弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A本人の上告趣意は、憲法違反、判例違反の語を用いてはいるが、その実
質は事実誤認、採証法則違反、量刑不当の主張であり、同B、同C、同D、同E各
本人の上告趣意並びに同F本人の上告趣意一、五及び七は、いずれも事実誤認、量
刑不当の主張を出でず、同二乃至四はいずれも単なる法令違反の主張であり(Gの
所論各供述調書はそれぞれ司法警察員及び検察官の誘導尋問によりなされた供述を
録取したものであつて、供述の任意性を欠き証拠能力がない旨主張するけれども、
この点については原審において主張判断を経ておらないのみならず、第一審公判に
おいて被告人全員が右各供述調書を証拠とすることに同意していること記録上明ら
かであるから、上告審に至つて争うことは許されない)、同六は本件の捜査及び勾
留自体の不当不法を主張するものであつて原判決の違法を主張するものではなく、
同H本人の上告趣意は違憲をいうけれどもその実質は原審が事実の取調をなさずし
て第一審判決よりも重い刑の言渡をした点を非難する訴訟法違反(この点に対する
判断は後述弁護人小林為太郎の上告趣意第二点に対する判断部分参照)、量刑不当
の主張に帰するものであり、同I本人の上告趣意は、右同様の訴訟法違反(同上参
照)、事実誤認、量刑不当の主張であり、同J本人の上告趣意は違憲を主張する点
もあるが原裁判所が所論被告人等の黙否権を侵害したと認められる事跡は記録上少
しも発見できないから所論違憲の主張はその前提を欠くものであり、その余の論旨
は事実誤認、量刑不当の主張を出でないものである(なおGの供述調書の任意性を
争う点もあるがこの点に関しては前述被告人F本人の上告趣意に対する同関係判断
部分参照)から、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人等の弁護人小林為太郎の上告趣意第一点前段は違憲をいうけれども「暴力
行為等処罰ニ関スル法律」一条一項の規定は、現在有効に存続する規定であり且つ
憲法九八条に違反するものでないことは当裁判所の判例に徴して明らかである(昭
和二五年(れ)第九八号、同二六年七月一八日大法廷判決、集五巻八号一四九一頁、
昭和二四年(れ)第八九八号、同二九年四月七日大法廷判決、集八巻四号四一五頁
各参照)。従つて原判決が所論の判示事実に対し右法律一条一項を適用処断したの
は正当であつて、所論は理由がない。
 同第一点後段及び被告人等の弁護人植木敬夫の上告趣意第一点は、いずれも、被
告人Jの本件業務妨害の所為(第一審判決の判示第三)は正当な争議行為であるか
ら違法性を阻却するものであることを前提とし、これを労働組合法上正当な行為と
は認められないからその犯責を免れ得ないとした原判決は憲法二八条に違反する旨
主張する。原判決が、この点に関する判断として、第一審判決の判断を引用しつつ
「当該労働組合の決定にもとずかず少数者の専断により敢行せられたものであつて
到底労働組合法上正当な行為とは認められないからその犯責を免れない」とだけ説
示するのは、その説明簡に失するのうらみはあるけれども、原判決はその前段にお
いて第一審判決引用の各関係証拠を綜合するとその各判示事実は証明十分であつて
何等事実誤認はない旨判示しているのであり、その判文全体からすれば、原判決判
断の骨子とするところは、結局、被告人Jが参加した争議行為と称するものは当該
労働組合の決議に基かず、ただ少数者の専断により敢行されたものである点、並び
にその具体的な実行行為の点即ち第一審判決判示第三記載の如く、同被告人は外数
名と共謀のうえ、電車の前方通路である軌道上に、或はうずくまり、或は板切れ、
道具箱、枕木、トラツク等の障碍物を並べて出庫電車の進路を塞いで出庫を阻止し
たものであるとの点、及び同被告人は当該労働組合の組合員でない点等を綜合して、
以上は争議行為とは認められず、また仮りに争議行為であるとしても、前示具体的
行為の手段方法において、右は労働組合法一条二項所定の正当行為とは認められな
いとした趣旨と解すべきであるから、この原審の判断は当裁判所の判例(昭和二二
年(れ)第三一九号、同二四年五月一八日大法廷判決、集三巻六号七七二頁)の趣
旨にも合致し、正当であるというべきである。されば所論違憲の主張はその前提を
欠き採用の限りでない。
 右弁護人小林為太郎の上告趣意第二点は違憲を主張するけれども、第一審判決が
懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が検察官からの第一審判決の量
刑は不当であるとの控訴趣意に基き、第一審判決の量刑の当否を審査するに当つて
は常に自ら事実の取調をしなければならないものではなく、訴訟記録及び第一審に
おいて取り調べた証拠のみによつて、検察官の控訴を容れ第一審の量刑よりも被告
人に不利益に変更しても刑訴四〇〇条但書の解釈を誤つたものということはできな
いこと、当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第四二二三号、同三一年七月一八日大
法廷判決、集一〇巻七号一一七三頁参照)とするところである。従つて所論違憲の
主張はその前提を欠くものであり、その余の論旨は事実誤認、量刑不当の主張であ
つて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 右弁護人植木敬夫の上告趣意第二点は訴訟法違反の主張であり(前記弁護人小林
為太郎の上告趣意第二点に対する判断のうち、刑訴四〇〇条但書の解釈の点参照)、
同第三点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第四点は、判例違反を主
張するけれども、所論の点については原審において主張判断を経ていないばかりで
なく、所論引用の判例は監禁の手段として脅迫が用いられた事案に関するものであ
つて事案を異にする本件には適切ではなく、何れも刑訴四〇五条の上告理由に当ら
ない。
 また記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は、弁護人小林為太郎の上告趣意第二点のうち刑訴四〇〇条但書の解釈
問題に関する部分、並びにこれと同趣旨の弁護人植木敬夫の上告趣意第二点及び被
告人H、同I各本人の上告趣意のうち訴訟法違反の主張部分に対する判断について
裁判官小谷勝重、同河村大助の少数意見あるほか裁判官一致の意見である。
 裁判官小谷勝重、同河村大助の少数意見は次のとおりである。
 原判決は、第一審が本件被告人等に対して言渡した各執行猶予を附した懲役刑の
判決を破棄自判し、それぞれ懲役刑(実刑)を言渡したのであるが、記録によれば
その手続は書面上の調査のみによつたのであつて、事実の取調を行つた形跡は認め
られない。このように第一審の執行猶予を附した判決を第二審において破棄し自判
によつてこれを実刑に改めるには自ら事実の取調を行うことを要し、さもなければ
第一審に差し戻すべきものである。この点において原判決は違法たるを免れないか
ら破棄すべきものである。
  昭和三二年五月三一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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