弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1コンビニエンスストアから金品を強取しようと企て,平成17年4月13日午前1
時17分ころ,神戸市中央区a町b番地cビル1階所在のd店において,同店店員A(当時
31歳)に対し,文化包丁1丁(刃体の長さ約14.7センチメートル・平成17年領第2423
号符号1)を突きつけ,「金を出せ。」などと告げて脅迫し,同人の反抗を抑圧して,
同店経営者Bの所有する現金約6万6600円及び整髪料1本(物品時価630円相当)を強取
した。
第2業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第1記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
第3コンビニエンスストアから金員を強取しようと企て,同月19日午前1時27分こ
ろ,神戸市灘区e通f丁目g番h号i1階所在のj店において,同店店員C(当時35歳)に対
し,前記文化包丁1丁を突きつけ,「金を出せ。」などと告げて脅迫し,同人の反
抗を抑圧して,同店店長Dの管理する現金約12万2000円を強取した。
第4業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第3記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
第5コンビニエンスストアから金員を強取しようと企て,同年8月15日午前3時12
分ころ,神戸市中央区k町l番地m1階所在のo店において,同店店員E(当時20歳)に対
し,前記文化包丁1丁を突きつけ,「動くな。」などと告げて脅迫し,同人の反抗
を抑圧して,同店経営者Fの所有する現金合計約15万2000円を強取した。
第6業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第5記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
第7コンビニエンスストアから金員を強取する目的で,平成17年10月17日午前2時
25分ころ,前記文化包丁1丁を携え,神戸市中央区p町q番地のr所在のs店に入店し
て,金品強取の機をうかがい,もって強盗の予備をした。
第8業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第7記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
判示第1の事実のうち整髪料(以下「本件整髪料」という。)を強取した点に関し,
被告人は,当公判廷において,整髪料は強盗するつもりはなかったと供述し,弁護
人も,整髪料については,被告人に不法領得の意思がなく,強盗罪は成立しない旨
主張する。
しかしながら,以下の理由により,本件整髪料についても不法領得の意思が認め
られ,弁護人の主張は採用できない。
すなわち,関係各証拠によれば,被告人は,判示第1の日時場所において現金約6
万6600円を強取するにあたり,店内の商品陳列棚から本件整髪料を手に取ってレジ
まで持って行き,レジで代金の精算をしようとした店員に対し,包丁を突きつけて
その反抗を抑圧した上,レジから上記現金を奪うとともに,レジカウンター上に置
いていた本件整髪料をつかんでズボンのポケットに入れ,そのまま店を出た事実が
認められ,これによれば,被告人が,本件整髪料についても,店員の反抗を抑圧し,
その意思に反してこれを持ち出すことを認識していたことは明らかであって,強盗
の故意はこれを優に認めることができる。
被告人は,公判廷において,「店から整髪料を持ち出したのは無意識です。」な
どと述べているところ,それが上記認識を否定する趣旨であるとすれば,上記の経
過に照らして到底信用することはできない。
もっとも,上記供述が,強盗行為を遂行中の緊迫した状況下にあったことなどの
理由から,本件整髪料を持ち出した後,これをどうするかについて,明確な意図を
有していなかったという趣旨であれば,あながち不合理とは言えないし,被告人が
上記強盗現場から車で逃走中これを投げ捨てていることからすると,被告人が本件
整髪料を整髪のために自ら使用し,または,第三者をして使用させるためにこれを
譲渡する明確な意図を有していたとは認め難い。
しかし他方,被告人は,公判廷において,「整髪料を持ったとき,後で捨てよう
とか,隠そうとか思ったわけではない。」と述べており,本件整髪料を店から持ち
出した当時,その価値を自ら享受し又は第三者に享受させることなくこれを廃棄・
隠匿する意図を有していなかったことも明らかであるところ,そうであれば,被告
人は,本件整髪料を持ち出すにあたって,その権利者を完全に排除して,たとえ短
時間であっても自ら本件整髪料を所持することについて,漠然とではあっても何ら
かの効用・効果を見込んでいたものと認めるべきであり,強盗罪における不法領得
の意思としては,そのような心理状態で足りるものと解するのが相当である。
(法令の適用)
被告人の判示第1,第3,第5の各行為はいずれも刑法236条1項に,判示第2,第
4,第6,第8の各行為はいずれも銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条に,判示第
7の行為は刑法237条に該当するが,判示第2,第4,第6,第8の各罪について所定刑
中いずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本
文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重をした刑期の
範囲内で被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその
刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告
人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,深夜のコンビニエンスストアで店員に文化包丁を突きつけて現金等を強
取し又は強取を目論んでその準備をしたという強盗3件,強盗予備1件及びこれらに
伴う銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。
被告人は,借金の返済に窮して本件犯行に及んだものであるが,その借金の原因
に特に同情すべき点はなく,結局,本件は自己中心的で短絡的な犯行というほかな
い。
態様も刃物を用いた危険かつ悪質なものである上,このような凶悪な強盗行為を
3回も重ねた上,さらに同様の犯行に及ぶことを企図していたのであって,この種
犯行の常習性さえうかがわせる。
また,強取した現金額は合計約34万円余りと少なくない上,包丁を突きつけられ
た店員らの受けた恐怖感は大きく,被害者らの処罰感情には一部を除きなお厳しい
ものがある。
以上の諸点に照らせば,被告人の犯情は悪く,その刑事責任は重大である。
しかし他方,被告人が借金の返済について内妻に迷惑をかけまいとして,思い詰
めた末,本件犯行に及んだ経緯がうかがわれること,財産的損害については各被害
店に対して弁償がなされており,さらに,被告人は,各被害店に対し,弁護人を通
じて謝罪の手紙を送付して精神的被害についても慰謝の努力をしようとしているこ
と,また,被告人はおおむね犯行を認めており,反省の情を示していること,被告
人の前科は平成元年に業務上過失傷害罪で受けた罰金のみであること,被告人の内
妻が,被告人の帰りを待ち,社会復帰後の被告人の監督を誓約していることなど,
被告人のために酌むべき事情も認められる。
そこで,以上の諸情状を総合考慮し,主文の刑を定めた。
(求刑懲役7年)
(検察官大原裕吉出席)
平成18年2月6日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判官佐茂剛

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