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平成26年9月5日判決言渡
平成25年(行ウ)第501号行政処分取消等請求事件
主文
1本件訴えのうち,別紙文書目録記載の各文書を公開する旨の決定をすること
の義務付けを求める部分をいずれも却下する。
2本件訴えのその余の部分に係る原告らの請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1小平市選挙管理委員会が平成25年7月29日付けで原告らに対してした別
紙文書目録記載の各文書を公開しない旨の決定を取り消す。
2小平市選挙管理委員会は,原告らに対し,別紙文書目録記載の各文書を公開
する旨の決定をせよ。
第2事案の概要
被告(小平市)においては,東京都が施行者となって施行するものとされる道
路(小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線)の整備に関する都市計画事業に係
る東京都の都市計画について,「住民参加により計画を見直すべきか,又は計画の
見直しは必要ないかについて,市民の意向を確認すること」を目的として,被告の
条例(東京都の小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線計画について住民の
意思を問う住民投票条例(平成25年小平市条例第13号)。甲5。以下「本
件住民投票条例」という。)の規定に基づき,住民投票(以下「本件住民投票」
という。)が行われたところ,本件は,被告の住民である原告らが,小平市情報
公開条例(平成13年小平市条例第29号。甲4。以下「本件情報公開条例」
という。)の規定に基づき,小平市選挙管理委員会に対し,本件住民投票にお
ける投票(別紙文書目録記載の各文書(以下「本件各文書」という。))の公
開の請求(以下「本件公開請求」という。)をしたのに対して,本件各文書に
は本件情報公開条例が定める非公開情報に該当する情報が記録されていると
して,本件各文書を公開しない旨の決定(以下「本件非公開決定」という。)
がされたことから,本件非公開決定の取消し及び本件各文書を公開する旨の決
定をすることの義務付けを求めた事案である。
1関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」に記載のとおりである(同別紙で定める略称等は,
以下においても用いることとする。)。
2前提事実(証拠等を掲げたもの以外は,当事者間に争いがないか,当事者に
おいて争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)当事者
ア原告らは,被告(小平市)の住民である。
イ被告は,本件情報公開条例2条1号の実施機関である小平市選挙管理委員会
の所属する普通地方公共団体である。
(2)本件住民投票の実施
被告においては,平成25年5月26日を投票日として,本件計画(東京都が
計画した小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線計画)につき,住民参加によ
り計画を見直すべきか,又は計画の見直しは必要ないかについて,市民の意向を
確認することを目的として,本件住民投票条例の規定に基づき,本件住民投票が
行われた。しかし,投票した者の総数が投票資格者の総数の2分の1に満たない
35.17%であったため,同条例13条の2の規定により,住民投票は成立し
ないものとされ,本件住民投票における合計5万1010人分の投票(本件各文
書)の開票は行われなかった。
(3)原告らによる本件公開請求
原告らは,平成25年7月26日付けで,本件情報公開条例の規定に基づき,
希望する公開の方法を写しの交付として,本件公開請求をした(甲1)。これに
対し,小平市選挙管理委員会は,同月29日付けで,本件各文書に記録されてい
る情報が,本件住民投票条例13条の2の規定の趣旨及び目的から公にすること
ができないと認められる情報であり,本件情報公開条例7条1号(法令秘情報)
に該当する旨を理由として,本件非公開決定をした(甲2)。
(4)本件訴えの提起
原告らは,平成25年8月8日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
3主たる争点及びこれに関する当事者の主張の要点
本件の主たる争点は,本件非公開決定の適法性であり,具体的には,本件各文書
に記録されている各情報(以下「本件情報」という。)が,本件情報公開条例7条
が定める非公開情報に該当するか否かが争われている。
これに関する当事者の主張の要点は,以下のとおりである。
(1)本件非公開決定の適法性について
(原告らの主張の要点)
本件各文書に記録されている本件情報は,以下のとおり,本件情報公開条例7
条1号及び2号本文に規定された非公開情報に該当せず,本件非公開決定は取消
しを免れない。
ア「知る権利」の保障と情報公開請求権について
(ア)憲法21条と「知る権利」
現代社会は,高度に組織化された情報社会であり,情報が,国家機関,マ
スメディア及び巨大な企業に集中し,独占的に管理されているため,国民は,
これらの国家機関等が一方的に管理伝達する情報の受け手でしかなくなっ
ている。国民がコミュニケーションの自由としての表現の自由を取り戻すた
めには,まず,これらの情報の独占を排し,あらゆる情報をコントロールさ
れることなく受け取る自由を確保しなければならない。
さらに,国民主権,民主政治の下では,主権者として政治の在り方を決定
すべき国民は,政治判断の資料となる多様な情報に接し,これによって政治
的な意思形成をなし,参政権を行使するのであるから,「知る権利」の保障
は,政治過程への参加を確保するために欠くことのできないものである。
したがって,「知る権利」は民主政治の確立に不可欠な,憲法上優越的な
地位を占める基本的人権である。「知る権利」が憲法21条によって保障さ
れた基本的人権であることは,判例によっても認められている。
(イ)市民的及び政治的自由に関する国際規約(以下「国際人権B規約」とい
う。)
19条2項と「知る権利」
世界人権宣言19条は,「すべて人は,意見及び表現の自由を享有する権
利を有する。この権利は,干渉を受けることなく自己の意見を持つ自由並び
にあらゆる手段により,また,国境を越えると否とにかかわりなく,情報及
び思想を求め,受け,及び伝える自由を含む。」としている。
また,同宣言を受けて成立し,昭和54年9月21日に日本国において国
内法的効力が生じた国際人権B規約19条2項は,「すべての者は,表現の
自由についての権利を有する。この権利には,口頭,手書き若しくは印刷,
芸術の形態又は自ら選択する他の方法により,国境とのかかわりなく,あら
ゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える自由を含む。」としており,
「知る権利」が表現の自由に含まれる基本的人権であることを明確に認めて
いる。
(ウ)地方自治の本旨と「知る権利」
本件情報公開条例1条において保障されている「市政情報の公開を求める
権利」は,小平市の市政の在り方を定める本件自治基本条例6条が小平市の
市民等に保障する「市政に関する情報を知る権利」,ひいては,憲法上の権
利として確立している国民の「知る権利」を具体的に情報公開請求権として
認めたものである。同条例1条には,何人にも市政情報の公開を求める権利
を保障することとともに,情報公開制度が小平市の説明責任を全うすること
を明確にするものであること,さらに,情報公開が地方自治の本旨に即した
市政の促進という目的に向けられた制度であることが明記されている。
同条の「地方自治の本旨」とは,憲法92条に由来する文言であり,団体
自治及び住民自治をその内容とする。すなわち,「地方自治の本旨」は,一
定の地域を基礎とする国から独立した団体(自治体等)を設け,この団体の
権限と責任において地域の行政を処理すること(団体自治),及び,各自治
体等における行政は,当該自治体等の住民の意思と責任とに基づいて処理さ
れること(住民自治)という2つの原則から成る。しかし,住民が十分な情
報を得られなければ,適切な意思決定を行うことは不可能である。
また,意思決定の結果に対して住民が責任を負うことは,当該意思決定が
十分な情報に基づいて行われたという手続的正義の保障の下において初め
て正当化される。つまり,「地方自治の本旨」の実現は,住民が,地方自治
体の持つあらゆる情報にアクセスすることができることを基礎として,初め
て可能となる。「知る権利」は,住民があらゆる情報にアクセスすることを
可能にする権利である。
したがって,「地方自治の本旨」の実現のために,「知る権利」の保障は
必要不可欠であって,その観点からも,「知る権利」を基本的人権として厳
格に保護すべきことが基礎付けられる。
(エ)情報公開請求権の意義及び「非公開情報」の解釈
以上のとおり,「知る権利」は,憲法21条及び国際人権B規約19条2
項(以下「憲法21条等」という。)によって保障された基本的人権であり,
「地方自治の本旨」の実現に不可欠な権利である。そして,情報公開請求権
は,法律,条例等によって,上記「知る権利」が国民及び住民の権利として
具体化されたものであるから,その内容,制限等については,憲法21条等
の趣旨に従って解釈されなければならない。
本件についても,本件情報公開条例5条によって具体化された市政情報の
公開請求権は,憲法21条等による保障を受け,その趣旨に従って解釈され
ねばならず,市政情報の公開請求権を制限する本件情報公開条例7条各号の
「非公開情報」を解釈するに当たっては,「非公開情報」が必要最小限にな
るような厳格な解釈が求められる。
イ本件各文書に記録されている本件情報が本件情報公開条例7条1号(法令秘
情報)に該当しないこと
(ア)本件情報公開条例7条1号の意義
本件情報公開条例7条1号は,「法令等の定めるところにより,公にする
ことができないと認められる情報」を非公開とすることができると定めてい
るところ,ここでいう「法令等」とは,法律,政令,府令,省令その他の国
の機関が定めた命令並びに条例及び規則をいう(甲6)。
また,「公にすることができないと認められる」のは,①「法令等の規定
が公にすることを明らかに禁止している場合」又は②「法令等の趣旨及び目
的から当然に公にすることができないと認められる場合」であると解釈され
る(甲6)。
本件各文書を公開できないとの明文規定は,法令等,すなわち,法令,政
