弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人夏秋武樹が陳述した控訴趣意は記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書記
載のとおりであるからこれを引用する。
 同控訴趣意第一点について、
 記録を調査すると、被告人関係の原審における本件訴因及び罰条の変更請求書記
載の訴因及びこれに対応する被告人関係の原判示事実の各要旨は、被告人はスクリ
ユーを備える小型漁船A丸の所有者にして同船により小型機船底びき網漁業を営む
Bに雇われ、同船の船長兼漁ろう長として同漁業に従事しているものであるが、佐
賀県知事及び長崎県知事の許可を受けないで、昭和二十七年十月二十八日午前六時
頃から同日午前十時頃までの間長崎県北松浦郡二神島附近において、Bの業務に関
し、前後三回に亘り同船により底びき網を使用して小型機船底びき網漁業をなし、
時価五千七百円相当の「小いとより」等の漁類を漁獲したものであるというのであ
り、当審において検察官の請求により前掲訴因中「佐賀県知事及び」とあるのを削
除することを許可したのであるが、右削除にかかる訴因に対応する事実を除外した
原判示事実及び右長崎県北松浦郡二神島附近の海域が長崎県知事の管轄に属するこ
とは原判決の挙示した証拠を綜合すれば充分にこれを認めるに足り、該事実は漁業
法第六十六条の二第一項第百三十八条第六号に該当することが明らかである。論旨
は漁業法第六十六条の二第一項にいわゆる都道府県知事とは当該漁場を管轄する都
道府県知事に限局すべきではなく、該漁場を管轄する都道府県知事以外の知事をも
包含するものと解すべきである。もし然らずとすれば、昭和二十七年三月十四日農
林省告示第八十二号によると漁業法第六十六条の二第三項前段の規定に基き許可を
することのできる小型機船底びき網漁業の種類別の船舶の隻数等の最高限度を各都
道府県別に割当てられているのに、同一の船舶が二県にまたがり機船底びき網漁業
をしようとする時は同一の船舶につき二県知事の許可を要すべき結果となり、農林
大臣の許可には一隻の船舶による漁業であるのに数字上二隻の船舶による漁業であ
るかの如き不合理なる結果となる。しかして原判示Bは山口県知事から原判示機船
A丸を使用して小型機船底びき網漁業をなすことを許可されているのであるから本
件犯罪を構成するものでないというのであ<要旨>るが、漁業法第六十六条の二第一
項の規定により同条所定の漁業につき船舶ごとに許可をなし得る権限を有す</要
旨>る都道府県知事とは当該漁業の操業海域を管轄する都道府県知事を指斥し、該海
域を管轄しない都道府県知事を包含するものではない。けだし、漁業法第六十六条
の二第三項には「主務大臣は漁業調整のため必要があると認めたるときは、都道府
県別に第一項の許可をすることができる船舶の隻数、合計総トン数、若しくは合計
馬力数の最高限度を定め又は海域を指定し……最高限度を定めることができる」旨
規定し、以て主務大臣が水産動植物の繁殖、保護、漁業取締等漁業調整のため都道
府県別に漁業法第六十六条の二第一項の許可ができる船舶の隻数等の最高限度につ
いての定めをなし得ることを明らかにし、又同条第五項には「都道府県知事は第三
項の規定により定められた最高限度を超える船舶については第一項の許可をしては
ならない」と規定し、以て都道府県知事が当該都道府県別に割当てられた船舶の隻
数等の最高限度をこえて同条第一項の許可をなし得ないととを明らかにしているの
であるが、もしそれ漁業法第六十六条の二第一項にいう都道府県知事(以下単に府
県知事と略称する)を所論のごとく操業海域を管轄しない府県知事をも包含するも
のと解すれば、操業海域を管轄する府県知事が漁業法第六十六条の二第三項により
当該府県に割当てられた船舶の隻数等の最高限度まで同条第一項の許可をしたた
め、同条第五項により、もはやこれ以上許可をすることができないのに拘らず、該
操業海域を管轄しない府県知事の許可処分により漁業法第六十六条の二第五項違反
を招来する結果となる。豈かかる理あらんやである。なお漁業法第百三十六条には
「漁場が二以上の都道府県知事の管轄に属し、又は漁場の管轄が明確でないとき
は、主務大臣はこれを管轄する都道府県知事を指定し、又は自ら都道府県知事の権
限を行うことができる。」旨規定しているので所論のごとく漁場が二府県にまたが
る場合は、主務大臣によりこれを管轄する府県知事の指定を受けることができるの
で、所論のごとく船舶の隻数等の最高限度の定めにつき不合理な結果を生ずべき憂
は毫も存しない。しからば山口県知事から原判示機船A丸を使用して小型機船底び
き網漁業の許可を受けた事実(しかも記録によれば同知事の許可は操業海域を山口
県外海と制限しており管轄外の他府県の海域における操業を許可したものでないこ
とが明らかである)は被告人の前掲違反罪の成否に何等の影響を及ぼすものでない
ものこいわなければならない。さすれば原判示事実の成立を認め(前掲当審におい
て検察官の訴因の削除を請求した部分の存するととは原判決に何等影響を及ぼすも
のと認められない)これを原判示法令に間擬した原判決はまことに正当であり、原
判決には所論のような違法がないので、論旨は理由がない。
 同控訴趣意第二点について。
 しかし、記録及び原裁判所において取調べた証拠に現われた本件犯罪の熊様、本
件漁獲高その他主観、客観諸般の情状並びに被告人が本件犯行前の昭和二十七年三
月漁業法違反罪により罰金二千円に処せられている事実に鑑みると、所論の事情を
とくと斟酌しても被告人を懲役二月に処した原判決の量刑を目して強ち重きに過ぎ
る不当のものとは認められないのでとの点の論旨も理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件控訴を棄却することとし、主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 谷本寛 裁判官 藤井亮 裁判官 吉田信孝)

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