弁護士法人ITJ法律事務所

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            主       文
    被告人を懲役9年に処する。 
    未決勾留日数中580日をその刑に算入する。
            理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A,Bら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,平成14年11月3日午前零
時54分ころ,株式会社C大垣店店長Dが看守する岐阜県大垣市a町ⅰ丁目
ⅱ番地所在の同店北側従業員出入口ドアから同店内に侵入した上,同店2
階事務所において,同所に置かれた金庫1基を窃取しようとしたが,同金庫
を同店1階に通じる階段付近までしか搬出することができなかったため,そ
の目的を遂げなかった
第2 E,Fら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,
 1 同月19日午前零時46分ころ,G店店長Hが看守する岐阜市b通ⅰ丁目ⅱ
番地ⅲ所在の同店西側倉庫のシャッターから同店内に侵入し,同所におい
て,同人管理に係るノートパソコン1台(時価約25万円相当)を窃取した
 2 同日午前1時55分ころ,I店店長Jが看守する愛知県一宮市大字c字dⅰ番
地ⅱ所在の同店東側出入口引き戸から同店内に侵入した
第3 A,K,L,M,Bら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,
 1 同月30日午前1時15分ころ,株式会社N代表取締役Oが看守する岐阜県
土岐市e町fⅰⅱ番地所在の株式会社N本店北西側クリーニング店出入口ド
アから同N本店内に侵入し,同所において,同人管理に係る現金約5000
円及び切手約20枚ほか約800点在中の金庫1基(時価合計約10万6300
円相当)を窃取した
 2 同日午前2時12分ころ,前記Oが看守する同市g町hⅰ番地のⅰ所在の株
式会社N土岐口店事務所南側出入口ドアから同店内に侵入し,同所におい
て,同人管理に係る現金約817万9425円及び商品券63枚ほか約1661
点在中の金庫1基(時価合計約39万9500円相当)を窃取した
第4 U,A,K,L,Pら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,
 1 同年12月4日午前2時17分ころ,株式会社Q店店長Rが看守する同県多
治見市i町ⅱ丁目ⅲ番地所在の同店事務室西側従業員出入口ドアから同店
内に侵入し,同店事務室内金庫室において,同所に置かれた金庫を搬出し
て窃取しようとしたが,同金庫の外寸が同金庫室出入口より大きく,搬出で
きなかったため,その目的を遂げなかった
 2 同日午前3時11分ころ,株式会社S朝宮店店長Tが看守する愛知県春日井
市j町ⅰ丁目ⅱ番地のⅲ所在の同店東側惣菜調理室出入口ドアから同店内
に侵入し,同所において,同人管理に係る現金約303万円及び預金通帳2
冊在中の耐火金庫1基(時価約1万円相当)を窃取した 
第5 U,A,K,L,Mら数名と共謀の上,金品窃取の目的で, 
 1 同月5日午前零時40分ころ,株式会社V日進駅前店店長Wが看守する同
県日進市kⅰ丁目ⅱ番地所在の同店内に侵入し,同所において,同人管理
に係る薬約146錠在中の金庫1基(時価合計約6万9195円相当)を窃取し

 2 同日午前2時20分ころ,株式会社X店店長Yが看守する同県春日井市l町ⅰ
丁目ⅱ番地のⅲ所在の同店南側事務所出入口ドアから同店内に侵入し,
同所において,同人管理に係る現金約153万0890円及び預金通帳1通在
中の耐火金庫1基(時価約15万円相当)を窃取した
第6 U,A,K,L,Fら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,株式会社Z店店長
アが看守する岐阜県大垣市m町ⅰ番地ⅱ所在の同店内に侵入しようと企
て,同月8日午前1時30分ころ,同店従業員出入口ドアをバールでこじ開け
るなどして同店内に侵入しようとしたが,警察官が同店に駆け付けたため,
その目的を遂げなかった
