求の段階で、原告はかねてより協議官に対し被告側からの弁明書の提
出を求め、かつ、その閲覧を申立てていたところ、協議官はこの申立に応ずる旨約
束しておりながら、再度にわたり原告の要求に対し言を左右にしてこれを無視し続
けたものである。
このように、被告は、原告において被告に対し調査の理由等の開示を求めたことを
原告が調査に協力せず妨害したとの口実に用い、これを推計課税をなすべき正当事
由とするのであるが到底許されないというべきである。
3 一般経費を推計するについて、被告が算出の根拠とした業者は昭和四〇年、昭
和四一年各A一件、昭和四二年はA、B、Cの三件にすぎないが、このような同業
者の抽出方法は違法である。
(一) 被告は、右のように抽出した理由として、原告が営むネツト式皮革乾燥機
使用による張革加工業が特殊な業態であるからというのである。
しかし、ネツト式皮革乾燥機使用業者が所轄の向島税務署及びその近隣署である本
所、葛飾、足立、荒川税務署の五署管内で僅か三件しかないということ、しかも右
抽出にかかるA、B、Cの業者がすべて向島税務署管轄内に存在するということ
(裏から言えば、本所、葛飾、足立、荒川署の各管内には同業所が存在しないとい
うこと)は明らかに不合理である。ネツト式皮革業者は数えるに困難な程特殊な業
態ではない。
(二) 張革加工を専門とする業者は、いわゆる零細業者であつて、原告の知悉す
る向島税務署管内で青色申告をしている者は全く存在しない。被告の主張する青色
申告業者なる者は架空であると考えざるをえない。
(三) 被告は、また、前記A、B、Cの業者が向島税務署管内に存在するという
だけで、その氏名及び所在場所を明らかにしていない。従つて、被告主張のような
数値を得られるように同業者を抽出することもできるし、数値を合わせることもで
きる。被告は、その主張が正しいとするならば業者を具体的に特定すべきである。
実在するかどうか明らかでない同業者の数値を根拠にした推計は許されない。
(四) 仮りに、被告主張の税務署管内で同業者が一件ないし三件しか存在せず、
右業者か青色申告者であつたとしても、推計の根拠とする同業者を青色申告者だけ
から抽出し、白色申告者を対象としないのは不合理である。白色申告者といえども
その経費率を明らかに算出しうる者があるはずである。白色申告者の申告が不正確
であるというのなら、現行租税法を全く無視するものであつて賛同しがたい。青
色、白色申告者双方を合わせれば、被告主張の税務署管内にはかなりの同業者が存
在するのである。
4 被告の主張する原告の一般経費の推計は到底合理的といえないものである。
(一) 統計学的にいえば、推計は対象とする数が多ければ多い程正確性を増すも
のであり(大数の法則)本件のように一ないし三件の同業者を対象として推計する
のは不正確である可能性が極めて大きいものである。対象同業者がA一件しか見当
らないとして、しかもAの特殊性を全く無視したままで、それを基礎に推計するこ
とが正しいというなら、Aと原告はすべての点において全く同一の業態でなければ
ならないことになるのである。
仮りに対象者が少なくとも推計学を駆使することによつて正確な対象を出しうるは
ずである。
(二) 原告及び同業者の一般経費の大部分は運送費で占められている。原告のよ
うな下請業者は数軒の元請業者から材料を仕入れ、一間四方大の革に加工すると再
び元請業者に配送するという業態をとつているから、元請と下請業者の地理的条件
によつてかなり運送費に相違が生ずる。また、自家用車で運送するものと、元請業
者の負担で運送する場合とでは、当然その額に差がある一方、専従運転手の有無に
よつても極度の差が生じる。従つて、同一税務署管内であつても、その地理的条件
は全く異る一方、他管内であつても原告と比較的類似するものがあるはずである。
そうとすれば、単に税務署管内を同じくするという理由だけで一ないし三件という
少数業者を対象として推計の根拠とするのは誤りであり、却つて、税務署管内を限
定することなく、原告と地理的条件の類似した同業者を対象とすべきである。
5 被告のなした原告の雇人費の推計は以下の理由により違法である。
(一) 一般経費の推計における同業者抽出に関する違法について述べた3の
(一)ないし(四)の主張は雇人費の推計についても妥当する。
(二) 原告の事業分野において使用するネツト式皮革乾燥機は操作上通常四人の
作業員が必要である。しかし、右作業はかなりの重労働で体力並びに技術が要求さ
れるので作業員の年令、性別、経験によつてその使用人数にはかなり相違が生ず
る。たとえば、熟練男子労働者なら二名で作業する場合でも女子のいわゆるパート
タイマーなら四~五名は必要となるのである。従つて、使用機械の台数と使用作業
員の人数とは正比例するものではなく、各業者の個々の特殊事情に応じて異なるこ
とが考慮されるべきである。
(三) 被告が推計の基礎とした同業者の業態が全く不明である(機械台数も従業
員数も全くわからない)うえ、売上高はA、B、C業者とも原告と比較してそのほ
ぼ半分の額で、ほぼ一致しているのに、「雇人費額」では、BはCの二・六倍強も
あり、三者とも不揃いである。このことは、雇人費額を推計で計算すること自体が
不合理であることを示すものである。雇人費額はむしろ従業員数の実情から算出す
るのでなければ実情と全くかけ離れたものになることは明らかである。
(四) 原告は、昭和四〇年一月一日から昭和四一年九月頃までの間、旧建物でネ
ツト式皮革乾燥機一台を使用し、昭和四一年一〇月から昭和四三年一二月までの間
は新建物において右乾燥機二台を使用して張革加工の営業をしてきたものであると
ころ、右の期間中、事務労働に関与した原告の妻のほかに原告方で雇入れた従業員
数は、次表のとおりである。
そこで、係争年分当時における同業種の男女別従業員日給額を基礎として、平均出
勤日数からその平均月収額を、更に年間給与額、一時金支給額を計算すると、各年
分別の雇人費額は
昭和四〇年分 一、五六〇、〇〇〇円
昭和四一年分 二、〇九六、二五〇円
昭和四二年分 三、二三八、六〇〇円
となり、その明細は次表のとおりである。
6 被告のなした建物減価償却費の計算上、建物の二階を事業用と認めなかつたの
は誤りである。
もつとも、原告が事業の用に供していた建物(新旧とも)が原告の妻d名義である
こと、その一階が仕事場であること、妻dが旧建物とその借地権を他人に譲渡し、
その代金を新建物の建築及び宅地の取得資金にあてたこと、原告が被告主張のとお
りの申告をなし、建物の償却方法につき届出をしなかつたことは認める。
(原告の違法事由の主張に対する被告の主張)
一 違法事由1
1 原告は、本件更正処分前の税務調査が、甚た強権的であり、原告の再三の要求
にもかかわらず被告の職員が調査の目的、理由等を特定明示することを拒否したた
めに調査に協力したかつたのであり、被告の調査は明らかに違法な調査であると主
張する。
しかし、被告は後記の事情から原告の所得税に関し調査する必要があつたところ、
原告は右被告の調査に対して理由なく協力を拒否したものであり、原告の主張は失
当である。
(一) 原告は、請求原因一記載のとおり昭和四一年分、昭和四二年分の確定申告
をそれぞれしたが、被告において右各申告を検討したところ、昭和四一年分につい
ては、同年九月末に新築取得した家屋の取得資金二、八八〇、〇〇〇余円のうち五
八〇、〇〇〇余円についての資金出所が明らかにされていないこと及び昭和四二年
三月一日に実施した概況調査(未把握の納税者についてその事業の概況等の把握等
を目的とする調査をいう。)の調査事績(乾燥機二台を各九〇〇、〇〇〇円で取得
し月賦返済していること、従事員は原告本人、妻それに女性のパートタイマー四名
であること、昭和四一年以前から営業しているのに同年一〇月から営業を開始した
旨虚偽の申立てをしていること等よりみて過少申告のおそれがあると認められ、ま
た、昭和四二年分については所得金額計算の基礎となる収入金額・必要経費の記載
