弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「被告人Aの当審における未決勾留日数中二〇〇日を原判決の
懲役五年の刑に算入する」との部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 東京高等検察庁検事長松本武裕の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は本件(第一審判決中懲役五年の言渡を受けた事件)につ
いて昭和三五年二月二三日及び同年四月二二日それぞれ勾留状の執行を受け、爾来
第一審並びに原審を通じて勾留を継続されると共に、第一審判決中懲役一〇月の言
渡を受けた事件についても同三四年一〇月一五日保釈を取り消されてから同判決の
確定するまで別に勾留状の執行を受けていたものであるが、被告人に対する第一審
判決は「被告人を判示第一乃至第三の罪につき懲役一〇月、判示第一二、第一六、
第一八、第二三、第二四及び第二六の罪につき懲役五年、判示第二九の四の罪につ
き懲役一年二月に処する。未決勾留日数中懲役一〇月の刑につき一〇〇日、懲役五
年の刑につき二〇〇日、懲役一年二月の刑につき一五〇日をそれぞれ右刑に算入す
る。」というもので、被告人はこのうち懲役五年の言渡を受けた分のみにつき控訴
し、懲役一〇月及び懲役一年二月の言渡を受けた分については控訴しなかつたため、
その各刑は同三七年一二月九日確定し、同日より同三九年三月一九日まで右懲役一
〇月の刑及び懲役一年二月の刑(法定未決勾留日数一五日通算)を引き続き執行さ
れたことが認められる。
 してみれば、被告人に対する本件の原審における未決勾留日数中控訴申立のあつ
た同三七年一二月七日より前記懲役一〇月及び懲役一年二月の判決が確定するまで
の間は、右懲役刑に法定通算された未決勾留日数と重複し、右判決確定の日より原
判決の言渡のあつた同三九年三月一〇日までの間は右確定判決の刑の執行と重複す
ることが明らかである。従つて原判決中原審の未決勾留日数を本刑に算入した部分
は、論旨引用の当裁判所の判例に反して刑法二一条を適用した違法があり、論旨は
理由があるから、刑訴四〇五条二号、四一〇条一項本文により破棄を免れない。
 よつて同四一三条但書により原判決中「被告人Aの当審における未決勾留日数中
二〇〇日を原判決の懲役五年の刑に算入する」との部分を破棄し、その未決勾留日
数を算入しないこととし、その余の部分に対する上告は、上告趣意として何らの主
張がなく従つてその理由がないことに帰するから、同四一四条、三九六条によりこ
れを棄却すべきものとし、主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 公判出席検察官 臼田彦太郎
  昭和三九年一一月六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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