弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 債務者大阪ケミカル工業株式会社は、別紙表示二記載の商品説明書、別紙表示
三記載の外箱を使用したサンダルを製造、販売してはならない。
二 債務者大阪ケミカル工業株式会社は、別紙物件目録1記載のサンダルを製造、
販売してはならない。
三 債務者株式会社レアールは、別紙表示二記載の商品説明書、別紙表示三記載の
外箱を使用したサンダルを販売してはならない。
四 債務者株式会社レアールは、別紙物件目録1記載のサンダルを販売してはなら
ない。
五 債権者らのその余の申立てを却下する。
       事実及び理由
第一 申立ての趣旨
一 債務者大阪ケミカル工業株式会社は、別紙表示一ないし三記載の表示を使用し
たサンダルを製造、販売してはならない。
二 主文二項と同旨
三 債務者株式会社レアールは、別紙表示一ないし三記載の表示を使用したサンダ
ルを販売してはならない。
四 主文四項と同旨
第二 事案の概要
一 債権者らの関係(2は債権者らと債務者大阪ケミカル工業株式会社との間で、
3前段は債権者らと債務者株式会社レアールの間で、それぞれ争いがない。その余
は疎甲第一号証ないし第三号証、第五、第六号証、検甲第一号証、審尋の全趣旨に
より一応認められる。)
1 債権者ジー・ティー・ホーキンスリミテッド(以下「債権者ホーキンス」とい
う。)は、英国において著名な靴、履物の専門メーカーであり、GT Hawki
ns又はHawkinsの表示は、世界的にも債権者の商品であることを示す表示
として知られている。
2 債権者ホーキンスは、日本において、以下の商標権を有している(以下「本件
商標権」といい、その登録商標を「本件登録商標」という。なお、本件商標権は、
当初株式会社ワールドが保有していたが、平成五年八月一九日に債権者ホーキンス
がこれを譲り受け、同年一一月二二日移転登録を了したものである。)。
出願日 昭和六〇年一二月一七日
出願公告日 昭和六三年七月七日
登録日 平成元年二月二一日
登録番号 第二一一〇七一二号
指定商品 出願当時の第二二類 はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品、
ただし、げた、ぞうり類及びこれらの類似商品を除く。
登録商標 別紙記載のとおり
3 債権者株式会社インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(以
下「債権者ITC」という。)は、靴、履物及び衣服の製造販売を業とする会社で
ある。
 債権者ホーキンスと債権者ITCとは、昭和五八年ころ、債権者ITCが債権者
ホーキンスの製造した靴、履物を日本で独占的に輸入販売する契約を締結して取引
を開始した。
4 債権者ホーキンスと債権者ITCは、平成五年一〇月六日、債権者ホーキンス
が、債権者ITCに対し、Hawkinsの名とロゴ(本件登録商標を含む。)を
有する履物をライセンス生産し、日本国内において独占的に販売することを許諾す
る旨の契約を締結した。
5 債権者ITCは、本件登録商標のついた靴、履物を日本国内において販売する
に際し、若者向けの雑誌「ポパイ」に広告を出し、最近はタレントの【A】を起用
したテレビコマーシヤルを大々的に行なうなどの宣伝広告を行ない、本件登録商標
のついた靴、履物は市場において極めて人気の高い商品となり、債権者ITCによ
る本件登録商標のついた靴、履物の一年間の売上は一一五億円に達する。
二 債権者ITCによるサンダルの販売(疎甲第三号証、第五号証、第八号証、検
甲第三号証の1、2、審尋の全趣旨)
1 債権者ITCは、現在、別紙物件目録2記載のサンダル(以下「債権者商品」
という。)をスペインにおいて製造し、これを日本国内で販売している。
2 債権者商品の品番ごとの発売時期は、以下のとおりである。
GT九三〇九 平成五年四月五日
GT九三一九 平成五年四月五日
GT九二九九 平成六年四月二〇日
3 債権者商品の底には別紙債権者表示一の一連のマークが刻印されている(以下
「債権者表示1」という。)。
4 債権者商品には、別件債権者表示二の商品説明書がナイロン糸によって付着さ
せられている(以下右商品説明書を「債権者表示2」という。)。ただし、平成五
年発売当初のものは、裏面の商品説明がドイツ語で記載されていた。
5 債権者商品の外箱は、別紙債権者表示三の通りである(以下右外箱を「債権者
表示3」という。)。
三 債務者らの行為(疎甲第五号証、検甲第二号証の1~3、審尋の全趣旨)
1 債務者大阪ケミカル工業株式会社(以下「債務者大阪ケミカル」という。)
は、別紙物件目録1記載のサンダル(以下「債務者商品」という。)を、中国にお
いて製造し、その販売を開始した(その時期は平成六年五月一日以前である。ただ
しサンプル販売)。
2 債務者株式会杜レアール(以下「債務者レアール」という。)は、そのころ、
債務者大阪ケミカルから債務者商品(ただし、「贋作3」とされるものを除く)を
購入し、その販売を開始した。
3 債務者商品の底には別紙表示一の一連のマークが刻印されている(以下「債務
者表示1」という。)。
4 債務者商品には、別紙表示二の商品説明書がナイロン糸によって付着させられ
ている(以下右商品説明書を「債務者表示2」という。)。
5 債務者商品の外箱は、別紙表示三の通りである(以下右外箱を「債務者表示
3」という。)。
第三 債権者ら主張の被保全権利
一 債権者表示1ないし3が不正競争防止法(平成五年法律第四七号、以下同じ)
二条一項一号のいわゆる周知商品表示に該当し、債務者表示1ないし3がこれに類
似するため、債務者の行為により債務者商品と債権者商品の混同を生じることを理
由に、同法三条に基づき、債務者大阪ケミカルが債務者表示1ないし3を使用して
サンダルを製造、販売すること、債務者レアールが債務者表示1ないし3を使用し
てサンダルを販売することの停止又は予防を請求。
二 債務者商品が債権者商品の形態を模倣したものであることを理由に、不正競争
防止法二条一項三号、三条に基づき、債務者大阪ケミカルが債務者商品の製造、販
売をすること、債務者レアールが債務者商品の販売をすることの停止又は予防を請
求。
第四 争点
一 債権者表示1ないし3は不正競争防止法二条一項一号のいわゆる周知商品表示
に該当するか。
二 債務者表示1ないし3は債権者表示1ないし3に類似するか。債務者の行為に
より債務者商品と債権者商品の混同を生じるか。
三 債務者商品は、債権者商品の形態を模倣したものか。
四 保全の必要性があるか。
第五 争点に関する当事者の主張
一 争点一(債権者表示1ないし3は不正競争防止法二条一項一号のいわゆる周知
商品表示に該当するか)
【債権者らの主張】
1(一) 債権者表示1は、かかと側から順に、足跡のマーク、Hawkinsの
語、皮製品であることを示すマークが一連となって形成されるものである。
 右足跡のマークは、債権者らが創作したオリジナルなマークであり、他社の商品
にはない。
 また、Hawkinsの語の字体(本件登録商標と同じもの)も独自性の強いも
のである。
 したがって、これら一連のものとしての債権者表示1は、商品表示性を有し、第
二の一5でみた債権者ITCの販売実績等からみて、周知性をも取得したものとい
うべきである。
(二) 債務者大阪ケミカルは、債権者表示1のうち、足跡のマークは、この種の
サンダルの本家であるドイツのビルケンシュトック社製のサンダルにみられるほ
か、商品名「Hallos」サンダル、商品名「proTop」サンダルにもみら
れるものであるから独自性はないし、皮製品であることを示すマークも一般的に使
用されているものであると主張する。
 しかし、足跡のマークは、ビルケンシュトック社製のサンダルに付されているも
のとは異なり、足の外形を線で囲っている。商品名「Hallos」サンダルには
足跡のマークは存在しないし、商品名「proTop」サンダルの足跡のマークは
債権者表示1のものとは異なっている。
 皮製品であることを示すマーク自体は、各社共通のものであるが、右マークの中
に記載されている事項は異なる。ビルケンシュトック社のサンダルに付されている
マークの中にはドイツ語で「BRAND SOHLE LEDER」と記載されて
おり、皮製品であることを示すマークと一体としてデザインされている。これに対
