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平成一一年(ワ)第二九一八号 実用新案権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結日 平成一二年一〇月三一日)
        判     決
原告             シチズン時計株式会社
右代表者代表取締役【A】
右訴訟代理人弁護士  田 倉   整
同会 田 恒 司
右補佐人弁理士  【B】
被告             ユニバーサル・インスツルメンツ・ジャパ
ン株式会社  
右代表者代表取締役【C】
右訴訟代理人弁護士  阿 部 佳 基
同松 留 克 明   
同和 田 信 博   
同渡 辺 広 己   
同千 種 道 夫   
同中 島 麻 里   
右補佐人弁理士  【D】   
同【E】   
同【F】
  主   文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
  事実及び理由
第一 請求
  被告は、原告に対し、金一億一八八〇万円及びこれに対する平成一一年一月
一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 争いのない事実等
1 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を
「本件考案」という。また、本件実用新案に係る明細書(甲二)を、「本件明細
書」という。)を有していたが、右実用新案権の存続期間は平成一一年九月一二日
をもって満了した。
登録番号  第一八八九〇五五号
発明の名称 テーピング部品の供給装置
出願日   昭和五九年九月一二日
出願公告日 平成三年三月一五日
登録日   平成四年二月二五日  
実用新案登録請求の範囲
「多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付
機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング部
品供給装置において、前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上にテーピング
部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング部品を幅挟に供給する第
2の供給ユニットとを前記供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並
列して取付可能にし、このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の
供給ユニットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていることを特徴とする
テーピングの部品供給装置。」
2 本件考案の構成要件は、次のとおり分説される。
   (一) 多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組
付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング
部品供給装置において、
(二)(1) 前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上に
 (2) テーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング
部品を幅狭に供給する第2の供給ユニットとを
 (3) 前記供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並列して取
付可能にし、
(三) このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の供給ユニ
ットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていること
(四) を特徴とするテーピングの部品供給装置。
3 被告は、平成七年一月ころより、テーピング部品供給装置を備えた電子部
品装着装置を輸入、販売している。
4 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、
構成要件(二)(1)を充足する。
二 本件は、本件実用新案権を有していた原告が、被告に対し、被告の輸入販売
している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は本件考案の技術的範囲に属
するから、右輸入販売は右実用新案権の侵害であると主張して、右侵害による損害
の賠償を求める事案である。
第三 争点及びこれに関する当事者の主張
一 争点
1 被告の輸入販売している電子部品装着装置の特定
2 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構
成要件(一)を充足するか
