弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1湯沢市長が平成18年6月30日付けで原告Aに対してした平成18
年度固定資産税減免申請不承認処分を取り消す。
2湯沢市長が平成18年6月30日付けで原告Bに対してした平成1
8年度固定資産税減免申請不承認処分を取り消す。
3原告Aのその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,原告Aに生じた費用の100分の13と被告に生じた費
用の100分の20と原告Bに生じた費用を被告の,原告Aに生じたそ
の余の費用と被告に生じたその余の費用を原告Aの,それぞれ負担とす
る。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項及び第2項と同旨
2湯沢市長が平成18年8月4日付けで原告Aに対してした平成18年度国民
健康保険税減免申請不承認処分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告らが,被告に対し,原告らの平成18年度固定資産税の各減免申
請を不承認とした湯沢市長の各処分及び原告Aの平成18年度国民健康保険税の
減免申請を不承認とした湯沢市長の処分がいずれも違法であるとして,これらの
処分の取消しを求める事案である。
1争いのない事実等
以下の事実は,当事者間に争いがないか後掲各証拠又は弁論の全趣旨により
容易に認めることができる。
(1)当事者
ア被告は,地方税法5条2項の定める固定資産税の課税団体であり,湯沢
市市税条例(以下「市税条例」という。)に基づき,同市所在の固定資産
の所有者に対し,固定資産税を賦課徴収している。
また,被告は,国民健康保険法3条1項の定める国民健康保険の保険者
でもあり,湯沢市国民健康保険税条例(以下「国保税条例」という。)及
び同施行規則(以下「国保税施行規則」という。)に基づき,世帯主を納
税義務者として,各世帯ごとに算定した国民健康保険税(以下「国保税」
という。)を賦課徴収している。
イ原告A(以下「原告A」という。)は,春から秋までは湯沢市でいちご
栽培を主とする農業に従事し,冬期は仙台方面の建設現場で稼働してい
る。原告B(以下「原告B」という。)は,原告Aの父であり,農業の手
伝いや農産物販売店の店番等をしている。
原告Aは,平成18年度当時,同人を世帯主として,その妻,長男夫婦
及びその子ども2名,原告Aの長女及び二男並びに原告B夫婦(以下,単
に「妻」などという。)と共に生活していた。
長男は,建設工事現場で働いている。二男は,電気工事店に勤務してい
たが,平成18年2月ころ失業した。長女は,美容院のパートをしていた
が,同年11月に失職した。
また,原告A及び同Bは,湯沢市内に居住用及び農業用の土地建物等を
所有している。
(2)固定資産税の減額及び免除(以下「減免」という。)に関する条例の定

被告においては,地方税法367条を受けて,市税条例において,固定資
産税の減免について,次のとおり定めている(乙14)。
第69条市長は,次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち,市長
において必要があると認めるものについては,その所有者に対して課す
る固定資産税を減免する。
(1)貧困により生活のため公私の扶助を受ける者の所有する固定資産
(2)市の全部又は一部にわたる災害又は天候の不順により,著しく価
値を減じた固定資産
(3)公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除
く。)
(4)前3号に掲げるもののほか,特別な事由がある固定資産
(3)国保税の減免に関する条例及び規則の定め
被告においては,地方税法717条を受けて,国保税条例において,国保
税の減免について,次のとおり定めている(乙15)。
第19条市長は,次の各号のいずれかに該当する者のうち,必要がある
と認める者に対し,保険税を減免することができる。
(1)貧困により生活のため公私の扶助を受ける者又はこれに準ずると
認められる者
(2)当該年において所得が皆無となったため生活が著しく困難となっ
た者又はこれに準ずると認められる者
(3)前2号に掲げる者以外の者で特別の事情がある者
(2項以下省略)
また,国保税施行規則は,国保税条例2条の規定に基づき,条例の施行に
関し必要な事項を定めているが,国保税条例19条1項に規定する減免につ
いて,以下のとおり定めている(乙17)。