し、債権者商品の皮製品であることを示すマークには、「MADE IN SPA
IN」と原産国が表示されている。
 また、ビルケンシュトック社の製品に付された足跡のマークの右側にはサイズの
表示があるが、債権者の商品の足跡のマークの右側にはサイズの表示がない。
 以上により、債権者表示1の足跡のマーク及び皮製品であることを示すマークの
デザインは、ビルケンシュトック社の製品に付されたものとは異なり、さらに他社
のものとも異なる。したがって、足跡のマーク、独特の字体を有する「Hawki
ns」の語(その下の「NORTHAMPTON」を含む。)及び皮製品であるこ
とを示すマークが一体となった債権者表示1が債権者の商品であることを示す表示
として自他識別性を有していることは明らかである。
2(一) 債権者商品のサンダル本体に付された商品説明書(債権者表示2)の表
面は白地で、その上部に黒字で「ESTABLISHED SINCE 185
0」の語が、中央には赤字で大きく「Hawkins」の語が、その右下には小さ
な赤字で「NORTHAMPTON」の語が、さらに下部には黒字のゴシック体で
「Footwear for Comfort and Reliabilit
y」の語が印刷されている(なお、「Hawkins」の語は、赤字の筆記体で英
文字を描き、文字を右方向に少し傾けさせるとともに、文字の右側に少しずれた黒
い影を付けるという独特の字体を使用している。)。
 これらの語からなる一連のデザインは、一体として顕著な特徴を有している。
 また、商品説明書の裏面には、白地の左上部分にサンダルの底部分の断面図が1
から5までの番号入りで印刷されており、白地の左下部分には赤字で「Hawki
ns」の語が、表のそれと同様の字体で、その右下には小さな赤字で「NORTH
AMPTON」の語が、白地の右下部分には黒字のゴシック体で「Footwea
r for Comfort and Reliability」の語が印刷され
ている。
 さらに、白地の右側部分には、英語で右断面図の番号に対応したサンダルの材質
及び機能の説明が印刷されている。
(二) 債務者大阪ケミカルは商品名「Hallos」サンダルの商品説明書のデ
ザインが債権者表示2と同様であるとして、債権者表示2の独自性、商品表示性を
争うが、商品名「Hallos」サンダルの商品説明書は、債権者表示2を模倣し
たものである。
3(一) 債権者商品の外箱(債権者表示3)は、白地であり、①債権者表示2に
関して述べた極めて特徴的な字体で記された「Hawkins」の語、②右①の右
下に配置された小さな赤字の「NORTHAMPTON」の語、③右①の上に配置
された黒字の「ESTABLISHED SINCE 1850」の語、④右①及
び②の下に配置された黒字の「Footwear for Comfort an
d Reliability」の語、⑤右①及び②を囲む黒色の二本線の枠で構成
される印刷が上面、右横面に、右の①ないし④で構成される印刷が正面右側に施さ
れている。また、箱の両横にはそれぞれ直径二センチメートルの穴が開けられてい
る。
 債権者表示2について述べたと同様、右の①ないし⑤又は①ないし④からなる一
連のデザインは顕著な特色を有しており、箱の両横に穴が開けられていることとあ
いまって、債権者の箱の形状は商品表示性を取得している。
(二) 債務者大阪ケミカルが指摘するとおり、箱に穴が開けられているのは、箱
を積んであるところから所望の箱を引き出す際に、指を差し入れて引き出すのに便
利であるからであるが、穴の位置は各社別々である。
 債権者商品は、店頭では箱と共に陳列されており、別紙債権者表示三の印刷が付
された債権者商品の外箱のデザインは、債権者のサンダルを他のサンダルと明確に
区別することになる。
【債務者大阪ケミカルの主張】
1 債権者商品、債務者商品とも、そのサンダル本体はドイツのビルケンシュトッ
ク社の製造販売にかかるサンダルと同様の形状のものである(この点については争
点三に関する主張で詳述する)。
 そして、ビルケンシュトック社は、同形のサンダルについて幅広の足用、普通形
状の足用、幅細の足用と三種類を製造販売しており、これらを区別するためにサン
ダルの底に三種の足跡のマークを付している。つまり、サンダルに足跡のマークを
付するようになったのは、ビルケンシュトック社の創作にかかるものである。
 ところで、債権者、
債務者を始めとするサンダルのメーカーは、足の形状に合わせて三種類のサンダル
を製造販売しているわけではないが、単にこの種のサンダルの本家であるビルケン
シュトック社が足跡のマークをサンダルの底に付しているので、これに因んで自社
の製品の底に足跡のマークを付しているのである(たとえば商品名「Hallo
s」サンダル、商品名「proTop」サンダル)。
 また、債権者表示1のうち皮製品であることを示すマークは、動物一頭の皮を丸
ごと剥ぎ伸展した形状に由来しており、皮革を示すマークとして通常一般に用いら
れているものである。
 したがって、債権者表示1のうち足跡のマーク、皮製品であることを示すマーク
には何ら独自性はなく、これに商品表示性を認めることはできない。
2 債権者は債権者表示2のHawkinsの語のロゴが独自性を有すると主張す
るが、同様のロゴは商品名「Hallos」サンダルの商品説明書にもみられる。
3 債権者商品の外箱(債権者表示3)に関して、箱の側面に穴が穿たれているの
は、債権者の商品であることを表示するものではない。靴箱の側面に穴が穿たれて
いるのは、箱を積んであるところから所望の箱を引き出す際に、指を差し入れて引
き出すのに便利であるという専ら機能的理由で穿たれており、第一次的に商品の出
所を示すことを目的とするものではないことは勿論、第二次的にも出所表示機能は
ない(いわゆるセカンダリーミーニングとしての出所表示機能もない。)。現に、
ビルケンシュトック社のサンダルの箱にも、債権者が別商標「GT HAWKIN
S」を付して発売している「ビルケンタイプ」メンズ(男性用)サンダルの箱にも
靴箱の側面に穴が穿たれている。
 債権者商品の箱の形状、色彩も商品表示性はない。債権者商品、債務者商品その
他のサンダルは、安価な(二〇〇〇円ないし三〇〇〇円程度で、バーゲン価格は一
〇〇〇円程度)夏向き季節商品であり、店頭では箱に入れられず、箱の展示がな
く、サンダルそのものが陳列され、客が試し履きの上購入を決定して、代金を支払
った後、小売店の都合でビニール袋に入れて渡されることもあり、また、箱に入れ
られることもあり、その箱も無地のものが用いられることもあり、区々である。
 その上、ビルケンタイプのサンダルの夏物の同種サンダルが、多数のメーカーに
より製造販売されていることを消費者は承知しているので、それぞれのサンダルに
付された標章の文言を注意して、これら商品を識別するのである。
 さらに、サンダルは、履物という商品の性質上、サイズ、足幅といった個々人の
足形に合ったものであることが購入の必須条件である。したがって、ハンドバッ
グ、スカーフ等の場合と異なり、銘柄、ブランド名を言って、他人に使いを頼んで
購入させることもなく、ましてや靴箱にひかれて購入を決めることもなく、必ず本
人が試し履きをして足に合ったものを購入する性質の商品であるから、箱などは二
次的にも商品表示性はなく(セカンダリーミーニングとしての出所表示機能はな
い)、単に入れ物としての機能しかないものである。
二 争点二(債務者表示1ないし3は債権者表示1ないし3に類似するか。債務者
らの行為により債務者商品と債権者商品の混同を生じるか。)
【債権者らの主張】
1 債務者表示1と債権者表示1の類似性
 債務者表示1は、かかと側から、足跡のマーク、債権者表示1のHawkins
の語と同様の字体で書かれたHuntingの語及びその下に配されたNORTH
ANPTIONの語、皮製品であることを示すマークが一体の商品表示として刻印
されている。
 債務者表示1の足跡のマークは、債権者表示1のそれと同様、足の外形を線で囲
んでいる。債務者表示1の皮製品であることを示すマークは、債権者表示1のそれ
と同様、原産国を表示している。
 債務者表示1と、債権者表示1は、それぞれ一体として商品表示となっており、
相互に類似するものといわざるを得ない。
2 債務者表示2と債権者表示2の類似性
 債務者商品には、債権者商品と同様に、商品説明書がナイロンの糸で付着されて
