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平成14年(ネ)第1747号 商標権侵害差止等請求控訴事件
平成15年(ネ)第891号 同附帯控訴事件
原審・東京地方裁判所平成12年(ワ)第21175号
平成15年9月25日判決言渡、平成15年7月15日口頭弁論終結
          判     決
控訴人・附帯被控訴人(被告)   株式会社ラッキーコーポレーション
(以下「控訴人ラッキー」と表示)
  控訴人・附帯被控訴人(被告)   A                 
 
  上記両名訴訟代理人弁護士     尾崎純理、飯島康央、佐藤誉
  被控訴人(原告)         オーシャン パシフィック
                   アパレル コーポレーション
(以下「被控訴人OP」と表示)
  被控訴人・附帯控訴人(原告)   ニッキー株式会社
(以下「被控訴人ニッキー」と表示)
  上記両名訴訟代理人弁護士     関根秀太、達野大輔、酒井剛毅
          主    文
   本件控訴を棄却する。
   本件附帯控訴を棄却する。
   控訴費用は控訴人らの、附帯控訴費用は附帯控訴人の各負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人らは、「(1)原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。(2)被控訴人
らの請求を棄却する。」との判決を求めた。
 2 被控訴人ニッキーは、附帯控訴を申し立て、「(1)原判決中、『控訴人ラッキ
ー及び同Aは、連帯して、被控訴人ニッキーに対し4209万9689円及びこれ
に対する平成12年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。』とある部分を取り消す。(2)控訴人ラッキー及び同Aは、連帯して、被控訴人
ニッキーに対し4784万5196円及びこれに対する平成12年10月19日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」との判決(その趣旨は原判決
中の上記『 』部分を上記(2)のように変更するとの判決を求めるもの)を求めた。
第2 事案の概要
 被控訴人らは、原判決別紙第1標章目録(一)ないし(九)及び別紙第2標章目録
(一)ないし(七)記載の各標章(本件各標章)を付したTシャツ(本件商品)を輸入
し、販売した控訴人ラッキーに対して商標権侵害を理由として上記行為の差止め
を、控訴人ラッキー及び同Aに対して被控訴人らに生じた各損害の賠償及び謝罪広
告の掲載を請求した。原判決は、控訴人ラッキーに対する差止請求の全部並びに控
訴人ラッキー及び同Aに対する損害賠償請求のうちの一部を認容し、その余の請求
を棄却した。これに対し、控訴人らは本件控訴をし、被控訴人ニッキーは附帯控訴
をした。
 本件において前提となる事実及び争点に関する当事者の主張は、次の1、2のと
おり付加するほかは、原判決事実及び理由欄の「第2 事案の概要」の「1 前提
となる事実」及び「2 争点及び当事者の主張」に示されているとおりである。
 1 控訴人らの主張(損害額及び過失相殺)
 (1)損害額
   ア 本件商品の販売数量
 本件商品の販売数量は、控訴人ラッキーが被控訴人らに対して開示した伝票に記
載されている6万5821着から返品分を差し引いた6万4953着である。上記
数量は、控訴人ラッキーの帳簿に記載された本件商品の販売数量ともほぼ一致す
る。
 原判決は、本件商品に係る伝票は、控訴人ラッキーが開示した伝票の少なくとも
1.5倍は存在するものと推測される、として、6万5821着の1.5倍にあた
る9万8731着を控訴人ラッキーが販売した本件商品の数量と認定した。 しか
し、平成10年9月期から平成12年8月期までの現存する全伝票から集計した本
件商品を含む全商品の販売数量は、合計68万9115着であり、そこから国内で
仕入れた分の6万3816着を差し引くと、上記伝票から確認できる衣服の総輸入
数量は62万5299着となるところ、この数字は信用状の記載に基づく平成10
年7月から平成12年5月までの間の衣服の総輸入数量65万3758着とほぼ一
致する(なお、信用状の上での総輸入数量65万3758着と上記伝票の集計に基
づく総輸入数量62万5299着との差は、在庫販売分と売れ残り在庫の差及び一
部紛失した伝票があることによるものである。)。このように、信用状に基づく総
輸入数量と上記伝票に基づく総輸入数量がほぼ一致しているのであるから、本件商
品に係る伝票は、控訴人ラッキーが開示したもの以外には存在しない。したがっ
て、開示した伝票の記載に基づく6万4953着が本件商品の販売数量
である。
   イ 本件商品の1着当たりの販売による利益額
 本件商品の1着当たりの販売価格は、原判決の認定どおりの1194円、輸入原
価及び輸入費用の合計額は1着当たり651円であるから、1着当たりの粗利益は
543円(1194-651=543)であり、粗利益率は販売価格の45.47
パーセント(543÷1194=45.47%。小数点3桁以下切り捨て)とな
る。そして、控訴人ラッキーの平成10年9月1日から平成11年8月31日まで
の変動経費率は8.8パーセントであるから、当該期間の利益率は売上高の36.
