弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原判決中被告人A、同B、同C、同D、同Eに関する部分を破棄する。
占領目的阻害行為処罰令(昭和二五年政令第三二五号)違反の事実につ
いて、右各被告人を各免訴する。
右各被告人を各懲役三月に処する。
被告人Aに対して本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
押収にかかる別紙第一目録記載の物件は被告人Aから、同第二目録記載
の物件は被告人Bから、同第三目録記載の物件は被告人Cから、同第四目録記載の
物件は被告人Dから、別紙第五目録記載の物件は被告人Eから、いずれもこれを没
収する。
第一審における訴訟費用中被告人FことGに支給した費用は被告人A、同C、同E
の負担とし、通訳人Hに支給した費用は被告人B、同Cの負担とし、当審の訴訟費
用は被告人Aの負担とする。
理由
職権で調査するに、被告人五名は韓国人であるが、いずれも韓国に行くため制規
の手続を経ないで、昭和二六年三月四日長崎県上県郡a町b港から韓国向けの密航
船I丸に乗つて発航し、もつて不法に本邦から出国した旨の公訴事実(起訴状記載
第一の事実)については、昭和二七年政令第一一七号一条二三号により大赦があつ
たので、刑訴四一一条五号、四一三条但書に従い原判決中被告人五名に関する部分
を破棄し、当裁判所において更に自ら判決をすることとし、右公訴事実について同
四一四条、四〇四条、三三七条三号により被告人五名に対し免訴の言渡をする。
被告人Aの弁護人宮内厳夫の上告趣意は、事実誤認、訴訟法違反の主張であり、
被告人B、同C、同D及び同Eの弁護人池田純亮の上告趣意は、事実誤認、量刑不
当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、原判決の
是認した第一審判決挙示の各証拠により、被告人等の乗船したI丸は夜間消燈して
b港を出航したものであること、被告人等が積載した物品は多量で対馬において到
底これを売りつくす見込はなかつたこと等の事実が推認され、被告人等に韓国に渡
航する意思のあつたことを肯認しうるから所論の違法は存しない。)
よつて、原判決の是認した第一審判決が認定した事実のうち右大赦にかからない
事実に法令を適用すると、被告人五名の判示所為中第一(二)の所為は、いずれ、
も関税法七六条一項、罰金等臨時措置法二条に、第一(三)の所為は、いずれも、
外国人登録令一三条四号、九条、罰金等臨時措置法二条に各該当するので、右各罪
についていずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法
四七条、一〇条に従い重い判示第一(二)の無免許輸出の刑に法定の加重をした、
刑期範囲内で被告人五名を各懲役三月に処し、被告人Aに対しては情状により同法
二五条に従い本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、押収にかかる主文五
項掲記の物品の没収について関税法八三条一項を、主文末項の訴訟費用の負担につ
いて刑訴一八一条一項を適用し、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官神山欣治出席
昭和二八年一一月一〇日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官井上登
裁判官島保
裁判官河村又介
裁判官小林俊三
裁判官本村善太郎
<別紙目録は省略>

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