第7 A,K,M,Bと共謀の上,金品窃取の目的で,
 1 平成15年1月9日午前零時50分ころ,株式会社イ店店長ウが看守する和
歌山県海南市nⅰ番地のⅱ所在の同店商品搬入口のシャッターから同店内
に侵入した上,同店事務所において,同所に置かれた金庫をバールを用い
て移動させて窃取しようとしたが,同金庫がコンクリートに固定されていて搬
出できなかったため,その目的を遂げなかった
 2 同日午前1時43分ころ,株式会社エ店店長オが看守する同県海草郡o町大
字pⅰ番地ⅱ所在の同店従業員出入口ドアから同店内に侵入し,同店2階
事務所において,同人管理に係る現金約409万2694円及び商品券286
0枚ほか約915点在中の金庫1基(時価合計約235万8305円相当)を窃
取した
第8 A,K,L,Bら数名と共謀の上,金品窃取の目的で,
 1 同月20日午前零時49分ころ,株式会社カ店店キが看守する三重県四日市
市qⅰ丁目ⅱ番ⅲ号所在の同店裏口ドアから同店内に侵入し,同所におい
て,机の引き出しを開けるなどして物色したが,金品が見付からなかったた
め,その目的を遂げなかった
 2 同日午前2時26分ころ,株式会社ク店店長ケが看守する同県桑名市rⅰ丁
目ⅱ番地ⅲ所在の同店南側従業員出入口ドアから同店内に侵入した上,
同店事務室において,同所に置かれていた同人管理に係る現金472万68
61円及びポイント券1376点在中の金庫1基(時価合計約66万円相当)を
窃取した
ものである。
(証拠)(省略)
(事実認定の補足説明)    
1 被告人は,捜査段階及び公判を通じて,公訴事実の全犯行について否認又
は黙秘をし,弁護人も全犯行について被告人は無罪である旨主張する。そこ
で,当裁判所が,「罪となるべき事実」記載のとおり,公訴事実の全犯行につい
て被告人が犯人であると認定した理由について,補足して説明する。
2 証拠により優に認定できる事実
  関係各証拠から以下の事実を優に認定することができる。
 ① 被告人が本件各犯行に関与したか否かは別として,前記「罪となるべき事
実」記載のその他の者らは,同記載の各犯行を行った。
 ② 「罪となるべき事実」第3の2の犯行において,A,Lら中国人実行犯らが,
平成14年11月30日午前2時12分ころ,株式会社N土岐口店に侵入し,同
所において,現金等在中の金庫1基を窃取し,同金庫を普通乗用自動車ニ
ッサンステージア(以下「ステージア」という。)の荷台に積み込む際,中国人
実行犯の一人が,同金庫と前記荷台の間に左手を挟んで怪我をして出血
し,その血が左手にはめていた軍手に付着した。
 ③ 「罪となるべき事実」第8の2の犯行において,A,Kら中国人実行犯らが,
平成15年1月20日午前2時26分ころ,株式会社ク店に侵入し,現金等在
中の金庫1基を窃取し,普通乗用自動車ニッサンエルグランド(以下「エルグ
ランド」という。)の荷台に積み込んだ。そのころ,通報により警察車両が同
店に駆け付けため,Aらは同所から逃走した。前記エルグランドに乗車して
いた被告人は,降車して同所から逃走しようとしたが,同所付近の路上で警
察官に現行犯逮捕された。
3 共犯者らの各公判供述の検討
 ① 判示第1の犯行について
  ア Aの公判供述の信用性
    判示第1の犯行の共犯者Aは,当公判廷において,「私は,本件平成14年
11月3日の犯行,同月30日の2件の犯行,同年12月4日の2件の犯
行,同月5日の2件の犯行,平成15年1月9日の2件の犯行,同月20日
の2件の犯行に実行犯として加わったが,いずれの犯行にも,私が『リー
リー』と呼ぶ一人の中国人が実行犯として加わっていた。『リーリー』は,
ケや日本人運転手とのやりとりをしていたため,盗んだお金のうち先に10
パーセント持っていき,運転手の分の報酬を差し引いた残りをケ及び『リ
ーリー』を含む中国人共犯者ら間で平等に分配していた。『リーリー』は,
平成14年11月30日のN土岐口店での犯行において,窃取した金庫を
小さいワゴン車の荷台に積み込む際に,左手を金庫と小さいワゴン車の
荷台の間に挟んで左手の指に怪我をした。『リーリー』はそのとき両手に
軍手をしており,左手を挟んだ直後,左手の軍手には血が付いていた。
『リーリー』は,その後,Bと一緒に病院に行き,マンションに戻ってきたと