がされていないこと及び右概況調査の調査事績よりみて連年過少申告と認められ
た。更に、昭和四〇年分についても右状況を考えれば当然確定申告を要すると認め
られるにもかかわらず無申告であつたこと等により調査対象に選定し本件調査を実
施したものである。
(二) 右調査理由に基づき、昭和四三年九月九日被告所属の職員である大蔵事務
官b及び大蔵事務官Pの両名が原告宅へ第一回目の臨店をした際、原告から「申告
はしてある。何の理由で調査するのか間違つているところを指摘してくれ」との質
問をうけたので、「調査理由は、あなたの申告が正しいかどうか、また、あなたは
昭和四〇年分は無申告であるので、どの位の所得があつたかを知るために調査する
のです」と答えているところであり、原告主張のように被告の職員が調査理由の概
要・必要性の開示を拒否したという事実はない。
2 更に、原告は、調査事項の特定・調査理由の開示を全く不要とすれば、自主申
告納税制度における自主申告権を否定することとなり到底許されないと主張する
が、原告の右主張は以下のとおり失当である。
(一) 原告のいう自主申告権とはどのような趣旨内容のものであるか明らかでは
ないが、元来納税申告は納税者が適宜自己の納税義務の範囲を決定しうる趣旨のも
のではなく、自ら進んで納付すべき所得税の課税標準及び税額を張簿書類等の会計
記録などの確実な資料に基づいて、租税法の規定に従つて計算し自己の納税義務の
具体的内容を確認したうえ、その結果に基づいてこれを税務署長に申告するもので
あつて、申告納税制度の設けられた趣旨は種々事情の異なる納税者について適正公
平にして能率的な課税が行われるために、その内容を最も正確に知りうる立場にあ
る納税者本人による課税標準等の申告をまず行なわしめるのが合理的であるという
考え方に基づくものであり、納税義務の履行を国民自ら進んで遂行すべき義務との
観念に基づき納税者に自らできるだけ正しい申告をさせ、同時にその申告行為自体
に納税義務確定の効果を賦与することが現代民主々義国家における課税制度として
相応しいものとの考え方に基づくものである。
そして、納税者のなす申告行為の法的性格は、私人のなす公法行為であるが、課税
標準と税額は租税法の規定により既に客観的に定まつておりこれらの要件事実を納
税者自身が確認して、これを税務当局に通知する性質の行為であつて、それに法律
が具体的な納税義務確定の効果を賦与したのである。申告納税制度は、国民にその
財産権を擁護するために税務署長をも拘束するような判断権を賦与したものではな
く、国民に協同の費用としての租税の負担に関する手続を分担せしめたものと観念
すべきである。
(二) 右に記述したごとく、申告納税制度は、憲法に定められた国民の納税義務
履行の手段として、国民に求められている行為であるが、右申告納税制度を担保
し、適正な課税を実現するため所得税法は、二三四条において「所得税に関する調
査について必要があるときは」質問検査をなしうることを定めている。そして、質
問検査権の行使にあたつて、これを必要とする理由を開示しなければならない旨の
規定はなんら存在しないから、調査理由の開示をもつて質問検査権行使の要件と解
する余地はない。
このことは、所得税法二三六条が質問・検査にあたつては身分を示す証明書を携帯
し、関係人の請求があつたときはこれを提示しなければならないことを明文をもつ
て規定していることから対比すればおのずから明らかである。
ところで、質問検査権は、課税の適正かつ公平を維持するために税務職員に認めら
れている権限であるから法の目的を逸脱し、あるいは強制力を用いた調査が許され
ないことはいうまでもないが、複雑多岐に亘る経済事象を対象とする税務調査にお
いては納税者の事業規模や内容、記帳状況及び証拠書類の保存状況あるいは調査に
対する協力度合等も千差万別であるところから、調査形態も当然右の状況に対応し
て具体的な調査の場における税務職員の合理的な判断に依存するほかはないのであ
るが、この調査の方法、時期等具体的な手続規定は設けられていないから、その権
限を行使するかどうか、また、いかなる方法、場所で行使するかは、税務職員が適
宜定めうるところであり、調査事項等は税務職員の調査の過程からおのずから明ら
かになることもあるのであつて、税務調査に先だつてその調査事項を必ず特定しな
ければならないものではない。特に原告の場合には、昭和四〇年分については無申
告であり、昭和四一年分については収入金額が二、四〇〇、〇〇〇円、必要経費が
一、八一二、〇〇〇円と、いずれもラウンドナンバーで記載されているところから
みて正確な収支計算に基づくものとは認められず、さらに、昭和四二年分にいたつ
ては収入金額及び必要経費について何ら記載がなく、単に所得金額が五〇〇、〇〇
〇円と記載されているのみである。このような申告書についての調査事項が、全般
に及ぶのは当然であつて、調査事項をあらかじめ限定して特定する等のことが不可
能であることは明らかである。
しかして、調査事項を特定することが調査のための必要要件であるとすれば、この
ような申告については全く調査をなしえないこととなるが、そのような結論が不当
であることはいうまでもないところであつて、申告額の正否を検討するためあらゆ
る角度から調査することが当然許されるものである。
二 違法事由2
1 課税庁が実額計算の方法により課税を行なうためには、納税義務者が正規の簿
記の原則に従い、事実の取引を継続して記録した帳簿等を備え付け、かつ、税務職
員の帳簿等の調査検査に際してこれらを提示するとともに、税務職員の質問に対
し、協力することが前提である。納税義務者の協力を得られない状態のもとにおい
て、課税庁がすべての所得の発生原因を具体的に指摘しないかぎり、課税処分を行
なうことが許されないものとするならば、正確な記帳をしていない者、記帳してい
てもその調査に応じない者及び係官の質問に対し応答しない者等は、正しい納税を
行なつている誠実な納税者と比べて不当に租税を免れるという課税上著しい不公平
を生ずることとなるのである。
被告は後述するような経緯のもとに本件係争年分の課税処分をするについては所得
税法一五六条に基づき推計計算により算出せざるをえなかつたものである。
2 被告が本件処分をなすに際して原告を調査した経過は以下に述べるとおりであ
る。
(原処分時における経過)
(一) 昭和四三年九月九日午後一時四五分ころ、被告所属の職員b及びPが所得
税にかかる調査のため原告の店舗の入口に立ちどまつたところ、原告はあわてて店
舗内からでてきて店舗前の路上で対面した。そこで同職員が原告に身分証明書及び
検査章を提示して調査する意思を表示すると、原告は、今日は二時から出かけるん
で忙しいんだ。」といつて調査を拒否する態度を示したので、職員は「時間はとり
ませんから概略を聞かせて下さい。」と原告に調査に協力するよう要請して調査に
着手したが、原告は「なんの理由で調査するのか間違つているところを指摘してく
れ。」とか「ちやんと申告してある。とにかく今日はだめだ。帰つてくれ。」とか
言つて調査に対応する態度を全然示さなかつた。仕方なく職員が「今日は二時から
出かけるのであればまた次に伺いますが、その時にはいろいろの資料を見せてくれ
るんでしようね。」と念を押したところ、原告に「うちのような零細なところをい
じめても仕様がないだろう。見せる帳簿など何もない。」と大声で怒鳴つて職員を
店舗内にも入れようとせず、全く調査に非協力な態度を示したのでやむなく職員は
近日中に調査にくる旨を告げて原告方を辞去した。
(二) 原告は、ネツト式皮革乾繰機を使用して張草加工を営んでいるので、職員
は原告の機械の購入時の購入価格及び購入年月日等を明確にするため、製造元であ
る広畑金属工業株式会社東京出張所(以下「広畑」という。)に架電したところ、
応答に出た広畑の従業員から明日の一〇時ごろ責任者がいるからその時に調査して
もらいたい旨回答があつたので職員は同年九月一二日広畑に臨店した。