いる(債務者表示2)。
 この商品説明書の表面は白地で、その上部に黒字で「ESTABLISHED 
SINCE 1994」の語が、中央には、
債権者表示2における「Hawkins」の語と同様の特徴のある字体で赤字で大
きく「Hunting」の語が、その右下には小さな赤字の「NORTHANPT
ION」の語が、更に下部には黒字のゴシック体で「Footwear for 
Comfort and Reliability」の語が印刷されている。
 これらの語からなる一連のデザインは債務者商品の顕著な営業表示となってい
る。
 そして、債務者表示2の表面の右一連のデザインと、債権者表示2の表面の一連
のデザインを比較すると、①上部については、年度部分のみ異なり、全体としては
極めて似ていること、②中央部分については、債務者表示2では「Huntin
g」の語が、債権者表示2では「Hawkins」の語が配されており、両者はス
ペルそのものは異なるが、字体が酷似していること、③中央やや右下の語は、債務
者表示2では「NORTHANPTION」であり、債権者表示2では「NORT
HAMPTON」であって、NとIの二文字のみ異なり、全体としては極めて類似
していること、④下部については、両者とも黒字のゴシック体で「Footwea
r for Comfort and Reliability」と印刷され同一
であることから、両者は極めて類似しているといわざるを得ない。
 また、商品説明書の裏面には、白地の左上部分にサンダルの底部分の断面図が1
から5までの番号入りで印刷されており、白地の左下部分には表のそれと同様の字
体で赤字で大きく「Hunting」の語が、その右下には小さな赤字で「NOR
THANPTION」の語が、白地の右下部分には黒字のゴシック体で「Foot
wear for Comfort and Reliability」の語が印
刷されている。さらに、白地の右側部分にはドイツ語で右断面図の番号に対応した
サンダルの材質と機能の説明が印刷されている。なお、右ドイツ語の記載は、債権
者が平成五年三月から発売していたサンダルの商品説明書に記載されたドイツ語を
字体及び書体ともにコピーしたものである。
3 債権者表示3と債務者表示3の類似性
 債務者商品の外箱(債務者表示3)は、白地であり、①債権者表示3における
「Hawkins」の語と同様の字体の「Hunting」の語、②右①の右下に
配置された小さな赤字の「NORTHANPTION」の語、③右①の上に配置さ
れた黒字の「ESTABLISHED SINCE 1950」の語、④右①及び
②の下に配置された黒字の「Footwear for Comfort and
 Reliability」の語、⑤右①及び②を囲む黒色の二本線の枠で構成さ
れる印刷が上面、右横面に、右の①ないし④で構成される印刷が正面右側に施され
ている。また、箱の両横にはそれぞれ直径二センチメートルの穴が開けられてい
る。
 債務者表示3と債権者表示3も、極めて類似している。
4 債務者表示1ないし3と債権者表示1ないし3の類似性、混同のおそれに関す
る補足的主張
(一) 債務者表示2、3のHuntingの語の字体は、赤字で文字を描き、文
字を右方向に少し傾けさせるとともに、文字の右側に少しずれた黒い陰をつける点
で、債権者表示2、3のHawkinsの語と全く同様である。また、Hunti
ngとHawkinsで頭文字のデザインが共通であり、Hawkinsのaの小
文字とHuntingのuの小文字、Hawkinsのwの小文字とHuntin
gのnの小文字、Hawkinsのkの小文字とHuntingのtの小文字はそ
れぞれ類似しており、その後のinの小文字は両者共通である。そのため、少し遠
くから見ると、債務者表示2、3のHuntingの語と、債権者表示2、3のH
awkinsの語は区別がつかないほど似て見えることになる。
(二) 消費者は、サンダルのブランド名を基準にサンダルを購入するのである
が、消費者が購入したい商品のブランド名を判断する際には、商品の箱のデザイ
ン、商品説明書のデザイン、商品に印刷されたデザイン等を総合して判断するの
で、必ずしもブランド名のスペルのみが判断の基準になるものではない。
 特に、債務者表示1ないし3のように、ブランドのスペルこそ異なるものの、足
底の商品表示のデザイン、
商品説明書のデザイン及び箱のデザインのことごとくを債権者表示1ないし3に似
せて作れば、消費者は容易に債務者商品と債権者表示の混同を起こすのである。
(三) 不正競争防止法二条一項一号の「混同」は、混同のおそれがあれば足りる
と解されているが、右混同のおそれに認定に際しては、商品表示の周知性の高さ、
表示の類似性の強度、競業関係の近似性等、顧客吸収力に影響を及ぼす要素一切を
総合的に考慮することを要するところ、本件においては債権者表示1ないし3の周
知性は極めて高いこと、債務者表示1ないし3と債権者表示1ないし3が酷似して
いることから、商品主体の誤認、混同のおそれがあることは疑いの余地がない。
 加えて、同号にいう「混同」には、商品の出所が同一と誤信する混同(狭義の混
同)にとどまらず、周知の商品表示の主体とこれを無断で使用する者との間に資本
上の関係、契約上の関係等が存するのではないかと取引者が誤認する混同(広義の
混同)も含まれる。
 本件における債務者表示1ないし3と債権者表示1ないし3の類似性に鑑みれ
ば、債権者らと債務者らの間に何らかのライセンス契約があるのではないかとの誤
認を取引者に生じさせるおそれがあることは明らかである。
【債務者大阪ケミカルの主張】
 債権表示1ないし3はいずれも商品表示性を有しないことは争点1に関して詳述
したとおりである。
 このような状況のもとで、出所識別機能を果たすのは、債権者表示1ないし3の
中のHawkinsの文字部分のみである。そして、これと債務者表示1ないし3
の中のHuntingの文字部分を対比すると、両者は外観、観念、称呼のいずれ
も非類似である(たとえば観念についてみると、前者が人名であるのに対し、後者
は「狩猟」の観念を有する。)。
【債務者レアールの主張】
1 債務者表示1ないし3と債権者表示1ないし3の類似性について
 HuntingとHawkinsとは、いずれもローマ字七字からなり、最初の
頭文字のH及び最初から五、六文字目のinが共通であるが、他の四文字が全く異
なり、かつ、債権者が主張するように字体が似ていることもない。
 特に、最後の字はHuntingがg、Hawkinsがsであり、字体が全く
異なり、表示自体からも、見る者に全体として全く違った印象を与える。
 次に、呼称の点からしても、両者は「ハンティング」と「ホーキンス」で全く異
なっている。
 さらに、観念の点からみても、Huntingは、狩猟、探究といった独自の意
味を持ち、単にHawkinsに似せるために意味のない言葉を用いる場合とは全
く異なる。
2 混同のおそれについて
 消費者の立場からするならば、本件においては混同のおそれはない。
 債権者が主張するように、債権者表示1ないし3の周知性が顕著であればあるほ
ど、消費者が、債権者商品表示1ないし3と、1でみたとおりそれと異なる債務者
表示1ないし3とを混同するおそれは少なくなるからである。
 また、今日のように、巷に類似商品が多数並ぶ状況においては、消費者もまた、
類似商品を「似て非なるもの」と認識して購入しているのが実情である。
 本件のように、商品表示が明確に異なる場合は、なおさら混同のおそれはない。
三 争点3(債務者商品の形態は債権者商品の形態を模倣したものか)
【債権者らの主張】
1 債務者商品の形態のうち、底部分の刻印、商品説明書、外箱が債権者商品のそ
れに酷似していることは、債務者表示1ないし3と債権者表示1ないし3の類似性
について、争点3で詳述したところから明らかである。
 そして、債務者が、債権者商品の底部分の刻印、商品説明書、外箱を模倣して債
務者商品の形態を決定していることは、右のとおり両者が酷似することのほか、①
債務者表示1ないし3にみられるNORTHANPTIONの語は全く無意味であ
り、債権者表示1ないし3にみられるNORTHAMPTONの語(イギリスのN
orthamptonshire〔ノーサンプトン州〕の州都であるNortha
mptonのことである。)を模倣したとしか考えられないこと、②債務者表示2