きには左手に白い包帯を巻いていた。平成15年1月20日のク店での犯
行において,私達が窃取した金庫を白色ワンボックスカーに押し込んでい
る際に警察が来て,私達は現場から逃げ出した。私は,それ以後,『リー
リー』とは会ったことはない。その他の中国人共犯者やBとは,その後も会
ったことがあるから,捕まったのは『リーリー』に間違いない。私は,『リーリ
ー』と前記11件の犯行を行うなど,ずっと一緒に悪いことをしてきたし,盗
み以外の場面でも顔を合わせていたから,『リーリー』の顔を覚えている。
『リーリー』とは,被告人のことである。」と供述するところ,その供述内容
は,具体的,詳細かつ自然である上,Aは,「リーリー」と呼ぶ中国人ととも
に前記11件の建造物侵入,窃盗等の犯行を行い,また,それらの犯行の
場面以外にも同人と何度も顔を合わせていたから,その顔を覚えていると
する点等で合理的である。Aの前記公判供述は,被告人が判示第1の犯
行に加わったなどの重要な点で,後記Bの公判供述とも整合している。ま
た,Aは,前記11件の犯行,判示第6の犯行,出入国管理及び難民認定
法違反の罪により,岐阜地方裁判所コ支部で懲役6年の実刑判決を受
け,現在受刑中であり,被告人に不利益な虚偽の供述をする理由は見当
たらない上,被告人と同じ中国s省t市内に自宅があるため,被告人に不
利益な証言をすれば後日被告人から自分やその家族が復讐されるので
はないかと恐れているにもかかわらず,敢えて被告人に不利益な供述を
している。これらの点からすれば,Aの公判供述の信用性は高いものと認
められる。
  イ Bの公判供述の信用性
    判示第1の犯行の共犯者であるBは,当公判廷において,「私は,本件平
成14年11月3日の犯行,同月30日の2件の犯行,平成15年1月9日の
2件の犯行,同月20日の2件の犯行に自動車運転手として加わったが,
いずれの犯行にも,私が『チェンさん』と呼ぶ中国人のリーダーが実行犯
として加わっていた。私は,それ以前に『チンさん』と呼ぶ中国人がリーダ
ーである中国人窃盗団の運転手をしたことがあり,そのとき,『チンさん』
から『チェンさん』を紹介されて同人と知り合った。平成14年10月中旬こ
ろ,『チンさん』が中国に帰国したため,『チェンさん』が中国人窃盗団のリ
ーダーになった。『チェンさん』は,平成14年11月30日のN土岐口店で
の犯行において,両手に軍手をはめていたが,窃取した金庫をステージ
アの荷台に積み込む際に,左手の中指に怪我をし,血を流していたことが
あった。そこで,私は,同日深夜に『チェンさん』をサ病院に連れて行って
治療を受けさせ,同人は左手の中指と手のひらに包帯を巻いてもらって
いた。『チェンさん』は,平成15年1月20日のク店での犯行において,他
の中国人実行犯らとともに同店内に侵入して金庫を窃取してきたものの,
私が運転席に座るエルグランドの後部荷台にその金庫を押し込むことが
できずにいた。他の4人の中国人は,なお金庫を後部荷台に押し込もうと
していたが,『チェンさん』はエルグランドの助手席に乗り込んで来て,『行
く,行く。』と言って,車を発進するよう求めてきた。しかし,私は,4人の中
国人が金庫を後部荷台に押し込むのを待っていた。すると,前方からハイ
ビームの車が来て,Kが『警察。』と言ったので,私達はエルグランドの後
方に向かって走って逃げた。私は,4人の中国人の後を付いて逃げ,『チ
ェンさん』も私とほぼ同時に助手席のドアを開け,同じ方向へ逃げた。私
は,『チェンさん』を追い抜き,そのまま民家に隠れた。私が逃げてきた方
の道路から,『立て,こっちこい。』などと声が聞こえてきたので見ると,道
路に座っている人が一人いて,立っている二人の男がその人を引っ張っ
ていた。私は『チェンさん』が警察に捕まったものと思った。その後,『チェ
ンさん』の携帯電話から,私の携帯電話に電話がかかり,かけ直すとKが
出て,『チェンさん捕まったね。』と言われた。私は,後日,『チェンさん』以
外の4人の中国人とは会ったことがあるので,警察に捕まったのは『チェ
ンさん』に間違いない。私は,前記7件の犯行等を『チェンさん』と一緒に
行ってきたほか,日中,店舗の下見に何回も一緒に行ったり,平成14年
10月中旬ころに焼き肉店,同月下旬ころにオムライス専門店で一緒に食