ところが、広畑の正面入口の路上に原告の自動車が駐車しており、職員が広畑に赴
こうとしたところ原告及びe・f民商事務局員ほか氏名不詳の者一名計四名がいき
なり自動車から出てきて広畑へ入ることを阻んだので、機械の購入価格及び購入年
月日を調査することはできなかつた。
(三) 昭和四三年九月一四日原告から電話で一九日午後一時に調査に応ずる旨の
連絡があつたので、職員は約束どおり同年九月一九日午後一時に原告の店舗に第二
回の調査に赴いた。
職員が原告の店舗に着くと、原告及びe民商事務局員外一名が店舗前に立つて職員
をむかえ直ちに二階の部屋に誘導した。二階の部屋はすでに民商事務局員及び会員
ら八名が待機していた。五分ないし一〇分程して、さらに原告の妻及び民商事務局
員ら五名が入室し計一六名が職員をとりかこんだ。
職員はまず原告以外の者に向つて「gさんの調査なんだから、私はgさんだけに向
つて質問し、返事はgさんからお聞きしますから」と断つたところ、原告は「申告
のどこが間違つているのか、それを教えてほしい。三月一五日申告是認だ」と発言
してきた。そこで職員は、原告に申告是認にはなつていない旨説明し調査に着手し
たところ、h及びf両民商事務局員が職員に向つて「調査の理由はなにか、事後調
査をやる以上相当の理由があるんだろう。gさんもそれを聞きたいといつているん
だよ」とか「事後調査はだれがきめるのか、一〇年も調査をしないところだつてあ
る。皆申告是認だ」とか言つて口をはさみ調査を妨害しはじめた。
職員は、調査を進めるため、原告に帳簿書類の呈示を求めたところ、原告は「白だ
から帳簿はない」と言つて呈示しなかつた。そこで職員は経費の概略だけでも把握
したいと思い、人件費について雇人数及び日給額を尋ねると、原告は「うちはパー
トだ、日給なんかbさんの方でよく知つているだろう。」と返答し、なんら具体的
な応答はえられなかつた。更に経費のうちで主要と思われる灯油代について尋ねた
ところ、原告は憤然として「まだ話がついてないじやないか、自分の申告のどこが
間違つているのか、それじや全部について質問してくるだろう。こんなことでは返
事しない」と大声で怒鳴つて調査に応じようとしなかつた。そのうちh民商事務局
員が「白色申告者は収支明細書を提出する義務があるのかないのか知りたい。」等
いたずらに無用の議論を吹きかけてきたので、職員が原告に「こんなに大勢いたん
では調査ができないし、時間がかかるばかりですからこの次にしてもよいですが、
gさんその時にはいろいろ聞かせてもらえますか」と言つて調査に協力方を要請し
たが、原告は「前提条件の話し合いがつくまでは何回きても同じことだ」と言つて
調査拒否の態度を変えなかつた。その後も職員は原告に調査に関係のない者の退室
を要請し、調査に協力方を要請したが、原告は応じなかつたので、職員はやむをえ
ず午後二時三五分ごろ原告方を辞去した。
(四) 昭和四三年九月二〇日午後三時五分ごろ原告の店舗に第四回目の調査のた
め臨店したが、原告は「そう毎日来られては営業妨害だ」「あんたを見ると頭が痛
い、ほんとだ帰つてくれ」と勝手なことを言つて怒鳴りちらしたので、職員は原告
に再考をうながし、調査に協力方を要望したところ、原告は大声で隣のi民商会員
を呼び寄せて「今日はほんとに頭が痛い、もう帰つてくれ」と怒鳴つて調査に応じ
ようとしないので、今回も調査できず原告方を辞去した。
(異議申立時における経過)
(一) 原告は昭和四四年二月一七日被告に対し異議申立てをしたので同年四月一
五日午後一時ごろ右異議申立ての審理を担当した被告所属の職員である大蔵事務官
jが、原告の店舗に赴いたところ、原告が不在であつたので、応接にでた原告の妻
および原告の友人hと称する者に再来を約して辞去した。
帰署の途中で同職員はたまたま原告に出会つたので、原告に本日の経緯を話したと
ころ、原告から「原処分は憲法違反で不当課税であるから再調査についても計数的
事項検討以前にこの不当課税の問題を解決してもらいたい。その解決なくしては恐
らく計数的事項を検討する段階には進めないと思うが、いずれにしても今度来ても
らいたい日を電話で告げるからそのつもりでおつてもらいたい。今度来てくれる場
合はこの問題を解決するよう充分検討して来てもらいたい。」と一方的にまくした
てられた。
(二) その後、原告から職員に電話で四月二二日に調査に応ずる旨連絡があつた
ので、職員は約束どおり同日午前一〇時四五分頃原告方に臨店した。
原告は直ちに職員を二階の居間に案内し、階下に下りていつた。約一五分位して原
告は民商事務局員及び会員と思われる者計八名とともに入室し職員の前にあらわれ
るや「本日おいでになつた仕事の目的は」と詰問してきた。職員が、原告から昭和
四〇年分・昭和四一年分及び昭和四二年分の所得税について異議申立書が提出され
たので、その審理のため調査にきた旨告げたところ、原告は「原処分の基礎となつ
たb調査官の調査内容が悪いから調査にきたのか、それともその調査内容の報告に
きたのか」と無用の質問をあびせかけてきた。そこで職員が再度調査の趣旨を説明
し、原告に対して協力方をお願いしたところ「あなたは私の異議申立書を読んでき
て下さいましたか、私の異議申立の趣旨は所得税額が過大ということのみでなく、
その基礎となつた調査自体が不当であつたものであるから、その不当調査にもとづ
く更正決定は無効であると申し立てている筈ですが、この点についてはあなたはど
う解釈されますか」と一方的な見解のもとに論争を仕掛けてきた。ここで職員は原
告と論争しても水掛論だと思い、原告に対して再度調査の協力方をお願いしたとこ
ろ、いきなりe民商事務局員が職員に大声で「お前は馬鹿かー向島税務署の特団係
と称する連中が数々の不当調査・犯罪的調査をなし、民商会員に対する一連の不当
更正決定をなしてきた歴史的背景を承知しておりながら、ぬけぬけと不当課税でな
いというのか、これほど明らかな不当課税がどこにあるかい、更正決定が無効とい
うことはわかりきつているじやないか、肚を据えて無効と何故いえぬ。」と暴言を
吐き抗議してきた。また原告は職員が記帳状況の質問並びに帳簿書類の提示を求め
たのに対し「そのような愚かな質問は今更せずともb調査官の調査内容を見れば書
いてあるでしようが、調査はこれで止めにして下さい。申し入れの時間の一二時に
なりましたので今日はお引取り下さい。何回お出でになつてもらつても同じことで
すが、またお出になりますか」と職員をやゆし、調査を拒否したので、やむなく辞
去した。
(審査請求時における経過)
(一) 原告は、昭和四四年六月一四日東京国税局長に対し審査請求を行なつたの
で、右請求の審理を担当した東京国税局協議団本部所属k協議官は、昭和四四年八
月二六日原告に対して書面で収支計算書及び証拠書類等の提出方を要請したとこ
ろ、同年八月二九日原告から担当協議官に電話で「収支計算書については帳簿等が
ないので作ることができない。経費については裏付となるものがあまりない。雇人
費等についてもアルバイト学生・主婦のパート等もあるが、内職でやつている者も
あつて受領印をとつてないものもある。そのうち都合のよい時に来てもらつて話し
合いたいからよろしく頼む」と回答があつたが、その後証拠書類等の提出はなかつ
た。
(二) 原告は、同年一一月二八日墨田民商の事務局長及び会員らと来団したの
で、担当協議官は協議団本部事務室で原告に会つたが、原告は「原処分の調査内容
を開示しない限り調査に応ずるわけにいかない」と言つて調査拒否の態度を変えな
いため、物別れとなつた。
(三) 担当協議官は、同年一二月二日午前一一時三〇分ころ、原告方に赴いて、
原告に面接したが、原告は「原処分の調査内容を開示し弁明書の写を提示しない限
り調査に応ずるわけにはいかない」と言つて、調査を拒否したので、やむを得ず午
後一時頃原告方を辞去した。
(四) 担当協議官が同年一二月八日原告に電話で証拠書類の提出方並びに調査に
協力方を要請したところ、原告からは弁明書や調査内容の開示がなければ私の方で