では「ESTABLISHED SINCE 1994」となっているのに対し、
債務者表示2では「ESTABLISHED SINCE 1950」となってい
ること等から明らかである。
 なお、不正競争防止法二条一項三号にいう形態には、商品自体の形態のほか、商
品説明書のデザイン、商品の外箱のデザインも含まれる。仮に、債務者大阪ケミカ
ルの主張するように、右「形態」に容器包装等は含まれないとしても、債務者商品
及び債権者商品の商品説明書はいずれもナイロンの糸で債務者商品、債権者商品の
サンダル本体に取り付けられており、商品説明書を除去して、債務者商品、債権者
商品のサンダル本体だけが販売されることはないのであるから、少なくとも債権者
商品の商品説明書は、債権者商品のサンダル本体と一体のものとして、右「形態」
に含まれると解するべきである。
2 債権者商品のサンダル自体の形態
 債権者商品のサンダル自体の形態は、別紙物件目録二記載のとおり、それぞれの
製品で多少異なっているが、足の裏が直接密着する中底部分(フットペットと呼ば
れる。)には、足形に合わせて窪みがつけられており、完全な足の形をしている点
は共通である。
 ただし、GT九三〇九及びGT九三一九とGT九二九九との違いは、底部分の厚
さがGT九二九九の方が他の二製品より一センチメートル以上厚いことにある。
 さらに、足の甲の部分に直接密接し、足をサンダルに固定するため、ベルト状の
帯であるストラップが二本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分
で足の甲の高さを調整する点も共通である。
 ただし、GT九三〇九及びGT九二九九とGT九三一九との違いは、足のかかと
部分を固定するための三番目のストラップの有無にある。GT九三一九には、三番
目のストラップがあるが、他の二製品にはない。各ストラップには、HAWKIN
Sの語が刻印された調整器具が付けられている。
3 債務者商品のサンダル自体の形態と債権者商品のサンダル自体の形態の対比
(一) 贋作1について
イ 足の裏が直接密着する中底部分の形態は、債権者商品のうちGT九三〇九と同
じである。
ロ ストラップが二本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足
の甲の高さを調整する点も、債権者商品のうちGT九三〇九と同じである。
ハ なお、足のかかと部分を固定するための三番目のストラップがないことも、債
権者商品のGT九三〇九と共通である。
ニ 以上により、贋作1の形態は、債権者商品のうちGT九三〇九と似ている。
(二) 贋作2について
イ 足の裏が直接密着する中底部分の形態は、債権者商品のうちGT九三一九と同
じである。
ロ ストラップが二本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足
の甲の高さを調整する点も、債権者商品のうちGT九三一九と同じである。
ハ なお、足のかかと部分を固定するための三番目のストラップがあることも、債
権者商品のGT九三一九と共通である。
ニ 以上により、贋作2の形態は、債権者商品のうちGT九三一九と似ている。
(三) 贋作3について
イ 足の裏が直接密着する中底部分の形態は、債権者商品のうちGT九二九九と同
じである。
ロ 底部分の厚さが他の二製品に比べて一センチメートル以上も厚く、この点で債
権者商品のうちGT九二九九と同じである。
ハ ストラップが二本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足
の甲の高さを調整する点も、債権者商品のうちGT九二九九と同じである。
ニ なお、贋作3には、足のかかと部分を固定するための三番目のストラップがあ
り、この点で債権者商品のうちGT九二九九と共通ではない。しかし、底部分の厚
さが厚いサンダルである点はGT九二九九と共通であり、三番目のストラップの有
無は重要ではない。
ホ 以上により、贋作3の形態は、債権者商品のうちGT九二九九と似ている。
4 結論
 以上1ないし3の検討から、贋作一は債権者商品のうちGT九三〇九を、贋作二
は債権者商品のうちGT九三一九を、贋作三は債権者商品のうちGT九二九九を模
倣したものであることは明らかである。
5 債務者大阪ケミカルの主張に対する反論
 債務者大阪ケミカルは、不正競争防止法二条一項三号により保護を受ける商品形
態は、自ら独自に開発した形態であることを要すると主張するが、このような解釈
をする根拠はない。加えて、債権者商品は品質の点でも他社の安物とは区別される
のであって、安易な債権者のブランドヘのただ乗りは許されるべきではない。
 なお、債権者商品のサンダル自体の形態は、ビルケンシュトック社の製造販売す
るいわゆるビルケンタイプのサンダルと同様ではあるが、商品の外形自体に特徴が
なくとも、商品説明書と商品を一体のものとしてみたときに特徴があれば、このよ
うな商品説明書及び商品の外形を模倣した商品は、他人の商品の形態を模倣した商
品に該当する。
【債務者大阪ケミカルの主張】
1 債権者らは、不正競争防止法二条一項三号に基づく請求についても、容器包
装、商品説明書等の類似性を請求原因としているが、同項一号と三号の立法趣旨の
相違及び条文の規定に照らし、同項三号にいう「他人の商品の形態」とは、商品本
体のことであり、容器包装等は、原則としてこれに含まれない。
 三号が保護の対象とするのは商品自体の外形であり(【B】「要説新不正競争防
止法」一一二頁)、容器包装が同号の「他人の商品の形態」たりうるのは、商品本
体が気体又は液体等流動性のあるものである場合に限られるものである。
2 不正競争防止法二条一項一号と三号は、立法趣旨を異にしている。
 すなわち、同項一号は、自己の商品・営業を他人の商品・営業と混同させる行為
を規制するものである。具体的には、他人の氏名、商号、商標等、他人の商品等表
示として需要者間に広く知られているものと同一又は類似の表示を使用して、その
商品又は営業の出所について混同を生じさせる行為を規制するものである(通産省
知的財産政策室監修「逐条解説不正競争防止法」二七頁)。そこで、同項一号に
は、法文上も、他人の商品等表示の例示として容器もしくは包装が明記されてい
る。
 一方、同項三号は、他人が商品化のために資金・労力を投下した成果を他に選択
肢があるにもかかわらずことさら完全に模倣して、何らの改変を加えることなく自
らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為は、競争上不正な行為とし
て位置付けられる必要があるとの観点から、商品の形態を模倣した商品を譲渡する
行為(いわゆるデッドコピー)を不正競争行為類型としたものである。このよう
に、同号の趣旨は、商品の形態を開発したところの市場先行者の利益の保護にあ
り、そのため、最初の商品の販売日から三年間が保護期間とされている。したがっ
て、法文上も「他人の商品の形態を模倣した商品」と規定されているのであり、こ
れは、商品本体を指すことは明瞭である。
3 債権者商品1ないし3のサンダル自体の形態は、後述するように、ビルケンシ
ュトック社が開発したいわゆるビルケンタイプのサンダルの形態であり、他人の開
発した物の模倣に過ぎない。2でみた不正競争防止法二条一項三号の立法趣旨から
して、同号により保護を受ける商品形態は、自ら独自に開発した形態であることを
要するのであり、債権者商品1ないし3の形態は、これに該当しない。
 また、債権者商品1ないし3と同じ形態の商品は、世上「ビルケンタイプのサン
ダル」として各社が製造販売しており、同号の適用除外要件である「同種の商品が
通常有する形態」に該当する。
4 なお、債務者商品のサンダル自体の形態は、いわゆる「ビルケンタイプ」のサ
ンダルのモデルの一環として、債務者が開発したものである。
 ビルケンタイプのサンダルは、債権者、債務者のみならず、多数のメーカーが製
造、販売している流行品である。この発祥は、ドイツのビルケンシュトック社の製
造販売に係るサンダルが、その足底にあたる部分が足の裏の凹凸の形状に沿うた
め、履くと足の裏を刺激するという健康サンダルとして、主に、医師が自己の健康
に益するとして診療の際の室内履きとして使用し始め、これが一般消費者間にも浸
透して大ヒット商品となったことにある。次いで、二~三年前から、これを参考に