事をしたこともあるため,『チェンさん』の顔をよく覚えている。『チェンさん』
の顔には,目がくりっとして,眉毛が濃く,頬がこけているという特徴があ
る。『チェンさん』とは,被告人のことである。」と供述するところ,その供述
内容は,具体的,詳細かつ自然である上,Bは,「チェンさん」とともに7件
の建造物侵入,窃盗等の犯行を行い,また,それらの犯行の場面以外に
も何度も顔を合わせていたから,その顔をよく覚えているとする点等で合
理的である。Bの前記公判供述は,被告人が判示第1の犯行に加わった
などの重要な点において,前記Aの公判供述とも整合している。Bは,前
記7件の犯行等により,岐阜地方裁判所コ支部で懲役3年6月の実刑判
決を受け,現在受刑中であり,被告人に不利益な虚偽の供述をする理由
は見当たらない。これらの点からすれば,Bの公判供述の信用性は高い
ものと認められる。
 ② 判示第2の1,2の各犯行について
   Eの公判供述の信用性
   判示第2の1,2の各犯行の共犯者であるEは,当公判廷において,「私は,
シという人に頼まれて,中国人窃盗団の自動車運転手役として,本件平成1
4年11月19日の2件の犯行に加わり,その際,私が『チョウ』と呼んでいた
中国人を助手席に乗せて,その道案内に従って,自動車を運転した。私は,
そのときに『チョウ』の顔を何度も見た。また,私は,前記犯行前に待ち合わ
せ場所付近のマンションの室内で『チョウ』と会っているし,本件以外にも,平
成14年10月中旬ころに私が中国人窃盗団の運転手役として自動車を運転
したことがあって,その際にも,助手席に乗車した『チョウ』が私に道案内をし
ていた。さらに,私は,同年11月終わりか12月初旬ころの夕方,名古屋市
内の郵便局の前で,運転手役の報酬の件で『チョウ』と会って話をしたことが
ある。私は,そのころには既に『チョウ』の顔を覚えていたので,郵便局前に
来た『チョウ』と会うことができたが,結局報酬をもらうことはできなかった。
『チョウ』の顔には,ほお骨が出ていて,目がくりっとして,眉毛が太く濃いと
いう特徴があり,その顔はずっと覚えている。『チョウ』とは,被告人のことで
ある。」と供述するところ,その供述内容は具体的,詳細かつ自然である上,
Eは,被告人とともに2件の建造物侵入,窃盗の犯行を行い,それらの犯行
の場面以外にも被告人と会っていたため,同人の顔をよく覚えているとする
点等で合理的である。Eは,前記2件等の犯行により,名古屋地方裁判所で
懲役2年6月の実刑判決を受けて,現在受刑中であり,被告人に不利益な
虚偽の供述をする理由は見当たらない。これらの点からすれば,Eの公判
供述の信用性は高いものと認められる。
 ③ 判示第3の1,2の各犯行について
  ア 軍手に付着した血痕について
    A及びBの各公判供述等の関係各証拠によれば,判示第3の2の犯行に
おいて,Aらの中国人実行犯らが窃取した金庫をステージアの荷台に積
み込もうとした際,中国人実行犯の一人が金庫と荷台の間に左手の指を
挟んで怪我をし,出血して左手にはめていた軍手に血が付いたことが認
められるところ,その後もAらが窃盗等の犯行の際に使用しており,判示
第6の犯行現場に遺留された前記ステージアから,左手側に血痕が付着
した軍手が押収されている。そして,前記軍手に付着した血痕と被告人の
血液について,ABO式血液型検査と複数の型でのDNA検査を実施した
結果,両者はいずれも同じ型であり,それらの型が全て一致する人物の
中国人における出現頻度は約96万人に1人の確率であることが認めら
れる。これらの点からすれば,前記ステージアから押収された軍手に付着
した血痕は,被告人の血液であることが強く推認される。
  イ A及びBの各公判供述の信用性
    いずれも判示第3の1,2の各犯行の共犯者である,Aは前記①アのとお
り,Bは前記①イのとおり,それぞれ当公判廷で供述するところ,その供
述内容はいずれも,詳細,具体的,自然かつ合理的である上,前記アの,
前記軍手に付着した血痕は被告人の血液であると強く推認される事実に
整合しており,さらに,前記各供述は,被告人が判示第3の1,2の各犯行
に加わったなどの重要な点で相互に整合している。これらの点からすれ
ば,A及びBの公判供述の信用性はいずれも高いものと認められる。