第3条条例第19条第1項に規定する減免に該当する者は,次に掲げる
者で,次条に規定する調査等により総合的に判断し,国民健康保険税の
納付が著しく困難と認められる者とする。
(1)貧困により生活のため公私の扶助を受ける者又はこれに準ずると
認められる者
ア生活保護法(昭和25年法律第144号)第11条に規定する扶
助を受けている者
イ次の者で,当該世帯の収入認定額が生活保護法による保護基準
(昭和38年厚生省告示第158号)(以下「本件保護基準」とい
う。)により算定した最低生活費の額以下の者
(ア)就学援助等の公的扶助を受けている者
(イ)社会事業団体の扶助及び生計を一にしていない者からの扶助
を受けている者
(ウ)公私の扶助は受けていないが同程度の生活困窮の状態にある

(2)以下略
(4)湯沢市市税減免に関する取扱要領の定め
さらに,湯沢市市税減免に関する取扱要領(平成18年4月28日訓令第
23号)(以下「本件取扱要領」という。)は,市税条例及び国保税条例に
定める固定資産税及び国保税等の減免に関し,必要な事項を定めている。
本件取扱要領は,固定資産税の減免対象者を市税条例第69条1項1号又
は4号(1号に準ずると認められる者とする。)に該当する者と定め,国保
税の減免対象者を国保税19条1項各号のいずれかに該当する者と定める
ほか(2条),減免の判定基準について,以下のとおり定めている(乙18)。
第4条減免の判定には,本件保護基準を参考として用いるものとし,具
体的な判定基準は,次に掲げるとおりとする。
(1)判定の対象申請者(納税義務者)と生計を一にする世帯員全員
の収入,資産等を対象とする。
(2)収入金額減免の申請月から1年間の収入を推計するものとし,
原則として税務資料による前年の所得をもとに,面談,申請書添付
の書類及び調査によって得られた事実による当該年の状況変化を考
慮し,推計する。
(3)判定に用いる収入次の収入とする。
ア給与収入,報酬及び賃金
イ事業収入(営業,農業,不動産等)
ウ公的年金等
(以下中略)
(4)最低生活費本件保護基準により12箇月分の生活費を算出す
る。
(5)手持金(預貯金等)世帯員全員の手持金(預貯金等)の合計額
から前号の規定による最低生活費の2分の1を控除した額とする。
なお,第3号に掲げる収入が振り込まれている場合は,更に,それ
らを控除した額とする。
第5条減免の承認又は不承認の決定に係る審査の手順は,次に掲げると
おりとする。
(1)収入金額と最低生活費とを比較し,生活困窮の度合いを算出する。
(2)手持金(預貯金等)の保有状況及び個別の事情を考慮の上,担税
力の有無について審査する。
(3)前2号の結果を総合的に判断し,決定する。
(5)本件の経過等
ア固定資産税の減免申請
湯沢市長は,平成18年5月中旬,平成18年度固定資産税として,原
告Aに対し,6万9400円を,同Bに対し,4万1900円を,それぞ
れ課税した。
原告らは,同月24日ないし25日,湯沢市税務課に市税減免(免除)
申請書を提出し,それぞれ,平成18年度固定資産税の減免申請を行った
(乙1,3)(以下「本件各申請1」という。)。
原告Aは,その際,収入状況等申告書に,同人の世帯の事業所得等とし
て,事業内容については農業,収入については386万1902円,必要
経費については408万2130円,所得については△22万0228円
と記載して提出した(乙2)。
被告は,同月,生活保護費の算定表を作成し,原告らの世帯の収入のう
ち,農業収入として,申請者申告は「-220,228」,収入認定額は
「97,772」とした(乙5)。
なお,原告らの確定申告によれば,平成17年度の農業収入は386万
1902円,減価償却費は31万8000円,農業所得は△22万022
8円とされている(甲8)。
湯沢市長は,平成18年6月30日付けで,原告らに対し,本件各申請
1をいずれも不承認とした(以下「本件各固定資産税減免申請不承認処分」
という。)。
原告らは,同年8月25日,本件各固定資産税減免申請不承認処分が違
法であるとして,湯沢市長に対し,異議申立てをしたが(乙6,7),湯
沢市長は,平成19年1月16日付けで,収入認定額456万4966円
で最低生活費を4万3608円上回るとして,異議申立てを棄却した。
イ国保税の減免申請
湯沢市長は,平成18年7月中旬,原告Aに対し,平成18年度国保税
として45万4000円を課税した。
原告Aは,同月24日,湯沢市税務課に市税減免(免除)申請書を提出
し,平成18年度国保税の減免申請を行った(乙8)(以下「本件申請2」