した一般消費者向けサンダルが「ビルケンタイプのサンダル」として、多数のメー
カーにより製造販売されるようになったのであり、債権者もこのような製造販売業
者の一つに過ぎない。
5 債務者大阪ケミカルがHunting商標を選択した経過
 債務者大阪ケミカルは、山野の跋渉といった野外活動への憧れすなわちいわゆる
アウトドア志向の流行にかんがみ、これに合致した「ビルケンタイプのサンダル」
を製造、販売することとした。そしてその商標として債務者大阪ケミカルがHun
tingを選択したのは、債務者が既に登録商標「ラ・カルト」を保有し、これを
中高生を購買層とするティーンズカジュアル・アンド・アウトドア商品に使用して
いたので、その「ラ・カルト」の語の観念の敷衍によることとした結果である。債
務者大阪ケミカルの「ビルケンタイプのサンダル」も、「ラ・カルト」商標を使用
する商品と同じ購買層に向けたアウトドア商品であることから、債務者としては、
その観念と一連の観念を持つもので響きが快く消費者に受け入れやすい商標を付け
たいと考え、ラ・カルトは、フランス語で地図の意味であることから、地図を片手
に山野を跋渉して獲物を追う狩猟へ、そしてその英語Huntingへ連想が連な
り、Hunting商標を採用したのである。決して債権者のHawkins商標
を模倣したものではない。
四 争点4(保全の必要性があるか)
【債権者らの主張】
 債務者大阪ケミカルは、債務者商品はすべて売りきり、その在庫は有しないと主
張するが、何ら証拠に基づいていない。
 また、偽物を大量に製造販売したにもかかわらず、すべて販売したと主張すれば
仮処分決定をまぬかれるのでは、いつまでたっても偽物業者はなくならない。
【債務者大阪ケミカルの主張】
 債務者大阪ケミカルは、被告商品を売り切っており、在庫はない。夏向きのサン
ダルという季節商品の性質上、製造予定数量を作った後、追加製造せず売り切った
ためである。債務者レアールから七八四足返品されたものも、他に売却した。
 なお、債務者大阪ケミカルは、来季以降も被告商品を製造販売する予定はない。
この種商品は、季節商品であり、また、流行に左右されるところ、今後の流行の見
通しとしては従前のアウトドア思考から英国調へと移る見込みであり、ビルケンタ
イプのサンダルは時流に乗らないと予想され、各社のビルケンタイプのサンダルの
今季の最終バーゲン価格は一足一〇〇〇円まで落ちているのである。かかる価格低
落を来した市場を追い打ちしても、債務者大阪ケミカルにとって何のメリットもな
い。
【債務者レアールの主張】
 債務者レアールは、債権者が債権者商品と債務者商品の類似性、混同のおそれを
問題にし、債務者レアールの納入先である株式会社トミヤマ等において調査をする
などし、右納入先から債務者商品の返品がされるなどしたため、債権者商品と債務
者商品の類似性、混同のおそれは全くないと判断しつつも、念のため市場から債務
者商品をすべて引き上げ、債務者大阪ケミカルに返品した。
 よって、現在、債務者レアールは債務者商品を市場に流通させていないし、将来
流通させることもない。
第六 争点に対する判断
一 争点一(債権者表示1ないし3は不正競争防止法二条一項一号のいわゆる周知
商品表示に該当するか)
1 債権者表示1
 債権者表示1は、かかと側から順に、足跡のマーク、Hawkinsの語(その
下にやや小さくNORTHAMPTONの語)、皮製品であることを示すマークが
一連となって形成されるものである。
 債権者は、右足跡のマークは、債権者らが創作したオリジナルなマークであり、
他社の商品にはないこと、Hawkinsの語の字体(本件登録商標と同じもの)
が独自性の強いものであることから、これら一連のものとしての債権者表示1は、
商品表示性を有すると主張する。
 しかしながら、疎明(疎乙第一号証の1、2、第二号証、第四号証、第八号証、
第一一号証の1、2、第一二ないし第一五号証)及び審尋の全趣旨によれば、ビル
ケンシュトック社のサンダルの底部分には、かかと側から順に、足跡のマーク、靴
のサイズ、BIRKENSTOCKの語(その下にやや小さくMade in G
ermanyの語)、丸の中にR文字、皮革製品であることを示すマークが刻印さ
れていること、ビルケンシュトック社は、同形のサンダルについて幅広の足用、普
通形状の足用、幅細の足用と三種類を製造販売しており、これらを区別するために
サンダルの底に三種の足跡のマークを付していること、債権者、債務者を始めとす
るサンダルのメーカーは、足の形状に合わせて三種類のサンダルを製造販売してい
るわけではないが、単にこの種のサンダルの本家であるビルケンシュトック社が足
跡のマークをサンダルの底に付しているので、これに因んで自社の製品の底に足跡
のマークを付していること、皮製品であることを示すマークは、動物一頭の皮を丸
ごと剥ぎ伸展した形状に由来しており、皮革を示すマークとして通常一般に用いら
れているものであることが一応認められる。
 したがって、債権者表示1のうち足跡のマーク、皮製品であることを示すマーク
はありふれた表示であり、これらの表示の間にブランド名を配するという構成も既
にビルケンシュトック社が採用しており珍しいものではないから、債権者表示1の
デザイン・構成は全体として顕著な特徴を有するものではなく(なお、債権者が、
債権者表示1ないし3のうちのHawkinsの語についてのみ商品表示性・周知
性を主張しているのではなく、それらの一体としてのデザインについて商品表示
性・周知性を主張していることは審尋の全趣旨から明らかである。)、商品表示性
を認めることは困難であるといわなければならない。
 債権者は、債権者表示1における足跡のマークは、ビルケンシュトック社製のサ
ンダルの底に刻印されているものとは異なり、足の外形を線で囲っていると主張す
るが、外形を線で囲う程度のことで、ビルケンシュトック社製のサンダルの底に刻
印されている足跡のマークと識別できるような差異が生じるとは認められない。
 また、債権者は、皮製品であることを示すマーク自体は、各社共通のものである
が、ビルケンシュトック社のサンダルの底に刻印されているマークの中にはドイツ
語で「BRAND SOHLE LEDER」と記載されており、皮製品であるこ
とを示すマークと一体としてデザインされているのに対し、債権者商品の皮製品で
あることを示すマークには、「MADE IN SPAIN」と原産国が表示され
ていると主張するが、サンダルの底に刻印された皮製品であることを示すマークの
中のわずかなスペースに、しかも外国語で記載されている事項から、それぞれの識
別性が生じるとは考えられない。
 債権者は、ビルケンシュトック社の製品に付された足跡のマークの右側にはサイ
ズの表示があるが、債権者の商品の足跡のマークの右側にはサイズの表示がないと
主張するが、債権者表示1とビルケンシュトック社のサンダルの底の刻印を全体と
して観察した場合に、右の相違によって顕著な差異を生じるものとは認められな
い。
2 債権者表示2
 疎明(疎乙第一号証の1、2、第二号証ないし第一〇号証、第一二号証ないし第
一五号証、第二一号証及び第二二号証の各1、2、検甲第一号証、検甲第三号証の
1、2)及び審尋の全趣旨によれば、債権者商品のサンダル本体に付された商品説
明書(債権者表示2)の表面は白地(ただし中心部は極めて薄いグレー)で、その
上部に黒字で「ESTABLISHED SINCE 1850」の語が、中央に
は赤字で大きく「Hawkins」の語が、その右下には小さな赤字で「NORT
HAMPTON」の語が、さらに下部には黒字のゴシック体で「Footwear
 for Comfort and Reliability」の語が印刷されて
いること、「Hawkins」の語は、赤字の筆記体で英文字を描き、文字を右方
向に少し傾けさせるとともに、文字の右側に少しずれた黒い影を付けるという字体
を使用していること、商品説明書の裏面には、白地の左上部分にサンダルの底部分
の断面図が1から5までの番号入りで印刷されており、白地の左下部分には赤字で
「Hawkins」の語が、表のそれと同様の字体で、その右下には小さな赤字で
「NORTHAMPTON」の語が、白地の右下部分には黒字のゴシック体で「F
ootwear for Comfort and Reliability」の
語が印刷されていること、白地の右側部分には、英語で右断面図の番号に対応した