67パーセント(45.47-8.8=36.67)であり、同じく平成11年9
月1日から平成12年8月31日までの変動経費率は7.9パーセントであるか
ら、当該期間の利益率は売上高の37.57パーセント(45.47-7.9=3
7.57)である。
   ウ 控訴人ラッキーが本件商品の販売により得た利益額
 したがって、控訴人ラッキーが本件商品の販売により得た利益は、仮に販売数量
を6万5821着として計算しても、平成10年9月1日から平成11年8月31
日までの販売数量3万4310着についての利益である1502万2283円(3
万4310×1194×0.3667=1502万2283円)と平成11年9月
1日から平成12年8月31日までの販売数量3万1511着についての利益であ
る1413万5387円(3万1511×1194×0.3757=1413万5
387円)とを合計した金額である2915万7670円である。
   エ 被控訴人らの損害額
 よって、被控訴人ニッキーの損害は、2642万0043円(2915万767
0-(1733×0.024×6万5821)=2642万0043)、被控訴人
OPの損害は、228万1355円(1733×0.02×6万5821=228
万1355)である。
 (2)過失相殺
 被控訴人OPのサイドのオリエント・パシフィック社はネイチャー・クロージン
グ社にプリシラ書簡を送付するなどして、控訴人ラッキーが本件商品を真正商品と
誤信する原因を与えており、被控訴人らにも過失があるから、損害額の算定に当た
っては過失相殺により全額又は一部の減額をすべきである。
 2 被控訴人ニッキーの主張(損害額)
 (1)控訴人ラッキーが本件商品の販売により得た利益額
   ア 本件商品の販売により控訴人ラッキーが得た粗利益は、原審の認定した
とおりの1着当たり720円(販売価格1194円から輸入原価及び輸入費用の合
計額474円を差し引いて計算)である。
 控訴人ラッキーは、売上高に対する変動経費率は、8.8パーセント(平成10
年9月1日から平成11年8月31日)及び7.9パーセント(平成11年9月1
日から平成12年8月31日)と主張しているから、その平均値である8.35パ
ーセントに相当する額99円(1194×0.0835=99。円未満切り捨て)
を上記720円から差し引くと、控訴人ラッキーが本件商品の販売により得た利益
額は1着当たり621円となる。
   イ 控訴人ラッキーが開示した伝票を被控訴人らが再集計した結果(甲8
7)及び帳簿の記載から計算される控訴人ラッキーの平成10年9月から平成12
年8月までの衣服の総輸入数量は、52万4051着(伝票上の全商品の販売数量
62万2929から返品数量1万262、明らかに衣類とは認められない商品の数
量2万4800及び国内仕入れ分6万3816を差し引いた数)であり、これは、
信用状の記載上の輸入数量65万7449着の約79.8パーセントにすぎない
(数量にして13万3398着の差がある。)。したがって、開示された伝票以外
に、控訴人ラッキーが開示していない本件商品の取引を記載した多数の伝票が存在
することは明らかであり、本件商品の販売数量は、控訴人ラッキーが開示した伝票
の記載上の販売数量6万5821着よりもはるかに多いと推測される。
   ウ そこで、仮に、本件商品の販売数量を、信用状の記載上の輸入数量と伝
票の記載上の販売数量の比率に基づき8万2576着と推定し(6万5821÷5
2万4051/65万7449=8万2576着。小数点1桁を四捨五入)、これ
に基づいて計算したとしても、控訴人ラッキーの得た利益は、原審の認定額を超え
る5127万9696円(8万2576×621=5127万9696)となる。
(2)被控訴人ニッキーの損害額
 上記(1)の利益額を基礎とすると、被控訴人ニッキーについて推定される損害
額は次のとおりとなる。
 被控訴人ニッキーは、本件商標を使用した商品の卸売り価格(1着当たり173
3円)の2.4パーセントを三菱商事に支払わなければならないから、上記(1)
の純利益額5127万9696円から、本件商品8万2576着分の上記卸売価格
の2.4パーセントである343万4500円(1733×0.024×8万25
76=343万4500。1円未満切り捨て)を控除すると、その損害額は、47
84万5196円となる。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も、被控訴人らの請求は、原判決の認容した限度で理由があり、被控訴
人らのその余の請求は理由がないと判断する。
 その理由は、当審における当事者の主張及び当審において提出された書証にかん