3 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構
成要件(二)(2)を充足するか
4 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構
成要件(二)(3)を充足するか
5 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は公
知技術を利用したものか
6 本件考案の有効性
7 損害の発生及び額
 二 争点に対する当事者の主張
  1 争点1について
 (原告の主張)
 被告の輸入販売している電子部品装着装置は、別紙原告目録記載のとおり
特定される。
 (被告の主張)
 被告の輸入販売している電子部品装着装着は、別紙被告目録記載のとおり
特定される。
  2 争点2について
 (原告の主張)
本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「電子部品」を限定するような
記載はないから、テーピング部品を供給するものであれば、全ての装置が構成要件
(一)の「電子部品自動組付機」に含まれる。
本件明細書の「考案の詳細な説明」においても、「電子部品」を限定する
記載は一切無く、また、供給台上に幅の異なる供給ユニットを取り付けるにつき、
最も有効な台数比と配列による取付を可能にするという本件考案の作用効果は、供
給する電子部品の種類を問わない。
被告の輸入販売している電子部品装着装置も、テーピング部品を供給する
ものであるから、構成要件(一)を充足する。
   (被告の主張)
    被告の輸入販売している電子部品装着装置は、リード線を有しない平面状
の電子部品である表面実装部品(多数の表面実装部品をテープに配列した表面実装
テーピング部品を含む。)を供給するものであって、電子部品のうちアキシアル部
品やラジアル部品のようなリード線を持つ電子部品を供給することはできないか
ら、構成要件(一)を充足しない。
  3 争点3について
   (原告の主張)
供給台上に幅の異なる供給ユニットを取り付けるにつき、最も有効な台数
比と配列による取付を可能にするという本件考案の作用効果に照らすと、本件考案
で考慮されるのは供給ユニットの幅の広狭であって、テーピング部品の姿勢が縦か
横かではない。したがって、「テーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニッ
ト」とは、テーピング部品の幅が広いことによる幅の広い供給ユニットを意味し、
「テーピング部品を幅狭に供給する第2の供給ユニット」とは、テーピング部品の
幅が狭いことによる幅の狭い供給ユニットを意味する。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、
幅の広い供給ユニットと、幅の狭い供給ユニットを有するから、構成要件(二)(2)を
充足する。
   (被告の主張)
本件明細書の「考案の詳細な説明」の記載によると、構成要件(二)の「幅
広に供給する」とは、アキシアルリードテーピング部品のようなテーピング電子部
品を、「水平面が幅広な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニットの水平面に平
らに寝かせた幅広な状態(平姿勢)」で供給することと解され、また、右構成要件
の「幅狭に供給する」とは、ラジアルリードテーピング部品のようなテーピング電
子部品を、「水平面の投影面が幅狭な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニット
の水平面に立てた幅狭な状態(縦姿勢)」で供給することと解される。
    被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、
アキシアル部品やラジアル部品のようなリード線を有する電子部品を供給するユニ
ットを取り付けることができない。また、右装置には、テーピング電子部品を「水
平面の投影面が幅狭な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニットの水平面に立て
た幅狭な状態(縦姿勢)」で供給する供給ユニットが存在しないから、本件考案の
ように部品の供給姿勢で区別される供給ユニットが存在しない。
したがって、右テーピング部品供給装置は、構成要件(二)(2)を充足しな
い。
  4 争点4について
(原告の主張)
本件考案の「位置決めピン」は、①供給台に取り付けられる供給ユニット
の位置を決める機能、②供給ユニットの取付幅を定める機能を有する。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置にお
ける位置決めピンも、右の各機能を有する。
(一) 右テーピング部品供給装置において、部品供給ユニット載置台に設け
られたスロットに、供給ユニットの底部に設けられた逆T字状スロットの突起を係
合しただけでは、電子部品取出部のある供給ユニットの頂部は大きく不安定で位置
