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平成26年(行ス)第38号執行停止申立却下決定に対する抗告事件
主文
1本件抗告を棄却する。
2抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1本件抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」(写し)のとおりである。
第2事案の概要(略称は原決定のものを用いる。)
東京高等裁判所は,東京高等検察庁の検察官から,抗告人について,逃亡犯罪
人引渡法(法)8条に基づく審査の請求を受け(同裁判所平成26年(て)第16
3号逃亡犯罪人引渡審査請求事件),審査をした結果,平成26年7月16日,
法10条1項3号により,本件は逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当
する旨の決定をし,これを受けて,処分行政庁は,同月25日,法14条1項に
より,東京高等検察庁検事長に対し,抗告人を逃亡犯罪人として韓国に引き渡す
ことを命じた(本件命令)。
本件は,抗告人が,本件命令の取消しの訴えを本案として,本件命令の執行に
より生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると主張し,本案事件の判決
確定までの間,本件命令の執行を停止することを申し立てる事案である。原審が
「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条4項)に当た
るとして,本件執行停止の申立てを却下したところ,抗告人が抗告した。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件執行停止の申立ては理由がないと判断する。その理由は,
下記2に当裁判所の判断を補足するほかは,原決定が「理由」欄の第3に説示
するとおりであるから,これを引用する。
2(1)抗告人は,当審においても,法が,法務大臣が引渡しの相当性を判断する
に当たり,事前に逃亡犯罪人に一切の弁明の機会を与えていない点で憲法3
1条に反するから,法に基づく本件命令も違憲である旨を重ねて主張する。
しかし,前記引用の原決定が説示するとおり,憲法31条の定める法定手
続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続については,
それが刑事手続ではないとの理由のみで,そのすべてが当然に同条による保
障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら,同条による
保障が及ぶと解すべき場合であっても,一般に,行政手続は,刑事手続とそ
の性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様で
あるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかど
うかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,
行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量し
て決定されるべきものであって,常に必ずそのような機会を与えることを必
要とするものではないと解するのが相当である。このような見地から,原決
定が「理由」欄の第3の2(2)イに説示する諸事情を総合較量すると,法務
大臣が引渡命令をするに当たり,法35条が行政手続法第3章の規定の適用
除外を定め,事前に逃亡犯罪人に告知,弁解,防御の機会を与えていないこ
とが,憲法31条の法意に反するということはできず,法に基づく本件命令
が同条に違反するということもできない。
この点について,抗告人は,法の定める逃亡犯罪人引渡しの手続に迅速性
が要求されるとしても,逃亡犯罪人の身柄拘束から審査の請求に対する東京
高等裁判所の決定及び法務大臣による引渡命令がされるまでの間に約2か
月の期間があるから,法務大臣が,引渡しの相当性を判断するに当たり,逃
亡犯罪人に弁明の機会を与えることは可能であるし,法務大臣に対して請願
等が可能であることや法務大臣による引渡しの相当性の判断が高度に政治
的裁量的判断であることは,逃亡犯罪人に憲法31条に基づく弁明の機会を
与えないことを正当化する理由とはならない旨を主張する。
しかし,抗告人の主張に係る弁明の機会の時間的な可能性は,逃亡犯罪人
引渡しの手続の性質・内容,逃亡犯罪人の権利利益保護との関係において極
めて重要な引渡制限事由についての判断が,東京高等裁判所において逃亡犯
罪人の手続き保障をも図った上で審査を経ることとされていること,その後
の法務大臣の引渡しの判断が,請求国に対する外交的配慮,国内の法秩序維
持上の必要性等の諸要素を総合考慮してされるべき高度に政治的裁量的な
ものであることなど,原決定の説示する諸事情に照らすと,前記総合較量に
基づく判断を左右するに足りるものとはいえない。また,法務大臣に対する
請願等の政治的要請手段の存在や引渡しの相当性に関する法務大臣の判断
の高度の政治性,裁量性は,前記総合較量に係る諸事情の一つということが
できるから,この点に関する抗告人の主張も,採用することができない。
(2)また,抗告人は,法が法10条1項3号による東京高等裁判所の決定に対
し不服申立手段を規定していない点で,一切の処分について最高裁判所に違
憲審査権を認めた憲法81条に反するから,法に基づく本件命令も違憲であ
る旨を主張する。
しかし,法10条1項3号による東京高等裁判所の決定は,逃亡犯罪人引
渡法の定める特別の決定であって,前記引用の原決定も説示するとおり,そ
の性質に鑑みると,この決定について不服申立てが許されないからといって
憲法81条に違反するものとはいえず,憲法81条が一切の処分を最高裁判
所による違憲審査の対象としていることが上記解釈の妨げになるとは解され
ないから,抗告人の上記主張は採用することができない。
3よって,本件抗告は理由がないから棄却することとし,主文のとおり決定す
る。
平成26年8月14日
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官下田文男
裁判官橋本英史
裁判官関口剛弘

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