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          主    文   
 1 原告の第1事件における請求を棄却する。
 2 原告は被告に対し,160万3292円及びこれに対する平成12年12月9日から支払済
みまで年6分の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じ,原告の負担とする。
 4 この判決は,第2項及び第3項に限り仮に執行することができる。
          事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 第1事件
   被告は原告に対し,614万2000円及びこれに対する平成12年11月11日から支払
済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 2 第2事件
   主文第2項と同旨
第2 事案の概要
  原告と三菱電機冷熱設備株式会社(平成11年10月1日合併により被告が債権債務を
承継した。以下,承継前の会社も含めて「被告」という。)とは,平成10年ころからの取引
があり,第1事件は,被告から原告が買い受けた空調機器に欠陥があるとして,原告が債
務不履行(不完全履行)に基づく損害賠償を請求している事件であり,第2事件は,従来
の取引による売買代金を被告が原告に対して請求している事件である。
 1 当事者間に争いがない事実
 (1) 平成10年11月17日,原告は被告との間で,A電機氷蓄熱パッケージエアコン(以下
「本件機械」という。)を代金241万円で購入する売買契約を締結し,同月18日まで
に,被告は,設置場所である岐阜県郡上郡a村にある中華ファミリーレストラン「B」
(C経営。以下「本件ラーメン店」という。)において本件機械を引き渡した。
 (2) 原告は被告との間で,別紙売上目録記載の「売渡日」欄記載の日に,同目録「品名
(形名等)」欄記載の物件を,原告が被告から同目録「合計(円)」欄記載の代金額で
購入する売買契約を締結し,同日ころ,被告は原告に各物件を引き渡した。
 (3) 本件機械が本件ラーメン店に設置された後,原告は,本件機械が品質の欠陥によっ
て本来の効能を果たさない(暖房効果を発揮しない)と主張して,被告に機械の入れ
替えを要求したが,被告はこれを拒否した。その後,原告は,本件機械を本件ラーメ
ン店から撤去し,平成11年7月30日,有限会社アサヒ化成(以下「アサヒ化成」とい
う。)に設置した。原告は,なお本件機械の所有権を有し,アサヒ化成に使用させて
いる。
 (4) 本件に関し,岐阜簡易裁判所の調停において,原告と被告とが話し合ったが,調停
不成立となり,平成12年11月2日,原告が第1事件の訴えを提起し,平成12年12
月4日,被告が第2事件の訴えを提起した(訴えについては顕著な事実)。
 2 原告の主張
 (1) 原告の第1事件における主張は,別紙「原告の主張」欄に記載のとおりであり,要す
るに,本件機械には,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべき
熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となるため,暖房の際に,コンプレッサーを作
動させて生じる熱に依存する割合が相対的に高くなり,電気代が高くなるという瑕疵
があり,同じ暖房効果を得るために要するコストが高く,カタログに記載された性能を
本件機械が有していないため,そのことによって被った(2)の損害の賠償を求めると
いうものである。
 (2) 損害
  ア 本件機械代金                 265万円
    原告は本件ラーメン店を経営するCに対して,本件機械を代金265万円で売却した
が,本件機械に欠陥があったため,本件機械を引き揚げざるを得ないことになり,代
金265万円が回収不能になった。
  イ 本件機械の設置費用              140万2000円
    原告が本件ラーメン店に本件機械を設置するために要した費用が回収不能になっ
た。
  ウ 本件機械の撤去費用               25万5000円
    原告がCから要請を受けて,一旦設置した本件機械を撤去せざるを得なかった。
  エ ストーブ等購入費用               11万7600円
    Cから本件機械の暖房によっても「温度が上昇しない」との苦情があり,原告はストー
ブ及び灯油を購入して対応した。
  オ サービス代行工事費用              22万1000円
    原告は,暖房の能率を上げるために,被告の依頼を受けて,機械室断熱工事,レター
ングリル工事,7.5kwヒーター取付け及び取外し,10kwヒーター取付け及び取外し及
び風量変更一式の工事を行った。
  カ サービス費用                 136万円