も内容に立入るわけにはいかない旨の返答で調査に協力はえられなかつた。
三 違法事由3
1 被告に、原告の係争年分における一般経費及び特別経費のうち雇人費の算定に
あたつては同業者率を基礎としたものである
が、同業者のうちから標本対象者として抽出選定した条件は
(1) 向島税務署並びにその近隣署である本所・葛飾・足立・荒川税務署の各管
内に事業所を有する個人
(2) 「皮革加工」を業務種目とする者のうち、ネツト式皮革乾燥機を使用して
張革加工を営んでいる者
(2) 青色申告により正確に収支計算をしている者
の三点であつて、右各条件を満たしている同業者は、昭和四〇年及び昭和四一年に
ついてはそれぞれ一件、昭和四二年については三件のみである。
2 同業者の抽出選定地域を向島税務署管内のほか四税務署管内に限定した理由
は、皮革加工を業としている者が右各署管内に集中しているためである。
なお東京都と同一経済圏に属し、右地域に近接しており、立地条件もほぼ同一と認
められ、かつ、原告と同じ業務種目の納税者が存在すると見込まれる関東信越国税
局管轄下の川口税務署(皮革加工業者が多いといわれている埼玉県草加市を管轄し
ている。)管内の納税者についても調査がなされたが、ネツト式もしくはそれ以外
の皮革乾燥機を使用して張革の賃加工のみを行つている青色申告者は一人も存在し
ていなかつた。
3 いわゆる皮革加工業(行政管理庁編「日本標準産業分類」では細分類二・九一
一番に「なめしかわ製造業」として表示されている。)の業態は、概ね原皮(加工
等がされていないままの一次製品)の仕入・油脂分の除去・脱毛・石灰等による洗
じよう・ニカワ等による皮なめし・染色・張革及びつや出し等の製造工程によつて
皮革として商品化し、これを販売するものである。そして、右皮革加工業者は、前
記の地域に集中しているのであるが、一般的には、原皮の仕入から販売まで同一の
業者により行なわれているものであつて、原告のように、ネツト式皮革乾燥機を使
用して右製造工程の一部分である張革加工についてのみ賃加工を業とする者は前記
のとおりごく限られている。
なお、右乾燥機以外の乾燥機を使用して張革の賃加工を専業としている青色申告者
は存在しない。
4 原告は、住所・氏名を明らかにしない同業者の数値を根拠とした推計は違法で
あると主張する。
しかし、所得税に関する事務に従事する者は国家公務員法に定めるよりも重い守秘
義務を所得税法により課されている(国家公務員法一〇〇条一項、一〇九条一二号
及び所得税法二四三条参照)が、その理由は、特に税務職員については、与えられ
た権限により納税者及びその関係人の財産上、その他の秘密に亘ることを知り得る
立場にあるところから、これらの秘密の保持を遵守することをより厳しく義務づけ
る必要があることによるものである。
そして、同業者の氏名を開示することは、別表一において右同業者の売上金額等を
明らかにしていることと相まつてその結果として第三者の秘密を漏らすことにな
り、所得税法二四三条に定める守秘義務に反することとなるので、これを公開する
ことはできないのである。
5 原告は、同業者抽出選定にあたつては、青色申告者に限らず白色申告者をも加
えるよう主張する。
もとより、白色申告者であつても収支計算を正確に行ない得る帳簿を備付け、原始
記録を保存し、これに基づいて決算をなし確定申告書を提出している納税者であれ
ば、原告の必要経費を推計する同業者としてこれを採用することに異論はない。
しかしながら、現実の問題として右のような帳簿書類に基づき確定申告書を提出し
得る納税者であれば、当然青色申告者としての数々の特典を享受することができる
ところから、所轄税務署長に対し青色申告の承認を申請し、青色申告者となつてい
るのが通常であるため、事業所得を有する白色申告者のなかにはそのような納税者
は極めてまれであり、現に原告のように皮革加工業のうちでもネツト式皮革乾燥機
を使用して張革加工を営んでいる白色申告者の中にはそのような納税者は被告の調
査したところでは見あたらない。
従つて、原告が主張するように白色申告者を標本とするためには、調査の結果、同
業者の標本として使用できると認められる程度に収支実額により所得を把握した納
税者を使用するほかはないが、原告と同業種の白色申告者についてはそのような調
査事績のあるものは存在しなかつた。
このような状況で白色申告者の計数を標本中に混入することは、かえつて同業者率
を不正確、不合理なものとするおそれが多分にあり、このような同業者率を用いた
推計方法がより合理的であるかのごとき原告の主張は失当というべきである。
ちなみに、本件においては、青色同業者だけを抽出選定した結果は、白色同業者を
も加えた場合に比して一般経費率は高くなつていたわけであるから、青色申告者だ
けによつても原告に不利に作用はしていないのである。
四 違法事由4
1 原告は、本件推計計算の同業者が少ないことをもつて推計に合理性がない旨主
張するが、推計課税における合理性の有無は、同業者として抽出選定した諸条件
が、調査すべき納税者(原告)の標本として適切であるかどうかによつて判断され
るべきてあり、いたずらに計数についての信頼度の低い標本を加えて件数のみを増
加させても、却つて合理性を低からしめる結果となるのである。
従つて、標本として選定するための諸条件が適切であるならば、同業者の抽出が一
件であつても原告との類似性は高く、推計の合理性が担保されることとなる。
2 原告は、一般経費のうち運送費の比重が大であることを指摘し、被告の推計計
算の合理性を非難する。
もちろん、事業用の自動車を必要とするにもかかわらず、これを所有していなけれ
ば所謂運送費が計上されるのは当然であるが、一方、事業用の自動車を所有する者
は、自動車の減価償却費、公租公課(自動車税)燃料費等の各経費が、また場合に
よつては雇人費(運転手)、自動車購入に伴う借入金支払利息、車庫等の賃借料等
が計上され、これらの合計額が運送費と対比される経費となるのであり、原告が必
要経費について実額で主張するのであれば格別、自動車の有無によつて一般経費率
の大小を速断することはできない。
さらに原告は、製品等を自家用車で運送する場合、専従運転手の在・不在によつて
も運送に関する費用に極度の差が生じ、運転手を雇用することにより費用がその分
だけ多額に計上される旨主張する。
しかしながら、原告は専従の運転手を雇用していないのであるから仮りに本件同業
者が専従の運転手を雇用していたとしても、原告に有利に作用することこそあれ、
不利になることはありえない。
五 違法事由5
1 原告は、特別経費のうち雇人費率については、使用機械台数が何台であるかに
よつて、使用人の数は単なる倍率で増加するものではなく、個々的に業者の特殊事
情に応じて異なると主張するが、原告の右主張は機械の台数と雇人の数についての
関係を述べているようである。
しかしながら、本訴において被告が主張しているのは収入金額に対する雇人費の割
合(雇人費率)についてである。被告の調査に対して原告はこれに応じないで雇人
費の内容についても答えず、また所得税の源泉徴収義務者としての源泉所得税の申
告、納税もしていないのであるから実額による把握は不可能であり、被告が同業者
の雇人費率によつて原告の雇人費を推計したことはむしろ当然といえるのである。
2 秋に、雇人費率は、標本Aについては各年分を通じてそれ程の差はないが、昭
和四二年分の標本A・B・Cをみた場合には、確かに原告の主張するようにある程
度差異のあることは認められる。しかし、これは原告の営む業種の特殊性から被告
が青色申告者を悉皆的に調査した結果によるものである。原告は右標本にバラツキ
があるが故をもつて本件推計方法に合理性がないと主張するが、推計方法の合理性
の判断は、実額計算の可能性の程度、他のより合理的な推計方法の存在の有無、被
課税者の推計方法についての反証の程度、調査への協力の度合などをも勘案してな
