弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中無罪部分を破棄する。
     被告人を懲役二月に処する。
     但し本裁判確定の日より二年間右刑の執行を猶予する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 検察官長井省吾が陳述した控訴趣意は検察官辻内良隆作成名義の控訴趣意書の記
載と同一であるからこれを引用する。
 同控訴趣意(事実誤認)について。
 原判決が公訴事実第二記載の「被告人は昭和二十八年六月中旬頃秋田県北秋田郡
a町b字cd番地の町長A方において同人に対しBが前示払下げ立木をa町よりa
町農業協同組合に特売するについて種々便宜を図り尽力をなしたる謝礼として供与
するものであることの情を知りながら現金十万円を同人に交付しもつてBの犯行を
幇助した」との事実に対し被告人がAに金十万円を手渡したことは明らかであるが
右金員をBが贈賄の用に供するものであることの情を知つていた点につき証明がな
いとして被告人に対し無罪の言渡をしたことは所論のとおりである。しかして被告
人の原審公判廷における供述、検察官に対する昭和二十九年二月二十七日附第二回
供述調書、原審第四回公判調書中証人B、同Cの各供述記載を綜合すれば被告人が
当時右金十万円を含めた金十二万円の預り証をBに差入れたこと、同人は該預り証
を担保として前記農業協同組合より金十二万円を借受けたこと、右組合もまた被告
人に対し該預り証の真偽をただし融資した事情を告げた上預り金の返還に際しては
組合に連絡すべき旨の注意を与えたこと等の事情が看取しえられるところ原審はか
かる事情の下にあつてはBより何等かの指示を与えて交付させる等特段の行為があ
れば格別そのようなことのない本件においてはBが右金十万円をAに贈賄する意思
でいたことの知情を推断することは甚だ不自然で牽強附会の譏を免れないと説示す
るので按ずるに被告人の司法警察員に対する昭和二十九年二月二十日附供述調書
(記録一一三丁以下)検察官に対する前記第二回供述調書、同じく昭和二十九年三
月十一日附第四回供述調書の各記載を綜合すれば被告人はa町議会議長Bが首謀し
他の議員等と共に昭和二十八年二月頃よりA町長に働きかけ官行、県行造林の払下
げ特売に関し町議会を開催せしめ関係議案を提出せしめる等種々工作を進めていた
ことを関知していたのでBの依頼により昭和二十八年四月一日D株式会社振出町長
A宛金額五十万円の約束手形二通を担保にE銀行F支店より金八十万円借受けの斡
旋をした際右手形金が右造林払下げに絡まる差益金である事情を察知しており、同
日G荘においてBよりH助役に手渡すべく依頼を受けた金四万円が同助役に対する
右払下げ議案の提出等に尽力した謝礼として手渡されるものであることの一事情を
了知してその頃これを同助役に取次ぎ又Bが右手形残金二十万円を同年五月三十日
の支払期日に銀行より収入役の口座に直接払込む手続をして被告人に保管を託しそ
のうちよりI議員に手渡すべき金八万円を差引いた残金十二万円につき前叙のとお
り預り証をBに作成交付したのであるが同年六月中旬頃Aより右保管金のうち金十
万円を届けて貰いたい旨要請された際も同町長よりBの了解をえている旨告げられ
BがAに対し前記造林の払下げ特売に関し尽力した謝礼として右金十万円を交付す
るものであることの事情を認識して金庫より金十万円を取出し町長の自宅に届けた
ことが認められ、当審における証人Aの供述、原審第二回公判調書中同証人の供述
記載、Bの検察官に対する昭和二十九年二月二十五日附第一回供述調書謄本及び原
審証人Bの証人尋問調書の各記載を綜合すればBは直接収入役の口座に払込み被告
人に保管を託した右手形残金二十万円のうちI議員に手渡すべき金八万円を差引い
た残金十二方円につき被告人より預り証を受取りこれを担保に前記農業協同組合よ
り金十二万円を借受けておりながらAに対しては予て約束していた造林払下げ特売
に関する謝礼として金十万円を被告人に保管を託した右金十二万円のうちより受取