 ④ 判示第4の1,2の各犯行について
  ア Uの公判供述の信用性
    判示第4の1,2の各犯行の共犯者Uは,当公判廷において,「私は,Kら
に誘われ,本件平成14年12月4日の2件の犯行,同月5日の2件の犯
行,同月8日の犯行に加わったが,私が『リーリー』と呼ぶ一人の中国人
がいずれの犯行にも実行犯として加わっていた。各犯行現場で他の共犯
者らに指示をしていたのが『リーリー』であったことや日本人の共犯者が
来たときに話をするのは専ら『リーリー』であったことなどから,窃盗団のリ
ーダーは『リーリー』である。私は,同月3日に『リーリー』と初めて会った
が,そのとき同人は手の指に包帯を巻いていた。私は,同月3日から同月
8日までずっと『リーリー』と一緒にいたので,その顔をよく覚えている。『リ
ーリー』の顔には,眉毛が太く,奧目がちな目で,あごがとがっていて,顔
の輪郭が細いという特徴がある。『リーリー』とは,被告人のことである。」
と供述するところ,その供述内容は具体的,詳細かつ自然である上,U
は,「リーリー」とともに本件5件の建造物侵入,窃盗等の犯行を行い,そ
れらの犯行の場面以外においても,平成14年12月3日から同月8日ま
での間,ずっと「リーリー」と一緒にいたため,その顔をよく覚えているとす
る点等で合理的である。Uの前記公判供述は,被告人が判示第4の1,2
の犯行に加わったなどの重要な点で,後記A及びKの各公判供述とも整
合している。Uは,前記5件の建造物侵入,窃盗等の各犯行及び他の住
居侵入,窃盗1件の犯行により,岐阜地方裁判所コ支部で懲役4年の実
刑判決を受け,現在受刑中であり,被告人に不利益な虚偽の供述をする
理由は見当たらない上,被告人と同じ中国s省t市内に自宅があるため,
被告人に不利益な証言をすると,後日被告人から自分やその家族が復
讐されるのではないかと恐れているにもかかわらず,敢えて被告人に不
利益な供述をしている。これらの点からすれば,Uの前記公判供述の信
用性は高いものと認められる。
イ Aの公判供述の信用性
    判示第4の1,2の各犯行の共犯者Aは前記①アのとおり,当公判廷で供
述するところ,その供述内容は詳細,具体的,自然かつ合理的である上,
前記Uの公判供述及び後記Kの公判供述と整合しており,その供述の信
用性は高いものと認められる。
  ウ Kの公判供述の信用性
    判示第4の1,2の各犯行の共犯者Kは,「私は,本件平成14年12月4日
の2件の犯行,同月5日の2件の犯行に加わったが,私が『ニイニイ』と呼
ぶ一人の中国人が,いずれの犯行にも加わっていた。『ニイニイ』は,日
本人のケや運転手役の者と連絡を取ったり,犯行場所を下見して見付け
てくるなどの役目をしていたから,窃取したお金の分配の際,他の共犯者
と違って,先に15パーセントくらいのお金を分け前として取り,その後運
転手の取り分を差し引き,その残りを『ニイニイ』やケを含めた共犯者ら間
で均等に分配していた。『ニイニイ』は,平成14年11月30日ころ,指に怪
我をしたことがあり,同年12月4日の犯行の際,怪我をした指から手にか
けて白い包帯を巻いていた。私は,平成15年1月20日,『ニイニイ』が逮
捕されるのを見たわけではない。ただ,私は,『ニイニイ』以外の中国人共
犯者であるK,小宝,表弟とは,同日以後も会ったことがあるけれども,
『ニイニイ』とはその後会ったことがない。私は,『ニイニイ』から,同人の本
名が『チュン』であると聞かされたことがある。私は,夜,『ニイニイ』と一緒
に何回か犯行を行ったり,昼間『ニイニイ』が私のマンションへ遊びに来た
りしていたので,『ニイニイ』を見ればすぐにわかる。『ニイニイ』とは,被告
人のことである。」と供述するところ,その供述内容は具体的,詳細かつ自
然である上,Kは,「ニイニイ」とともに前記4件等の犯行を行ったほか,日
中,被告人と一緒に遊んだりしていたことから,その顔を覚えているとする
点等で合理的である。Kの前記公判供述は,前記Uの公判供述,前記A
の公判供述とも整合している。Kは,前記4件の犯行に加えて判示第3の
1,2,判示第6,判示第8の1,2の犯行,出入国管理及び難民認定法違
反の罪で岐阜地方裁判所コ支部で懲役6年の実刑判決を受け,現在受
刑中であり,被告人に不利益な虚偽の供述をする理由は見当たらない
