弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人諏訪栄次郎の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決に法令の解釈を誤つた違法があると主張する。
 仮に、Dの監護教育につき、その父Eが昭和二五年一月二〇日死亡する直前、同
人と上告人との間に、所論の如き委託契約が成立したとしても、それは委任に準ぜ
らるる契約と解すべきものであるから、特段の事情のない限り、民法六五六条、六
五三条により、右Eの死亡に因り終了したものと解すべきを当然とする。したがつ
て、右契約の存在を主張しても、親権者である被上告人に対し、右Dの引渡を拒む
理由とはならない。原判決に所論の違法を見出せぬ。
 論旨は、理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決に証拠判断遺脱の違法、採証法則違背があると主張する。
 所論証人F、同Gの各証言の一部により、乙三号証の成立が認められ、その成立
事情及び趣旨が明白にされるときは、同証により、被上告人が上告人に対し、被上
告人の長男なる右Dの監護方を委託した事実を確認し得ないものでもないのである
から、これ等の証言の一部と、乙三号証の内容は、被上告人の意思に基くことなく、
何人かが壇にこれを記入したものであるとした原判決の事実認定とが、牴触するこ
ととなるものとせねばならない。しかるに、原判決は、右証言の一部を排斥するか
否かにつき何等判断して居ないのであるから、原判決に、証拠判断遺脱の違法ある
可能性、必ずしもないとはいえない。
 しかし原判決は、所論の如き委託があつたとしても、委託者において何時でもこ
れを解除し得るものであるとし、その解除の事実をも認定して、右委託の存続に基
く上告人の抗弁を排斥して居るのであつて、その判断は、これを是認し得られる。
されば、所論判断遺脱は、結局原判決に影響を及ぼすことの明かな法令違背とはい
えない。
 乙三号証及び右証人F並に同Gの各証言を除くその余の所論証拠については、原
判決は、これ等を以つてするも所論委託の事実を認むるに足らないと判断して居る
のであり、その判断は、これを是認し得られるのであるから、所論の違法があると
はいえない。
 論旨は、結局理由がない。
 同第三点について。
 論旨は、原判決に理由不備、判断遺脱の違法があると主張する。
 原判決は、被上告人は夫Eとの間の子Dの監護養育を夫Eに委託して同人と別居
することにしたが、夫Eの生前においては、被上告人と同人の離婚が成立するに至
らなかつた事実と認定して、夫婦間の協議により右Dの親権者を夫Eと定める合意
の成立した事実を否定した趣旨であること、明白である。而して原審挙示の証拠に
よる右事実確定は、これを是認し得られる。
 論旨は、結局原審の適法なる証拠判断、事実認定を非難するに帰するから、これ
を採用し得ない。
 同第四点について。
 論旨は、原判決に採証法則違背の結果、事実誤認に至つた違法があると主張する。
 しかし、原審がその挙示の適法なる証拠を判断した結果、所論原判示事実を認定
したものであり、その証拠判断による所論事実認定は是認し得られる。原判決に所
論の違法はない。
 論旨は、これを採用し得ない。
 同第五点について。
 論旨は、原判決に、子を監護する権利の本質を誤解し、権利濫用に関する法規の
適用を誤つた違法があると主張する。
 被上告人の本件請求は、被上告人の親権に服する子Dに対し、被上告人がその親
権を行使するにつき、上告人の妨害の排除を求むるに在ること明かである。同点一
所論の如く、本件請求の目的が、右Dの養育に在るのではなくして、亡夫Eの遺産
を取得するにあるとの事実は、原判示に即しないばかりでなく、同点一に列挙した
諸事実の如きは、本件請求の当否に関係があるとは到底解し得られない。同点二所
論の事実も亦、必ずしも原審の事実認定に即するとはいえないばかりでなく、かか
る事実は、いまだ被上告人に親権濫用のある理由とするに足らない。また、同点三
についても、原判示によれば、右Dは昭和二二年五月一〇日生であり、父E死亡直
後、被上告人が上告人に対し、右Dの引渡を求むる調停を申立てた昭和二五年二月
一四日には、いまだ三才に満たない幼児であり、上告人はその頃より引続き右Dを
手許におき、或は実姉Hに託して養育を続けて来たとのことであるから、上告人或
はその実姉H方に留つたことが、右Dの自由意思に基いたものとは、到底解し得な
い。
 されば、原審確定の事実関係の下においては、被上告人の本件請求を認容した原
判決に、所論の違法があるとは考えられない。
 論旨も亦採用し得ない。
 同第六点について。
 論旨は、原判決に右Dの居住の自由を侵し憲法二二条違反があると主張する。
 本件請求は、右Dに対し、民法八二一条に基く居所指定権により、その居所を定
めることを求めるものではなくして、被上告人が同人に対する親権を行使するにつ
き、これを妨害することの排除を、上告人に対し求めるものであること、多言を要
しない所である。したがつて、本件請求を認容する判決によつて、被上告人の親権
行使に対する妨害が排除せられるとしても、右Dに対し、被上告人の支配下に入る
ことを強制し得るものではない。それは、同人が自ら居所を定める意思能力を有す
ると否とに関係のない事項であつて、憲法二二条所定の居住移転の自由とも亦何等
関係がない。されば違憲の主張は、その前提を欠くに帰する。
 論旨は採用し得ない。
 よって、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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