されるべきところ、本件調査時における原告の応接態度はすでに述べたとおりであ
り、そのため被告は同業者の率を参考にして推計により原告の所得金額を算定した
もので、同業者が少なくあるいはその率にバラツキがあるとしても、右に述べた原
告の調査協力の度合その他本件事案の内容を考えると、本件について、被告のなし
た推計方法以上に合理的な推計方法は見出せない。
なお、原告は特に昭和四二年分について標本三件の雇人費率のバラツキを指摘する
ので、仮に右標本のうち最も高い率によつて計算しても、右年分の事業所得金額
は、次のごとく、本件更正に係る事業所得金額(一、三四〇、五一〇円)を上回る
のである。
(1) 収 入 金 額  五、三六三、一九一円
(2) 一 般 経 費  一、二七二、六八六円
(3) 算出所得金額   四、〇九〇、五〇五円
(4) 特 別 経 費  二、五七一、八一四円
雇 人 費     二、三一八、五〇七円
そ の 他       二五三、三〇七円
(5) 事業専従者控除額   一五〇、〇〇〇円
(6) 事業所得金額   一、三六八、六九一円
3 原告の主張する各係争年分の雇人費額は、確定申告書に記載した事業所得金額
にほぼ合致するよう適当に数字を組み合わせたに過ぎず、何ら裏付のある帳簿書類
に基づいて計算したものではない。
(一) 原告は、各係争年分とも、従業員ごとに、日給額に出勤日数を乗じて月給
額(ひいては年間給与額)を計算し、それに賞与額を加算して年間の雇人費を算出
しているが、当時そのような従業員がいたかどうかも定かでないし、もし、そのよ
うな従業員がいたとしても、日給額、出勤日数等についてそれを確認しうる裏付は
ない。
(二) 原告は、賞与額につき、昭和四〇年分は月給額の四ケ月、昭和四一年分は
三・五ケ月、昭和四二年分は三ケ月としてそれぞれ計算しているが、これは社会の
実情と全く遊離したもので真実性に乏しい。
すなわち、労働省の「毎月勤労統計調査総合報告書」(本調査は、全国調査によつ
て常用労働者五人以上の事業所についての雇用、給与、労働時間の全国的な動きを
毎月明らかにすることを目的としている。)の「第三二表産業大中分類および性
別、常用労働者一人平均月間現金給与額、総実働時間数ならびに出勤日数」(以下
第三二表という。)によれば、原告の営む業種に類似すると考えられる「なめしか
わ製造業」における賞与の支給月数は、男子にあつては昭和四〇年分一・三五ケ
月、同四一年分一・四八ケ月、同四二年分一・八三ケ月と、また、女子にあつては
それぞれ一・四八ケ月、一・五〇ケ月、一・八七ケ月となつているが、原告の計算
は、支給月数が余りにも多過ぎるのみならず、年の経過による支給傾向にも相反し
ている。
なお、右の第三二表に基づく賞与の支給月数の計算方法は、次のとおりである。
〔男子〕
(イ) 昭和四〇年分
(三二、三〇六円―二九、〇二五円)×一二月÷二九、〇二五円=一・三五
(ロ) 昭和四一年分
(三七、〇五〇円-三二、九七五円)×一二月÷三二、九七五円=一・四八
(ハ) 昭和四二年分
(四六、〇四六円―三九、九二六円)×一二月÷三九、九二六円=一・八三
〔女子〕
(イ) 昭和四〇年分
(一七、〇六三円-一五、一八七円)×一二月÷一五、一八七円=一・四八
(ロ) 昭和四一年分
(一八、〇七七円―一六、〇六五円)×一二月÷一六、〇六五円=一・五〇
(ハ) 昭和四二年分
(二一、五二二円―一八、六二〇円)×一二月÷一八、六二〇円=一・八七
(三) 仮に、原告が提出した「雇人費の年別明細表」に記載した従業員がすべて
存在し、同表に記載された日数働いていたとし、その従業員が平均的な給与の支払
を受けた場合における原告の雇人費の額を、前記の第三二表により試算すると、次
のとおりであり、その結果は、被告が主張した雇人費額が妥当であることを裏付け
ている。
(1) まず、右第三二表に掲記されたなめしかわ製造業(規模五~二九人)にお
ける現金給与総額(賞与額を含む。)の月別平均から、性別の日給額を計算すれ
ば、次のようになる。
(2) 右(1)の日給額を基に、原告の雇人費額を計算すれば、次のようにな
る。
(3) しかも、原告の従業員のうち少なくとも一部はパートタイマーであつたこ
とは、原告においても自認するところであるから、かかる事情を考慮すれば、右各
表の雇人費額は更に相当程度減少するわけであり、その結果得られる雇人費の額
は、右各表の各金額よりも相当低くなるはずである。
(四) 原告は、昭和四一年分の雇人費は二、〇九六、二五〇円であると主張する
が、原告が、昭和四一年分所得税確定申告書に記載した雇人費を含む必要経費の額
は一、八一二、〇〇〇円である。
ところで、原告は、原告の事業の必要経費が収入額に占める割合について、一般経
費にあつては三〇パーセント、特別経費のうちの雇人費にあつては五〇パーセント
前後かかつていると供述しているところであるから、この比率によつて、原告が自
分なりの帳簿に基づいて計算したという右確定申告書に記載されている必要経費の
額一、八一二、〇〇〇円を、一般経費と雇人費とに按分すると、次の計算式のとお
りであつて、同年分の雇人費相当額は一、一三二、五〇〇円となる。
計算式
(1) 雇人費が必要経費に占める割合=雇人費五〇%÷(一般経費三〇%十雇人
費五〇%)=六二・五%
(2) 昭和四一年分確定申告書に記載された必要経費のうちの雇人費=必要経費
の合計一、八一二、〇〇〇円×雇人費が必要経費に占める割合 六二・五%=一、
一三二、五〇〇円
従つて、原告が主張する雇人費二、〇九六、二五〇円は、右一、一三二、五〇〇円
に対して約二倍にも相当し、極めて不合理であつて措信できないものである。
なお、右の一般経費と雇人費との按分計算は、特別経費をすべて雇人費であるとし
て計算したものであるが、建物減価償却費、借入金利子及び地代などの雇人費以外
の特別経費があるとすると右雇人費相当額一、一三二、五〇〇円はさらに低額とな
るのである。
(五) 原告は、各年分の雇人費の計算の基礎とした日給額は、女子従業員につい
ては昭和四〇年分九〇〇円、同四一年分一、〇〇〇円、同四二年分一、二〇〇円で
あり、また、男子従業員については、昭和四〇年分一、四〇〇円、同四一年分一、
三〇〇円及び一、六〇〇円、同四二年分一、八〇〇円及び二、〇〇〇円であるとし
て雇人費を計算し、その計算の根拠は原処分調査担当者bの証言に基づくものと主
張するのである。
しかし、b証人が、男子及び女子の両者の平均賃金が昭和四〇年分九〇〇円、同四
一年分一、〇〇〇円、同四二年分一、二〇〇円である旨を証言していることは明ら
かであるから、原告がb証人の証言した日給額を女子従業員だけに援用し、男子従
業員についてはこれを上回る根拠の不明確な日給額によつて雇人費の額を計算して
いることは、明らかに失当であるといわざるをえない。
ちなみに、被告が主張した男女別の日給額の平均額と、b証言の日給額と対比する
と、次表「平均日給額の比較」のとおりであつて、この対比によつてもb証言の日
給額は、男女平均の日給額であることが明らかである。
(六) また、原告の主張する雇人費の額を争いのない原告の各係争年分の収入金
額によつて除して、いわゆる雇人費率に相当する比率を計算すると、次の計算式の
とおり昭和四〇年分五八・三六パーセント、同四一年分五三・五三パーセント、同
四二年分六〇・三九パーセントである。
計算式
(原告の主張する雇人費)÷(争いのない原告の収入金額)×一〇〇=(比率)
昭和四〇年分
一、五六〇、〇〇〇円÷二、六七三、〇〇三円×一〇〇=五八・三六%
昭和四一年分
二、〇九六、二五〇円÷三、九一五、八八七円×一〇〇=五三・五三%
昭和四二年分
三、二三八、六〇〇円÷五、三六三、一九一円×一〇〇=六〇・三九%
ところで、被告が、悉皆的に調査した原告の同業者の雇人費は、別表一で示すとお
りであるが、この同業者の雇人費率と右に計算した各年分の比率とを比較すると、
右比率は各年分とも異常に高率であつて、同業者の雇人費率の最高率である四三・