という。)。
原告Aは,その際,収入状況等申告書の事業所得等について,前記アで
認定した固定資産税減免申請における収入状況等申告書と同じ内容を記
載して提出した(乙9)。
被告は,同日以降,収入認定額計算書を作成し,原告Aの世帯の農業収
入を,9万7772円とした(乙10)。
湯沢市長は,同年8月4日付けで,原告Aに対し,本件申請2を不承認
とした(以下,「本件国保税減免申請不承認処分」といい,本件各固定資
産税減免申請不承認処分と合わせて「本件各処分」という。)。
原告Aは,同月25日,本件国保税減免申請不承認処分が違法であると
して,湯沢市長に対し,異議申立てをしたが(乙12),湯沢市長は,平
成19年1月16日付けで,最低生活費458万6793円に対し収入認
定額459万0834円で最低生活費を4041円上回るとして,異議申
立てを棄却した。
2争点とこれに対する当事者の主張
原告らは,下記のとおり,(1)本件各処分について,原告らの世帯の農業収
入に関し減価償却費を控除しておらず違法である,(2)本件固定資産税減免申
請不承認処分について,控除すべき実費や医療扶助費算定に誤りがあると主張
しているところ,前記のとおり,固定資産税及び国保税の減免の判定基準は,
いずれも,本件取扱要領において,共通の定めがなされており,同様に取り扱
う趣旨と考えられるから,以下,共通して検討することとする。
(1)争点1(減価償却費を経費として控除しないことの違法性)
(原告らの主張)
被告は,原告らの世帯の農業収入の認定に際し,作業場及び動力噴霧器
の各減価償却費合計31万8000円を経費として控除しなかった。
上記各減価償却費を経費として控除したならば,原告らの世帯の収入認定
額は最低生活費を下回るのであるから,本件各処分は市税条例69条1項
1号及び国保税条例19条1項1号の適用を誤った違法な処分である。
(被告の主張)
農業の収入認定において経費として控除が認められるのは,実際必要額
(実経費)に限定されており,減価償却費は控除の対象とならない。
よって,原告世帯の収入認定額の算出は適正であり,その認定額は最低生
活費を上回っているのであるから,市税条例69条1項1号及び国保税条例
19条1項1号に該当しない。
(2)争点2(収入から控除すべき実費や最低生活費に加算すべき医療扶助費
算定に誤りがあること)
(原告らの主張)
被告は,原告らの世帯の収入及び最低生活費について,収入から控除すべ
き諸費用を下記アないしウのとおり,また,最低生活費に加算すべき医療扶
助費をエのとおり,それぞれ認定しているが,本件申請1においても本件申
請2と同額の認定がされるべきである。
ア国保税本件申請245万4000円
本件申請123万2300円
イ住民税本件申請28000円
本件申請1控除されず
ウ通勤費本件申請243万9296円
本件申請132万6000円
エ医療扶助費本件申請231万5435円
本件申請125万0000円
(被告の主張)
控除すべき国保税,住民税,通勤費,加算されるべき医療扶助費について
は,申請時の面談や申請書類等の記載内容及び調査によって判断するもので
あるところ,被告は,それぞれの申請時点での資料等に基づいて認定したも
のであるから,本件申請1と本件申請2で額が異なるからといって違法とは
いえない。なお,住民税8000円については,この金額は確実視できるこ
とから控除すべきであったとも思われるが,仮にこれを控除していたとして
も,収入金額が最低生活費を上回るという認定に相違はなく,結論として,
本件各処分は違法ではない。
第3当裁判所の判断
1市税減免の実体的要件の判断基準について
前記のとおり,固定資産税及び国保税の減免について,本件取扱要領4条は,
減免の判定には,本件保護基準を参考として用いるものと定め,同条4号にお
いて,最低生活費については,本件保護基準により12か月分の生活費を算出
すると規定している。
ところで,地方自治法245条の9第1項及び第3項の規定により,都道府
県又は市町村が法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準の定めとして,
厚生省社会局長から各都道府県知事・各指定都市市長あてに本件保護実施要領
(乙19)が発せられているところ,生活保護制度は,困窮の程度に応じ必要
な保護を行い,最低限度の生活を保障するものであり(生活保護法1条),一
般的に困窮の度合いを判断する根拠として認知されているものであるから,本
件保護実施要領は,本件保護基準とともに,申請者の収入及び最低生活費の認