令,条例のいずれにも存在しないから,本件情報が前記①に該当しないこと
は明らかであるので,本件各文書については,前記②に該当するか否かが問
題となるが,「知る権利」の保障の趣旨を踏まえて,非公開となる情報は必
要最小限になるように解釈されなければならないことは前記に述べたとお
りであるから,前記②に該当するといえるためには,少なくとも,当該情報
を公にすることができないと認められることが法律又は条例の当然解釈と
して是認できることが必要である。
(イ)本件住民投票条例13条の2の規定の趣旨から公開が禁止されるもの
ではないこと
本件住民投票は,本件住民投票条例13条の2に規定される成立要件を充
たさなかったため不成立となったが,以下のとおり,同条により,本件各文
書の公開が禁じられているとはいえない。
a本件住民投票の開票は,その成立が当然の前提ではなく,本件住民投票
が不成立の場合でも開票を行うことができること
本件住民投票は,投票した者の総数が投票資格者の総数の2分の1に満
たないときは,成立しないとされる(本件住民投票条例13条の2)。
しかし,本件住民投票の成立が,開票の当然の前提であるということは
できない。
すなわち,この規定の趣旨・目的は,住民投票の結果を市長が尊重し,
「市民の意思」として東京都及び国の関連機関に通知する(同条例15条)
ためには,当該住民投票について一定の高い投票率,いわば市民の「総意」
といえるほどの高い信頼性が必要であると考えられることから,投票率と
住民投票の成立という効果を結び付けたという点にある。しかし,本件住
民投票の本来の趣旨及び目的は,本件計画の見直しは必要ないかというこ
とについて,市民の意向を確認することにあるのであり(同条例1条),
上記の市長の義務の発生にとどまるものではない。そして,同条例及び本
件施行規則にも,本件住民投票が不成立の場合には開票を行わない旨の規
定は設けられていない(成立しなかった場合の告示事項についてだけ規定
があるが,これは直ちに「開票しない」ことを意味しない。本件施行規則
98条)ことからすれば,同条例13条の2の投票数要件を充足せず,同
条例15条に基づく市長に対する拘束力が発生しない場合であっても,同
条例の目的である1条に規定される「市民の意向」を,当該投票率の下で
確認するために,開票を行うことはできると解される。
被告は,議会審議での発言や市報(乙7)等の記載により,本件住民投
票が不成立の場合には開票しないことが市民に告知されていたと主張す
る。しかし,本件住民投票が不成立の場合に開票しないことは,本件住民
投票条例や本件施行規則に規定がないのみならず,投票日前の市議会で決
定も承認も得ていない。むしろ,投票率にもかかわらず,住民投票の結果
は開票し,また,必ず情報公開を行うべきであるとするのが議会の絶対的
な多数意見であった。
また,市民への周知についても,投票所入場券の記載,これに同封した
投票案内のちらし,投票所案内の掲示においても,投票率による開票の有
無については全く表記していなかった。市報(乙7)では,住民投票に関
する4頁にわたる記載の最終頁の末尾に,投票率が50%に満たない場合
には開票しないとの旨の3行の記載があるが,これをもって,市民に対す
る周知がされたとか,市民がこれを認識した上で投票を行ったと認めるこ
とはできない。
b本件住民投票条例における開票の可否と,本件情報が本件情報公開条例
上に規定される法令秘情報に該当するか否かとは,無関係であること
仮に本件住民投票が不成立となった場合には開票することができない
としても,そもそも本件各文書の開票と公開とは異なる概念であるから,
本件各文書を非公開とする根拠にはならない。すなわち,開票とは,選挙
における投票結果を集計する作業であり,選挙結果を確定させることを目
的として実施される。本件住民投票に係る開票については,本件住民投票
条例13条により,公職選挙法の規定が準用され,同法7章の「開票」(同
法61条から74条まで)において,開票管理者(61条),開票立会人
(62条),開票所の設置(63条),開票の場所及び日時の告示(64
条),開票日(65条)等が規定されており,かかる法定の手続に基づい
て実施されることになっている。
これに対し,本件各文書の公開は,本件情報公開条例5条において規定
される情報公開請求権を根拠とするものであり,「実施機関」(同条例2
条1号)が情報公開請求を受けて実施する(同条例7条)とされており,
その目的は,「地方自治の本旨に即した市政を推進すること」(同条例1
条)にあり,本件各文書の公開は,選挙の成否とは無関係に実施されるの
であるから,選挙結果を確定させることを目的とするものではない。
ましてや,本件情報公開条例に基づいて不成立となった本件住民投票に
係る投票済みの投票用紙の公開を請求することは,本件住民投票条例の趣
旨,目的である「市民の意向を確認する」に合致するもので,前記に述べ
たとおり憲法21条等の「知る権利」の保障に由来するものであり,実定
法上も,本件自治基本条例及び本件情報公開条例に基づく情報公開請求権
によって保障されているから,これを非公開とする明文規定が存在しない
にもかかわらず,非公開とするべき法的根拠はない。
また,住民投票が不成立の場合,自治体がその結果を秘匿しなければな
らないとの慣習は存在せず,投票済みの投票用紙に含まれる情報が,その
性質上当然に非公開とされるものであるともいえない。
なお,開票するか否かと,本件情報のデータを収集して市政に役立てる
こととは,別のことであり,開票しないとした場合であっても後者が「法
の枠内では可能である」こと(すなわち,本件情報は,本件住民投票が不
成立であるため開票しない場合であっても,法的には,市政を進めるため
に必要な情報として用いることのできる情報である市政情報(本件情報公
開条例2条2号)に該当すること)は,本件住民投票条例の改正案を審議
する小平市議会(平成25年4月開催の住民投票条例特別委員会)におい
て,被告側が行った答弁及び報告において明言されており,本件住民投票
条例の改正案は,これを前提として成立した。
以上に述べたことは,全国の他の自治体の住民投票条例の中には,住民
投票が不成立の場合であっても開票を行うと規定されたものも存在して
いること及びこれらの条例の制定に当たっての審議内容からも明らかで
ある(甲12の1から12の3まで,18,19,20の1及び2,21
の1及び2,22の1及び2,23)。すなわち,これらの住民投票条例
を定めた各自治体は,住民投票は,住民の意向(地域の世論)を把握する
ことを目的とするものであり,投票結果に示されている内容(情報)には,
対象となった事項に対する「住民の意思」又は「住民の意向」が示されて
いるという特徴があり,地域を対象とした大規模な「世論調査」という性
格をも有することに鑑み,住民投票が投票率要件を充足せず,不成立とな
った場合であっても,投票結果が情報公開条例に定める非公開情報に該当
しないことを前提とした上で,①住民投票は,地域の重要な課題について
市民の意思を確認するための制度であり,これは市民の財政的負担を伴う
ものであること,②成立要件を満たしたか否かは,市長に対する拘束力(尊
重義務)の点では違いはあるとしても,住民投票の結果を市民に対して公
開すべきことは,住民投票の制度目的から当然のことであり,投票率要件
を満たしたか否かにより区別されないこと,③投票率の高低にかかわらず,
市長が投票結果情報を市民に対して公開する責務を負っていることから,
開票は,この責務を効率的に全うし,個々の情報公開請求を待つまでもな
く,迅速に市民に情報を提供する手段として行うことを規定したのである。
この点において,上記各自治体の認識は共通しており,これは普遍的認識
であるといえるから,本件各文書についても同様のことがいえる。
被告は,本件公開請求は,実質的に開票請求に等しいから,公開は認め
られないと主張するが,本件住民投票の結果が公開され,市民の間で広く
共有されることにより,本件計画に対する住民投票に参加した市民の意向
が明らかになり,本件計画及び今後の都市計画にいかされ得るのであるか
ら,本件公開請求は,本件情報公開条例の目的(同条例1条)に即した「適
正な請求」であり,公開された情報を広く市民に公表することは,市政情
報を「適正に使用」するものである(同条例4条)。よって,本件各文書
が公開された場合,本件住民投票の結果が広く市民に対して公表され,開
票されたと同じことになるという理由で公開が禁止されるとの被告の主
張は,情報公開制度の目的を否定するものであって,本件情報が法令秘情
報に該当することの根拠にはならない。
c以上によれば,本件住民投票条例13条の2の規定は本件各文書の公開
を禁じているとはいえない。
(ウ)本件各文書の公開は投票の秘密(憲法15条4項)を侵害するものでは
ないこと
判例は,憲法15条4項の「投票の秘密」の意義について,「何人が何人
に投票したかの審理をすることは許されない」ことを意味する等としている
(最高裁昭和23年(れ)第1140号同24年4月6日大法廷判決・刑集
3巻4号456頁ほか参照)。
本件住民投票は,無記名の秘密投票であり(本件住民投票条例7条3項),
また,投票者は,投票用紙に印字された「住民参加により計画を見直す」及
び「計画の見直しは必要ない」の各選択肢の欄のいずれかに「○」の記号の
みを記載する方法により投票する(同条2項,本件施行規則28条1項及び
別記様式第1号)ものであるところ,上記判例に照らせば,投票済みの投票
用紙が公開されたとしても,「誰がいずれの欄に○印を記したか」の探索や
「いずれの欄に○印を記したか」の陳述を投票者に求めることとならない場
合には,憲法15条4項の規定,これを具体化した公職選挙法(46条4項,
52条,66条2項,226条2項),最高裁判所裁判官国民審査法(18
条),本件住民投票条例(7条3項)に違反し,また,本件情報公開条例7
条2号の規定に抵触することになるとはいえず,被告が公開を拒否すること
はできない。そして,本件公開請求は,「(特定の)投票者が,どちらの欄
に○印を付したか」を探索することを目的としておらず,本件各文書の記載
は上記のとおりであるから,そこからその筆跡を鑑定して投票者個人を特定
し,その投票内容とのつながりを探索することはできず,また,本件公開請
求に応じて交付を受ける本件各文書の写しから指紋を照合することなどあ
り得ないことは,客観的に明らかである。
被告は,記号投票制は,単に投票方法の問題であって,記号投票制が採用