    原告は,Cからの苦情を被告に取り次いだところ,被告が原告に対して調査依頼をし
たので,点検及びデータ収集に要したサービス費用として,1時間当たり5000円,1
日4時間,68日分を要した。
  キ 雑費及び経費一式                13万6400円
    原告がCからの苦情を受けてから本件機械を取り外すまでの間,被告に連絡をした
り,本件機械に修理の余地を探ったり,石油ストーブを持ち込んで本件ラーメン店の
室内温度を上げたりして対応し,その経費を要した。
 (3) 原告は,訴訟外で,第1事件における損害賠償請求権によって,第2事件の売掛金
債務と相殺したと主張している(第2事件における被告の平成12年12月4日受付上
申書)が,訴訟上,相殺の抗弁を提出していない。
 3 被告の主張
 (1) 原告の主張に対する被告の認否及び主張は,別紙「被告の主張」及び「契約との関
係」欄に記載のとおりであり,要するに,本件機械には,原告の主張するような瑕疵
はなく,暖房性能も十分であるというものである。本件機械の暖房性能が正常であっ
ても,室内の暖房効果は,本件機械の設置場所の状況(寒冷地か否か,外気侵入
負荷の大小,部屋の面積の大小,建屋の構造(例えば,壁が断熱構造であるか否
か。)),本件機械の設置方法(本件機械に接続されたダクトの直径),吸入空気温度
などの条件により異なる。本来,機械を選定する前に,本件ラーメン店の状況に基づ
いて,必要な熱負荷計算をすべきであるが,原告は,これを行わずに機械を選定し
た。そのため,本件機械の能力が本件ラーメン店における状況に合っておらず,暖房
効果が得られなかったと考えられる。
 (2) 原告主張の損害については,いずれも争う。
 (3) 原告が第2事件の売掛金債務の弁済をしないのは,第1事件における損害賠償請求
権によって相殺したと主張しているからであるが,前記のとおり,損害賠償請求権は
存在しないから,全額を支払うべきである。
 4 争点
   本件機械が品質の欠陥によって本来の効能を果たさない(暖房効果を発揮しない)もの
であるか否か。
第3 判断
 1 乙第9号証及び検証の結果によれば,本件機械は,平成15年2月28日の時点におい
て,吸い込んだ空気よりも温度の高い空気を吹き出す(吹出温度は最高43.1℃)こと
ができ,その熱量は,運転開始から10分間隔で2時間運転したときの平均値が
47360kcal/hであることが認められる。平成10年11月17日ころ本件機械が本件ラーメ
ン店に設置されたときから検証のときまでに,本件機械に修繕や改造が行われたと認
めるべき証拠はないから,本件機械の暖房能力は,本件ラーメン店に設置されたときと
比較して特段の変化は生じていないものと推認される。
 2 原告は,平成10年11月17日ころ本件ラーメン店に設置し運転したとき(甲第5号証)
も,アサヒ化成に設置し運転したとき(甲第8号証)も,暖房効果が発揮されなかったと
主張する。
   暖房効果(暖房装置の運転により室内の気温が上昇すること)が生ずるためには,暖
房装置が運転によって放出する熱量の方が運転中に失われる熱量を上回る必要があ
る。すなわち,暖房装置の暖房能力だけでなく,設置された場所の状況(寒冷地か否
か,外気侵入負荷の大小,部屋の面積の大小,建屋の構造(例えば,壁が断熱構造で
あるか否か。)),本件機械の設置方法(本件機械に接続されたダクトの直径),吸入空
気温度等の条件によって失われる熱量をも考慮(熱負荷計算)しなければ,暖房効果
が生ずるか否かは判断することができない。
   原告は,本件ラーメン店について行った平成11年3月29日付け熱負荷計算書(甲第7
号証)を根拠に,熱負荷を考慮しても本件機械のカタログ上の暖房能力からすれば,暖
房効果が得られるはずであると主張する。
   甲第6号証並びに乙第2号証,第3号証及び第5号証によれば,原告の熱負荷計算
(甲第7号証)では,本件ラーメン店の厨房に設置されたレンジフードファン(換気扇)の
存在を前提にした換気量が条件とされておらず,必要換気負荷によって計算しているこ
とが認められる。本件ラーメン店には,昭和55年ころ森冷機株式会社が施工した10馬
力の空冷ヒートポンプエアコンが設置されており,平成10年11月ころ原告が施工して
本件機械に入れ替えたが,暖房効果が得られないため,平成11年3月ころ,これを撤
去して,森冷機株式会社から独立した有限会社モリレイシステムに機械入替の工事が
依頼されたところ,同社の調査で「厨房レンジフード用ファンが取り替えられて風量が増
加していた」ことが分かり,同社は,「レンジフード用のファンの風量を絞り外気進入負
荷を軽減」するシステムを併用して15馬力の機械を導入することを提案し,Cが了承し
たため,これを施工した(乙第7号証)。また,乙第7号証によれば,原告が本件ラーメン
店に本件機械を設置したときには,既存の10馬力用のダクトに接続していたことも認
められる。