が定まらないことから、最終的には位置決めピンにより頂部の位置決めがされる。
このように、右テーピング部品供給装置が電子部品実装機として機能するうえで必
須の電子部品取出部の位置決めは、位置決めピンによってなされ、スロットは、位
置決めピンと供給ユニットとの係合作業を容易にするためのガイドラインとして主
に機能しているにすぎない。
(二) 右テーピング部品供給装置において、各位置決めピンの間(間隔)を
二分する位置から隣の位置決めピンの間(間隔)を二分する位置までが一つの基準
となる取付位置幅となっており、この取付位置幅は、等間隔に設けられた位置決め
ピンによって定まる。
右テーピング部品供給装置において、右の基準となる取付位置幅の整数
倍の取付位置幅が設定される構成になっているが、供給ユニットの底部をスロット
に係合させる場合、スロットのピッチは位置決めピンのピッチと同一にしなければ
ならないから、右取付位置幅は、スロットと位置決めピンの双方によって定められ
る。したがって、供給ユニットの取付位置幅を定めるという機能の点では、スロッ
トと位置決めピンは同価値であり、むしろ、位置幅の設定精度においては、位置決
めピンの方が勝っている。また、「供給ユニットの取付位置幅」とは供給ユニット
の底部及び頂部を含む供給ユニット全体の取付位置幅をさすが、右部品供給装置に
おいては、電子部品取り出し部が供給ユニットの頂部にあることから、位置決めピ
ンが存する頂部の取付位置幅が重要である。
(被告の主張)
 本件考案の「位置決めピン」は、本件明細書の記載によると、供給台に等
間隔に穿設されたピン穴に挿し込むことで、供給面を部品供給ユニットの幅毎に分
割し、部品供給ユニットを所定の取付位置に正確に取り付ける機能を有するもので
ある。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置にお
いては、部品供給ユニット挿入台の長手方向一杯に同一幅の逆T字状スロットが等
間隔に設けられており、これにテーピング部品供給ユニットを所望の位置に差し込
むことにより、右供給ユニットの位置決めは完了する。その上で、位置決めされた
右供給ユニットの頂部の横揺れを防止し、垂直方向の安定化を図るため、①右供給
ユニットの半円状の切り抜き部と揺れ防止用フックとを係合し、さらに、②右供給
ユニットの後方底部のラッチによって部品供給ユニット挿入台に固定するという構
造になっている。
このように、右テーピング部品供給装置においては、揺れ防止用フック
は、位置決めに関与しておらず、揺れ防止用フックにより定められる取付位置幅な
る概念はそもそも存在しない。
また、右テーピング部品供給装置の揺れ防止フックは、等間隔に配置され
ているため、本件考案の「位置決めピン」のように「予め取付幅を定める機能」を
果たすことはない。
 5 争点5について
(被告の主張)
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピングの部品供給装置
は、本件考案の出願前に、米国特許公報に掲載されて公知となった左記の特許(以
下「富士特許」という。)を実施したものである。
 米国特許第四四三八五五九号
 特許出願日  昭和五六年六月二五日
 特許発行日  昭和五九年三月二七日
右特許の技術は、複数の幅のカートリッジを同一支持台上に取り付けるこ
とが可能な構造を予定しており、「同一の取付台上に異なる幅の供給ユニットを同
時に並列して取り付ける」という技術思想が開示されている。
   (原告の主張)
富士特許の技術は、供給台上に取り付けられるカートリッジの幅が一定で
あることを前提とした技術であって、異なる幅のカートリッジを使用することが可
能なものではないから、本件考案とは技術内容が異なる。
6 争点6について
(被告の主張)
(一) 本件考案は、本件考案の出願前に米国特許公報に掲載されて公知とな
った富士特許と同一の技術内容であり、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、
富士特許の技術内容から極めて容易に想到しうるものであり、進歩性を欠く。
(二) ダイナパート社製の部品装置「チップ・プレーサー」MPS100、
MPS100TC、MPS118、MPS500(以下同装置の技術を「ダイナパ
ート技術」という。)は、昭和五九年一月二五日から二八日までの間に東京都内で
開催された「インターネプコン・ジャパン/セミコンダクター展、84」への出
品、同年二月ころにおける技術仕様書の頒布及びカタログの頒布によって、本件考
案の出願前に公知であったが、右装置は、部品キャリッジの同一の枠内に異なった
幅のテープフィーダーを混載することができ、それらが整数倍又は整数比となるも
のであるから、本件考案と同一の技術内容のものである。したがって、本件考案
は、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、右技術から極めて容易に想到しうる
ものであり、進歩性を欠く。
(三) 本件考案は、その出願前に存在した富士機械製造株式会社の電子部品