上,被告人と同じ中国s省t市内に自宅があるため,被告人に不利益な証
言をすると,後日被告人から自分やその家族が復讐されるのではないか
と恐れているにもかかわらず,敢えて被告人に不利益な供述をしている。
これらの点からすれば,Kの前記公判供述の信用性は高いものと認めら
れる。
 ⑤ 判示第5の1,2の各犯行について
   U,A及びKの各公判供述の信用性
   いずれも判示第5の1,2の各犯行の共犯者である,Uは前記④アのとおり,
Aは前記①アのとおり,Kは前記④ウのとおり,それぞれ当公判廷において
供述するところ,その供述内容は詳細,具体的,自然かつ合理的である上,
各供述は,被告人が判示第5の1,2の犯行に加わったなどの重要な点で相
互に整合している。これらの点からすれば,前記3名の各公判供述はいず
れも信用性が高いものと認められる。
 ⑥ 判示第6の犯行について
  ア Uの公判供述の信用性
    判示第6の犯行の共犯者Uは,当公判廷において,前記④アのとおり供述
しているところ,その供述内容は詳細,具体的,自然かつ合理的である
上,被告人が判示第6の犯行に加わったなどの重要な点で,後記Fの公
判供述とも整合している。これらの点からすれば,Uの公判供述の信用性
は高いものと認められる。
  イ Fの公判供述の信用性
    判示第6の犯行の共犯者Fは,当公判廷において,「私は,本件平成14年
12月8日の犯行に加わり,窃盗の犯行に行く中国人らを乗せて,その犯
行現場まで自動車を運転したことがある。私は,最初中国人3人を乗せて
普通乗用自動車トヨタノア(以下「ノア」という。)を運転して名古屋市内か
ら岐阜県本巣郡u町方面へ向かった。同町内で,助手席に乗車していた
中国人の指示で,私は,ゴルフ練習場の駐車場にノアを入れて駐車し,そ
の中国人がノアの助手席から降りていき,代わりに別の中国人がノアの
助手席に乗車してきた。その中国人の指示で,私は,ノアを発進させて,
同県v市内まで運転していき,同市内で,助手席の中国人から『ストップ,
ドライバーチェンジ。』などと指示されて,ノアを降りて,ステージアの運転
手と車を交替した。同県本巣郡u町内から同県v市内まで,私の運転する
ノアの助手席に乗車していた中国人の顔は,眉毛が太く,目がくりっとして
いて,顔がほっそりしていてちょっと暗いイメージのある顔であった。私
は,指示される際などにその中国人の顔を見たところ,その中国人は,髪
は少し耳にかかるくらいで茶髪で,一人だけ髪を染めていたため,印象的
であった上,私の中学校時代の同級生の中国人の顔によく似ていたた
め,その中国人の顔をよく覚えている。その中国人とは,被告人のことで
ある。」と供述するところ,その供述内容は具体的,詳細かつ自然である
上,Fは,運転席から隣の助手席に座っていた中国人の顔を見ており,そ
の髪の毛が茶髪で印象的であり,中国人の同級生に顔がよく似ていたた
めに,その中国人の顔をよく覚えていたとする点等で合理的である。F
は,判示第2の1,2の各犯行の際にも中国人らを乗せて運転手役をした
が,そのときの中国人の顔は覚えていないと供述しており,記憶している
ことと記憶していないことを区別して供述している。Fの前記公判供述は,
被告人が判示第6の犯行に加わったなどの重要な点で,前記Uの公判供
述とも整合している。また,Fは,判示第6の犯行について名古屋家庭裁
判所で保護観察処分を受け,現在保護観察中であり,被告人に不利益な
虚偽の供述をする理由も見当たらない。これらの点からすれば,Fの前記
公判供述の信用性は高いものと認められる。
  ウ 軍手に付着した血痕について
    判示第6の犯行現場に遺留されたステージアから押収された軍手の血痕
は,前記③アのとおり,被告人の血液と強く推認されるが,このような血痕
が付着した軍手が,犯行に供された前記ステージア内から押収されたこと
は,U及びFの前記各公判供述の信用性を高めるものである。
 ⑦ 判示第7の1,2の各犯行について
  ア A及びBの各公判供述の信用性
    いずれも判示第7の1,2の各犯行の共犯者である,証人Aは前記①アの
とおり,証人Bは前記①イのとおり,当公判廷で供述しており,その供述
内容は詳細,具体的,自然かつ合理的である上,各供述は,被告人が判