がみ、次のとおり付加訂正するほかは、原判決事実及び理由欄の「第3 当裁判所
の判断」(原判決15頁10行から28頁14行)のとおりであるから、これを引
用する。
 1 控訴人らの損害賠償責任の有無
 原判決20頁5行から10行を次のとおり改める。
「 (1) 無過失を基礎づける事実の有無
 前記1で認定した事実を基礎として、控訴人ラッキーが本件商品を輸入し、販売
するについて、過失がなかったか否か(すなわち、商標法39条、特許法103条
の推定を覆す事情が存在したか否か)について検討する。
 控訴人らは、本件商品を輸入、販売するに際して本件商品が商標使用許諾を受け
た商品であると信じたことに過失はない旨主張し、過失がないことを基礎づける事
情として、①オリエント・パシフィック社がネイチャー・クロージング社に交付し
たプリシラ書簡には、オリエント・パシフィック社がネイチャー・クロージング社
に対して本件各商標の使用を許諾した旨の記載があること、及び②オリエント・パ
シフィック社からネイチャー・クロージング社に対して本件商品の詳細なカタログ
が交付されていたことを挙げる。
 しかし、控訴人らの主張は、以下の理由により採用することができない。すなわ
ち、プリシラ書簡(甲3)には、「オリエント・パシフィック社は、・・・ネイチ
ャー・クロージング社と意見の一致をみたことをお知らせします。」(第1文)、
「オリエント・パシフィック社は、合衆国のブランドである“Ocean Pac
ific”又は“OP”をフィリピン国内で扱うサブライセンシーとしてネイチャ
ー・クロージング社を指名する手続中です(下線部の原文は“intheprocessof
appointingthem”)」(第2文)、「ネイチャー・クロージング社は、1998年
12月1日付けを以て“Ocean Pacific”又は“OP”商品をフィリ
ピン国内で・・・販売することができるようになるでしょう。(原文は“the
NatureClothing&SportswearCo.,Inc.willbeableto・・・retailOcean
PacificorOPmerchandiseinthePhilippineswiththeeffectfrom1
December1998”。控訴人ら提出の翻訳文の一部を当裁判所の相当と認めるものに訂
正)」(第3文)と記載されており、これらの記載を全体として読めば、プリシラ
書簡は、その作成日付け(平成10年12月1日)の時点における商標使用許諾契
約についての予測を述べたものにすぎないことが明らかである。したがって、上記
契約が未だ成立していないことは、控訴人らにおいて充分認識し得たというべきで
ある(第2文中の“willbeableto”の部分は、‘OP’商品を販売できるように
なるであろうという将来の予測を述べ、“withtheeffectfrom”以下は契約が成
立したときには1998年12月1日を許諾の効力発生日として扱うことになると
いう趣旨を述べたものであることは、容易に理解されるところである。)。
 また、控訴人ら主張の上記②の事情も、オリエント・パシフィック社とネイチャ
ー・クロージング社との間で本件各商標について商標使用許諾契約が成立していた
ことを控訴人らに信じさせるに足りるものとは到底認められない。
 控訴人ラッキーは、プリシラ書簡の上記内容からすれば、オリエント・パシフィ
ック社とネイチャー・クロージング社との間の商標使用許諾契約が未だ成立してい
ないことを認識し得たのであるから、本件商品を輸入するにあたっては、オリエン
ト・パシフィック社に問い合わせるなどして、ネイチャー・クロージング社が本件
各商標の使用を許諾されていたかどうかにつき、調査を尽くすべき義務があったと
いうべきである。本件全証拠によっても、控訴人ラッキーがこのような調査義務を
尽くした事実は認められない。
 そうすると、控訴人ラッキーには、本件各商標権の侵害行為をしたことについて
過失がないとする事情は存在しない。」
2 損害額
 (1)原判決21頁の「4 損害額」の「(1)事実認定」の項の冒頭部分及び同項
のア(原判決21頁19行から22頁14行)を次のとおり改める。
「 (1) 事実認定
 前提となる事実、証拠(甲30ないし74、84ないし87、書証の枝番の表示
は省略。以下同じ)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
   ア 各伝票の記載及び態様
 控訴人らは、原審手続の過程で、本件商品の販売に際して控訴人ラッキーが作成
した各伝票(納品書、納品伝票、返品書等)を被控訴人らに開示し、被控訴人ら
は、これらを分析して、検分書及び集計書と題する書面(甲74)としてまとめた