自動装着機FEPー20及び三洋電機株式会社のチップ形電子部品装着装置TCM
ー40との関係でも、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、右の各装置の技術
から極めて容易に想到しうるものであり、進歩性を欠く。
   (原告の主張)
(一) 富士特許の技術は、供給台上に取り付けられるカートリッジの幅が一
定であることを前提とした技術であって、異なる幅のカートリッジを使用すること
が可能なものではないから、本件考案とは技術内容が異なるし、また、本件考案
が、富士特許の技術内容から極めて容易に想到し得るものであるとはいえない。
(二) ダイナパート技術では、本件考案における「供給台」に対応する
「枠」ごとに異なった幅のテープフィーダーを装着することができるが、同一の
「枠」では異なった幅のテープフィーダーを装着することはできないから、本件考
案と技術内容が異なるし、また、本件考案が、ダイナパート技術から極めて容易に
想到し得るものであるとはいえない。
(三) 富士機械製造株式会社の電子部品自動装着機FEPー20及び三洋電
機株式会社のチップ形電子部品装着装置TCMー40は、幅の異なるテープフィー
ダーを混載できるものではないから、本件考案と技術内容が異なるし、また、本件
考案が、右の各装置の技術から極めて容易に想到し得るものであるとはいえない。
7 争点7について
   (原告の主張)
 被告の電子部品装着装置の販売価格は一台約二四〇〇万円であり、平成七
年一月から平成一一年二月九日までの期間の販売台数は三三台を下らない。また、
その利益率は一五パーセント以上であるので、被告は右期間の右装置の販売により
一億一八八〇万円の利益を得ている。したがって、原告は、右同額の損害を被っ
た。
 (被告の主張)
  原告の右主張は争う。
第四 当裁判所の判断
一 争点1について
証拠(甲三、四、検乙一、検乙三ないし五)と弁論の全趣旨によると、被告
の輸入販売している電子部品装着装置は、別紙物件目録記載のとおりであると認め
られる(以下、右目録記載の電子部品装着装置のテーピング部品供給装置を「被告
装置」という。)。
 二 争点4について
1(一) 証拠(甲二)によると、本件明細書の考案の詳細な説明に、テーピン
グ部品供給装置の従来技術の問題点として、テーピング部品供給ユニットの取付台
数比を適宜に選定することが不可能であり、電子部品の取付機能上で融通性に欠け
る点が挙げられ、右課題の解決手段として、テーピング部品供給ユニットの取付位
置幅を基準幅の整数倍又は整数比とすることで、必要に応じて、テーピング部品供
給ユニットの取付台数を適宜増減でき、かつ、同一取付台広さで最も有効な台数比
と配列でテーピング部品供給ユニットを取り付けることが可能になったとの記載及
びテーピング部品供給ユニットは、予め位置決めピンで定めた取付位置幅の間隔で
配列可能にするとの記載があること、「位置決めピン」の実施例として、テーピン
グ部品供給ユニットを取り付けるに先立って、供給台に穿設されているピン孔に、
挿脱自在に設けられている位置決めピンを挿入することによって、テーピング部品
供給ユニットを所定の位置に正確に取り付ける技術のみが開示されていること、考
案の効果として、位置決めピンの挿着位置の交換によって両供給ユニットの取り付
け台数の増減を簡単に行い得るようにしたことから、プリント基板に対する電子部
品の挿入条件、つまり電気的設計条件に変化があって挿入される電子部品の種類や
数量が変化した場合にもそれに直ちに順応する機能上幅広い融通性を発揮できる効
果があるとの記載があること、以上の事実が認められる。
(二) 本件実用新案登録請求の範囲の記載に右の(一)の事実及び弁論の全趣
旨を総合すると、本件考案における「取付位置幅」は、「テーピング部品供給ユニ
ットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を意味しており、テーピン
グ部品供給ユニット自体の幅を意味するものではないと認められる。
(三) 本件実用新案登録請求の範囲の「予め位置決めピンで定めた取付位置
幅」との文言に右の(一)の事実を総合すると、構成要件(二)(3)の「位置決めピン」
とは、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピン
グ部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「取付位置幅」を定め、各テーピン
グ部品供給ユニットが、供給台の幅方向における正確な位置に取り付けられるよう
にするものと解することができる。
2 原告は、被告装置の部材⑪が、「位置決めピン」に当たると主張する。
  前記一認定に係る別紙物件目録の記載に証拠(甲三、四、検乙一、検乙三
ないし五)と弁論の全趣旨を総合すると、部材⑪は、部品供給ユニット挿入台⑧上
に平行で等間隔に設けられた逆T字型スロット⑨に対応して、供給台⑤の壁⑩に等
間隔で固着されていること、部品供給ユニット③、④を部品供給ユニット挿入台⑧