   前記のとおり,原告は,平成10年11月17日ころ本件ラーメン店に本件機械を設置し
た時点では,本件機械が15馬力相当で従来の10馬力を上回ることから,詳細な熱負
荷計算をせず,漫然と暖房効果を発揮するものと考えていたと推認され,後に行った熱
負荷計算(甲第7号証)でも厨房レンジフード用ファンによる換気量を過小評価していた
ことが認められる。したがって,本件ラーメン店において暖房効果が得られなかったの
は,本件機械の設置場所の状況から算出される熱負荷に比して,本件機械の暖房能
力が低かったことによると推認される。
 3 原告は,本件機械には,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべき
熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となる欠陥があると主張する。
   検証の結果によれば,設定された条件(冷媒配管温度が-6℃になるとデフロスト運転
を開始する。)以外のときにデフロスト運転が起きる現象,すなわちデフロストの誤作動
は現認されなかったことが認められる。甲第8号証には,「着霜が視認できないのにデ
フロストを開始する」との記載があるが,同号証の記載は,原告の訴えによるものであ
って確認されたものではないし,原告が冷媒配管温度を正確に測定していたとは限らな
いから,同号証の記載には信用性がない。他に,本件機械において,デフロストの誤作
動が生じたと認めるに足りる証拠はない。
   デフロストの誤作動がないとしても,原告は,本件機械の蓄熱槽の水温が40℃まで上
昇せず,蓄熱が不十分であると主張する。
   蓄熱運転によって蓄熱槽の水温が40℃まで上昇すると原告が主張する根拠は,甲第
12号証26頁にあるが,同号証71頁によると,40℃は蓄熱槽の上限として設定された
温度であって,40℃まで常に蓄熱する性能を保証したものではない。また,同号証14
8頁によれば,蓄熱槽の水温が15℃以上であれば,10時間の放熱運転が可能である
ことが認められる。検証のときにも,約8時間の蓄熱運転の後,本件機械の蓄熱槽の
水温は25.2℃まで上昇していたことが認められる。理論上,蓄熱槽の水温が40℃か
ら30℃に下がるときに放出される熱量と30℃から20℃に下がる時に放出される熱量
は等しいから,蓄熱が不十分ならば,蓄熱槽から放出される熱が早く尽きてしまい,長
時間の運転においてコストが悪化するはずであり,蓄熱が不十分なため,暖房開始時
に「立ち上がり能力を発揮しない」とする原告の推論は成り立たないと考えられる。
   以上のとおり,本件機械に,必要以上にデフロスト(霜取り)運転がされ,本来蓄熱すべ
き熱が霜取りに消費され,蓄熱が不十分となる欠陥があるとは認められない。
 4 原告は,本件機械の欠陥により第2の2(2)記載の損害を被ったと主張する。
   このうち,原告からCへの売買代金額を損害としている点については,原告とCとの間
の売買契約は解除されたとしても,原告と被告との本件機械の売買契約が解除された
との主張はないから,原告が被告との本件機械の売買契約を解除せず,本件機械の
所有権を有する状態のままで,この代金額相当の損害の賠償を求めることはできな
い。
   また,原告は本件機械の欠陥により,蓄熱が不十分となるため,暖房の際に,コンプレ
ッサーを作動させて生じる熱に依存する割合が相対的に高くなり,電気代が高くなると
いう瑕疵があり,同じ暖房効果を得るために要するコストが高くなると主張する。しか
し,本件機械の所有権が現在原告にあるとしても,本件機械はアサヒ化成に設置され,
原告が運転による電気代を負担していると認めるに足りる証拠はないから,コスト(電
気代)が高くなるという損害との間の因果関係がない。
 5 第2事件については,原告は被告との間で,別紙売上目録記載の「売渡日」欄記載の
日に,同目録「品名(形名等)」欄記載の物件を,原告が被告から同目録「合計(円)」欄
記載の代金額で購入する売買契約を締結し,同日ころ,被告は原告に各物件を引き渡
したことに争いはない。原告が第2事件の売掛金債務の弁済をしないのは,第1事件に
おける損害賠償請求権によって相殺したと主張しているからであるが,前記のとおり,
損害賠償請求権は存在しないから,全額を支払うべきである。
 6 よって,第1事件における原告の請求は理由がないから棄却し,第2事件における被告
の請求は理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法第61条,仮執行
の宣言について同法第259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
 岐阜地方裁判所民事第2部
             裁判官      古   閑   裕   二
※ 「別紙」は掲載省略

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