定について,減免申請の判定の基準となるものと解される。
2争点1(減価償却費を経費として控除しないことの違法性)について
(1)本件保護実施要領の収入認定について
証拠(乙19,24)によれば,本件保護実施要領は,野菜の農業収入の
認定について,「販売価格×売却量+自給量を金銭換算した額-必要経費=
収入」として算定すると定めていること,勤労控除として,基礎控除,特別
控除,新規就労控除,未成年者控除,その他の控除を定め,農業収入又は農
業収入以外の事業(自営)収入の基礎控除については,生産必要経費又は事
業必要経費を控除した後の収入額によることとしていること,農業収入を得
るための必要経費とは実際必要額の趣旨であって,減価償却費は含まれない
ことがそれぞれ認められる(生活保護の考え方の中では,減価償却すべきよ
うな資産の保有が想定されていないためであると考えられる。)。
(2)本件の取扱いの違法性
本件についてこれをみると,原告らの世帯の農業収入に係る減価償却費
は,事業収入からの控除が認められる必要経費には該当せず,他にこれを控
除として認める規定も存しないため,事業収入から控除することは認められ
ないから,減価償却費を控除していない点に問題はない。
(3)原告らの主張について
ア本件保護実施要領を適用し,減価償却費の控除を認めないことについて
(ア)原告らは,本件取扱要領は,収入については,前記のとおり,税務
資料による前年の所得をもとに推計すると定めているのであって,本件
保護実施要領に基づいて収入金額を認定する条例上の根拠はないこと,
実質的にみても,本件保護基準は,要保護者に対して給付される生活扶
助等の基準額を定め,最低生活費算定の基準となるのに対し,本件保護
実施要領は,資産の活用や収入認定等の生活保護実施に係る全般的な事
項について定めるものであって,本件保護基準に含まれるものでないこ
と,作業小屋や動力噴霧器は農業に不可欠であり,この取得費用につい
て減価償却費を認めないとすれば実際の収入状況とかけ離れたものに
なることなどを主張する。
(イ)しかし,本件取扱要領5条によれば,減免の承認又は不承認の決定
に係る審査の手順は,まず,収入金額と最低生活費とを比較し,生活困
窮の度合いを算出することとされており,最低生活費については本件保
護基準により算出するとされているのであるから,収入についても本件
保護基準,ひいては本件保護実施要領に基づいて比較することには合理
性があるということができる。
また,前記の本件取扱要領4条2号の定めは,収入金額について,「税
務資料による前年の所得」のみを基準とするとはなっていないこと,
「原則として」とあり例外を予定していること,「所得をもとに」と定
め所得をそのまま資料とすると断定するものでないことが認められ,さ
らに,本件保護実施要領における収入認定の定めを全体としてみれば,
経費として実際に必要な最小限度の額を認定することとしており,生活
困窮の度合いを判断する指標として妥当性を有すると解される。
これらによれば,収入の認定において本件保護実施要領を適用するこ
とには合理性が認められる。
イ原告らについてのみ減価償却費を経費として控除しないことの違法性
(ア)原告らは,被告は,他の事業収入のある市税減免申請者については,
申請者の事業収入に係る経費に減価償却費が含まれているか否かを問
題とすることなく申請どおりの申告所得を税務資料による前年の所得
として取り扱っており,税法上の申告所得をもって収入を認定する運用
をしていたことを指摘し,原告らの世帯についてのみ,確定申告書等を
閲覧して減価償却費を調査し収入の認定をしたものであって,平等原則
に反し,裁量権の逸脱であると主張する。
(イ)しかし,原告らの提出する甲3ないし7によっても,殊更に,原告
ら以外の4名について,原告らと異なる取扱い(減価償却費を経費とし
て認める取扱い)をしたと認めるに足りないし,仮に,その者らについ
て,減価償却費を控除する取扱いがされていたとしても,そのことのみ
をもって,本件保護実施要領に則った本件各処分が違法となるとまでは
いえない。
ウしたがって,農業収入の算定に当たり減価償却費を控除しなかった点に
おいて本件各処分が違法であるとの原告らの主張は理由がない。
3争点(2)(収入から控除すべき実費や最低生活費に加算すべき医療扶助費算
定の誤り)について
(1)証拠(甲1,2の1・2,乙1ないし13,21,22,証人C,原告
本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア被告においては,固定資産税及び国保税の減免申請があった場合,減免