るよう申向けていたこと。及び高橋恰一郎は同年五月末頃Bより造林払下げに尽力
した謝礼として金十万円を被告人に託した右保管金のうちより受取るよう指示さ
れ、被告人にその事情を確めたところ被告人が金十二万円を保管している事実を確
認したのでそのうち金十万円は自分がBより貰い受ける分である旨告げて翌日被告
人に自宅までこれを届けさせたことが明らかであるから以上の各事実を綜合考察す
ればBが被告人に対し特段の指示を直接与えておらないことは明白であるけれども
BはAに対し被告人の保管している右金十二万円のうちより謝礼金十万円を手渡す
旨Aに指示しこれに基き同人はBより貰い受ける分であることを被告人に告げて右
金十万円を受取り被告人もまたBがAに供与する払下立木特売につき便宜を図り尽
力した謝礼金であることの事情を認識してAに交付したことを確認するに充分であ
るから前説示の事情下にBの被告人に対する特段の指示行為がないからといつて被
告人の右知情を認定することは少しも不自然ではなく右認定を目して牽強附会の論
となすことはできない。しかして右認定に副わない被告人の原審公判廷における供
述及び原審第四回公判調書中証人Bの供述記載はいづれも前記各証拠に照らし措信
できない、他に右認定を覆すに足る証拠はない。されば右と認定を異にした原判決
は事実を誤認したものでありこの誤りは判決に影響を及ぼすこと明白であるから破
棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第一項、第三百八十二条により原判決中無罪部
分を破棄し同法第四百条但書により当裁判所において改めて次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は秋田県北秋田郡a町収入役として同町の出納その他の会計事務を掌理し
ていたものであるが昭和二十八年六月中旬頃同町b字cd番地の町長A方において
同人に対し同町議会議員Bが官行、県行造林等払下げ立木をa町より同町農業協同
組合に特売するについて種々便宜を図り尽力をなしたことの謝礼として供与するも
のであることの情を知りながら同人より預り保管中の金十二万円のうちより現金十
万円をAに交付しもつてBの贈賄の犯行を幇助したものである。
 (証拠の標目)
 一、 被告人の検察官に対する昭和二十九年二月二十七日附、同年三月十一目附
各供述調書
 一、 被告人の司法警察員に対する昭和二十九年二月二十日附供述調書(記録一
一三丁以下)
 一、 原審第二回公判調書中証人Aの供述記載
 一、 Bの検察官に対する昭和二十九年二月二十五日附供述調書謄本
 一、 原審証人Bの証人尋問調書
 一、 当審における証人Aの供述
 (法令の適用)
 <要旨>被告人の判示所為は刑法第百九十八条、罰金等臨時措置法第二条、第三
条、刑法第六十二条に該当するので所定刑中懲役刑を選択し従犯であるから
同法第六十三条、第六十八条第三号に従い法定の減軽をなした刑期範囲内において
被告人を懲役二月に処すべく尚情状執行を猶予するを相当と認むべきところ被告人
は原判決において公訴事実第一につき懲役三月二年間執行猶与の言渡を受け右は確
定しておるのであるから本件につき同法第二十五条第二項を適用すべきやの疑義が
生じない訳ではないが元来本件犯罪事実は右確定判決の事実と同法第四十五条前段
所定の併合罪の関係にあるものとして起訴せられ一個の刑をもつて処断せられるべ
きものであつたのであるからかかる場合は同法第二十五条第二項を適用すべきでは
なく且つ右両者が同時に審判せられたとしても一括して執行猶予の言渡を附するを
相当と認められる情状にあるから同法第二十五条第一項を適用し本裁判確定の日よ
り二年間右刑の執行を猶予すとするを相当とすべく当審における訴訟費用は刑事訴
訟法第百八十一条第一項本文により被告人をして負担せしむべきものとして主文の
とおり判決する。
 (裁判長裁判官 松村美男 裁判官 大島雷三 裁判官 三浦克己)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