されていることをもって,投票の秘密を侵害しないことの理由とすることは
できないと主張するが,秘密投票制の趣旨との関係では,自書式,記号式と
いった投票方法は全て同価値に位置付けられているのではなく,記号投票制
の採用も,単に投票方法の問題にとどまるわけではない。自書式に比して秘
密投票の趣旨に厳格に沿った投票方法である記号投票制が採用されている
限り,投票の秘密を害するおそれはない。
また,他事記載の存在については,本件住民投票条例10条1項3号にお
いて,「無効」とする旨が規定されているのであり,また,「無効」の投票
用紙の中に投票人の探索が可能となってしまうおそれがあるものが万一含
まれていたとしても,これらの投票用紙は,「容易に区分して除くことがで
き,かつ,区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることは
ない」のであるから,本件情報公開条例8条(市政情報の一部公開)により,
かかる内容の「無効」の投票用紙のみを非公開とすれば足りる。
なお,原告らは,本件住民投票条例1条に規定された「市民の意向を確認」
するための情報公開を請求しているのであって,当該情報は本件各文書の全
体に集積されており,個々の投票用紙の取得を求めているわけでない。個々
の投票用紙には,各投票者の氏名や投票内容はもとより,いかなる情報も存
在しない。
したがって,本件各文書を公開しても,投票の秘密を侵害することはない。
(エ)本件自治基本条例,本件情報公開条例及び本件住民投票条例の趣旨から
すれば,本件各文書については積極的な公開が要請され,仮に「知る権利」
と「対立する権利・利益」との衡量を行った場合であっても,「知る権利」
が圧倒的に重いこと
本件情報について公開が要請されるか否かは,本件住民投票条例のみなら
ず,自治体法規の頂点に立つ本件自治基本条例及び本件情報公開条例の具体
的規定の趣旨及び目的を総合的に勘案した上で判断されるものであるとこ
ろ,これらの要素を検討すれば,仮に「知る権利」と「対立する権利・利益」
との衡量を行った場合であっても,「知る権利」が圧倒的に重く,本件情報
がむしろ積極的に公開されるべき情報であることは明らかである。
a本件自治基本条例について
本件自治基本条例は,地方自治体の在り方を定める,いわば憲法という
べきものであることは,同条例1条の規定からも明らかである。また,同
条例37条は,同条例が,「小平市の自治の基本理念と進め方を定めるも
のであり,他の条例,規則等の制定又は改廃に当たっては,この条例の趣
旨を尊重し,この条例との整合を図るものとする。」と規定している。
次に,市政における市民の役割については,市民が,議会や市長とも互
いに協力して積極的にまちづくりに取り組む主体であることを,同条例2
条1項が規定している。さらに,同条例は,5条1項を重ねて設けて,市
政へ市民が参加をする権利を強調しているところ,同条にいう「参加」と
は,「市政の計画,実施及び評価のそれぞれの過程において,執行機関に
対し積極的に意見等を表明すること」である(同条例3条5号)。
上記の理念に基づいて,市政への市民の参加を具体的に保障するために,
同条例は,10条において,市民の参加の機会の保障と執行機関の誠実な
処理義務を定めている。また,14条において,市民投票制度を定め,特
に同条2項において,「市は,市民投票が実施された場合は,その結果を
尊重しなければならない」と規定する。
さらに,市民が市政に参加するためには,その前提として市政に関する
情報や他の市民の意向を十分に知る機会を得られることが不可欠である。
この点についても,同条例は,「知る権利」に関して独立の条項を設け,
6条において,「市民等は,市政に関する情報を知る権利を有する。」こ
とを明言している。
b本件住民投票条例について
本件住民投票条例の目的は,本件計画について,「住民参加により計画
を見直すべきか,又は計画の見直しは必要ないかについて,市民の意向を
確認すること」(同条例1条)であり,この目的を達成するために,本件
住民投票が実施される(同条例2条)。
本件住民投票条例は,本件自治基本条例を基に制定されているから,そ
の解釈運用に当たっては,本件自治基本条例の前記各規定の趣旨が最大限
尊重されなければならない。
すなわち,上記の本件住民投票条例は,議会や市長と協力して積極的に
まちづくりに取り組む主体である市民が,「市政に参加をする権利」(本
件自治基本条例3条5号,5条)を具体的に行使する趣旨で定められた条
例であると解されるし,本件自治基本条例の「知る権利」をも尊重して制
定されているはずである。
また,本件住民投票条例2条に基づいて行われた本件住民投票は,本件
計画に係る道路が東京都の管轄下にある都道であることを前提としても,
道路の設置やその在り方いかんによっては,「市民生活に重大な影響を及
ぼす」ことは経験上明らかであることから,これが市政に関する重要な事
項であることを認めて市民の意向を広く確認するために実施されたもの
である。
加えて,本件各文書には,本件計画に係る5万1010人の市民の意向
が反映されており,被告は,本件住民投票を実施して本件各文書を収集す
るために,約3150万円という巨額の費用及び膨大な労力を投じた。
したがって,本件住民投票の結果は,5万人を超える広範な市民の意見
の集積であり,市民,議会及び市長が共有するべき公共の財産にほかなら
ない。
さらに,後掲の本件住民投票条例の制定経緯,本件住民投票が,単に小
平市の問題であるだけでなく,広く日本の民主主義の在り方を問う意義を
有するものとして,全国的に大きな関心を呼び起こしたこと(甲16の1
から16の9まで),他の自治体(甲12の1から12の3まで,18,
19,20の1及び2,21の1及び2,22の1及び2,23)及び海
外の制度(甲13)との比較からしても,本件各文書は公開されるべきで
ある。
また,本件住民投票条例13条の2が,地域の課題に関する投票率(市
長や市議会議員の選挙)の実情を考慮することなく,過大な投票率を成立
要件として課すことには問題があり,特に本件のようないわゆる非拘束型
の住民投票は,地域における大規模な世論調査の性格を有し,民意を汲む
ための制度であるから,その投票結果は,少なくとも情報公開請求に基づ
いて公開され,市民と自治体の共有財産として,広く市民,議会及び市長
が共有し,今後の課題解決にいかすべきことは当然である。
以上によれば,本件について,「知る権利」と「対立する権利・利益」
との衡量を行った場合であっても,「知る権利」が圧倒的に重く,かつ,
その重要性は高い。すなわち,本件各文書を公表し,市民が共有する情報
として今後の熟議にいかしていくことは,地方自治の本旨(憲法92条)
の基盤である住民自治の原則を具体化する上で,高い意義を有する一方,
前記に述べたとおり,本件各文書が公開されることによって被告が被る具
体的な損失は,民主政の下で客観的に存在しない。
c被告は,本件住民投票を不成立とするとの目的をもったボイコット行動
者の動向も,市民の意向であるから,これらを含めて投票数,投票率等を
確認,公表すれば「市民の意向」の確認,公表を済ませたことになり,あ
えて,原告らが主張する投票結果を公表しなくても,必要な公開は既に済
ませていると主張するものと解されるが,かかる主張は,本件住民投票条
例を公布し,同条例に基づき本件住民投票の執行に責任を負って推進した
はずの被告のものとしては到底理解できるものではない。また,本件住民
投票により確認される市民の意向とは,本件計画について住民参加により
見直しを行うか否かに関する意向を意味するのであるから,投票数,投票
率のみの告示によって,既に「市民の意向」が確認されているとの被告の
主張は失当である。
d以上によれば,「知る権利」と対立する投票の秘密という他の権利・利
益と比較衡量したとしても,本件各文書の公開が禁止されるという解釈を
本件住民投票条例から導くことはできず,むしろ,住民の「知る権利」を
尊重する観点から,本件各文書の公開が積極的に求められている。
(オ)以上によれば,本件各文書を公にすることができないと認められるこ
とが,本件住民投票条例の「当然解釈として是認できる」とはいえず,本
件住民投票条例,本件自治基本条例及び本件情報公開条例の趣旨,目的及
び具体的規定を総合的に勘案すると,本件各文書は,むしろ公開されるべ
き情報であることは明らかである。すなわち,本件住民投票のように個別
の問題に関して有権者の35%を超える5万人以上の市民の意向が表明さ
れた文書は,小平市政の歴史において,かつて存在したことがないほど貴
重な情報である。本件住民投票条例に定められた「目的」に忠実に従って
公開し,市民と市政がともに「市民の意向」を確認し,これを共有財産と
することは,「住民自治」に基づく「地方自治の本旨」(憲法92条)に
沿う。したがって,本件各文書に記録されている本件情報は,本件情報公
開条例7条1号における非公開情報に該当しない。
ウ本件情報は本件情報公開条例7条2号本文(個人情報)にも該当しないこ

本件各文書から,「特定の個人を識別すること」はできず,本件各文書を
公開しても投票の秘密を侵害することにはならないことは,前記に述べたと
おりであり,そうである以上,本件各文書を公開した場合に,「個人の権利
利益を害するおそれ」もない。本件各文書に記録されている本件情報は,本
件情報公開条例7条2号本文の非公開情報には該当しない。
エ本件非公開決定は地方自治法14条2項の規定に違反していること
地方自治法14条2項は,「普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を
制限するには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければ
ならない。」と規定している。しかし,本件住民投票条例には,投票結果につ
いて開票を行わない旨の規定がないことはもとより,投票済みの投票用紙(本
件各文書)に対する情報公開を制限ないし禁止する規定も存在しない。したが
って,本件非公開決定は,条例の規定に基づくことなく,原告らの情報公開請
求権(知る権利)を制限したものであって,地方自治法14条2項の規定にも
違反し,違法である。
なお,被告は,本件住民投票が不成立の場合に開票結果が本件施行規則にお
ける告示事項とされていないことを根拠に,開票が禁止されると主張するが,
開票を禁止することは,「知る権利」(本件自治基本条例6条,本件情報公開
条例1条)及び情報公開請求権(同条例5条)という「権利を制限する」こと
