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平成一二年(ネ)第三二六六号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成
一一年(ワ)第二八八五六号)
平成一二年一〇月五日口頭弁論終結
判    決
控訴人ユーザー車検代行会全国総本部代表こと
 A
被控訴人   矢野新商事株式会社
代表者代表取締役   B
訴訟代理人弁護士   中   村   治   嵩
同          石   橋   克   郎
主    文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審で拡張した請求を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金九五万円及びこれに対する平成一一年一二
月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(金五〇万円を超える
金員及びこれに対する遅延損害金の請求は、当審で拡張した請求である。)。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行の宣言
二 被控訴人
主文と同旨
第二 事案の概要
事案の概要は、次のとおり当審における両当事者の主張の要点を付加するほ
か、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これ
を引用する(ただし、原判決三頁五、六行目に「2 被告は、「ユーザー車検受付
中」及び「ユーザー車検¥15,000受付中」との看板を掲げて、営業を行って
いる」とあるのを「2 被告は、遅くとも平成八年三月ころから、「ユーザー車検
受付中」及び「ユーザー車検¥15,000受付中」との看板を掲げて、営業を行
っている」と改める。)。
一 当審における控訴人の主張の要点
原判決は、「ユーザー車検」が、控訴人の商品等表示として需要者の間で広
く認識されているとは認められないと認定、判断した。しかしながら、「ユーザー
車検」は、控訴人の略称として周知の商品等表示であるというべきであるから、右
認定、判断は、誤っている。
1 控訴人の開業前には、道路運送車両法に基づく自動車の継続検査(以下
「車検」という。)の手続は、認証を受けた自動車修理整備業者しかできないと考
えられていたため、整備業者が自動車の整備・修理・改造及び車検手続の代行のす
べてを行っていた。控訴人は、自動車修理整備業者でない者が車検手続の代行業務
を行う車検手続方式として、「自動車の所有者が自分で点検した自動車を預かり、
陸運支局又は自動車検査登録事務所(以下「車検場」という。)に持ち込むことだ
けを代行する。」という業務方法を案出し、この方式を「ユーザー車検代行」方式
と名付け、控訴人が、これを行う企業名として、「ユーザー車検代行会」と名乗っ
た。
控訴人の名称である「ユーザー車検代行会」及び略称である「ユーザー車
検」は、開業早々の昭和五八年にテレビ、新聞、週刊誌等マスコミで報道された結
果、周知となった。控訴人は、その後も、フランチャイズチェーンとしてグループ
店を全国展開し、控訴人名及び控訴人の略称である「ユーザー車検」は、全国的に
周知性を高めた。控訴人は、開業後一〇年余りを過ぎた平成七年春の時点でも、車
検に関するテレビ番組で、「ユーザー車検の創始者であるユーザー車検代行会代
表」として取材を受けており、このことは、控訴人が「ユーザー車検」の創始者と
して十分認識され、一般世論の代表者であるマスコミに十分認識されており、控訴
人の名称及び略称が、極めて高い周知性を有することを裏付けるものである。ま
た、控訴人グループは、全国六〇〇店以上において毎年一〇万台以上の利用客を獲
得しており、このうち約二万台が新規の客である。これだけの新規客を誘引獲得す
ることができるのは、控訴人名に周知性があるためである。
このように、「ユーザー車検」は、控訴人の略称として周知性を有してい
る。
2 「ユーザー車検」の語は、その後、「所有者自らが車検場に行って自動車
の継続検査を受けること」を意味する語として転用されるようになり、右の転用さ
れた意味において、一般人の間で、普通名称化されて用いられるようになったが、
依然として、控訴人の略称としての周知性を失わず、一般人からは、両用の意味を
持つものとして記憶されている。
このように、周知化された特定企業の名称ないし略称が、他の意味合いに
転用されることは、往々にしてある。しかし、その結果、その名称ないし略称が、
一般人の間で、本来の企業名と離れて、多少違った意味で使われ、辞典・書籍にも
転用した意味合いで掲載される等して、普通名称化されたとしても、なお、周知の
特定企業の略称と認められる場合合は、多数ある。
3 原判決は、「ユーザー車検」の語を「ユーザー自らが車検場へ出向いて自
動車の継続検査を受けること」を意味する普通名詞であるとしたうえで、被控訴人
は、このような意味の普通名称として「ユーザー車検」の語を普通に使用したもの
であるとしている。しかし、被控訴人は、「ユーザー車検」の語を、右の意味の普
通名称として用いたのではなく、周知の控訴人の略称(商品等表示)としての「ユ
ーザー車検」の語を、故意又は過失により冒用したものである。
