弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役二年に処する。
     第一審における未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入する。
     押収にかゝる活字用枠一個(原審昭和二四年押第一〇五六号の二)活字
用インク一罐(同号の三)スクンプ台三個(同号の四)インク用ブラシ一本(同号
の六)ピンセツト一本(同号の八)枠用当板一七枚(同号の一〇)活字九九八個(
同号の一七)転出証明書一五通(同号の二八、三一、三四、三六、三八、四二、四
四、四八、五一、五三、五五、五七、五八、六〇、六一、)はいずれもこれを没収
する。
         理    由
 被告人の上告趣意は結局原判決の量刑不当を主張するものであつて適法な上告理
由とならない。
 検事の上告趣意について。
 原判決の刑と第一審判決のそれとをくらべてみると、両者は未決勾留日数を本刑
に通算する点を除いてその他の部分はすべて同じであるが、前者は後者において本
刑に通算せられた第一審の未決勾留日数中六〇日をその本刑に算入していないこと
論旨の指摘するとおりである。しからば原判決の刑は第一審判決の刑より重いこと
明らかである。しかるに本件は被告人のみの控訴申立にかゝはる事件であるから、
右は旧刑訴法四〇三条に違背し、この違法は原判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるから論旨は理由がある。そこで同四四七条四四八条により原判決を破棄し本件
について更に判決することとし、原判決の確定した事実に法律を適用すると、判示
被告人の所為中、各公文書偽造の点は刑法一五五条一項に、各偽造公文書行使の点
は同一五八条一項、一五五条一項に各詐欺の点は同二四六条一項にそれぞれ該当す
るところ、以上は各同五四条一項後段の牽連犯であるから同一〇条を適用し、それ
ぞれ最も重い偽造公文書行使罪の刑に従い処断すべきところ、右は同四五条前段の
併合罪であるから同四七条一〇条により各犯情の最も重いA同章の偽造転出証明書
行使罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、被告人を懲役二年に処すべく、なお
同二一条により第一審における未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入することゝし、
主文第四項掲記の各押収物中、転出証明書は本件偽造行為より生じたもの及び偽造
公文書行使行為を組成したものであり、その余の物件は本件偽造行為に供し又は供
しようとしたものであつて、いずれも被告人以外の者に属しない場合であるから、
同一九条一項二項を適用しいずれもこれを没収する。
 よつて刑訴施行法二条により全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二五年一二月二二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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