に当たる。したがって,住民投票不成立の場合に開票を禁止するのであれば,
条例において,その旨の規定を設けなければならないところ,本件住民投票が
不成立の場合に本件各文書の開票を禁止する旨の明文の規定は,本件住民投票
条例には存在しない。したがって,上記告示事項の規定が,本件各文書の公開
を禁止する根拠となるものではない。
オ以上によれば,本件各文書に記録されている本件情報は本件情報公開条例7
条1号及び2号本文に規定される非公開情報に該当しないから,本件非公開決
定は不適法である。
(被告の主張の要点)
ア本件情報が本件情報公開条例7条1号(法令秘情報)に該当すること
(ア)憲法15条4項前段(投票の秘密)並びに本件住民投票条例7条3
項及び13条の2の規定の趣旨から本件各文書の公開は許されないこと
原告らは,本件訴えの根拠として,「知る権利」が憲法上の要請であ
ることを掲げるが,本件において,投票済みの投票用紙を開示することは,
秘密投票の原則について定める本件住民投票条例7条3項の規定により採
用され,やはり憲法上保障される「投票の秘密」を侵害することになるから,
許されない。
a憲法15条4項前段が保障する投票の秘密とは,選挙において,投
票と投票者とのつながりが投票者自身以外の者に知られないようにす
るという原則をいうものである。投票の秘密の保障は,選挙人が自己
の自由な判断に従って投票できるようにするための必須の条件を成し
ており,近代の選挙法において,普通選挙,平等選挙,直接選挙と並
ぶ基本原則ともいうべき重要な位置を占めている。我が国の憲法も,
これを明文で保障し,これを受けて,公職選挙法は,無記名投票の原
則(46条4項),投票用紙公給主義(45条,68条),何人も投
票した被選挙人の氏名等を陳述する義務のないこと(52条),混同
開票主義(66条2項)などの規定を設けるとともに,公権力による
投票の秘密の侵害に対して罰則を設けているところである(226条
2項,227条)。このように,投票の秘密は,憲法において明文で
保障されている制度であって,選挙人の自由な意思による投票の確保
を目的とし,代表民主制を直接支えるものである。
この秘密投票の原則が,本件住民投票にも適用されることは,本件
住民投票条例7条3項が秘密投票の原則を適用することを明示してい
ること,さらに,同条例10条1項3号が,他事記載がされた投票を
無効とする旨を規定していることからも明らかである。
このように,本件住民投票条例は,投票を公開することを禁じてい
ることが明らかである。
b本件情報公開請求は,本件住民投票における個々の投票済みの投票用
紙の公開を求めるものであって,実質的には,被告に対し,「開票」
そのものを求めるものである。しかし,本件住民投票条例は,住民投
票が不成立の場合,開票しないことを前提として本件住民投票条例1
3条の2が規定されており,本件施行規則においても,本件住民投票
が不成立の場合の開票手続規定は存在せず,同規則98条において,
投票日,投票資格を有する者の総数,投票した者の総数,棄権者の数
及び住民投票の不成立の各事項だけを告示するものと定められている。
法令上の根拠も,開票するための手続規定も存在しないのに,本件情
報公開請求を認めるとすれば,選挙管理委員会の関与もなく住民の投
票用紙を開票するのと同じ結果となり,憲法上の要請でもある上記の
投票の秘密を侵すことになり許されない。
さらにいえば,本件情報公開請求は,個々の投票済みの投票用紙の
開示を請求するものであるところ,開票される場合ですら,投票用紙
そのものが公開されることはなく,単なる数字上の集計結果のみが公
表されるにすぎない。これも,憲法上の要請である投票の秘密(憲法
15条4項前段)の当然の帰結である。
数字上の結果を開示する「開票」すら禁じられている場合に,個々
の投票済みの投票用紙が「公開」されることは,全く想定されていな
いものであり,なおさら禁じられているといえる。
なお,成立要件を含めた条例改正を行った平成25年4月の市議会
臨時会では「成立しない場合は開票しない」ことを前提に,最終的に
特別委員会において可決すべきものとして審査され,本会議において
も可決されている。また,被告は,本件住民投票の実施前に,市報(乙
7)や市のホームページにおいて,本件住民投票が不成立の場合には開票
はしない旨を市民に告知している。
c本件住民投票で無記名制及び記号投票制が採られていることを投票
を公開することの理由付けとしている原告らの主張は,不合理である。
すなわち,投票の無記名制は,憲法上の原則である投票の秘密(憲法
15条4項)の具体化として規定されたものであって,投票の無記名
制を理由に,投票の秘密が侵害されないと主張するのは背理であるし,
また,記号投票制が採用されているから,投票の秘密が侵害されない
ともいえない。
例えば,最高裁判所裁判官国民投票法においては,本件住民投票条
例と同様に,記号投票制が採られているが,別途投票の秘密が規定さ
れている(最高裁判所国民審査法18条「何人も,審査人のした審査
の投票の内容を陳述する義務を負わない。」)。つまり,記号投票制
は,単に投票方法の問題であって,記号投票制が採用されていること
をもって,投票の秘密を侵害しないことの理由とすることはできない。
本件住民投票条例も,記号投票方式を採用するとともに(本件住民
投票条例7条2項,本件施行規則28条1項),秘密投票の原則を採
用する旨明示し(同条例7条3項),他事記載がなされた票を無効と
する(同条例10条1項3号)などの規定を設けている。
また,投票用紙の中にはいわゆる他事記載がなされている投票用紙
が存在し,その記載の内容によっては,実際に投票人の探索が可能に
なってしまう可能性がある。同条例及び同規則は,このような事態を
防止するために,投票用紙の開票方法等を詳細に定めている。
本件各文書についても投票人の探索のおそれが全くないとはいえな
い(皆無ではない)以上,投票用紙の公開は認めないというのが,憲
法が定める秘密投票の原則にほかならない。したがって,本件各文書
に記録されている本件情報は,同条例7条1号の非公開情報に該当す
る。
(イ)a上記のとおり,住民投票の開票は,住民投票の成立が当然の前提
となるのであり,当該条例で住民投票が不成立の場合でも開票をする
という規定を定めた場合に限って,例外的に手続にのっとって開票で
きるにすぎない。むしろ,不成立の場合は,開票規定がない以上,開
票は禁止されていると考えるべきであり,禁止を解除するためには,
条例によって不成立の場合にも開票するとの特段の定めが必要なので
あり,だからこそ,原告らが指摘する住民投票が不成立の場合にも開
票しようと考えた他の自治体は,あえて,条例で「住民投票が不成立
の場合でも開票する」旨の規定を設けたのである。
実質的にも,「開票」とは,選挙管理委員会という独立した執行機
関が厳格な手続において実施するものであり,情報公開制度により容
易に個々の投票済みの投票用紙の取得が可能となれば,かかる選挙管
理委員会を設けた趣旨が没却されることになる。さらに言えば,個々
の投票済みの投票用紙が公開されることにより,条例にのっとって施
行された住民投票の前提条件を住民投票執行後に覆すことになり,住
民投票制度及び選挙管理委員会に対する信頼を著しく損なうことにな
って,今後の住民投票の実施にも重大な影響を及ぼすことになりかね
ない。
また,本件住民投票条例の市議会の審議経過において,副市長が本
件住民投票の結果のデータの収集の可能性に言及しているが,これは,
個々の投票済みの投票用紙について情報公開制度を利用した取得がで
きるか否かについて言及したわけではない。
b原告らは,本件住民投票条例13条の2の規定の趣旨,目的について
るる述べるが,本件住民投票条例は,原告らが主体となって,条例制定に
向け働きかけた結果,小平市議会において適正な手続によって制定された
条例(修正も含めて)である。そして,本件住民投票条例は,住民投票の
成立要件を定めている一方で,原告らが指摘する他の自治体の住民投票条
例と異なり,あえて,住民投票が不成立となった場合における開票の規定
を設けていないのである。有権者としては,住民投票を不成立とするため,
投票しないという行動をとることによって意思表示する場合も,当然あり
得ることである。本件住民投票条例に基づいて実施された本件住民投票が
成立要件を満たさなかったことは,まさに小平市の住民の意思を反映した
結果である。本件各文書は,成立要件すら満たさない一部の投票した者の
意思のみを反映したものにすぎず,原告らが主張するような小平市の市民
の意向が集積した情報とまではいえない。
「知る権利」が憲法21条に由来する重要な権利であるとしても,それ
と対立する別の権利や利益があれば,それが制約される場合があるところ,
本件各文書の公開により保障される利益は,公共の利益に基づくものでは
なく,憲法上の要請である「投票の秘密」を侵してまで,原告らに対し,
本件各文書を公開すべき理由も必要もない。
(ウ)以上によれば,本件各文書に記録されている情報は,本件情報公開
条例7条1号の非公開情報(法令秘情報)に該当する。
イ本件情報は本件情報公開条例7条2号本文(個人情報)にも該当すること
前記アで述べたところによれば,本件情報は,本件情報公開条例7条2号
本文(個人情報)にも該当する。
ウ以上によれば,本件各文書に記録されている本件情報は本件情報公開条例7
条1号及び2号本文に規定される非公開情報に該当するから,本件非公開決定
は適法である。
(2)義務付けの請求について
(原告らの主張の要点)
ア本件公開請求は,本件情報公開条例5条に基づいてされたものであるから,
「法令に基づく申請」(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)に当たる。そ
して,本件情報が情報公開条例7条1号及び2号本文に該当しないことは,前
記(1)に述べたとおりであり,加えて,本件情報は,同条3号から7号までに
おいて規定される非公開情報にも該当しない。
イ以上により,本件各文書に記録されている本件情報は,本件情報公開条例7
条各号に規定される非公開情報に該当しない。そして,同条のいわゆる柱書き
は,非公開情報に該当しない市政情報の公開を被告に義務付けているから,被
告が本件情報を公開しなければならないことは,根拠となる法令の規定から明
らかである。
したがって,被告は,本件各文書を公開する旨の決定を行う義務を負う。
(被告の主張の要点)