二 当審における被控訴人の主張の要点
本件において、控訴人の主張が認められるためには、「ユーザー車検」の語
が控訴人の商品等表示であると感得されるまでに高められていることが必要であ
る。しかしながら、たとい、控訴人が過去にマスメディアの取材を受けた事実があ
ったとしても、「ユーザー車検」の語が、控訴人の商品等表示として、すなわち、
その語を用いる営業主体は控訴人であるとして、周知化された事実はなく、控訴人
の名称又は略称として周知化されたとの控訴人の主張は、思い込みの域を出ておら
ず、失当である。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと思料する。その理由は、次の
とおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の事実及
び理由「第三 争点に対する判断」と同じであるから、これを引用する。
二 控訴人は、「ユーザー車検」は、控訴人の略称として周知の商品等表示であ
る旨主張する。
1 証拠(甲第一一、第一二号証)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭
和五八年に、それ以前には行われていなかった新しい車検手続の代行方式として、
自動車の所有者が自分で点検した車を預かり、車検場に持ち込むことだけを代行す
ることによって、従来の自動車整備業者よりも廉価に車検手続を行うという業務方
法を案出し、この方式を「ユーザー車検代行」方式と名付け、控訴人自身が、これ
を行う企業名として、「ユーザー車検代行会」と名乗って車検手続の代行業務を開
始したこと、控訴人は、開業後間もなく、それまでになかった車検手続代行業務を
行う業者として、テレビ、新聞、週刊誌等マスコミに報道されたことが認められ
る。右事実によれば、控訴人の名称である「ユーザー車検代行会」及び名称の一部
である「ユーザー車検」の語は、開業当初の時点において、全国的に一定の知名度
を得たということができる。
しかしながら、控訴人がその業務を開始した昭和五八年から今日に至るま
での間のいずれの時点においても、「ユーザー車検」の語が控訴人の略称として周
知となったことは、本件全証拠によっても認めることができない。まず、証拠(乙
第四号証の一ないし四)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、車検場に前記ユー
ザー車検方式による車検手続を受け付ける窓口がなかったため、開業当初ころか
ら、陸運支局等にその受付窓口の設置を働きかけたこと、その結果、間もなく、一
部地域を除き、全国各地の車検場に「ユーザー車検」と記載された窓口が順次設け
られるに至ったことが認められる。同窓口が、控訴人だけのために設けられたもの
ではなく、控訴人以外の車検代行業者による車検手続やユーザー自身による車検手
続をも受け付けるためのものであることは明らかであり、このような窓口が公務署
に設けられたこと自体、「ユーザー車検」の語がもともと控訴人の独占を許すべき
性質のものでないと考えられていたことを示すものである。そして、現実にも、原
判決第三の一1で認定されているとおり、ユーザー車検の語は、「認定工場に車検
の手続を委託することなく、ユーザー自らが車検場と呼ばれる運輸省の陸運支局や
自動車検査登録事務所へ出向いて継続検査」を受けることを示す一般的名称とし
て、事典や運輸省発行のパンフレットにおける説明を含む種々の形で、広く用いら
れてきていることが明らかである。
2 控訴人は、今日に至るまで、「ユーザー車検」は控訴人の略称として周知
である旨主張し、証拠(甲第一、第三、第四号証、第一〇号証)によれば、控訴人
は、前記開業後、フランチャイズチェーンとしてグループ店を全国展開し、「ユー
ザー車検代行会」の名称で宣伝広告をしていること、平成七年に車検に関するテレ
ビ番組において、ユーザー車検の創始者であるユーザー車検代行会代表として取材
を受け、そのことが放映されたことが認められる。しかしながら、前記のとおり
「ユーザー車検」の語が一般的名称として種々の形で広く用いられてきていること
に照らすと、控訴人が「ユーザー車検代行」方式の創始者であり、現在も右方式に
よる業務を行っていることが一般に知られているとはいえても、逆の方向の認識、
すなわち、「ユーザー車検」といえば控訴人の略称であるとの認識が一般人や車検
業者において形成されたとまでは認めることができない。したがって、「ユーザー
車検」が控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとはいえな
い。控訴人の主張を採用することはできない。
第四 結論
以上によれば、原判決は相当であって、本件控訴及び控訴人の当審で拡張し
た請求は、いずれも理由がない。そこで、これらをいずれも棄却することとし、訴
訟費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決す
る。
東京高等裁判所第六民事部
裁判長裁判官     山   下   和   明
裁判官     山   田   知   司
裁判官     阿   部   正   幸

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