サンダルの材質及び機能の説明が印刷されていること、債権者の製造販売するサン
ダル以外のいわゆるビルケンタイプのサンダルで、商品説明書をタグで付けている
ものは比較的少ないことが一応認められる。以上の事実によれば、債権者表示2
は、特に表面のデザインにおいて、白地に、「Hawkins」の語(赤字の筆記
体で英文字を描き、文字を右方向に少し傾けさせるとともに、文字の右側に少しず
れた黒い影を付けるという字体を使用し、白地の上では相当強烈な印象を与え
る。)を中心とし、黒字の単語ないし文章を配するというシンプルながら印象的な
デザインを有し、このように商品説明書をタグで付けているビルケンタイプのサン
ダルは比較的少ないのであり、これに、第二の一5のとおり債権者は相当な宣伝広
告、販売の実績を有すること(ただし、右販売実績のすべてについて債権者表示2
が使用されているとは認められないが、債権者表示2が使用された商品の販売額も
相当なものに及ぶと推認される。ちなみに、Hawkinsの語に用いられた字体
は、平成五年のテレビコマーシャルにおいて使用されている。検甲第一号証)を総
合すれば、債権者表示2は商品表示性、周知性を取得したものと一応認められる。
3 債権者表示3
 疎明(疎甲第七号証、疎乙第一六、第一七号証、検甲第三号証の1、2)及び審
尋の全趣旨によれば、債権者商品の外箱(債権者表示3)は、白地であり、①債権
者表示2と同様の字体で記された「Hawkins」の語、②右①の右下に配置さ
れた小さな赤字の「NORTHAMPTON」の語、③右①の上に配置された黒字
の「ESTABLISHED SINCE 1850」の語、④右①及び②の下に
配置された黒字の「Footwear for Comfort and Rel
iability」の語、⑤右①及び②を囲む黒色の二本線の枠で構成される印刷
が上面、右横面に、右の①ないし④で構成される印刷が正面右側に施されているこ
と、箱の両横にはそれぞれ直径二センチメートルの穴が開けられていること、債権
者商品は、店頭では箱と共に陳列されることがあること、他方、ビルケンシュトッ
ク社のサンダルの箱にも、債権者が別商標「GT HAWKINS」を付して発売
している「ビルケンタイプ」メンズ(男性用)サンダルの箱にも靴箱の側面に穴が
穿たれていることが一応認められる。以上の事実によれば、債権者表示3は、白地
の箱に、「Hawkins」の語(赤字の筆記体で英文字を描き、文字を右方向に
少し傾けさせるとともに、文字の右側に少しずれた黒い影を付けるという字体を使
用し、白地の上では相当強烈な印象を与える。)を中心とし、黒字の単語ないし文
章、これらを囲む黒色の二本線を配するというシンプルながら印象的なデザインを
有する印刷を施したものであって、しかも、この印刷は、債権者表示2のそれより
はるかに大きいのであり、このことに第二の一5のとおり債権者は宣伝広告、販売
について相当の実績を有することも総合すれぱ、債権者表示3は商品表示性、周知
性を取得しているものと一応認められる(箱の両横に穴が開けられていることにつ
いては、箱を積んであるところから所望の箱を引き出す際に、指を差し入れて引き
出すのに便利であるという機能目的によるのであって他社にも例があるが、右の特
色とあいまって債権者の外箱が全体として商品表示性、周知性を取得するものであ
る。)。
 債務者大阪ケミカルは、①サンダルは、安価な夏向き季節商品であり、店頭では
箱に入れられず、箱の展示がなく、サンダルそのものが陳列され、客が試し履きの
上購入を決定して、代金を支払った後、小売店の都合でビニール袋に入れて渡され
ることもあり、また、箱に入れられることもあり、その箱も無地のものが用いられ
ることもあり、区々であること、②ビルケンタイプのサンダルの夏物の同種サンダ
ルが、多数のメーカーにより製造販売されていることを消費者は承知しているの
で、それぞれのサンダルに付された標章の文言を注意して、これら商品を識別する
のであること、③サンダルは、履物という商品の性質上、必ず本人が試し履きをし
て足に合ったものを購入する性質の商品であること、を理由に、箱などは二次的に
も商品表示性はなく、単に入れ物としての機能しかないものであると主張する。し
かし、債権者商品が店頭で箱と共に陳列されることがあるのは前記のとおりである
し、ビルケンシュトック社や債権者らは、サンダルの箱にデザイン的にも工夫をこ
らして、独自性を示そうとしていることが一応認められる(疎乙第一六、第一七号
証、第二〇号証)から、サンダルの箱に商品表示性はないと断ずることはできない
というべきである。
二 争点二(債務者表示1ないし3は債権者表示1ないし3に類似するか。債務者
らの行為により債務者商品と債権者商品の混同を生じるか。)
 債権者表示1に商品表示性が認められないことは前記のとおりであるから、債務
者表示2、3と債権者表示2、3の類似性について検討する。
1 債務者表示2と債権者表示2の類似性
 債務者商品には、債権者商品と同様に、商品説明書がナイロンの糸で付着されて
いる(債務者表示2。検甲第二号証の1~3)。
 この商品説明書の表面は白地で(ただし中心部は極めて薄いクリーム色)、その
上部に黒字で「ESTABLISHED SINCE 1994」の語が、中央に
は、債権者表示2における「Hawkins」の語と同様の字体で赤字で大きく
「Hunting」の語が、その右下には小さな赤字の「NORTHANPTIO
N」の語が、更に下部には黒字のゴシック体で「Footwear for Co
mfort and Reliability」と印刷されている。
 そして、債務者表示2の表面の右一連のデザインと、債権者表示2の表面の一連
のデザインを対比すると、①上部については、年度部分のみ異なり、全体としては
類似していること、②中央部分については、債務者表示2では「Hunting」
の語が、債権者表示2では「Hawkins」の語が配されており、両者はスペル
そのものは異なるが、字体が類似していること(このほか、HuntingとHa
wkinsで最も目立つ大文字の頭文字Hが共通であり、Huntingのuの小
文字とHawkinsのaの小文字、Huntingのnの小文字とHawkin
sのwの小文字、Huntingのtの小文字とHawkinsのkの小文字とは
それぞれ類似しており、その後のinの小文字は両者共通であることから、少し遠
くから見ると、債務者表示2のHuntingの語と、債権者表示2のHawki
nsの語は外観上相当類似して見えることになる。これは、債務者表示3、債権者
表示3についても同様である。)、③中央やや右下の語は、債務者表示2では「N
ORTHANPTION」であり、債権者表示2では「NORTHAMPTON」
であって、NとIの二文字のみ異なり、全体としては極めて類似していること、④
下部については、両者とも黒字のゴシック体で「Footwear for Co
mfort and Reliability」と印刷され同一であることから、
両者はデザイン的にみると全体として類似しているものと一応認められる。
 また、債務者表示2の商品説明書の裏面には、白地の左上部分にサンダルの底部
分の断面図が1から5までの番号入りで印刷されており、白地の左下部分には表の
それと同様の字体で赤字で大きく「Hunting」の語が、その右下には小さな
赤字で「NORTHANPTION」の語が、白地の右下部分には黒字のゴシック
体で「Footwear for Comfort and Reliabili
ty」の語が印刷されている。さらに、白地の右側部分にはドイツ語で右断面図の
番号に対応したサンダルの材質と機能の説明が印刷されている。
 債務者表示2の裏面と、債権者表示2の裏面を対比すると、①白地の左上部分に
ついては、サンダルの底部分の断面図が1から5までの番号入りで印刷されている
点で共通であること、②白地の左下部分については、債務者表示2では「Hunt
ing」の語が、債権者表示2では「Hawkins」の語が配されており、両者
はスペルそのものは異なるが、字体が類似していること、③右「Hunting」
の語の右下には「NORTHANPTION」の、右「Hawkins」の語の右
下には「NORTHAMPTON」の語がいずれも赤字で配されており、両者はN
とIのみ異なっており、全体としては類似していること、
