弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人水上孝正上告趣意第一点について。
 しかし、原審が所論判示第一の事実を認定したのは、被告人の原審公廷における
供述ばかりでなく、B提出の強盗被害顛末書及び昭和二三年二月一六日附「追テ」
と題する書面並びにC提出の被害顛末書中における各自関係部分に付判示に照応す
る被害顛末の記載、押収に係る匕首三挺の存在等を綜合考覈した結果に外ならない
のである。そして原判決挙示の証拠を綜合すれば右判示事実を肯認するに難くない
のである。しかも原審公判調書によれば、被告人は判示と同趣旨の供述をしている
ことが窺い得るのである。論旨摘録に係る被告人の供述は、必ずしも、被告人が判
示同旨の供述をなしたものと見ることを妨ぐるものではない。蓋し、被告人が原審
相被告人A等と本件強盗をすることを共謀したものと認定され得る以上、被告人が、
犯行現場において屋外で見張をしており、屋内に侵入した共謀者が如何なる暴行脅
迫をなし、如何なる財物を強取したかをその当時知らなかつたとしても、又その賍
物の分配を受けなかつたとしても、なお被告人は本件強盗の共同正犯であるといい
得るのであり、従つて判示同旨の供述と論旨摘録の供述とは何等相抵触するもので
はないからである。原判決には所論のような違法はなく、所論は結局事実審たる原
審の裁量権に属する事実認定を非難するに帰着し、上告適法の理由とならない。
 同第二点について
 刑の量定及び未決勾留日数の通算は(法定通算の場合は格別)事実審裁判所の裁
量に委ねられているところである。原審が被告人に対してなした量刑及び未決勾留
日数の通算は、本件にあらわれた諸般の事情を斟酌の上裁定した結果として首肯し
得るところであり、仮りに所論(一)乃至(四)掲記のような事情があるとしても
(所論(五)掲記にかかる原審が被告人に対する保釈許可を「殊更に」延引したと
いう事実は記録上これを認むべき証跡はない)、右原審の裁量を違法なりと断ずる
ことはできない。所論は畢竟事実審たる原審の裁量権に属する量刑等を非難するに
帰着し上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 しかし、被告人は昭和二三年七月二七日既に第一審において保釈を許可されてい
るのであり、所論原審公廷における被告人の自白は、同年一二月六日保釈中になさ
れたものであることは、記録上明白である。そして当裁判所大法廷の判例によれば、
「保釈後四ケ月以上を経過した後に公判廷においてなされた自白は憲法三八条二項
に所謂不当に長い拘禁後の自白ということはできない」のである(昭和二三年(れ)
第三九七号事件同年七月二九日判決、判例集第二巻九号一〇七八頁参照)。それ故
論旨は理由なきものである。
 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二四年九月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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