争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
(1)本件計画の概要(乙7,弁論の全趣旨)
ア府中所沢・鎌倉街道線は,町田市αから,多摩市,府中市,国分寺市及び小
平市を経由して,東村山市βに至る延長約27㎞の骨格幹線道路であり,東京
都が重点的に整備を進めているいわゆる多摩南北主要5路線の一つである。
東京都の都市計画である本件計画は,府中所沢線のうち五日市街道(国分寺
市γ)から青梅街道(小平市δ)までの約1.4kmの区間(以下「本件事業
区間」という。)における標準幅員36m(往復4車線)の平面構造の道路(以
下「本件道路」という。)の整備に関する東京都を施行者とする都市計画事業
に係るものである。
府中所沢線では,府中市内,小平市内の青梅街道以北及び東村山市内の新青
梅街道以南が既に完成しており,国分寺市内の五日市街道以南が現在事業中と
なっているが,本件事業区間については,町田市から東村山市の間で唯一現道
がなく未着手となっている。
イ東京都においては,平成22年から,本件事業区間に係る事業について,環
境影響評価の手続と同時に,環境施設帯を設置するために本件事業区間の一部
について計画幅員を拡幅する都市計画の変更の手続を進め,環境影響評価につ
いては,平成24年6月に環境影響評価審議会の答申がされ,同年12月に評
価書の縦覧等がされた。また,都市計画の変更については,同月に都市計画の
変更の決定がされた。
ウ一方,被告においては,平成22年8月に地域住民の意見を聴く地域懇談
会を開催し,平成23年12月には小平市議会が本件事業区間に係る話合い
の場の設置についての請願を採択し,平成24年4月及び5月に地域住民等
の間で話し合う「小平3・2・8号線まちづくりワークショップ」を開催し,
そこでの意見を集約して東京都に伝え,また,東京都からの都市計画の案に
ついての意見の照会に対して,小平市都市計画審議会の答申を得た上で,同
年9月に市として妥当である旨の意見を回答した。
被告においては,本件道路について,「小平市都市計画マスタープラン」
等において,都市の構造上の骨格となる道路として位置付け,主要幹線道路
に分類して,都市の骨格として通過交通を円滑に処理し,災害時における避
難路,延焼遮断帯などの役割のほかに,物流を促進し国内経済を活性化させ,
また,都市景観を形成するなど,社会的に重要な機能及び役割を果たすもの
としている。
(2)本件住民投票条例の制定に至る経緯(乙7,弁論の全趣旨)
ア小平市議会議員等の選挙権を有する者で,本件計画の見直しの是非について
小平市民の意向を確認することを目的とした住民投票条例を制定することを
請求するものら(原告らを含む。以下「本件条例制定請求者ら」という。)の
代表者は,平成25年2月14日,地方自治法74条1項の規定に基づき,上
記の選挙権を有する者の50分の1以上の者の連署(有効署名数7183筆)
をもって,小平市長に対し,本件住民投票条例の制定の請求(以下「本件住民
投票条例制定の請求」という。)をした。
小平市長に提出された条例制定請求書中の「請求の要旨」には,①本件計画
には,小平市の貴重な緑である小平中央公園の雑木林の約半分を消失させ,多
摩川上水遊歩道を36mの幅で分断し,約220戸を立ち退かせ,250億円
もの予算を使うといった問題点があること,②今日まで多くの市民団体や個人
がこの計画の見直しを求めているが,その声は全く反映されていないこと,③
小平市は,東京都の事業であることを理由に,本件計画について市民に周知し,
意見を求めることに消極的であること,④本件条例制定請求者らは,行政の上
記のような姿勢に疑問を感じ,直接的な影響を受ける小平市民の意見を計画に
反映させるために,計画の見直しの必要性について問う住民投票条例の制定を
直接請求するものであること等の記載があった。
イ小平市長は,平成25年3月1日,地方自治法74条3項の規定に基づき,
平成25年3月小平市議会定例会に,府中所沢・鎌倉街道線全体計画の中の一
部である小平市のみが本件計画の見直しについて住民投票に付することは適
当ではなく,法令に基づいた手続が完了している現状で改めて計画の見直しの
必要性を問うこと,本件計画について法的拘束力のない住民投票を事業の施行
者ではない小平市が実施すること等もいずれも適当ではないとの理由により,
小平市で住民投票を行うことは東京都の広域的な視点での道路整備事業に支
障を来しかねないことから,本案は適当ではない旨の意見を付けて,本件住民
投票条例制定の請求を付議した。
ウ前記イのとおりの付議に係る本件住民投票条例の案は,平成25年3月6日,
小平市議会の住民投票条例特別委員会において可決され,同月27日,小平市
議会においてもその一部を修正する議案とともに可決され,同年4月16日,
本件住民投票条例の公布及び施行がされた。また,本件住民投票の投票日につ
いては,同年5月26日と定められた。
(3)本件住民投票条例の改正の経緯
ア小平市長による本件住民投票条例の一部を改正する条例案の提出等(甲10)
小平市長は,平成25年4月24日,平成25年4月小平市議会臨時会(以
下「本件臨時会」という。)を招集し,本件住民投票条例に住民投票の成立の
要件に関する13条の2の規定を加え,関連する規定について整理すること等
を内容とする本件住民投票条例の一部を改正する条例案(以下「本件修正案」
という。)に係る議案を提出した。
小平市長及び副市長は,本件臨時会において,①本件修正案で13条の2の
規定を追加するものとした理由は,住民投票の結果に対する信頼性を高めるた
め,投票した者の総数が投票資格者の総数の2分の1に満たないときは住民投
票は成立しないものとするとの住民投票の成立の要件に関する規定を加える
ものである旨,②上記の規定の追加に伴い従前の14条の規定のうち「開票を
行い」との文言を削除するものとした理由は,住民投票が成立しなかった場合
に,開票を行うといったことは,本来あり得ないことであると考えているため
である旨,③改正後の15条の規定による東京都等への通知については,本件
住民投票が成立した場合は,投票率,投票者数,有効投票数,住民投票が成立
したことに加え,過半を得た意見の投票数,反対意見の投票数という投票結果
までが対象となるが,成立しなかった場合については,上記のような投票結果
を通知することは一切ない旨等の説明等をした。
本件臨時会においては,13人の委員をもって構成する住民投票条例特別委
員会(以下「本件特別委員会」という。)を設置し,これに上記の議案を付託
して審査させることとされた。
イ本件特別委員会における審査(甲11)
本件特別委員会においては,平成25年4月24日,本件修正案について審
査がされた。
同委員会における審査において,副市長,参事等は,①住民投票の成立の要
件を規定する趣旨は,市長には,本件住民投票条例15条の規定により,本件
住民投票の結果の尊重義務として東京都及び国の関連機関への通知義務が発
生することから,その結果がそれなりに重みを持ち市として責任を持って回答
できるようなものとなるようにするため,また,住民投票において投票をしな
かった住民に対しても住民投票における投票結果に対して信頼性を持たせる
ため,一定の基準を設け投票結果の信頼性を高める必要があることによる旨,
②本件修正案は,本件住民投票が成立しなかった場合には開票を行わないとい
う考え方で提出している旨,③その趣旨については,仮に住民投票が成立しな
かった場合に開票を行うとすると,低い投票率であっても投票結果は明らかに
なることから,実質的に成立したことと大差のないことになってしまい,住民
投票の信頼性を高めることにつながらないからである旨,④本件修正案のうち
13条の2の規定の立案に当たっては,いわゆる常設型の住民投票の制度を設
ける条例を制定している地方公共団体42例のうち,約7割に当たる29例に
おいて住民投票の成立の要件が定められており,うち28例の要件の内容は上
記の規定と同様のものであり,住民投票が成立しなかった場合にも開票を行う
ものとする例は4例であったことを参考とした旨等の説明等をした。
また,上記②の考え方の根拠としては,住民投票として成立しないものにつ
いては開票を行う必要もないという解釈になる旨が説明され,また,本件修正
案において住民投票が成立しなかった場合には開票を行わないとの規定を設
けなかった理由についての質疑に対し,13条の2として住民投票の成立の要
件に関する規定を設けたため,それに付随して従前の14条の規定のうち「開
票を行い」というところが不要になるのでこれを削るということと併せて,住
民投票が成立すれば開票を行うということ自体については,13条の2で基本
的なところは規定しているため,重複する表現は,今回,住民投票の成立の要
件を設けたことにより整理したものである旨の答弁がされた。
住民投票が成立しなかった場合の投票の取扱いについて,副市長は,法令上,
住民投票が成立しない場合には開票を行わないが,選挙管理委員会から投票を
封印をして受け取った後は,事務上の都合として,選挙管理委員会の立会いの
下でそのデータを収集することは,法の枠内では可能であるということは確認
した旨を答弁したが,上記の答弁の内容について小平市長の確認を取ること及
び本件修正案につき住民投票が成立しなくても開票を行って公表すると解釈
する余地があるかを明らかにすることを委員から求められ,20分間余りの休
憩の後,住民投票が「不成立の場合は開票しない,したがいましてデータの利
用はしないということで,市長のほうの確認がとれました」旨を答弁した。
その後,討論がされ,本件修正案について採決がされたが,可否同数であり,
委員長の裁決により可決された。
ウ本件臨時会における議決(甲10)
本件修正案は,本件特別委員会における審査の終了後,引き続き本件臨時会
で議題とされ,討論がされた。
討論においては,本件修正案に反対の立場の議員からも賛成の立場の議員か
らも,住民投票の成立の要件を設けることにより,住民投票が成立しなかった
場合は,開票は行われないこととなるという理解を前提に,発言があり,その
中には,このことに反対するものもあった。
討論の後,本件修正案について採決がされたが,可否同数であり,議長の裁
決により可決された。
なお,このようにして成立した条例(平成25年小平市条例第14号)は,
同年4月25日に公布され,同日から施行された。
エ本件施行規則の公布及び施行等
平成25年5月2日,上記ウのとおり改正された本件住民投票条例の施行に
関し必要な事項について,同条例16条の規定による委任に基づき,本件施行