④白地の右下部分については両者とも黒字のゴシック体で「Footwear f
or Comfort and Reliability」の語で共通すること、
⑤白地の右側部分については、債務者表示2では英語、債権者表示2ではドイツ語
という相違はあるが、いずれも外国語で①の断面図の番号に対応したサンダルの材
質と機能の説明が印刷されている点で共通することが認められ、両者はデザイン的
にみると全体として類似するものと一応認められる。
 債務者らは、HuntingとHawkinsでは、外観、観念、称呼のいずれ
も異なると主張するが、不正競争防止法における商品等表示の類似性は取引実態等
に応じ総合的に判断されるべきものである上、本件ではHuntingとHawk
insの類似性のみが問題となっているのではないから、採用することができな
い。
2 債権者表示3と債務者表示3の類似性
 債務者商品の箱(債務者表示3。検甲第二号証の1~3)は、白地であり、①債
権者表示3における「Hawkins」の語と同様の字体で描かれた「Hunti
ng」の語、②右①の右下に配置された小さな赤字の「NORTHANPTIO
N」の語、③右①の上に配置された黒字の「ESTABLISHED SINCE
 1950」の語、④右①及び②の下に配置された黒字の「Footwear f
or Comfort and Reliability」の語、⑤右①及び②を
囲む黒色の二本線の枠で構成される印刷が上面、右横面に、右の①ないし④で構成
される印刷が正面右側に施されている。
 債務者表示3の右一連のデザインと、債権者表示3の一連のデザインを対比する
と、上面、右横面では、①債務者表示3のHuntingの語と債権者表示3のH
awkinsの語は、スペルは異なるが字体が共通すること、②右「Huntin
g」の語の右下には「NORTHANPTION」の、右「Hawkins」の語
の右下には「NORTHAMPTON」の語がいずれも赤字で配されており、両者
はNとIのみ異なっており、全体としては類似していること、③右「Huntin
g」の語の上には「ESTABLISHED SINCE 1950」の語が、右
「Hawkins」の語の上には「ESTABLISHED SINCE 185
0」の語が配されており、両者は年代のみ異なること、④右「Hunting」の
語と右「Hawkins」の語の下にはいずれも「Footwear for C
omfort and Reliability」の語が配されていること、⑤右
①及び②を囲んで黒色の二本線の枠で構成される印刷が施されていることから、ま
た、正面右側では、①債務者表示3のHuntingの語と債権者表示3のHaw
kingの語は、スペルは異なるが字体が共通すること、②右「Hunting」
の語の右下には「NORTHANPTION」の、右「Hawkins」の語の右
下には「NORTHAMPTON」の語がいずれも赤字で配されており、両者はN
とIのみ異なっており、全体としては類似していること、③右「Hunting」
の語の上には「ESTABLISHED SINCE 1950」の、右「Haw
kins」の語の上には「ESTABLISHED SINCE 1850」の語
が配されており、両者は年代のみ異なること、④右「Hunting」の語と右
「Hawkins」の語の下にはいずれも「Footwear for Comf
ort and Reliability」の語が配されていることから、両者は
類似するものと一応認められる。
3 混同のおそれについて
 不正競争防止法二条一項一号の混同には、混同のおそれも含まれ、また、周知商
品表示主体と何らかの関係があるかのように誤認させる広義の混同も含まれるとこ
ろ、1、2でみた債務者表示2、3と債権者表示2、3の類似性(ことにHunt
ingとHawkinsの字体の類似性)から、債務者らの行為により、債務者商
品と債権者商品の間に混同(広義の混同)を生じるおそれがあるものと一応認めら
れる。
 債務者レアールは、今日のように、巷に類似商品が多数並ぶ状況においては、消
費者もまた、類似商品を「似て非なるもの」と認識して購入しているのが実情であ
り、混同のおそれはないと主張するが、前記の意味における混同のおそれがないと
断定することはできない。
三 争点3(債務者商品の形態は債権者商品の形態を模倣したものか)
1 不正競争防止法二条一項三号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等す
る行為を不正競争行為としているが、「他人の商品の形態」、「模倣」等の具体的
な内容は法文自体からは必ずしも明らかではない。
 ところで、債務者大阪ケミカルは、同号の趣旨は、商品の形態を開発したところ
の市場先行者の利益の保護にあるから、ここでいう「形態」は商品本体の形態であ
り、また、自ら独自に開発した形態であることを要する旨主張する。右主張は制度
趣旨から演繹したもので一定の説得力を有するものであるが、法文上は、単に「商
品の形態」とあることから、有体物として取引の対象となるものはすべて含まれる
とみるべきで、商品本体と運命を共にする容器包装をただちに除外するのは相当で
なく、また、同号の形態については、特許法における進歩性・新規性、意匠法にお
ける創作性、あるいは不正競争防止法二条一項一号の商品表示性を備えることは不
要と解されているから、債務者大阪ケミカルの主張するように厳格に解するのは妥
当でない。
 したがって、ここでは、債権者商品の形態については、サンダルの底の刻印、商
品説明書、外箱(なお、不正競争防止法二条一項三号の形態には、形状のほか、模
様、色彩等も含まれると解されるので、その点も考慮する。)も含めた上で検討す
る。
 また、債務者大阪ケミカルは、債権者商品と同じ形態の商品は、世上、ビルケン
タイプのサンダルとして各社が製造販売しているものであるから、同号の適用が除
外される「同種の商品が通常有する形態」に該当する旨主張するが、「同種の商品
が通常有する形態」をそのように細分化して解するのは相当でない。
2 模倣の有無については、模倣の意思という主観面と、結果の実質的同一性とい
う客観面から検討すべきであるとされるが、まず、客観面から検討する。
(一) サンダルの底の表示を対比すると、債務者商品では、かかと側から、足の
マーク(周囲を線で囲んでいる。)、右側に傾斜したHuntingの語(その下
にNORTHANPTIONの語)、皮製品であることを示すマーク(その中にM
ADE IN CHINAと記されている。)が配されているのに対し、債権者商
品では、かかと側から、足のマーク(周囲を線で囲んでいる。)、右側に傾斜した
Hawkinsの語(その下にNORTHAMPTONの語)、皮製品であること
を示すマーク(その中にMADE IN SPAINと記されている。)が配され
ており、HuntingとHawkinsのスペル、NORTHANPTIONと
NORTHAMPTONのスペルの相違はあるが、これらについても字体は類似し
ており、全体として観察すれば両者は類似しているものと一応認められる。
(二) 債務者商品の商品説明書と債権者商品の商品説明書、債務者商品の外箱と
債権者商品の外箱が類似していると一応認められることは、債務者表示2と債権者
表示2の類似性、債務者表示3と債権者表示3の類似性に関して二1、2で述べた
とおりである。
(三) 債務者商品のサンダル本体と債権者商品のサンダル本体の類似性について
検討する(検甲第二号証の1~3、検甲第三号証の1、2、審尋の全趣旨)。
 まず債務者商品中「贋作1」とされるものと債権者商品中GT九三〇九について
みると、足の裏が直接密着する中底部分の形態、足の甲に密接するストラップが二
本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足の甲の高さを調整す
る点、足のかかと部分を固定するための三番目のストラップがない点において共通
し、両者は類似するものと一応認められる。
 次に債務者商品中「贋作2」とされるものと債権者商品中GT九三一九について
みると、足の裏が直接密着する中底部分の形態、足の甲に密接するストラップが二
本あり、一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足の甲の高さを調整す
る点、足のかかと部分を固定するための三番目のストラップがある点において共通