に取り付ける際、部品供給ユニット③、④の底部を逆T字型スロット⑨に差し込む
ことで、部品供給ユニット挿入台⑧上の幅方向の取付位置が定まり、その後、右部
品供給ユニット③、④を、右逆T字型スロット⑨の奥まで差し込み、部品供給ユニ
ット③、④の頂部にある半円状の切り欠き部⑭を、部材⑪と係合させて、右頂部を
壁⑩の所定の位置に取り付けること、以上の事実が認められる。
  以上の事実によると、被告装置は、部品供給ユニット③、④を取り付ける
場合には、その底部を逆T字型スロット⑨に差し込む構造になっているから、テー
ピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、「ピン」によって、供給台を、各
テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニ
ットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定める必要のないもので
ある。また、部材⑪は、供給台⑤の壁⑩に等間隔で固着されているから、テーピン
グ部品供給ユニットを取り付けるに先立って、供給台を、各テーピング部品供給ユ
ニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供
給台上の場所(スペース)の幅」を定めることができるものではないし、実際に定
めているとも認められない。したがって、部材⑪が、テーピング部品供給ユニット
を取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて
分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペー
ス)の幅」を定めるものとは認められない。
 被告装置において、部品供給ユニット③、④の幅方向の取付位置は、その
底部を逆T字型スロット⑨に差し込み、部品供給ユニット③、④の頂部にある半円
状の切り欠き部⑭を、部材⑪と係合させて、右頂部を壁⑩の所定の位置に取り付け
ることで定まるということができるから、部材⑪は、右のような意味では、位置決
めをしているということができる。しかし、右1で述べたとおり、本件考案にいう
「位置決めピン」は、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台
を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供
給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定めるものである
から、部材⑪が、部品供給ユニット③、④を取り付ける際に、その具体的な位置を
定めるものであったとしても、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立
ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピ
ング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定める
ものでない以上、本件考案にいう「位置決めピン」に当たるということはできな
い。
 したがって、部材⑪は、「位置決めピン」に当たらない。
以上によると、被告装置は、構成要件(二)(3)の「位置決めピン」を充足し
ない。
 3 したがって、その余の点につき判断するまでもなく、被告装置が本件考案
の技術的範囲に属するとは認められない。
三 よって、原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却することとし、主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第四七部
       裁判長裁判官  森     義  之
    
          裁判官  岡  口  基  一
          裁判官男  澤  聡  子
別紙原告物件目録
 後記型番及び製品名の実装機を含む添付図面に示すとおりの次の構造を有する電
子部品実装機(電子部品自動組付機)
1 多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品実装機(電子部
品自動組付機)の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有する
テーピング部品供給装置を組み入れた電子部品実装機(電子部品自動組付機)にお
いて、
2 前記テーピング部品供給装置は
 (一) 前記電子部品実装機(電子部品自動組付機)の組付位置の後方に横長に延
設した供給台上に
 (二) テーピング部品を幅広に供給する第lの供給ユニットと、テーピング部品
を幅狭に供給する第2の供給ユニットとを
 (三) 各供給ユニットの底部に設けられた逆T字状の突起を前記供給台上に平行
で等間隔に設けられたスロットに挿入(係合)し、
 (四) 前記供給台のL字状に立ち上ったストッパブロックに設けられた位置決め