規則が制定されて公布され,同日から施行された(甲8,乙6)。
なお,同月5日付けの被告の市報には,本件住民投票条例の概要等について
紹介する記事が掲載され,その中には,「投票率が50%に満たないときは,
住民投票が成立しないので,開票を行いません。」との記載があった(乙7)。
(4)ア平成25年5月26日,本件住民投票条例の規定に基づき,本件住民投票
が行われた。しかし,投票した者の総数が投票資格者の総数の2分の1に満た
ない35.17%であったため,同条例13条の2の規定により,住民投票は
成立しないものとされ,本件住民投票における合計5万1010人分の投票
(本件各文書)の開票は行われなかった(前提事実(2))。
小平市選挙管理委員会は,同日,本件住民投票の開票を行わない旨を小平市
長及び小平市議会議長に通知するとともに,同日,本件施行規則98条の規定
により,投票日,投票資格を有する者の総数,投票した者の総数,棄権者の数
及び住民投票の不成立の各事項を告示した(乙5)。
イ小平市選挙管理委員会は,平成25年5月27日,本件各文書を投票箱から
保存箱に移した上で封印をした(乙4,5)。
(5)「A」による本件各文書の公開の請求
アいわゆる市民団体であり,原告らが共同代表を務める「A」は,平成25年
5月27日付けで,本件情報公開条例の規定に基づき,小平市選挙管理委員会
に対し,本件各文書の公開を請求し,これに対して,小平市選挙管理委員会は,
同年6月2日付けで,本件各文書に記録されている情報が,本件住民投票条例
13条の2の規定の趣旨及び目的から公にすることができないと認められる
情報であり,本件情報公開条例7条1号(法令秘情報)に該当する旨を理由と
して,これらを公開しない旨の決定をした(乙1,2)。
イAは,平成25年6月10日,前記アの決定について異議申立てをした(争
いなし)。
ウ小平市選挙管理委員会は,平成25年6月11日付けで,本件情報公開条例
18条の規定に基づき,小平市情報公開・個人情報保護審査会に対し,諮問を
し,同審査会は,同月29日付けで,小平市選挙管理委員会に対し,前記アの
決定は妥当である旨の答申をした(争いなし)。
(6)原告らによる本件公開請求等
原告らは,平成25年7月26日付けで,本件公開請求をし,小平市選挙管理
委員会は,同月29日付けで,本件非公開決定をした(前提事実(3))。
2判断
(1)本件非公開決定の適法性について
ア本件情報公開条例7条の柱書きは,実施機関は,公開請求があったときは,
公開請求に係る市政情報に同条各号のいずれかに該当する情報(非公開情報)
が記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該市政情報を公開しなけ
ればならない旨を定めているところ,同条1号は,「法令等の定めるところに
より,公にすることができないと認められる情報」を上記の非公開情報とする
旨を定めている。
そして,上記の規定の文言等に照らせば,上記の「法令等」とは,法律,政
令,府令,省令その他国の機関が定めた命令並びに被告の条例及び規則をいい,
「公にすることができないと認められる」とは,①法令等の規定が公にするこ
とを明らかに禁止している場合,②法令等の趣旨及び目的から当然に公にする
ことができないと認められる場合等をいうものと解するのが相当である(甲6
参照)。
イ本件公開請求の対象は,本件住民投票における投票であるところ,本件住民
投票条例は,①住民投票が成立しないものとされる場合には開票を行わな
いものとするとともに,②「住民投票は,1人1票の秘密投票とする。」
(同条例7条3項)と定めている。
上記の①の点について,原告らは,本件住民投票が成立しないものとさ
れる場合にも開票を行うことは許される旨を主張するが,ⅰ本件住民投票
条例及び同条例16条の規定による委任に基づき定められた本件施行規則
は,住民投票は投票した者の総数が投票資格者の総数の2分の1に満たな
いときは成立しないものとするとした上で(同条例13条の2),小平市
選挙管理委員会は投票が確定したときは直ちにこれを告示する等とし(同
条例14条),住民投票が成立しなかったときの上記の告示の内容につい
ては,投票日,投票資格を有する者の総数,投票した者の総数,棄権者の
数等の開票を行うことなく把握することのできる事項に限るものとしてい
ること(同規則98条ただし書),ⅱ上記の各規定のうち,同条例13条
の2及び14条の規定に係る改正の経緯は,前記1(3)に認定したとおりで
あり,上記の改正については,本件住民投票が成立しないものとされる場
合には開票を行わないものとするとの内容のものであるとの理解の下に小
平市議会において所要の議決がされたもので,上記の本件施行規則の規定
は,このような改正がされたことを前提として定められたものであること,
ⅲ本件住民投票の投票日に先立って,被告の市報においても,「投票率が
50%に満たないときは,住民投票が成立しないので,開票を行いません。」
との記載を含む広報がされていたこと(前記1(3)エ)からすると,上記の
各規定の趣旨とするところについては,上記の①に述べたように解するの
が相当であり,これとは異なる原告らの主張は採用することができない。
その上で,上記の②の点については,同条例7条3項が本件住民投票に
つき秘密投票とする旨を定めたのは,一定の公職の選挙における投票につ
き憲法15条4項前段が規定するのと同様に,本件住民投票の投票人が自
由な意思で投票することができ,本件住民投票が公正に行われることを保
障する趣旨に出たものと解される(なお,最高裁昭和23年(オ)第8号
同年6月1日第三小法廷判決・民集2巻7号125頁ほか参照)。そして,
同条例及び同規則は,投票は点字によるものを除き所定の投票用紙を用い
て無記名で「住民参加により計画を見直す」又は「計画の見直しは必要な
い」に係る欄のいずれかに○の記号を記載してする方法によるものとし(同
条例7条2項,同規則28条1項及び別記様式第1号。なお,点字による
投票にあっては,所定の投票用紙を用いて定められた欄に「住民参加によ
り計画を見直す」又は「計画の見直しは必要ない」と点字により記載する
方法によるものとしている(同条例7条4項,同規則33条1項及び別記
様式第2号)。),所定の投票用紙を用いない投票や上記に述べたところ
以外の他事を記載した投票等は無効とするものとした上で(同条例10条
1項1号から3号まで及び2項1号から3号まで),何人も投票人のした
投票の内容を陳述する義務はないとするほか(同規則65条),住民投票
の投票及び開票に関しては公職選挙法等の規定を準用するものとするとし
(同条例13条),同規則18条以下の規定において同法等の規定の例に
ならっていわゆる混同開票(同規則85条3項)等を含む詳細かつ厳格な
手続を定め,投票が確定した場合に告示等をする事項については,開票が
行われたときであっても,上記①のⅰに挙げたものに加え,投票総数,有
効投票数,住民参加により計画を見直すの投票数,計画の見直しは必要な
いの投票数,無効投票数等の一定のものに限るものとしているところ(同
規則98条本文),これらの定めは,いずれも,秘密投票につき同条例7
条3項が規定するところを確保するためのものであると解される。
このように投票が有効であるか否かを問わず本件住民投票の全般にわた
って投票の秘密を確保しようとする同条例及び同規則の規定の内容に照ら
し,同条例7条3項を始めとするこれらの規定については,少なくとも本
件住民投票が成立しないものとされて開票が行われない場合においては,
その適用を排除し上記の投票を公にすべきものとする趣旨であることが他
の法令等の規定から明らかであるようなときを除き,これを公にしないも
のとすることをその趣旨及び目的とするものと解するのが相当というべき
であるところ,本件住民投票について上記に述べたような他の法令等の規
定は見当たらない。
この点に関し,原告らは,既に述べたような本件住民投票における投票
の方法に照らし,他事の記載があるようなものを除き,投票を公にしても
投票人が特定されることはなく,投票の秘密が侵害されることはない旨の
主張をするが,他事の記載があるようなものでない限り投票を公にしても
投票人が特定される可能性は一切ないことが明らかであるとまで断ずるこ
とについては,その根拠に疑問を差し挟む余地が残るといわざるを得ず,
また,秘密投票について同条例7条3項が規定するところを確保するため
に用意された各種の方途が一応有効に機能していることをもって,同規定
の定めるところが法制上無意義となり,又はそれを顧慮する必要が消滅す
ると解すべき根拠も見いだし難いところである。同規定につきそれの置か
れた本件住民投票条例の下における住民投票が公正に行われることを保障
する上での根幹に関わるものとして以上に述べたところについては,同じ
く被告の条例である本件情報公開条例の下における情報公開の制度の地方
自治の本旨等に照らしての一般的な重要性や,同条例の規定に基づいて原
告らが本件公開請求をするに当たっての目的又は動機のいかん等によって,
直ちに左右されるものとは解し難い。なお,原告らが他の地方公共団体が
定めた住民投票の制度及び情報公開の制度における取扱いにつき述べると
ころについては,各地方公共団体における条例による各制度の定め方の判
断に係る事柄であり,それらの取扱いが存在することをもって,既に述べ
たところが直ちに左右されるものとはやはり解し難いものというべきであ
る。
そして,他に,本件において,以上と異なって解することを相当という
べき格別の事情等は見当たらない,
ウ以上に述べたところによれば,本件各文書については,本件情報公開条
例7条1号に規定する非公開情報に該当する情報が記録されているものと
認めるのが相当である。
この点に関し,原告らは,上記と同旨の理由による本件非公開決定について
は,条例の規定に基づくことなく,原告らの情報公開請求権を制限したもので
あって,地方自治法14条2項の規定にも違反し,違法であると主張するが,
前記イに述べたところに照らし,原告らの主張は採用することができない。
エ以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,本件非公開決定は適法と
いうべきである。
(2)本件訴えのうち本件各文書を公開する旨の決定をすることの義務付けを
求める部分の適法性について
本件非公開決定が取り消されるべきものではないことは,前記(1)で判示し
たとおりであるから,本件訴えのうち本件各文書を公開する旨の決定をする
