弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各再上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人鍛治利一の上告趣意第一点について。
 新憲法施行前に旧裁判所構成法による区裁判所においてした事件の受理その他の
手続が新憲法ならびに裁判所法の施行と共に裁判所法による地方裁判所においてし
た事件の受理その他の手続とみなされ一人の裁判官で取扱われ、その事件の判決に
対する控訴事件については地方裁判所が裁判権を有しその合議体で取扱われると規
定する裁判所法施行令第三条ならびに地方裁判所の第二審判決に対する上告につい
て高等裁判所が裁判権を有すると規定する裁判所法第一六条第三号(昭和二三年一
二月二一日法律第二六〇号による改正前のもの以下同じ)が新憲法第一三条第一四
条第三二条第七六条のいずれの規定にも反しないことについては、すでに当裁判所
の判決に示すところである(昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判
決)。従つて、裁判所法第一六条第三号と同趣旨を規定した刑訴応急措置法第一三
条も亦憲法のこれら条規に反するものでないことも右判決から容易に推論されると
ころであつて所論によつても前記判決を変更する必要を認めることができない。さ
れば、原上告審判決が本件は新憲法施行前である昭和二二年二月八日中津区裁判所
に起訴され同年五月三日裁判所法同施行令の施行により同令第三条第一項に基き大
分地方裁判所において事件の受理があつたものとみなされ、同条第三項により同裁
判所中津支部で一人の判事により審理判決を受け、これに対する控訴は同条第四、
五項に基き大分地方裁判所において受理されその合議体において審理の結果同年一
一月二〇日判決の言渡があり被告人等において上告したところ刑訴応急措置法第一
三条により福岡高等裁判所において受理されたものであつて、これらの法令による
手続は所論の憲法の条規に反するものではないと判断したことは正当であるから本
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 共同被告人の供述であつても、それによつて被告人の自白の真実であることが肯
認されうるものであるかぎり、補強証拠として役立ち、被告人の自白と相まつて犯
罪事実を認定しても憲法第三八条第三項に違反するものでないことについては、当
裁判所がすでに判例として示すところである(昭和二三年(れ)第一一二号同年七
月一四日大法廷判決、同年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判決)、所論を
検付しても右判例を変更する必要あるものとは認めることができない。そしてまた、
憲法第三七条を根拠として第三者の供述を証拠とするにはその者を公判において証
人として必ず訊問すべきものであると断定し得ないことについても当裁判所の判例
(前記昭和二三年(れ)第一六七号事件大法廷判決参照)とするところである。さ
れば、、原上告審判決には所論のような憲法違反はなく論旨は理由がない。
 被告人B弁護人小野清一郎の上告趣意第一点および第二点について。
 刑訴応急措置法第一七条によれば、高等裁判所が上告審としてした判決に対して
最高裁判所に更に上告することができるのは、その判決においてした憲法適否の判
断が不当であることを理由とするときに限られるのである。すなわち、最高裁判所
への再上告の理由としては、高等裁判所の上告審判決中に憲法適否の判断があつて、
その判断を不当としなければならないのである。もつとも、こゝに言う憲法適否の
判断は、必ずしも明示的な判断のみをさすのではなく、たとえば法令の適用を是認
することによつてその法令の憲法に適合することを承認する場合のごとき黙示的な
判断をも含むものと解すべきであることについては当裁判所の判例(昭和二二年(
れ)第一八八号同二三年七月七日大法廷判決参照)の示すところであるが、明示、
黙示のいずれにしても再上告の許されるにはともかくも高等裁判所の上告審判決中
に憲法適否の判断がなければならないのである。
 さて、上告裁判所は上告趣意書に包含された事項に限り調査するのであつて、そ
れ以外の事項について調査するのは法律に定められたいわゆる職権調査事項に限ら
れているのである(旧刑訴法第四三四条参照)。それゆえ、上告審判決は上告趣意
書に包含された事項および職権で調査すべきものと認めて調査した事項についての
み判断を示しているに止り、それ以外の事項については判断していないのである。
ところで、弁護人が再上告の本件論旨において憲法違反であると主張している事項
は、いずれも原上告審においては上告趣意として主張されなかつたことは記録上明
らかである。そして、またこれらの事項は法律に定められたいわゆる職権調査事項
にも当らない。それゆえ、所論の事項については原上告審裁判所は少しも憲法適否
の判断を与えていないのであるから、かゝる事由を主張して当裁判所に更に上告す
ることは許されないのである。されば、諭旨は再上告の適法な理由ではないので採
用することができない。
 同第三点について。
 裁判所が刑事訴訟法等の規定に従つて、証人の喚問に要した費用を訴訟費用とし
て被告人に負担させても、それは憲法第三七条第二項に違反するものでないことに
ついては、すでに当裁判所の判例とするところであつて、(昭和二三年(れ)第三
一六号同年一二月二七日大法廷判決)、諭旨を検討してみても右判例を変更しなけ
ればならないものとは思われない。それゆえ、この判例と同趣旨にいでた原上告審
判決は正当であつて論旨は理由がない。
 被告人B本人の上告趣意について。
 論旨は、被告人に対する警察官や検祭官の取調が強制的であつて、それらに基く
聴取書を証拠として被告人は有罪を言渡されたのであるから承服できないというの
であるが、かゝる主張は原上告審判決の憲法違反を主張するものではないので、再
上告の適法な理由ではない。
 よつて、本件各再上告を理由ないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い、主文
のとおり判決する。
 以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二五年五月三〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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