二三パーセントをもはるかに上回るものである。このことは、原告が主張する雇人
費が真実性のない極めて不合理なものであることを如実に示しているものであると
いわざるをえないのである。
六 違法事由6
1 建物の取得価額について
減価償却の対象となる建物は、原告の妻d名義の建物のうち、原告が事業の用に供
していた部分である。
妻dは、昭和四一年九月二七日付をもつて、その頃まで居住していた墨田区<以下
略>の建物(家屋番号<以下略>、木造瓦葺二階建居宅、以下「旧建物」とい
う。)及び借地権(八九・一平方メートル)を訴外lに総額二、三〇〇、〇〇〇円
で譲渡した。このため、被告は右譲渡による所得税の申告をしようようしたとこ
ろ、妻dは、右譲渡による代金は、墨田区<以下略>、同<以下略>の建物(家屋
番号<以下略>、木造セメント瓦亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場兼居宅、昭和四一年
九月三〇日新築、以下「新建物」という。)及び同区<以下略>土地(宅地九八・
三五平方メートル)の取得資金にあてた旨申立て、租税特別措置法三五条(昭和四
一年法律第三五号改正による規定)に基づく居住用資産の買換えを申請し、所得金
額を零とする確定申告をなしたものである。
右申立て等による新旧建物の取得及び譲渡の情況は次のとおりである。
<略>
そこで、被告は、各建物減価償却費算定の基となる取得価額について検討した結
果、旧建物については妻dの申立てによる八四〇、〇〇〇円を相当と認め、新建物
については、妻dの一階工場分の申立額五二八、〇〇〇円について建築工事請負人
布施信二の領収証等が存することから、これが取得価額を五三〇、〇〇〇円と認定
したものである。
2 事業専用割合について
原告は、新旧いずれの建物についても一階を仕事場として事業の用に供していたの
であるが、
(一) 旧建物の床面積は、一階が三九・六平方メートル、二階も同じく三九・六
平方メートルであるので、床面積按分により事業用分を五〇パーセントと認めた。
(二) 新建物については、一階工場部分の取得価額が前述のとおり明らかである
ので五三〇、〇〇〇円全額を認めた。
3 償却の方法及び耐用年数
原告は、償却の方法について被告税務署長に届け出ていないので、所得税法四九
条、同法施行令一二三条及び一二五条等の規定により定額法とした。
また、耐用年数については、別表二注書のとおり減価償却資産の耐用年数等に関す
る省令によつたものである。
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求原因一 (本件各課税処分の経緯)については当事者間に争いがない。
二 原告主張の違法事由の存否
1 違法事由1(質問検査権)について
所得税法二三四条所定の税務署職員の有する質問検査権は、所得税の賦課徴収とい
う行政作用の適正な執行のための必要上認められたものであつて、相手方たる納税
義務者らの承諾を前提とするいわゆる任意調査の権限にとどまるものであるが、相
手方は当該職員の質問に対して真実応答義務を課せられ、また検査の要求に対して
は正当の理由なくして拒絶してはならない受忍義務を課せられるものである。そし
て、当該職員が右権限を行使するかどうか、また、その範囲、程度、時期、場所、
方法については当該職員が具体的事情に鑑み、質問検査の客観的必要に応じ、社会
通念上相当な限度において適宜定めうるところであるから、右権限の行使は右の制
限内、従つてまた質問検査を受ける相手方の受忍義務の相当範囲内でなされるべき
であることは要請されるけれども、それ以上、すべての場合に具体的事項を特定し
て調査の合理的必要性を開示することまでを当該職員に一般的に義務づけたものと
解することはできないというべきである。
ところで、証大bの証言によれば、向島税務署においてはかねて原告につき概況調
査を行つたところ、その結果、ネツト式乾燥機が二台設置されていること、そのう
ち一台の代金九〇〇、〇〇〇円が月賦で返済されていること及び従業員は原告本
人、妻のほかパートタイマーの女性四人であること等が判明しただけであつたの
で、係争年度の所得に関して、事業規模を把握し、売上、経費等事業の全般に亘つ
て実額調査の必要があるものと判断し、同署職員b及びcに対して右調査を命じた
ものであること、同人らは昭和四三年九月九日原告方に赴き身分証明書と質問検査
章を提示したうえ、昭和四二年分以前の所得税の調査のため来訪したこと、帳簿書
類、下帳簿、書類等があつたら見せてほしい旨用件を告げたところ、原告におい
て、同職員らに対し調査の理由、殊に提出済の確定申告書の誤りがあれば指摘して
もらいたいと質問したので、bが、調査は原告の確定申告にかかる所得金額が正し
いかどうかということ及び正しい所得金額はいくらかということを確認するために
行なうものである旨原告に答え、さらに調査に協力するよう求めたこと、及び同職
員らはその後同年九月一九日、同月二〇日においても、原告方に赴いたけれども、
その際も前記と同様の問答に終始したものであることが認められ、右認定を覆えす
に足りる証拠はない。
右認定事実からすると、原告の係争年分の事業所得に関しては調査、従つて質問検
査権を行使する客観的必要があり、その行使は前記制限の範囲内において適正に行
なわれたものであつて、原告はこれに応ずべき受忍義務があるというべきであり、
原告の利益をさらに配慮して前記認定以上の調査理由の開示をしなければならない
とすべき特段の事情も認められないから、本件税務調査の手続には何らの違法がな
いといわなければならない。
原告の違法事由1の主張は採用することができない。
2 違法事由2(推計の必要性)について
証人bの証言によれば、向島税務署職員b及びcは、昭和四三年九月九日所得税に
かかる調査のため原告方店舗を訪ねたところ、原告が「今日は忙しいから応じられ
ない、確定申告のどこがまちがつているか指摘してもらいたい」等というので、そ
れ以上実質的な調査をするまでには至らなかつたこと、同年九月一日原告、から電
話があつたので、同月一九日b及びcが原告方を訪ねたところ、民商会員ら一四名
が原告及び同人の妻とともに同席しこもごも、「原告の確定申告のどこがまちがつ
ているか指摘せよ」と何回もくり返し、bが「帳簿があれば見せてもらいたい」と
要望すると、原告は「自分は白色申告者だから帳簿はない」と返答し、さらに、b
が原告方の雇人費につき質ねたところ、原告は「うちはパートだ」というのみで、
日給の額についての具体的な答弁をしなかつたこと、さらに、同年九月二〇日bが
一人で原告方を訪ね、調査に協力してもらいたい旨告げたところ、原告は「何回来
ても調査には応じられない」との返答をしたので、bは、これ以上折衝しても原告
の側で調査に応ずる意思のないものと判断するに至つたことを認めることができ
る。
 次に、証人kの証言によれば、東京国税局協議団本部所属協議官kは、原告の本
件審査請求につき担当協議官として昭和四四年八月末原告に対し、書面で収支計算
書及び証拠書類等の提出方を求めたところ、原告から電話で、帳簿も証拠書類もな
いので提出できない旨の連絡があつたこと、同年下月ころ、原告は墨田民商の事務
局員らとともに来庁し、k協議官に対し、かねてより原告からなされていた本件審
査請求につき被告から提出すべき弁明書の副本の交付要求、口頭意見陳述のための
補佐人の許可を重ねて求めたので応じがたい旨回答したところ、「右要求が容れら
れないのなら調査にも応じられない」と答えたこと、さらに、同年一二月初めこ
ろ、k協議官が原告方を訪ねたところ、原告は被告からの弁明書の取寄せ及び補佐
人の許可に固執し、調査に応ずる態度を示さなかつたこと、その後、k協議官と原
告との間に二、三回電話のやりとりが行なわれたが、原告は、なお弁明書の取寄せ
と補佐人の許可をしてもらいたいと繰り返すのみで、同協議官の調査に無条件に応
ずる旨の意思を表明しなかつたことを認めることができる。他に以上の認定を左右