申請時を基準として,申請時の面談や申請書類等の記載内容及び調査によ
って判断する。これらの申請についての不承認処分に対する異議申立てに
対しても,同様に,申請時における面談や申請書類等の記載内容及び調査
に基づいて判断する。
イ本件各申請1の際,原告Aは,収入状況等申告書に,医療費については
年間25万円と記載して提出した。原告Bは,収入状況等申告書に,医院
代は月平均2万円と記載して提出した。原告らは,これに関して資料を提
出しなかった。
ウ本件国保税減免申請の際,収入状況等申告書に,通勤費については3万
9300円(月平均の趣旨),国保税については45万4000円,住民
税については2人分計8000円,医療費については3万7500円(月
平均の趣旨)と記載して提出した。その際,医療費については資料ととも
に,通勤費については金額の内訳を詳細に調べて申告した。
エ被告は,そのころ,原告Aの本件国保税減免申請に対し,先の固定資産
税減免申請に対する不承認処分の決定の時と同額の控除額を認定し,本件
国保税減免申請不承認処分を行った。
オ原告らは,同年8月25日の本件各処分に対する異議申立て後行われた
手続において,本件各固定資産税減免不承認処分についても,国保税の減
免申請時に提出した住民税及び通勤費の資料などに基づいて口頭陳述を
行った。
カ被告は,同年12月13日までの間に,医療扶助費については原告方を
訪問し確認したり,通勤費については実際にかかる費用を計算するなどし
て調査した。
キ被告は,カの調査結果に基づき,国保税については,減免の申請日の時
点に遡って認定を見直し,収入認定額計算書の国保税については45万4
000円,住民税については8000円,通勤費については43万929
6円,最低生活費計算書の医療扶助費については31万5435円と修正
した。しかし,固定資産税については,減免申請の時点で資料が提出され
ていなかったことから,減免申請不承認時の認定を修正しなかった。
(2)通勤費及び医療扶助費について
ア前記争いのない事実等及び上記認定事実によれば,被告においては,固
定資産税及び国保税の減免申請に対しては,減免申請時を基準として,申
請時の面談や申請書類等の記載内容及び調査に基づいて判断しており,こ
れは異議申立てに対して判断する場合も同様とのことであるが,本件国保
税減免申請不承認処分に対する異議申立てで修正され認定された通勤費
及び医療扶助費の算定の基礎となる事情は,本件国保税減免申請時に客観
的に存在した事情ということができる。
そして,前記のとおり,本件申請2は平成18年7月24日に行われて
いるところ,本件各固定資産税減免不承認処分はそのわずか1か月足らず
前である同年6月30日に行われているのであり,その間に原告らの世帯
に通勤費や医療費等に影響を与えるような事情の変化はうかがわれない。
これらによれば,本件国保税減免申請不承認処分に対する異議申立て手
続において修正され認定された通勤費及び医療扶助費の算定の基礎とな
る事情は,本件各固定資産税減免申請不承認時にも客観的に存在したと認
めるのが相当である。
イ被告は,本件取扱要領の規定の体裁などから,あくまで減免申請書の記
載内容,その添付資料及び調査をもとに減免申請時に立って推計するもの
と主張するもののようであるが,当該処分の判断が,処分時に客観的に存
在した事情と齟齬する場合には,やはり当該処分には瑕疵があるというべ
きであって,被告の主張は採用できない。
ウ以上述べたところによれば,原告の主張するとおり,通勤費,医療扶助
費については,本件申請2と同額の金額が認定されるべき事情があったと
いうことができる。そうすると,最低生活費は合計458万6793円,
収入は445万1670円となり,収入が最低生活費を下回るのであっ
て,収入が最低生活費を上回るとしてされた本件各固定資産税不承認処分
は,取消訴訟でいう違法があるということができる。
4以上の次第であるから,原告らの請求のうち,原告らが被告に対し本件各固
定資産税減免申請不承認処分の取消しを求める部分はいずれも理由があるから
これを認容し,その余については理由がないからこれを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
秋田地方裁判所民事第一部
裁判長裁判官鈴木陽一
裁判官佐藤久貴
裁判官工藤美香

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