し、両者は類似するものと一応認められる。
 最後に、債務者商品中「贋作3」とされるものと債権者商品中GT九二九九につ
いてみると、足の裏が直接密着する中底部分の形態、底部分の厚さが他の二製品に
比べて一センチメートル以上も厚い点、足の甲に密接するストラップが二本あり、
一番前の部分で足幅の調整をして、二番目の部分で足の甲の高さを調整する点にお
いて共通し、債務者商品中「贋作3」とされるものには、足のかかと部分を固定す
るための三番目のストラップがあるのに対し、債権者商品中GT九二九九にはこれ
がない点で相違する。しかし、債務者商品中「贋作3」とされるものも、債権者商
品中GT九二九九も、債務者、債権者そてれぞれの他の商品に比べ、サンダルの底
が厚い点で顕著な特徴を有しており、この点において共通するので、結局、両者は
類似するものと一応認められるというべきである。
(四) 以上(一)ないし(三)の事実を総合すれば、債務者商品は債権者商品と
実質的同一性を有しているものと一応認められる。
3 次に、債務者大阪ケミカルが債務者商品の形態を決定するについて、債権者商
品を模倣する意思が認められるかについて検討する。
 右2で認定したとおり、債務者商品と債権者商品は、サンダルの底の刻印、商品
説明書、外箱、さらにサンダル本体等、広範囲において形態が類似しており、これ
らが偶然の一致によるものとは考え難い。
 さらに、①債務者商品のサンダルの底の刻印、商品説明書、外箱にみられるNO
RTHANPTIONの語は全く無意味であり、債権者商品のサンダルの底、商品
説明書、外箱にみられるNORTHAMPTONの語(イギリスのNortham
ptonshire〔ノーサンプトン州〕の州都であるNorthampton)
を模倣したと強く推認されること、②債務者商品の商品説明書では「ESTABL
ISHED SINCE 1994」となっているのに対し、債務者商品の箱では
「ESTABLISHED SINCE 1950」となっているところ、設立年
代についてこのようにまちまちな表示がされるのはいかにも不自然であり、後者に
ついては、債権者商品の箱に「ESTABLISHED SINCE 1850」
となっているのをわずかに変更したものと推認されること、③債務者商品の商品説
明書の裏面のドイツ語による商品説明は、かつて債権者商品の商品説明書に付され
ていたドイツ語による商品説明をコピーしたものである疑いが強いこと(疎甲第八
号証)等を総合すると、債務者大阪ケミカルが債務者商品の形態を決定するについ
て、債権者商品を模倣する意思があったものと一応認められる。
4 結論
以上によれば、債務者商品の形態は債権者商品の形態を模倣したものと一応認めら
れる。
四 争点4(保全の必要性があるか)
 疎明(疎乙第二三号証の1ないし13、第二八号証)及び審尋の全趣旨によれ
ば、債務者レアールは債務者商品の在庫七八四足を債務考大阪ケミカルに返品し、
債務者大阪ケミカルはこれを他に売却したこと、現在債務者大阪ケミカル及び債務
者レアールにおいては債務者商品の在庫を有していないことが一応認められる。
 他方、債務者らは、債務者らの行為が不正競争行為に該当することを争ってお
り、現在債務者商品を製造あるいは販売していないのも、債務者商品が夏向けの季
節商品であるからに過ぎない疑いも否定できず、少なくとも債務者らの行為のうち
不正競争行為に該当するものの予防(債務者レアールが従来販売していなかった債
務者商品中「贋作3」の販売を含む。)を求める必要があるというべきである。
五 主文について
 債務者表示2、3を付した商品を製造することは、不正競争防止法二条一項一号
にいう他人の周知商品等表示を使用する行為に該当すると解される。また、同法二
条一項三号は、模倣商品の製造行為について直接規定していないが、本件のように
債務者商品を販売するために製造したことが明らかな事案では、これらの行為の予
防に必要な措置(同法三条二項)として、製造の差止を請求することもできると解
する。
別紙商標公報省略
<29436-001>
<29436-002>
<29436-003>
 別紙物件目録1
 (債務者商品)
 別紙物件目録一(債務者商品)
一、贋作1
①用途 女性用サンダル
②材質 皮
 ゴム
③色 茶色又はベージュ
④別紙1の刻印が底部分にある。
⑤別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
⑥形態は別紙3のとおりである。
⑦外箱は別紙4のとおりである。
⑧サイズ 36~39
<29436-004>
<29436-005>
<29436-006>
<29436-007>
二、贋作2
①用途 女性用サンダル
②材質 皮
 ゴム
③色 茶色又はべージュ
④別紙1の刻印が底部分にある。
⑤別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
⑥形態は別紙3のとおりである。
⑦外箱は別紙4のとおりである。
⑧サイズ 36~39
<29436-008>
<29436-009>
<29436-010>
<29436-011>
三、贋作3
①用途 女性用サンダル
②材質 皮
 ゴム
③色 白
④別紙1の刻印が底部分にある。
⑤別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
⑥形態は別紙3のとおりである。
⑦外箱は別紙4のとおりである。
⑧サイズ M、L
<29436-012>
<29436-013>
<29436-014>
<29436-015>
 別紙物件目録2
 (贋作に対応する債権者商品)
 別紙物件目録二(債権者商品)
一、GT九三〇九
1、用途 男女用サンダル
2、材質
①アッパー(ストライプ)
 シンセティックレザー(合成皮革)
②金具
 真鍮の加工品
③中底(足に直接当たる部分)
 牛皮スウェード(本皮)
④緩衝材
 天然コルクのチップを合成樹脂で成型したもの
⑤外底(地面に触れる部分)
 合成ゴムの発泡ウレタン
3、色
①アッパー部分が表皮素材の場合
 黒、茶
②アッパー部分がヌバック素材の場合
 ベージュ(淡茶)、えんじ、紺
4、別紙1の刻印が底部分にある。
5、別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
6、形態は別紙3のとおりである。
7、外箱は別紙4のとおりである。
8、サイズ 35~44
<29436-016>
<29436-017>
<29436-018>
<29436-019>
二、GT九三一九
1、
用途 男女用サンダル
2、材質
①アッパー(ストライプ)
 シンセティックレザー(合成皮革)
②金具
 真鍮の加工品
③中底(足に直接当たる部分)
 牛皮スウェード(本皮)
④緩衝材
 天然コルクのチップを合成樹脂で成型したもの
⑤外底(地面に触れる部分)
 合成ゴムの発泡ウレタン
3、色
①アッパー部分が表皮素材の場合
 黒、茶
②アッパー部分がヌバック素材の場合
 べージュ(淡茶)、えんじ、紺
4、別紙1の刻印が底部分にある。
5、別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
6、形態は別紙3のとおりである。
7、外箱は別紙4のとおりである。
8、サイズ 35~44
<29436-020>
<29436-021>
<29436-022>
<29436-023>
三、GT九二九九
1、用途 女性用サンダル
2、材質
①アッパー(ストライプ)
 シンセティックレザー(合成皮革)
②金具
 真鍮の加工品
③中底(足に直接当たる部分)
 牛皮スウエード(本皮)
④緩衝材
 天然コルクのチップを合成樹脂で成型したもの
⑤外底(地面に触れる部分)
 合成ゴムの発泡ウレタン
3、色 黒一色(但し、外底は白)
4、別紙1の刻印が底部分にある。
5、別紙2の商品説明書(下げ札)がナイロン糸によって付着させられている。
6、形態は別紙3のとおりである。
7、外箱は別紙4のとおりである。
8、サイズ 36~38
<29436-024>
<29436-025>
<29436-026>
<29436-027>
<29436-028>
<29436-029>
<29436-030>

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