(同証拠に記載されている事実については控訴人らも認めている。)。さらに、控
訴人らは、当審手続の過程で、上記各伝票及び原審手続後に発見されたという伝票
1冊を被控訴人らに開示し、被控訴人らは、これらを再集計し分析して、同一タイ
トルの書面(甲87)としてまとめた(同証拠に記載されている事実については控
訴人らも認めている。)。
 甲第87号証によれば、上記各伝票の記載上は、控訴人ラッキーが平成11年3
月から平成12年7月までの間に販売した本件商品の数量は合計6万5821着、
その売上高は合計7863万784円である(控訴人らは返品された868着を差
し引くべきであると主張するが、その主張を認めるに足りる証拠はない。)。ま
た、同証拠によれば、上記各伝票の記載上は、平成10年9月から平成12年8月
までの期間中に控訴人ラッキーが販売した全商品の数量は、62万2929点であ
る。
 上記各伝票には、「田原屋」、「ユウキ」、「エフ」、「坂善商事(ゼンモー
ル)」を宛名とするもの及びその他の取引先を宛名とするもの(以下、「「その
他」伝票」ということがある。)がある。これらのうち、「田原屋」、「ユウ
キ」、「エフ」、「坂善商事(ゼンモール)」を宛名とする伝票は、個々の取引ご
とに個別に作成され、各伝票が独立した1枚の紙となっており、これを一定の期間
ごとにまとめて紐で綴じた状態で存在している。そして、各期間ごとの伝票綴り
(「田原屋」分が30冊、「ユウキ」分が2冊、「エフ」分が1冊、「坂善商事
(ゼンモール)」分が1冊)には、納品伝票(納品書・仕入伝票)の他に返品伝票
(返品通知書)も綴られており、各納品伝票には、日付、伝票番号、商品名又は商
品を表す記号、数量、単価及び売上金額等が記載されている。また、「その他」伝
票(原審で開示されたものが18冊に加えて、後で発見されたという1冊が当審で
追加開示された。)は、1冊ごとに分かれた複写式のものであり、日付、伝票番
号、商品名又は商品を表す記号、数量、納入先、単価及び売上金額が記載されてい
るが、甲第87号証及び弁論の全趣旨によれば、同伝票の伝票番号は連続しておら
ず、欠番の数が連続して存在する番号数よりも多いことが認められる。」
 (2)原判決23頁の「(2) 被告ラッキーの得た利益額」の項の「ア 売上総額
について」(原判決23頁6行から24頁12行)を次のとおり改める。
「  ア 売上総額について
 控訴人ラッキーが被控訴人らに開示した伝票の記載によれば、控訴人ラッキーの
本件商品の販売数量は、前示のとおり、合計6万5821枚であり、その売上高は
合計7863万784円である。
 しかし、前記(1)で判示したように、控訴人ラッキーが開示した上記各伝票のう
ち、「田原屋」、「ユウキ」、「エフ」及び「坂善商事(ゼンモール)」を宛名と
するものは、個々の取引ごとに個別に作成され、紐で綴じられているため、開示さ
れていないものがあったとしても外形上は見分けることができない。また、上記各
伝票のうち、「その他」伝票は、1冊ごとに分かれた複写式のものであるが、その
伝票番号は連続しておらず、欠番が多数存在する。したがって、控訴人ラッキーが
開示した上記各伝票が、控訴人ラッキーが本件商品について作成した伝票のすべて
であると断定することはできず、かえって、控訴人ラッキーが開示した以外にも本
件商品の取引が存在することが推測される。
 この点について、控訴人らは、「その他」伝票の伝票番号が連続していないの
は、会社として伝票番号を意識して順番に使用しておらず、担当者が必要な伝票を
その都度使用していたためであると主張し、これを裏付ける証拠として控訴人ラッ
キーの社内に保管されていたという、欠番に対応する伝票(商標権侵害が問題にな
っている期間以外の取引に関わるもの及び未使用伝票。丙17、18、23)を提
出する。しかし、伝票の欠落については、原審手続においても当事者間で大きな争
点となっていたにもかかわらず、当審の最終段階に至って初めて上記各伝票が提出
されたという経緯、及び上記証拠に係る伝票の中には「(有)ラッキーコーポレー
ション」と表示したものが相当数あることに照らすと、欠落している伝票について
の控訴人らの説明は不自然であり、信用することができない。
 ところで、前記(1)イのとおり、信用状の記載によれば、控訴人ラッキーは、平成
10年7月ころから平成12年5月ころまでの間に、衣服を少なくとも65万74
49着輸入していることが記載上確認される。それらの信用状のうち、受益者をジ
ャンズ社、商品をティーシャツとする平成10年11月25日ないし平成12年5
月25日発行の信用状に記載された積出商品の合計数量は、前記(1)イの認定のとお