ピンで定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にし、
 (五) このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が、前記第2の供給ユニッ
トの取付位置幅の整数倍に形成されている
3 テーピング部品供給装置を組み入れた電子部品実装機(電子部品自動組付機)
            記
    (型番)       (製品名)
  l GSM1    視覚認識付高精度汎用装着機
  2 GSMlーC4 SMD/ベアチップ混合搭載機
  3 GSM2    量産型視覚認識高精度汎用装着機
図面の説明
 第1図は電子部品実装機全体の斜視図
 第2図は電子部品実装機全体の正面図
 第3図は電子部品実装機におけるテーピング部品供給装置の配置を示す斜視図、
 第4図は電子部品実装機におけるテーピング部品供給装置の供給台部分の斜視
図、 第5図は第4図の供給台の要部を示す一部拡大図
 第6図は第5図におけるAーA線矢視断面図
第1図第2図第3図第4図第5図第6図
別紙被告物件目録
 チップテーピング部品等をバキュームの吸引ヘッドで吸着し、プリント基板の所
定の位置に該部品を載せるためのチップテーピング等部品装着装置であって、
1 部品の装着位置の後方で、横方向に延びている部品供給ユニット挿入台⑧と、
2 チップテーピング部品等が広幅を持つような状態(水平な状態)で供給される
ように、該部品をテープ上に水平に並べた状態で供給するテープ部品供給ユニット
③、④を持ち、
3 前記部品供給ユニット挿入台⑧は、
 (一) 互いに平行かつ等間隔に設けられた複数個の逆T字型スロット⑨と
 (二) 部品供給ユニット挿入台⑧の後端に起立している壁⑩から水平方向に突出
し、各スロットに対応している揺れ防止用フック⑪
 を持ち、
4 前記テープ部品供給ユニット③、④は、
 (一) 供給する部品のサイズ(横幅)に対応して任意の幅であることができ、
 (二) 底側に、逆T字型スロット⑨に受け入れられるような逆T字型の突起⑬を
持ち、
 (三) 先端部に、揺れ防止用フック⑪と係合する半円状の切り欠き部⑭を備え、
5 部品のサイズ(横幅)に応じて選択された前記テープ部品供給ユニット③、④
を所望の逆T字型スロット⑨を選択して差し込むことにより、前記テープ部品供給
ユニット③、④を部品供給ユニット挿入台⑧に設置し、
6 テープ部品供給ユニット③、④の半円状の切り欠き部⑭と揺れ防止用のフック
⑪との協働によって、設置された該テープ部品供給ユニット③、④の安定化を図る
チップテーピング部品等装着装置
図面の説明
第1図は電子部品装着装置全体の斜視図
第2図は電子部品装着装置全体の正面図
第3図は電子部品装着装置におけるテーピング部品供給装置の配置を示す斜視図
第4図は電子部品装着装置におけるテーピング部品供給装置の供給台部分の斜視図
第5図は第4図の供給台の要部を示す一部拡大図
第6図は第5図におけるAーA線矢視断面図
第7図はテープ部品供給ユニット③、④の全体図
第8図はテープ部品供給ユニット③、④の半円状の切り欠き部⑭の拡大図
第1図第2図第3図第4図
第5図第6図第7図、第8図
別紙物件目録
1 チップテーピング部品等をバキュームの吸引ヘッドで吸着し、プリント基板の
所定の位置に該部品を載せるための電子部品装着装置であって、
2 右装置のテーピング部品供給装置は、
 (一) 部品の装着位置の後方で、横方向に延びている部品供給ユニット挿入台⑧
と、
チップテーピング部品等をテープ上に水平に並べた状態で供給するテープ部品
供給ユニット③、④を持ち、
 (二) 前記部品供給ユニット挿入台⑧は、
  (1) 互いに平行かつ等間隔に設けられた複数個の逆T字型スロット⑨と
  (2) 部品供給ユニット挿入台⑧の後端に起立している壁⑩から水平方向に突出
し、各スロットに対応している部材⑪を持ち、
 (三) 前記テープ部品供給ユニット③、④は、
  (1) 底側に、逆T字型スロット⑨に受け入れられるような逆T字型の突起⑬を
持ち、
  (2) 先端部に、部材⑪と係合する半円状の切り欠き部⑭を備え、
 (四) 前記テープ部品供給ユニット③、④の底部を所望の逆T字型スロット⑨に
差し込み、その半円状の切り欠き部⑭を部材⑪に係合して設置する
3 電子部品装着装置
図面の説明
第1図は電子部品装着装置全体の斜視図
第2図は電子部品装着装置全体の正面図
第3図は電子部品装着装置におけるテーピング部品供給装置の配置を示す斜視図
第4図は電子部品装着装置におけるテーピング部品供給装置の供給台部分の斜視図
第5図は第4図の供給台の要部を示す一部拡大図
第6図は第5図におけるAーA線矢視断面図
第7図はテープ部品供給ユニット③、④の全体図
第8図はテープ部品供給ユニット③、④の半円状の切り欠き部⑭の拡大図
第1図第2図第3図第4図
第5図第6図第7図、第8図

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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