するに足りる証拠はない。
以上の認定事実によれば、原告が向島税務署職員の調査に応じなかつた理由は、結
局、同職員が、右調査の具体的必要性の理由を告げなかつたということに帰すると
ころ、右の点について職員の所為に何らの違法がないことはすでに違法事由1につ
いての判断において説示したところであり、さらに、成立に争いのない乙第三〇号
証の一、二によれば、原告は昭和四二年分の所得税の確定申告書には所得金額のみ
を記載し、収入金額及び必要経費についてはこれを記載していないことが明らかな
のであるから、少なくとも、この点についてだけみても税務署職員において原告に
対し質問し、調査することは原告においてもこれを予知しうるところであるから、
原告が、この点に思いを致さず、職員の調査に対しこれに応ずる態度を示さなかつ
たことは到底左袒できないといわざるをえない。
また、原告は国税局協議官の調査についても、被告からの弁明書の取寄せ及び補佐
人の許可の申出に固執し、これに応じなかつたものであるが、協議官において原告
の右申出に対しこれを認容すべき法律上の根拠はないのであるから、右申出の認容
を楯にとつて原告があくまで調査に応じなかつたことも到底これを正当ならしめる
事由があつたということはできない。加うるに、以上の税務職員の調査当時、原告
方では帳簿や原始記録も存在しなかつたというのであるから、結局、被告において
原告の各係争年分の収支計算をし、その所得の実額を把握することが困難であつた
ものといわざるをえないのである。
以上の次第で、被告において本件課税処分をするについて推計によりこれをなした
ことには何らの違法も存しないといわなければならない。
原告の違法事由2の主張も採用することができない。
3 違法事由3(同業者の抽出方法について)
(一) その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真
正な公文書と推定すべき乙第一ないし第六号証、第七ないし第一二号証の各一ない
し三、第一三ないし一八号証、第一九、二〇号証の各一ないし三、第二一、二二号
証、第二三、二四号証の各一ないし三、第二五ないし第二八号証、証人mの証言並
びに弁論の全趣旨を合わせると、原告と同じくネツト式皮革乾燥機を使用して張革
加工業を営む納税者は向島税務署及び隣接税務署管内に集中しているところ、その
中でも青色申告者は、原告の所轄署である向島税務署の管内に昭和四〇年及び昭和
四一年についてはそれぞれ一件、昭和四二年については三件見出されるだけで、同
署と隣接する本所、葛飾、足立、西新井、荒川の各税務署管内には一件も存在しな
いのみならず(なお、ネツト式皮革乾燥機以外の機械を使用して張革加工業を営む
者も右管内には存在しない)、また、前記五署の管轄区域に近接しており、立地条
件もほぼ同じでかつ原告と同じ業務種目の納税者が存在すると見込まれている埼玉
県川日税務署管内に範囲を拡大しても一件の同業者も見出しえないこと、並びに被
告が同業者を抽出選定するにあたり恣意の働く余地は全くなかつたことが認められ
る。
(二) 被告がその抽出選定にかかる同業者をA・B・Cと符号で表示し、住所・
氏名をもつてこれを特定しないのは、国家公務員法一〇〇条一項、所得税法二四三
条所定の税務職員に課せられた守秘義務に基づくものであることが明らかであると
ころ、前掲乙第一号証、第七号証の一ないし三、第一三号証、第一九号証の一ない
し三、証大mの証言によれば、向島税務署管内における前記同業者の抽出選定及び
右同業者の数値については何らの作為を加えた事実はなく、その他本件において、
被告が右守秘義務があるにもかかわらず敢て右同業者A・B・Cの氏名等を公表し
なければ、被告の課税手続の公正が把握しえないような特段の事情も認められない
ので、被告の右所為はやむをえないものというべく、また、右氏名等を公表しない
ということだけをとらえて被告の推計を不当、不合理なものということができない
から、右同業者の数値を根拠とした推計をもつて違法ということはできない。
(三) 同業者を抽出選定するにあたつては、当該同業者に関する資料が正確性を
有するものであるべきは当然であるから、これをその正確性が制度上担保されてい
るものというべき青色申告者のほかに、白色申告者の同業者からも抽出選定するに
あたつては、当該業者毎にその資料の正確性の有無をも検討すべきところ、証大b
の証言によれば、被告所属職員が同業者の抽出選定にあたり、白色申告者について
もその収支内容を調べたが、いずれも原告と対比すべき同業者として正確な資料を
具備するものとは認められなかつたものとしてこれを採用しなかつたことが窺わ
れ、被告において同業者選定にあたり当初から白色申告者を全く無視していたとい
うわけのものでもないから同業者A・B・Cがいずれも青色申告者であるからとい
つて、これに基づく推計を不合理ということはできない。
原告の違法事由3の主張も採用することができない。
4 違法事由4(一般経費の推計)について
(一) 推計課税は、所得金額又は損失金額の実額が把握できない場合に、推計に
より得た蓋然的近似値を一応真実の所得金額又は損失金額と認定して課税する制度
であるから、当該納税者と対比すべき同業者の抽出選定にあたつては、その事業規
模が近似していることはもとより、その選定数の多いことが望ましいことはいうま
でもないが、当該納税者と同一地区で正確な資料を有する同業者が僅少な場合は、
対比した業者がたとえ一件のみであつても、そのことから直ちに推計を不合理とい
うことはできないものというべきである。
ところで、被告が原告の一般経費の推計にあたり、資料として抽出選定した同業者
は、昭和四二年分はA・B・Cの三件であるが、昭和四〇、四一年分についてはA
の一件にすぎない。しかしながら、昭和四二年分のA・B・Cの三件の一般経費率
は互いにその隔差は僅かであるから、その平均値二三・七二パーセントを採用する
ことは合理的であると認められるし、昭和四〇年分のAの一般経費率二三・一三パ
ーセントは右の昭和四二年分の平均値に近似しているから他に合理的な方法も見出
せない本件においては、右経費率を採用して昭和四〇年分の原告の一般経費を推計
することも許されるものというべきである。さらに、昭和四一年分のAの一般経費
率は二八・二三パーセントであつて、昭和四二年分の平均一般経費率二三・七二パ
ーセントを相当程度上回つているが、右経費率を採用することはむしろ原告に有利
な結果をもたらすものであるから、右経費率を適用して原告の昭和四一年分の一般
経費を推計しても違法というには当らない。
また、被告の抽出選定した同業者A・B・Cと原告との業態の類似性については、
すでに認定した事実、証人k及び弁論の全趣旨によれば、いずれも向島税務署管内
に所在すること、ネツト式皮革乾燥機一、二台を使用していること、売上金額が原
告と比べほぼ半分の額であること等が認められるだけで、営業の立地条件、使用車
両台数、従業員数等の具体的類似性については明らかではないけれども、原告本人
尋問の結果(第一回)によれば、原告の業種での一般経費率は各年分を通じて大き
な変化を示すものでないことが認められること、すでに認定したとおり原告の業態
の特殊性からみて同業者数が限られることもやむをえないと考えられること、昭和
四二年分についての選定資料が三件あれば、その平均値は最少限度、個々の業者の
個別具体的な事情を捨象しうるものと考えられること等を総合勘案すれば、昭和四
二年分のA・B・C三件の平均一般経費率と昭和四〇・四一年分のAの一般経費率
との間に原告に不利に作用する著しい隔差が認められない以上、原告とAあるいは
B、Cとの間の個別的具体的事情のすべてにつき類似性が明らかとなつていなくと
も、昭和四二年分は勿論、昭和四〇・四一年分についても右同業者の一般経費率を
採用することは許されるものと解すべきである。
(二) 比較する同業者がたとえ一件であつても同業者率によるということは原告
