弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡井藤志郎の上告理由第一点の一および二の(一)について。
 論旨は、本件買収処分の対象とされた上告人の所有地は、地上に上告人所有の蜜
柑樹の生立している果樹園であり、かかる地上に土地所有者の所有に属する物件の
存する土地は、自作農創設特別措置法(以下自創法と称する。)にいう農地にあた
らず、同法によつてはかかる土地の買収は許されない旨を主張したのに対し、原判
決は、これを自創法により買収できるのは土地だけであつて地上物件に及ばないと
する趣旨の主張と誤解して、事実摘示として掲げ、その理由において、これに対応
する説示をして上告人の主張を排斥したのは、結局その主張に対する判断を遺脱し、
かつ自創法の解釈適用を誤つたものというにある。
 しかし、本件記録に徴すれば、原審において上告人の主張したところは、本件土
地の地上蜜相樹は、土地以外の物であり、登記ができるほどの独立の権利の客体で
あるのにかかわらず、自創法にはかかる土地とは別物である地上物件を買収しうる
規定を欠くから、かかる物件の存する土地についてなされた本件買収は違法であり
無効であるという趣旨であることが認められる(上告人の原審における昭和三二年
八月九日陳述同日付準備書面一の(2)、同三四年六月一九日陳述同日付準備書面
一参照)。してみると、この主張についての原判決の事実摘示における記述は、右
上告人の主張の趣旨にたがうものではなく、所論のように、地上物件たる蜜柑樹の
買収のみを違法無効とする趣旨の主張と解したものとは認めがたい。そして原判決
はその理由において、上告人の主張に対して第一審判決の判示を引用するほか、上
記の点については、本件土地の果樹を土地から分離独立した権利の客体と認めるこ
とはできず、土地所有権の移転と運命をともにすべきものと断じ、従つてかかる果
樹を土地から分離した権利の客体であることを前提とする上告人の主張はすべて理
由がない旨を判示しているのである。されば、これを所論のように、、上告人の主
張の誤解に基づく判断の遺脱あるものとはなしがたい。
 論首は、果樹園は自創法にいう農地にあたらない旨を主張するが、同法にいう農
地とは「耕作の目的に供される土地」(同法二条参照)であり、耕作とは土地に労
資を加え、肥培管理を行なつて作物を栽培することをいい、その作物は穀類蔬菜類
にとどまらず、花卉、桑、茶、たばこ、梨、桃、りんご等の植物を広く含み、それ
が林業の対象となるようなものでないかぎり、永年生の植物でも妨げないと解すべ
きであるから、本件果樹園のごときも、同法にいう農地に含まれないとする理由は
ないのである。論旨は、地上に土地所有者の果樹ある土地は小作の対象とならず、
従つてまた農地買収の対象とならないものと論ずるが、かかる土地についても果実
の収獲を目的として小作関係を設定しえない理由はなく、また本件にみるような自
創法三条五項二号該当の場合においても、買収の対象となりうるわけである。論旨
の自創法一条、二条一項を根拠とする論は到底首肯しがたい。
 論旨はさらに、自創法の買収は政府による一方的な所有権剥奪行為であるから、
法律に明確な規定ある場合にかぎり許さるべきものであるのにかかわらず、同法に
は果樹のごとき地上物件ある土地の買収を予定したと認めるに足りる特別規定のな
いことをあげて、その主張の根拠とするが、原判決の判示するように、本件果樹は
土地から分離独立した権利の客体ではなく、地盤たる土地の構成部分として一個の
所有権の客体と認めるのを相当とし、従つて自創法による買収においても、特別の
規定のない以上、土地の買収により当然併せて買収されるものと解すべきである(
昭和三六年三月一四日第三小法廷判決、民集一五巻三号三九六頁参照)。なお論旨
は、自創法六条が農地対価を土地以外のものについて定めていないことをもつて、
右のごとき買収を許されないものと主張するが、同条は必らずしも経済価値ある地
上多年生作物等を相当に評価して正当な補償額としての買収対価を算定することを
否定するものではなく、現に本件においては、原判決の引用する第一審判決によれ
ば、買収対価は、もし素地だけであるとすれば買収対価は八〇〇円六四銭のところ、
蜜柑樹を含めて一三、〇三六円一八銭と算定された旨を判示しているのである。要
するに、本論点について、論旨はいずれも理由がないというべきである。
 同第一点の二の(二)および(三)の(イ)について。
 論旨は、本件土地の売渡の相手方を訴外Dとしたことをもつて、買収権の乱用と
する上告人の主張を排斥した原判決の判断を失当といい、また原判決が上告人と右
Dとの間の本件果実園の耕作関係を請負あるいはこれに類似した契約と判定し、雇
傭と認めなかつたのを非難するが、これらの点についての原判決の判断は、その挙
示する証拠に基づき認められる事実のもとにおいては、いずれも正当であり、論旨
は採用しがたい。
 同第一点の二の(三)の(ロ)ないし(ニ)について。
 論旨は、原判決が、本件認定買収は自創法三条一項二号、三号により上告人が在
村地主として許される小作地保有限度を侵した違法があるとの主張を採用せず、ま
た農地買収は、右小作地保有限度を侵さない範囲で、認定買収は小作地買収よりも
後に、地上物件ある農地はそれのない農地よりも後に買収すべきであるのにかかわ
らず、本件買収はかような順序範囲を無視した違法があるとする主張を排斥したの
を非難するが、自創法三条五項二号による本件買収は、同条一項二号三号所定の保
有面積の制限に服するものではないとする原判決の判断は相当であり、また同法に
よる農地買収に所論のような順序の存することも認めがたい。論旨は理由がない。
 同第一点の二の(四)および(五)について。
 論旨は、自創法による農地買収は公共のためのものでなく、憲法二九条三項に違
反するというにあるが、右買収は、自創法一条に掲げる公共の利益に奉仕する目的
をもつて実施されたものであり、強制買上された農地がさらに特定の小作人に売渡
されても、買収の目的自体の公共のためであることに変りはないのである。当裁判
所大法廷はさきに同法による農地の買収対価を憲法二九条三項にたがうところはな
い旨判示し、右は当然この趣旨を前提としたものであることはいうまでもないとこ
ろであるから、右大法廷の判決の趣旨に徴しこれを肯認することができる(昭和二
八年一二月二三日大法廷判決、民集七巻一二号一五二三頁、同二九年一一月一〇日
大法廷判決、民集八巻一一号二〇三四頁参照)。論旨の理由のないことは明らかで
ある。
 同第二点について。
 論旨は上告理由第一点において指摘した原判決の判示の過誤については、また理
由不備の違法もあるというが、原判決に所論の瑕疵は認めがたく、論旨は採用する
に由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