ことの義務付けを求める部分は,不適法である(行政事件訴訟法37条の3
第1項2号)。
第4結論
よって,本件訴えのうち本件各文書を公開する旨の決定をすることの義務付
けを求める部分は不適法であるのでこれらを却下し,本件訴えのその余の部分
に係る原告らの請求は理由がないからこれらを棄却することとして,主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官福渡裕貴
裁判官髙畑桂花
(別紙)
文書目録
平成25年5月26日に小平市で行われた住民投票で投票された5万1010人
分の投票用紙
(別紙)
関係法令の定め
第1小平市自治基本条例(平成21年小平市条例第27号。甲3。以下「本件自
治基本条例」という。)
1本件自治基本条例前文は,「私たちは,市政を議会及び市長に信託すると
ともに,参加や協働を通じて,市民自治のまちづくりを進めます。」等と定
めている。
2本件自治基本条例1条(目的)は,同条例は,小平市の自治の基本理念並
びに市民(小平市の区域内(以下同条例において「市内」という。)に住所
を有する個人をいう。同条例3条1号。以下同条例において同じ。),議会,
市長等の在り方及び市政に関する基本的な事項を定めることにより,自治の
実現を図ることを目的とする旨を定めている。
3本件自治基本条例2条(自治の基本理念及びその実現)1項は,市民は,
市政を議会及び市長に信託するとともに,互いに協力して積極的にまちづく
りに取り組むものとする旨を定めている。
4本件自治基本条例2条2項は,議会及び市長は,市民の信託に応え,公正
かつ誠実に市政を運営するものとする旨を定めている。
5本件自治基本条例2条3項は,市民,議会,市長等は,情報共有,参加(市
政の計画,実施及び評価のそれぞれの過程において,執行機関(市長,教育
委員会,選挙管理委員会,監査委員,農業委員会及び固定資産評価委員会を
いう。同条例3条3号。以下同条例において同じ。)に対し積極的に意見等
を表明することをいう。同条5号。以下同条例において同じ。)及び協働(市
民及び執行機関が,それぞれの役割及び責任の下で公共的なサービスの提供
を協力して行うことをいう。同条6号。以下同条例において同じ。)を基本
的な指針として同条例2条1項及び2項に掲げる自治の基本理念を実現す
るものとする旨を定めている。
6本件自治基本条例5条(市政に参加する権利)1項は,市民及び市内に事
務所又は事業所を有する法人その他の団体は,市政に参加をする権利を有す
る旨を定めている。
7本件自治基本条例6条(知る権利)は,市民等(市民並びに市内で働き,
学び,又は活動する個人(市民を除く。)及び市内で活動する法人その他の
団体をいう。同条例3条2号。以下同条例において同じ。)は,市政に関す
る情報を知る権利を有する旨を定めている。
8本件自治基本条例10条(参加の機会の保障)1項は,執行機関は,同項
各号に掲げる事項(市民生活に重大な影響を及ぼす施策又は制度の導入又は
改廃(3号)等及びこれらに準ずる事項であって別に定めるもの(5号))
を行う場合は,参加をする機会を保障するものとする旨を定めている。
9本件自治基本条例10条3項は,執行機関は,同条1項各号に掲げる事項
について,審議会等の委員の公募,公聴会の開催,意見の公募,提案の受付
その他の適当な方法により,参加をする機会を保障するものとする旨を定め
ている。
10本件自治基本条例10条4項は,執行機関は,意見の公募又は提案の受付
により聴取した意見等について,十分に考慮し,誠実に処理するものとする
旨を定めている。
11本件自治基本条例14条(市民投票制度)1項は,市(議会及び執行機関
をいう。同条例3条4号。以下同条例において同じ。)は,市政に関する重
要な事項について,市民,議会又は市長の発意に基づき,市民の意思を直接
確認するため,市民による投票(以下同条例において「市民投票」という。)
を実施することができる旨を定めている。
12本件自治基本条例14条2項は,市は,市民投票が実施された場合は,そ
の結果を尊重しなければならない旨を定めている。
13本件自治基本条例26条(情報共有)1項は,市は,その保有する市政に
関する情報を市民等と共有することができるよう,情報公開の総合的な推進
に努めるものとする旨を定めている。
14本件自治基本条例26条2項は,市は,その保有する市政に関する情報を
積極的に,分かりやすく,かつ,入手しやすい方法で市民等に提供するよう
努めるものとする旨を定めている。
15本件自治基本条例26条3項は,市は,その保有する市政に関する情報に
ついて公開請求を受けたときは,適正かつ迅速に処理しなければならない旨
を定めている。
16本件自治基本条例37条(条例の位置付け)は,同条例は,小平市の自治
の基本理念と進め方を定めるものであり,他の条例,規則等の制定又は改廃
に当たっては,この条例の趣旨を尊重し,この条例との整合を図るものとす
る旨を定めている。
第2本件情報公開条例(甲4)
1本件情報公開条例1条(目的)は,同条例は,何人にも市政情報の公開を
求める権利(以下同条例において「知る権利」という。)を保障するととも
に,小平市(以下同条例において「市」という。)が市政を市民に説明する
責任を全うすることを明確にし,情報公開の総合的な推進について必要な事
項を定めることにより,開かれた市政の下に市民の市政への積極的な参加及
び市民と市との信頼関係の増進を図り,もって地方自治の本旨に即した市政
を推進することを目的とする旨を定めている。
2(1)本件情報公開条例2条(定義)1号は,同条例において,「実施機関」
とは,市長,教育委員会,選挙管理委員会,監査委員,農業委員会,固定
資産評価審査委員会及び議会をいう旨を定めている。
(2)本件情報公開条例2条2号は,同条例において,「市政情報」とは,実
施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フィルム
及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識
することができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該実施機
関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの
をいい(本文),ただし,次のア及びイに掲げるものを除く(ただし書)
旨を定めている。
ア官報,公報,白書,新聞,雑誌,書籍その他不特定多数の者に販売す
ることを目的として発行されるもの
イ歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理
がされているもの
3本件情報公開条例3条(実施機関の責務)は,実施機関は,同条例の解釈
及び運用に当たっては,知る権利を十分に尊重するものとし(前段),この
場合において,実施機関は,個人に関する情報がみだりに公にされることの
ないよう最大限の配慮をしなければならない旨を定めている(後段)。
4本件情報公開条例4条(利用者の責務)は,同条例の定めるところにより
市政情報の公開を請求しようとするものは,同条例の目的に即し,適正な請
求に努めるとともに,市政情報の公開を受けたときは,これによって得た情
報を適正に使用しなければならない旨を定めている。
5本件情報公開条例5条(市政情報の公開を請求できるもの)は,何人も,
実施機関に対して市政情報の公開を請求することができる旨を定めている。
6(1)本件情報公開条例7条(市政情報の公開義務)の柱書きは,実施機関
は,公開請求(同条例5条の規定による市政情報の公開の請求をいう。同
条例6条1項。以下同じ。)があったときは,公開請求に係る市政情報に
同条例7条各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)
が記録されている場合を除き,公開請求者(公開請求をした者をいう。同
条例6条2項。以下同じ。)に対し,当該市政情報を公開しなければなら
ない旨を定めている
(2)本件情報公開条例7条1号は,非公開情報として,法令等の定めるとこ
ろにより,公にすることができないと認められる情報を定めている。
(3)本件情報公開条例7条2号本文は,非公開情報として,個人に関する情
報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって特定の個
人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の
個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を
識別することはできないが,公にすることにより個人の権利利益を害する
おそれがあるものを定めている。
7本件情報公開条例8条(市政情報の一部公開)1項は,実施機関は,公開
請求に係る市政情報の一部に非公開情報が記録されている場合において,非
公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができ,かつ,区分して除く
ことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることがないと認められるとき
は,当該非公開情報に係る部分以外の部分を公開しなければならない旨を定
めている。
8本件情報公開条例8条2項は,公開請求に係る市政情報に同条例7条2号
の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されてい
る場合において,当該情報のうち,特定の個人を識別することができること
となる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害さ
れるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情
報に含まれないものとみなして,同条1項の規定を適用する旨を定めている。
9本件情報公開条例11条(公開請求に対する決定等)1項は,実施機関は,
公開請求に係る市政情報の全部又は一部を公開するときは,その旨の決定を
し,公開請求者に対し,その旨並びに公開をする日時及び場所を書面により
通知しなければならない旨を定めている。
10本件情報公開条例11条2項は,実施機関は,公開請求に係る市政情報の
全部を公開しないとき(同条例10条の規定により公開請求を拒否するとき
及び公開請求に係る市政情報を保有していないときを含む。)は,公開しな