と同業者とを全く同一の条件の下にあるものとして扱おうとするものではなく、あ
くまでも近似値による推計を行なおうとするものであるから、近似値としての推計
を不合理ならしめる程度に特殊と認められる事情があるのでなければ、個々の特殊
事情を考慮する必要はないものというべきである。
そこで、原告に右のような意味での特殊事情があるかどうかにつき考えるに、すで
に認定したとおり、原告の同業者A・B・Cは向島税務署管内に存在し、いわゆる
皮革加工業者が同署及びその近隣五税務署管内に集中していることからすれば、原
告と同業者A・B・Cにおける元請と下請業者の地理的条件が個々に異つていると
しても、その相異が運送費を含めた一般経費の推計を不合理ならしめる程度に顕著
なものであるとはいいがたいというべきである。
また、原告本人尋問の結果(第一回)によれば、元請業者の負担による運送を利用
することは稀であることが認められるし、近時自家用車を所有しない業者の存在は
むしろ例外であることは公知の事実であることからすれば、自家用車で運送するも
のと、元請業者の負担で運送するものと区別をせずに一般経費の推計をしたとして
も、不合理とはいえない。
さらに、専従運転手の有、無によつて差が生ずるのは雇人費の額であつて、雇人費
は特別の経費として別途考慮すべき性格のものであるから、運転手の有無を考慮せ
ずに一般経費の推計をしたとしても不合理とはいえない。原告の違法事由4の主張
も採用することができない。
5 違法事由5(雇人費の推計)について
(一) 被告は原告の雇人費を推計するにあたり、同業者の雇人費率を収入金額に
乗じてこれを算出しているところ、被告の主張する昭和四二年分における同業者
A・B・Cの雇人費率は、別表一の(三)のとおり、A三三・四八パーセント、B
四三・二三パーセント、C一八・五四パーセントの数値を示しており、その高低の
差が著しいのである。本来、雇人費が、当該事業に寄与する家族労働力の構成状
況、雇傭条件の差異、従業員の熟練度等の特殊な要素により影響をうけるところか
ら、単純に収入金額に比例しがたい支出項目であることにかんがみると、業者によ
つて、雇人費率に差異がみられるのは当然の現象ともいえようが、それだけに、三
件にとどまる僅少な事例を平均した数値を原告に適用すべき雇人費率とすることに
はたやすく合理性を認めがたいのである。
もつとも、だからといつて、同業者A・B・Cの各雇人費率のうち原告に最も有利
なBの四三・二三パーセントを適用すれば本件推計の合理性が担保されるというも
のでもないことは明らかであろう。そうすると、むしろ、原告の主張する各年分毎
の従事労働者数、日給額、雇傭労働時間についてそれぞれ認定できる合理的数値を
基礎として雇人費を推計する方法の方が被告の主張する推計よりも合理的であると
考えられる。
(二) そこで右観点から検討するに、原告本人尋問の結果(第二回)により原告
の工場・従業員を昭和四一年九月頃撮影したものと認められる甲第四号証の一、昭
和五〇年三月頃撮影したものと認められる甲第四号証の二、三、原告本人尋問の結
果(第一、二回)に弁論の全趣旨を合わせると、原告は昭和四〇年頃東京都墨田区
<以下略>で、女子従業員ならば概ね四名で操作するネツト式皮革乾燥機一台を使
用し、従業員五名(内男一名、女四名)を雇い張皮加工業を営んでいたが、同事業
所では製品の運搬、配達上道路が狭隘のため多大の不便があつたところから、昭和
四一年肩書地に住所及び事業所を移転し、引続き張皮加工業を経営し、同年から前
記乾燥機を更に一台増設したので、従業員も八名(内男二名、女六名)となり、昭
和四二年には従業員数九名(内男二名、女七名)となつたこと、原告方での女子従
業員は概ねいわゆるパートタイマーであるので、これを一日労働時間を八時間とし
て本件各係争年分における従業員別の月間出勤日数並びに年間在勤月数を算定する
と、原告主張のとおりの数値となることが認められ、他に右認定を左右するに足り
る証拠はない。
しかしながら、原告の主張する各係争年分における従業員の日給額及びボーナスに
ついてはこれをそのまま認めうる証拠いないのみならず、証人bの証言に照らして
も採用しがたいので、成立に争いのない乙第三一号証の一ないし三(労働大臣官房
労働統計調査部作成の毎月勤労統計調査総合報告書昭和四五年版)の第三二表(産
業大中分類および性別、常用労働者一人平均月間現金給与額総実労働時間数ならび
に出勤日数)に掲記されたうち、原告の業種に最も近似すると認められる「なめし
かわ」製造業(規模五~二九人)における現金給与総額(賞与額を含む)の月別平
均及び月間平均出勤日数から性別の日給額を計算すると、次のようになることが認
められる。
そこで、右の日給額を基に、原告の各係争年分の雇人費額を計算すると、被告主張
のとおり、
昭和四〇年分    九八〇、八六八円
昭和四一年分  一、三〇四、一〇〇円
昭和四二年分  二、二二四、二〇〇円
となるので、さらに、右数値を当事者間に争いのない原告の各係争年分の収入金額
によつて除して、雇人費率に相当する比率を計算すると、次の計算式、すなわち
(推計による雇人費)÷(争いのない原告の収入金額)×一〇〇=(比率)
により、
昭和四〇年分  三六・六九パーセント
昭和四一年分  三三・三〇パーセント
昭和四二年分  四一・四七パーセント
となる。
そして、以上認定により推計した雇人費額を被告主張額、原告主張額、被告主張に
かかる同業者のうち最高雇人費率(四三・二三パーセント)による推計雇人費額等
と対比すると次表のとおりであることが認められる。
以上認定の事実関係からすれば、原告の各係争年分における労働従業員数、労働時
間及び全国平均日給額等を基礎として雇人費額を推計する方が実額に近似するもの
と考えられ、同業者の雇人費率によりこれを推計算出するよりもより合理的である
と解される。
よつて、被告のなした雇人費に関する推計方法は合理性を欠くものとしてこれを採
用することができないが、本訴においてすでに顕われた資料を総合すれば、前記の
とおり、推計算出しうるのであるから、右雇人費額をもつて被告の主張額に代置す
るのが相当というべきである。
6 違法事由6(減価償却費)について
証人bの証言によると、係争年分において原告が事業の用に供していたのは新旧建
物とも一階部分のみであつたことが認められ、原告の主張するように、二階につい
ても事業の用に供していたとの事業を認めるに足りる証拠はない。
そして、原告がその事業の用に供した新旧建物の種類構造、取得年月日、取得価額
並びに、原告が被告に対し右建物の償却方法につき届け出をしなかつたこと等につ
いては当事者間に争いがないから、これらの事実を前提として、所得税法四九条、
同法施行令一二三条及び一二五条により被告のなした建物減価償却費の計算(明細
は別表二参照)は正当として認容すべきである。
三 所得金額の認定
以上の次第で、原告の主張する違法事由のうち、雇人費の推計部分を除きすべて理
由がないので、被告の主張する原告の各係争年分の所得金額を前記推計により算定
した雇人費額により修正し算出すると、次表のとおりとなる。
四 結論
よつて、被告のなした本件各更正(決定)処分中、昭和四〇年分についての所得額
の認定は、当裁判所の前示認定額九四三、五四一円を超える部分につき違法である
から、原告の右決定の取消を求める本訴請求は右の範囲でこれを認容すべく、昭和
四一、四二年分について被告のなした所得額の認定(昭和四一年分については不服
申立により一部取消された残余の部分)は当裁判所の前示認定額の範囲内であつて
適法であるから、その取消を求める原告の本訴各請求はこれを棄却することとし、
訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 内藤正久 山下 薫 飯村敏明)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