り、40万2459着である。他方、控訴人ラッキーが開示した伝票によって確認
できる全商品の販売数量は、前記(1)アのとおり、平成10年9月から平成12年8
月までの間で合計62万2929点である。しかし、上記伝票に記載された取引に
は、単価からみて衣服ではないネームタグ等と推認されるもの(2万4800点)
があり、また、控訴人ラッキーによれば平成10年9月から平成12年8月までに
国内で仕入れた衣服が6万3816着あるから、これらを差し引くと、上記期間中
に控訴人ラッキーが輸入して販売した衣服の数量は、伝票の記載から確認できる数
量としては、約53万着ということなる。そうすると、上記伝票上の衣服の輸入総
数と信用状の記載に基づく衣類の輸入総数との間には約12万着の差があることに
なる。また、本件商品の伝票上の販売数量合計6万5821着は、信用状に表れた
ジャンズ社から控訴人ラッキーに対するティーシャツの積出総数40万2459着
と比較しても、著しく少ない(上記約40万着の中に他社のためにした信用状代行
分及び本件商品以外の商品が含まれる可能性を考慮しても、その差は、なお、大き
いものといわなければならない。)。
 さらに、控訴人ラッキーが開示した伝票類を被控訴人らが再集計し分析した結果
(甲87)によれば、「田原屋」宛ての伝票、「ユウキ」宛ての伝票、「エフ」宛
ての伝票、「坂善商事(ゼンモール)」宛ての伝票、「その他」宛て伝票のいずれ
についても、他の商品に関する伝票だけがあって本件商品に関する伝票は一切存在
しない、あるいは、本件商品を含む全商品について伝票が一切存在しないという空
白期間(平成11年6月ころからへ平成12年2月ころにかけての期間に集中して
いる。)が存在することが認められる。
 上記認定した事実並びに弁論の全趣旨(控訴人らが原審及び当審を通じて伝票、
帳簿類の開示についてとった態度)を総合考慮すると、控訴人ラッキーが開示した
上記各伝票によって確認される取引以外にも本件商品の取引が相当数存在すること
が推測され、それらを含めた本件商品の販売数量は、本件訴訟の過程で開示された
伝票の記載によって確認できる販売数量の1.5倍程度と推計するのが最も合理的
である。
 したがって、控訴人ラッキーが販売した本件商品の数量は、伝票の記載上の販売
数量6万5821着を1.5倍した9万8731着と推計される(6万5821×
1.5=9万8731.5、なお、1着未満切り捨てにより算定した。)。」
 (3)原判決25頁の「オ 利益額」(25頁22行から26頁3行)を次のと
おり改める。
 「 オ 利益額
 弁論の全趣旨によれば、控訴人ラッキーは従業員が数人の小規模な会社であり、
事業遂行に際し必要な経費は少ないものと推測されるから、控訴人ラッキーの利益
率は、前記エで認定した粗利益の65パーセント程度であるものと推認される。こ
れよりも控訴人ラッキーの利益率が低いとする控訴人らの主張及び利益率が高いと
する被控訴人ニッキーの主張は、いずれも採用しない。」
 (4)原判決26頁の(4)(26頁25行から27頁22行)を次のとおり改め
る。
「 (4) 過失相殺の点について判断する。
 既に判示したとおり、プリシラ書簡は、その全体を読めば、本件各商標の使用許
諾に関する契約が未だ成立していないことを容易に理解し得る内容であるから、プ
リシラ書簡が控訴人らに本件各商標の使用許諾契約が既に成立したかのごとき誤解
を与えたという控訴人ら主張は証拠上認めることができず、オリエント・パシフィ
ック社には、控訴人らが本件商標権を侵害したことについて、何らの過失もないと
いうべきである。よって、控訴人ら主張の過失相殺は、採用することができな
い。」
第4 結論
 以上のとおりであるから、被控訴人らの請求は、(1)被控訴人OPについて、控訴
人ラッキーに対する本件商品の輸入等の差止め、並びに控訴人らに対する損害賠償
金342万2016円及びその遅延損害金の連帯支払、(2)被控訴人ニッキーについ
て、控訴人らに対する損害賠償金4209万9689円及びその遅延損害金の連帯
支払を求める部分について、それぞれ理由があるから、これと同旨の原判決は相当
であり、控訴人らの控訴はいずれも棄却されるべきである。そして、被控訴人ニッ
キーの控訴人らに対する損害賠償請求は、上記金額を超える部分は理由がないか
ら、附帯控訴は棄却されるべきである。
 東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官   塚  原  朋  一
 裁判官   古  城  春  実
        裁判官   田  中  昌  利

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