い旨の決定(同条1項の決定と併せて,以下「公開決定等」という。)をし,
公開請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない旨を定めて
いる。
11本件情報公開条例18条(不服申立てがあった場合の手続)の柱書きは,
公開決定等について,行政不服審査法の規定に基づく不服申立てがあった場
合は,当該不服申立てに係る実施機関は,同条各号に掲げる場合を除き,同
条例21条1項に規定する小平市情報公開・個人情報保護審査会に諮問をし,
その意見を尊重して当該不服申立てについての決定又は裁決を行わなけれ
ばならない旨を定めている。
12本件情報公開条例21条(小平市情報公開・個人情報保護審査会)1項は,
同条例18条1項に規定する諮問に応じて審査を行うため,市長の附属機関
として小平市情報公開・個人情報保護審査会(以下13において「審査会」
という。)を置く旨を定めている。
13本件情報公開条例21条2項は,審査会は,同条1項に規定する事項のほ
か,小平市個人情報保護条例(平成13年小平市条例第30号)24条1項
に規定する諮問に応じて審査を行う旨を定めている。
第3本件住民投票条例(甲5)
1本件住民投票条例1条(目的)は,同条例は,東京都が立案した小平都市
計画道路3・2・8号府中所沢線計画(府中所沢線の五日市街道(国分寺市
γ)から青梅街道(小平市δ)までの約1.4kmの区間。以下「本件計画」
という。)について,住民参加により計画を見直すべきか,又は計画の見直
しは必要ないかについて,市民の意向を確認することを目的とする旨を定め
ている。
2本件住民投票条例2条(住民投票)は,同条例1条の目的を達成するため,
市民による投票(以下同条例において「住民投票」という。)を行う旨を定
めている。
3本件住民投票条例7条(投票の方法)2項は,住民投票の投票は,本件計
画について,住民参加により東京都の計画を見直すべきと思う者は投票用紙
の住民参加により計画を見直すの欄に,計画の見直しは必要ないと思う者は
投票用紙の計画の見直しは必要ないの欄に○の記号を記載して,これを投票
箱に入れる方法によるものとする旨を定めている。
4本件住民投票条例7条3項は,住民投票は,1人1票の秘密投票とする旨
を定めている。
5本件住民投票条例7条4項は,点字による投票の方法は,規則で定める旨
を定めている。
6本件住民投票条例10条(無効投票)1項の柱書きは,住民投票(点字に
よる投票を除く。)において,同項各号のいずれかに該当する投票は,無効
とする旨を定め,同項1号は,所定の投票用紙を用いないものを,同項2号
は,住民参加により計画を見直すの欄及び計画の見直しは必要ないの欄のい
ずれにも○の記号を記載したものを,同項3号は,住民参加により計画を見
直すの欄及び計画の見直しは必要ないの欄に○の記号のほか,他事を記載し
たものをそれぞれ定めている。
7本件住民投票条例10条2項の柱書きは,住民投票(点字による投票に限
る。)において,同項各号のいずれかに該当する投票は,無効とする旨を定
め,同項1号は,所定の投票用紙を用いないものを,同項2号は,住民参加
により計画を見直す又は計画の見直しは必要ない以外の事項を記載したも
のを,同項3号は,住民参加により計画を見直す又は計画の見直しは必要な
いのほか,他事を記載したものをそれぞれ定めている。
8本件住民投票条例13条(投票及び開票)は,投票場所,投票時間,投票
立会人,開票場所,開票時間,開票立会人その他住民投票の投票及び開票に
関しては,公職選挙法,公職選挙法施行令及び公職選挙法施行規則の規定を
準用するものとする旨を定めている。
9本件住民投票条例13条の2(住民投票の成立の要件)は,住民投票は,
投票した者の総数が投票資格者(住民投票における投票の資格を有する者を
いう。同条例5条。以下同じ。)の総数の2分の1に満たないときは,成立
しないものとする旨を定めている。
10本件住民投票条例14条(投票結果の告示等)は,小平市選挙管理委員会
は,投票結果が確定したときは,直ちにこれを告示するとともに,当該告示
の内容を市長及び市議会議長に報告しなければならない旨を定めている。
11本件住民投票条例15条(投票結果の尊重)は,市長は,住民投票が成立
したときはその結果を尊重し,速やかに市民の意思を東京都及び国の関連機
関に通知しなければならない旨を定めている。
12本件住民投票条例16条(委任)は,同条例に定めるもののほか,住民投
票の施行に関し必要な事項は,規則で定める旨を定めている。
13本件住民投票条例附則2項(失効)は,同条例は,投票日(住民投票の期
日をいう。同条例4条1項。以下同じ。)の翌日から起算して90日を経過
した日にその効力を失う旨を定めている。
第4東京都の小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線計画について住民の意思
を問う住民投票条例施行規則(平成25年小平市規則第31号。甲8,乙6。
以下「本件施行規則」という。)
1本件施行規則1条(趣旨)は,同規則は,本件住民投票条例の施行に関し,
必要な事項を定めるものとする旨を定めている。
2本件施行規則28条(投票用紙の様式及び交付)1項は,住民投票に用い
る投票用紙の様式(点字による投票(以下同規則において「点字投票」とい
う。)に係るものを除く。)は,同規則別記様式第1号のとおりとする旨を
定めている。
3本件施行規則31条(点字投票)1項は,視覚障害を有する投票人(住民
投票を行う投票資格者をいう。本件住民投票条例7条1項,同規則18条2
項。以下同じ。)は,点字投票をしようとする場合においては,投票管理者
に対し,その旨を申し立てなければならず(前段),この場合において,投
票管理者は,点字投票である旨の表示をした投票用紙を交付しなければなら
ない(後段)旨を定めている。
4本件施行規則31条2項は,同条1項後段に規定する点字投票である旨の
表示をした投票用紙の様式は,同規則別記様式第2号のとおりとする旨を定
めている。
5本件施行規則65条(投票の秘密保持)は,何人も,投票人のした投票の
内容を陳述する義務はない旨を定めている。
6本件施行規則76条(開票区及び開票管理者)1項は,開票区は,小平市
の区域によるものとし,当該開票区に,開票管理者を置く旨を定めている。
7本件施行規則79条(開票立会人)1項は,小平市選挙管理委員会(以下
同規則において「選挙管理委員会」という。)は,投票日の3日前までに投
票資格を有する者の中から,本人の承諾を得て,3人の開票立会人を選任し
なければならない旨を定めている。
8本件施行規則85条(開票)1項は,開票管理者は,開票立会人立会いの
上,投票箱を開き,まず,同規則60条3項及び5項(投票の拒否の決定を
受けた投票人等の仮の投票)の投票を調査し,開票立会人の意見を聴き,そ
の投票を受理するか否かを決定しなければならない旨を定めている。
9本件施行規則85条2項は,開票管理者は,同規則57条4項(不受理又
は拒否の決定を受けた不在者投票の取扱い)並びに62条2項及び3項(代
理投票の拒否の決定を受けた投票人等の仮の投票)の規定の適用を受けた投
票については,同規則85条1項の例によりこれを受理するか否かを決定し
なければならない旨を定めている。
10本件施行規則85条3項は,開票管理者は,開票立会人とともに,各投票
所及び期日前投票所の投票を混同して,投票を点検しなければならない旨を
定めている。
11本件施行規則85条4項は,投票の点検が終わったときは,開票管理者は,
直ちにその結果を選挙管理委員会に報告しなければならない旨を定めてい

12本件施行規則86条(開票の場合の投票の効力の決定)は,投票の効力は,
開票立会人の意見を聴き,開票管理者が決定しなければならない旨を定めて
いる。
13本件施行規則87条(投票の点検)は,開票管理者は,投票を点検する場
合においては,開票事務に従事する者2人に各別に「住民参加により計画を
見直す」欄における○の記号(点字投票における「住民参加により計画を見
直す」の記載を含む。以下同規則において同じ。)又は「計画の見直しは必
要ない」欄における○の記号(点字投票における「計画の見直しは必要ない」
の記載を含む。以下同規則において同じ。)のそれぞれの投票数を計算させ
なければならない旨を定めている。
14本件施行規則88条(投票数の朗読)は,開票管理者は,同規則87条の
規定による計算が終了したときは,「住民参加により計画を見直す」欄にお
ける○の記号又は「計画の見直しは必要ない」欄における○の記号の投票数
を朗読しなければならず(本文),ただし,その開票所内にいる投票人に周
知させるため,掲示その他の必要な措置を講ずる場合は,この限りではない
(ただし書)旨を定めている。
15本件施行規則93条(点検済みの投票等の送付)1項は,開票管理者は,
点検済みの投票の有効又は無効を区別して,それぞれ別の封筒に入れ,開票
立会人とともに封印をし,これを投票録及び開票に関する書類とともに選挙
管理委員会に送付しなければならない旨を定めている。
16本件施行規則94条(投票,投票録,開票録等の保存)は,投票は,投票
録,開票録及び開票に関する書類と併せて,選挙管理委員会において,投票
日の翌日から本件住民投票条例が失効するまでの間,保存しなければならな
い旨を定めている。
17本件施行規則98条(投票結果の告示)は,本件住民投票条例14条の規
定による告示は,同規則98条各号(次の(1)から(12)までに掲げるもの)
に掲げる事項について行うものとし(本文),ただし,同条例13条の2の
規定により住民投票が成立しなかったときは,同規則98条1号から5号ま
で及び12号に掲げる事項について行うものとする(ただし書)旨を定めて
いる。
(1)投票日
(2)投票資格を有する者の総数
(3)投票した者の総数
(4)棄権者の数
(5)本件住民投票の成立又は不成立
(6)不受理及び持ち帰りの数
(7)投票総数
(8)有効投票数
(9)住民参加により計画を見直すの投票数
(10)計画の見直しは必要ないの投票数
(11)無効投票数
(12)その他必要な事項
18本件施行規則99条(結果の公表)は,市長は,本件住民投票条例14条
の規定による報告を受けた場合は,当該報告の内容を公表するものとする旨
を定めている。

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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