弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役八月及び罰金千円に処する。
     原審未決勾留日数中十日を右懲役刑に算入する。
     但し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
     若し、右罰金を完納することができないときは、金五十円を一日に換算
した期間被告人を労役場に留置する。
     原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人灘岡秀親の控訴趣意は、同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりである。
 右に対する判断。
 (一) 事実誤認の点について。
 原判決摘示の事実、殊に被告人において原判示玄米が賍品であることの情を察知
していた事実は、原判決の挙示引用にかかる証拠によつてこれを認定するのに十分
であり、証拠の取捨に関する原審裁判官の措置、証拠の証明力に関する原審裁判官
の判断に、経験法則の違背等特に不合理とすべき事由なく、原判決に所論のような
事実誤認の違法があるものとは認められない。論旨は理由がない。
 (二) 法令適用の誤について。
 <要旨>賍物を運搬した上これを牙保した場合には、包括一罪であつて運搬と牙保
との二箇の罪を構成するものではないと解するのが相当である。原判決が、
賍品である原判示玄米の運搬と牙保とが、それぞれ別箇独立の罪を構成するものと
し、これに併合罪の規定を適用処断したのは、法令の解釈適用を誤つた違法がある
ものというのほかなく、右の違法社判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、論
旨は理由があり、原判決は破棄を免かれない。
 よつて、その余の点に関する判断を省略し、刑訴第三九七条第三八〇条により原
判決を破棄し、刑訴第四〇〇条但書に従い、本件について更に判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、Aが福岡県浮羽郡a村大字bc番地のdB方倉庫内において窃取した
B所有の玄米唐米袋人四俵につき、Aからその売却斡旋方の依頼を受け、その賍品
であることの情を察知しながらこれを承諾し、昭和二八年一月一六日夜Cと共同し
て同玄米四俵をオート三輪車に積み、同郡a村大字beの墓地から、同郡f町g番
地D有限会社まで移動運搬した上、同所において同会社取締役Eに対し、そのうち
の玄米二俵を代金七、二〇〇円で売却方の斡旋をして牙保したものである。
 (証拠)
 一、 原審公判における被告人の供述
 一、 原審公判における証人A、同Cの証言、
 一、 Bの被害届、並びに申立書、
 一、 検察事務官の面前における被告人の供述、
 一、 Eの買受始末書、
 以上を綜合して判示事実を認定する。
 (決令の適用)
 刑法第二五六条第二項、罰金等臨時措置法第二条、第三条。
 刑法第二一条、刑法第一八条。
 刑法第二五条(懲役刑につき)。
 刑訴第一八一条第一項。
 以上の理由により主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 筒井義彦 裁判官 柳原幸雄 裁判官 岡林次郎)

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