弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人城田冨雄の上告理由第一点について
 上告人の本訴請求は、原判示の各保証債権が根抵当権の被担保債権に含まれない
ことの確認を求めるという実体法上の権利関係の存否確認の請求であるから、所論
競売開始決定に関する更正決定の効力の有無は、右請求の当否とは関わりがない。
論旨は、本件の結論に影響しない事項について原審の判断の違法をいうものにすぎ
ず、採用することができない。
 同第二点について
 被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被
担保債権には、信用金庫の根抵当債務者に対する保証債権も含まれるものと解する
のが相当である。けだし、信用金庫取引とは、一般に、法定された信用金庫の業務
に関する取引を意味するもので、根抵当権設定契約において合意された「信用金庫
取引」の意味をこれと異なる趣旨に解すべき理由はなく、信用金庫と根抵当債務者
との間の取引により生じた債権は、当該取引が信用金庫の業務に関連してされたも
のと認められる限り、すべて当該根抵当権によって担保されるというべきところ、
信用金庫が債権者として根抵当債務者と保証契約を締結することは、信用金庫法五
三条三項に規定する「当該業務に付随する…その他の業務」に当たるものと解され、
他に、信用金庫の保証債権を根抵当権の被担保債権から除外しなければならない格
別の理由も認められないからである。
 原審は、根抵当権設定契約において合意された「信用金庫取引」の範囲は、信用
金庫の行う与信取引又は信用金庫と取引先(根抵当債務者)との間で交わされた信
用金庫取引約定書の適用範囲に限定されるとの前提に立った上、信用金庫を債権者
とし取引先を保証人とする保証契約は、信用金庫の取引先に対する与信行為に準ず
るものとして信用金庫取引約定書の適用範囲に含まれると一般に解釈され、当該取
引界における商慣習として定着していると判示し、このことを理由に、本件根抵当
権の被担保債権には原判示の保証債権も含まれると判断しているところ、根抵当権
の被担保債権の範囲を画する「信用金庫取引」の意味は前述のとおりであって、こ
れを信用金庫の行う与信取引に限定すべき根拠は見出し難く、また、被担保債権の
範囲を画するのは、根抵当権設定契約であって、信用金庫取引約定書ではない(民
法三九八条ノ二第二項所定の「一定ノ種類ノ取引」は、被担保債権の具体的範囲を
画すべき基準として第三者に対する関係においても明確であることを要するから、
根抵当権設定契約において具体的に特定された「取引」の範囲が、当事者の自由に
定め得る別個の契約の適用範囲によって左右されるべきいわれはない)から、この
点に関する原判決の理由説示は適切を欠くが、その結論は正当として是認すること
ができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原判決の結論に
影響のない事項についての違法をいうに帰し、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎

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