弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人池田久の上告趣意第一点は、判例違反をいう点もあるが、所論引用のいわ
ゆる一厘事件の大審院判例は本件に適切でなく、また、原判決は、所論引用の小切
手に関する大審院の判例と相反する判断をしていないから、所論判例違反の主張は
採用できない。その余の主張は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の
上告理由に当らない。そして、先日附の小切手が刑法二四六条一項の財物であるこ
とは多言を要しないし、また、本件小切手振出当時支払銀行に振出人の処分し得る
資金がなかつたことは、原判決の認めなかつたところである。されば、原判決には
所論の違法も認めることができない。
 同第二点は、判例違反をいう点もあるが、その判例を具体的に示していないから、
不適法たるを免れないし、その余は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。(第一審判決挙示の被告人の当公廷における供述とは、
記録に照し判示日時、場所において、判示Aから判示小切手一通の交付を受けた旨
の供述を指すこと明らかであり、その他挙示の証拠で判示事実認定を是認すること
ができるから、原判決には所論の違法も認められない。)
 よつて、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和二九年一月二一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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