弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人長谷川勉、同沢荘一、同音喜多賢次の上告理由第一点について。
 本訴の訴旨は、発起人組合がその本来の目的に属しない石炭売買取引を行つた事
実を主張し、各組合員らに対し商法五一一条一項に基き右売買代金の連帯支払を求
めるにあり、商法一九四条一項に基き会社不成立の場合における発起人の責任を追
及するものではない。従つて、右取引後に会社が設立されたか否かは、本訴請求の
当否に何ら関係なく、この点に関する原判示にたとえ所論の違法があつても、原判
決の結果に影響しない。されば、論旨は採用し難い。
 同第二点について。
 本訴の訴旨は、論旨第一点に関し説示したとおりであり、従つて、本論旨摘録の
原判示もまた、上告人らはD石炭株式会社設立の目的を以て発起人組合を結成した
が、右組合本来の目的でない石炭売買の事業を「D石炭株式会社」名義で営み、そ
のため本件売買取引を行つたものと認定した趣旨と解すべきである。
 所論はすべて、これと相容れない見解に立脚するものであつて、理由がない。
 同第三点について。
 原判決は、本件石炭売買取引の実際にあつたのが上告人A1、同A2、同A3、
同A4の四名にすぎないことは当事者間に争いのないところであるが、右売買の法
律上の効果は本件組合員たる上告人ら七名全員について生じたものと判断した趣旨
と解すべきであり、右判断は正当である。何故ならば、組合契約その他により業務
執行組合員が定められている場合は格別、そうでないかぎりは、対外的には組合員
の過半数において組合を代理する権限を有するものと解するのが相当であるからで
ある。されば、論旨は理由がない。
 同第四点について。
 所論乙第一三号証の成立は、被上告人が不知を以て争うところであり、原審はこ
れが真正に成立したことを認めていないのであるから、同号証につき特に判示をし
なくても所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、九三条、八九条に従い、主文のとお
り判決する。
 この判決は、裁判官河村大助の反対意見があるほか全裁判官一致の意見によるも
のである。
 裁判官河村大助の反対意見は次のとおりである。
 本件石炭売買の衝に実際当つたのが、上告人A1、同A2、同A3、同A4の四
名にすぎないことは、当事者間に争のない事実である(原判決引用にかかる第一審
判決事実摘示参照)。ところが、原判決は、上告人らは「共同して」昭和二七年一
〇月二九日被上告会社から本件石炭を買受ける契約をし、同月三〇日から翌月一日
までの間に右石炭一九八・五五〇トンの引渡を受けたことが認められる旨判示して
いる。若し、右判示が、上告人ら七名共同して取引の衝に当つたと認定した趣旨な
らば、当事者間に争いなき事実と異る事実を認定した違法を免れない。また、若し、
右判示が、取引の衝に当つたのは前記上告人A1ら四名にすぎないが、その法律上
の効果は上告人ら組合員全員について生じたと判断した趣旨であるならば、このよ
うに判断すべき理由の説示を欠く点において、これまた理由不備の違法があるもの
といわなければならない。
 元来組合の業務執行と組合代理とは区別すべきものであるが、組合契約その他に
より、特定の組合員に業務執行を委任した場合において、その業務が第三者と法律
行為を為す必要あるものについては、別段の定めのない限り右委任に代理権授与の
契約をも包含するものと解すべきである。又業務執行者の定めのない場合において
組合の常務に属しない或特定の事項を特定の組合員又は第三者に委任しようとする
場合は、民法六七〇条一項により組合員の過半数を以て決することを要するものと
解すべきであるが、その特定事項が対外関係に属する場合は、別段の定めのない限
り右委任に代理権の授与も包含するものと解するを相当とする。しかして同条の「
組合員の過半数を以て決す」とは総組合員に決議に参与する機会を与え、その過半
数の同意によつて業務執行の方法を決定することを要する趣旨と解すべきであつて、
各組合員に対し賛否の意見を表する機会を与えることなく単に組合員の過半数の者
において、業務執行を為し得ることを決めたものではない。この理は代理の場合に
おいても同様であつて、多数者が少数者に意見を述べる機会を与えることなくして、
総組合員を代理する権限を有するに由ないことも当然の帰結である。然るに多数意
見が組合の過半数の者は当然に総組合員を代理して法律行為を為す権限ありと判断
し、組合員七名中の四名が組合を代理して為した行為は、他の三名の者が意見表示
の機会を与えられたと否とを問わず、これらの者に当然その効力が及ぶものと解せ
られたことには賛成できない。けだし、常務にあらざる業務につき組合員が予めそ
の計画を知るにおいては、自己の不利益と思う債務負担行為等につき、これを阻止
するための手段を講じ、場合によつては組合を脱退する機会もあるに拘らず、かか
る機会を与えられることなく、一部の組合員の独断専行による代理行為により、全
く関知しない組合員がその責任を負わなければならないような結果は到底認容でき
ないからである。
 そうとすれば、本件上告論旨第三点は結局理由があり、原判決はこの点において
破棄を免れない。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