示第7の1,2の各犯行に加わったなどの重要な点で相互に整合してい
る。これらの点からすれば,両名の公判供述はいずれも信用性が高いも
のと認められる。
  イ 被害品の商品券の指紋について
    判示第7の2の犯行により窃取された商品券が,和歌山市内の数件のチ
ケットショップで発見され,鑑定の結果,そのうちの1枚の商品券から採取
された指紋が被告人の指紋と符合している。同商品券は,窃取されるま
で流通したことがなかったものである上,Aら中国人実行犯は判示第7の
犯行の際に手袋をしていたことから,被告人が同犯行後,窃取品である
前記商品券を処分するまで保管していた際等に,被告人の指紋が付着し
たものと推認される。この事実は,A及びBの各公判供述の信用性を高め
るものである。
 ⑧ 判示第8の1,2の各犯行について
  ア 被告人が判示第8の2の犯行日時ころ,窃取された金庫が積み込まれた
エルグランドに乗車して犯行現場にいたこと
    被告人は,平成15年1月20日,三重県桑名市所在のク店の犯行現場か
ら逃走したところを現場に駆け付けた警察官に目撃され,その後,同店付
近路上で警察官に現行犯逮捕されており,判示第8の2の犯行日時に犯
行現場にいたことが認められる。被告人自身も,捜査段階において,Kら
の中国人数名及び日本人1名と一緒に,犯行現場に遺留され,同店から
窃取された金庫がその荷台に積み込まれたエルグランドに乗車して犯行
現場まで来て,同車内に乗車していたところ,警察官が来たため逃走した
旨供述して自認している。
  イ A及びBの各公判供述の信用性
    いずれも判示第8の1,2の各犯行の共犯者である証人Aは前記①アのと
おり,証人Bは前記①イのとおり,当公判廷で供述しており,その供述内
容は詳細,具体的,自然かつ合理的である上,各供述は,被告人が判示
第8の1,2の各犯行に加わったなどの重要な点で相互に整合している。
また,前記アの,被告人が判示第8の2の犯行日時ころ,窃取された金庫
が積み込まれたエルグランドに乗車して犯行現場にいた事実は,A及びB
の前記各公判供述の信用性を高めるものである。これらの点からすれ
ば,両名の各公判供述はいずれも信用性が高いものと認められる。
 ⑨ 弁護人主張の検討
   弁護人は,証人U,F,E,B,A及びKの各公判供述について,同人らは,数
回ないし短時間しか前記中国人グループのまとめ役である共犯者と会って
いないものである上,犯行から相当時間が経過し記憶が曖昧になっている
中で,捜査機関により,被告人が犯人であると誘導された可能性があるか
ら,前記各証人らの公判供述の信用性はいずれも低いと主張するが,関係
各証拠によれば,前記各証人らは,その特徴を記憶するに十分な回数ない
し時間,前記共犯者と会っていたこと,捜査機関が面割りの際に前記各証
人らに誘導したり,被告人が犯人であることを暗示させないような方法で写
真面割り等を実施したことが認められる。
   また,弁護人は,犯行当時の前記共犯者の頭髪の色や他の共犯者からの
呼び名について,前記各証人らやその他の共犯者らの供述間で食い違い
があることから,前記各証人らの各公判供述の信用性は低いとも主張する。
しかし,本件において,前記共犯者の当時の頭髪の色は,染色により一定し
ていなかった可能性もあり,前記各証人らが供述するほかの特徴と比較す
ればそれほど重要な事項といえず,時の経過等により記憶が曖昧になった
としても不合理とはいえないし,前記共犯者の呼び名についても,日本人共
犯者が「チェン」,「チョウ」,中国人共犯者が「リーリー」,「ニイニイ」などと異
なる呼称で呼んでいたことは認められるものの,他の関係各証拠から,いず
れも同一の中国人共犯者であると明らかに認められるものである上,日本
人共犯者間,中国人共犯者間に分けると,それぞれの間では類似した呼称
で呼ばれていたものということができる。これらの点から,弁護人の前記各
主張を勘案しても,被告人が本件各犯行の犯人であることに合理的な疑い
を容れない。
4 まとめ
  以上検討のとおり,U,F,E,B,A及びKの当公判廷における各供述を中心
とする関係各証拠により,判示第1ないし第8の2のいずれの犯行においても,
被告人が各犯行に加わっていた事実が認められ,他に前記認定を覆すに足る
証拠は存在しない。
(法令の適用)
1 罰条
 ① 判示第1,第4の1,第7の1,第8の1の各行為について
   いずれも建造物侵入の点は刑法60条,130条前段
   いずれも窃盗未遂の点は刑法60条,243条,235条 
 ② 判示第2の1,第3の1,2,第4の2,第5の1,2,第7の2,第8の2の各行
為について
   いずれも建造物侵入の点は刑法60条,130条前段
   いずれも窃盗の点は刑法60条,235条
 ③ 判示第2の2の行為について
   刑法60条,130条前段
 ④ 判示第6の行為について
   刑法60条,132条,130条前段
2 科刑上一罪の処理
 ① 判示第1,第4の1,第7の1,第8の1の各罪について
   いずれも刑法54条1項後段,10条(一罪として重い窃盗未遂罪の刑で処
断)
 ② 判示第2の1,第3の1,2,第4の2,第5の1,2,第7の2,第8の2の各罪
について
   いずれも刑法54条1項後段,10条(一罪として重い窃盗罪の刑で処断)
3 刑種の選択・判示第2の2及び第6の各罪について
  いずれも懲役刑を選択
4 併合罪の処理
  刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第3の2の罪
の刑に法定の加重)
5 未決勾留日数の算入
  刑法21条
6 訴訟費用の不負担
  刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,被告人が,いずれも共犯者らと共謀の上,スーパーマーケット等の商
店に侵入して,金品を窃取した建造物侵入,窃盗8件,商店に侵入して,金品を
窃取しようとしたが,窃盗の目的を遂げなかった建造物侵入,窃盗未遂4件,金
品窃取の目的で商店に侵入した建造物侵入1件,同様の目的で商店に侵入しよ
うとしたが侵入の目的を遂げなかった建造物侵入未遂1件の事案である。
 本件各犯行は,共犯者らのうち,日本人グループが見張りや自動車の運転等
を担当し,中国人グループが実行犯を担当するという役割分担をした上,夜間,
狙いを付けた商店内に人がいないことを確認するなどして,商店の出入口に荷台
を開けた自動車を待機させ,警察官等が現場に駆け付ける前に逃走するため,
予め逃走までの時間を決めてタイマーをセットし,手袋をはめ,準備したバールで
出入口をこじ開けるなどして建物内に侵入し,窃取した金庫を積み込んで素早く
現場から逃走するなどしたもので,その犯行態様は,組織的,計画的であるばか
りか,わずか3か月足らずの間に同様の手口で敢行した連続的犯行であって,極
めて悪質である。被告人は,前記中国人グループのまとめ役として,日本人グル
ープのまとめ役の人物と連絡を取り合って犯行場所等を選定したり,犯行現場等
で共犯者らに対して各種指示を行うなど,本件において終始主導的かつ重要な
役割を果たしたものである。本件各犯行による被害金額は合計2500万円余りと
多額に及んでいて,生じた結果は大きいところ,被告人は,共犯者中最も多額の
現金等の分配を受けている。被害者らは,いずれも被告人らに対する厳重な処
罰を求めているが,被告人は,被害者らに対して慰謝の措置を講じていないのみ
ならず,公判廷においても意味不明な供述を繰り返すなどしており,反省の態度
や改悛の情は窺われない。以上によれば,被告人の刑事責任は重大である。
 他方,判示第1,第4の1,第7の1,第8の1の各窃盗及び判示第6の建造物
侵入は未遂に終わったこと,判示第8の2の被害品全部など,被害品の一部は被
害者らに還付されたこと,被告人には日本国内での前科がないことなど,被告人
のために斟酌すべき事情も認められるので,これら一切の事情を総合考慮して,
主文のとおりの刑を科すこととする。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役12年)
  平成17年3月10日
    岐阜地方裁判所刑事部
           裁判長裁判官  土 屋 哲 夫
               裁判官古 閑 美津惠
               裁判官今 井 輝 幸

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