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平成13年(わ)第813号 傷害致死被告事件
判       決
主       文
被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数中240日をその刑に算入する。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成13年5月26日午後4時40分過ぎころ,東京都東村山市a町
b丁目c番地dA鉄道株式会社B線C駅ホーム上において,D(当時26歳)に対
し,右手こぶしでその頚部を1回殴打し,その臀部を1回足げにしてホーム上に転
倒させる暴行を加え,よって,同人に左側頚部打撃による内頚動脈損傷に基づく外
傷性くも膜下出血等の傷害を負わせ,同月27日午前2時55分,埼玉県所沢市内
の病院において,同人を上記外傷性くも膜下出血による脳ヘルニアにより死亡する
に至らしめたものである。
(法令の適用)
罰  条          刑法205条
未決勾留日数の算入     同法21条
(量刑の事情)
 本件は,電車内での被害者の言動に立腹した被告人が,乗換駅で被害者を呼び止
め,その頚部を強打するなどの暴行を加えて傷害を負わせ,間もなく同人を死亡さ
せたという傷害致死の事案である。
 そして,前掲各証拠を総合すると,本件犯行の経緯,結果等は,以下のとおりと
認められる。
 被告人は,東京都内の私立大学を卒業したが,志望していたマスコミ関係の就職
に失敗したことから,実父が有する弁理士資格取得のため,受験勉強を始め,平成
13年5月20日ころ施行された弁理士試験を受けたものの,手応えに欠けたた
め,その後,1週間は気分転換に休暇を取ることとし,同月26日,友人のEとと
もに,午後1時半ころから,F球場でプロ野球を観戦し,同日午後4時ころ,試合
も終了したので,直ちにEとともに,最寄り駅のG駅始発の電車に乗り込み,Eが
空席に座ったので,その斜め前付近に佇立していたところ,同電車内は出入口付近
を中心に混雑しており,発車間際に交際相手とともに同電車に乗り込んできた被害
者が,出入口付近において,交際相手の女性に対し,被告人の方を見ながら,「あ
いつら,詰めねえなー
。」と比較的大きな声で話しかけたのに気付き,自分が人の流れを妨害しているの
ではないかと考えて,一旦は立っていた位置から移動し,奥に詰めたものの,周囲
の乗客が移動することもなかったため,依然として混雑は緩和されなかった上,被
害者の口調が厳しく,多衆の面前で面罵されたものといたく立腹し,判示C駅で乗
り換えのため下車した被害者と交際相手の背後から,被害者の肩をたたいて制止し
ながら,被害者に対し,「お前,さっき何だよ」と文句を言った。ところが,被害
者からは何も言っていないと反論されて相手にされず,トイレに連れ込んで決着を
付けようと考え,その旨申し向けたにもかかわらず,「トイレに行きたいんだった
ら,1人で行け。」と冷たく言い放たれたことから,憤激の余り,ストレートパン
チのようにして,被
害者の頚部を右手こぶしで1回強打すると,被害者は後方によろけながら,踏みと
どまり,被告人に対して殴りかかるようにしたものの,被告人によけられて空振り
に終わった。そこで,被告人が,いわゆるファイティングポースを取ったところ,
被害者が突然背後を振り向いて,駅員に助けを求めたので,被告人は,これに対し
更に立腹し,背後からその臀部を1回足げにし,被害者はその場に転倒した。その
後,被告人は,執拗に被害者への謝罪を求めるその交際相手を振りきって,現場を
離れ,A鉄道B線の電車に乗り換えて逃走し,間もなく,交際相手からの,「この
人殴られたんです。犯人は2人連れで,1人は白色Tシャツで帽子をかぶっていま
した。」との通報を受けた駅員が,110番通報や119番通報を済ませた上,H
駅とI運転指令に対
して,「お客さん同士のトラブルがあり,H駅に着く電車に2人連れで,帽子をか
ぶり,白Tシャツの男達が降りないか見て欲しい。」と通報した。これを受けて,
同日午後5時ころには,同線H駅において,駅員が,被告人及びEに対し,「C駅
で何かトラブルを起こさなかったですか。」と質問したが,被告人らは,「知らな
い」と返事をして立ち去ってしまった。その後,被告人は,交際中の女友達宅に赴
いた際,帰りの電車が混み合っており,Eを座らせると,カップルに乱暴に邪魔だ
等と言われ,相手がサングラスを取りながら,挑発した態度で向かってきたから,
思わず1発殴ったら倒れた,相手は手から倒れたから大丈夫だと思う,などと説明
しており,その後,2人で食事をしようとした際,テレビで「今日,A線で傷害事
件があって,意識不
明の重体で,犯人は逃走中」と報道しているのに気付き,携帯電話でEと連絡を取
ってから,自宅に戻り,その後,警視庁東村山警察署に自首した。
 以上認定の事実関係に照らすと,被告人は,混雑した電車内で後から乗車してき
た被害者から,空いている奥に詰めないのを非難されたと立腹し,被害者に言いが
かりを付けられたことを謝罪させようと考え,ついに本件暴行に及んだものであ
り,些細な出来事に立腹し,短絡的に本件犯行に及んでおり,その犯行動機に酌量
の余地は乏しく,ボクシングの心得がありながら,無防備の被害者の身体の枢要部
である頚部付近を右手こぶしで強打したというのであって,これが致命傷であった
ことに照らしても,強烈な攻撃であったということができ,被害者は,一時は攻撃
を加える姿勢を示したものの,有効なパンチを繰り出す暇もなく,重傷を負いその
場に倒れたのであって,犯行態様は危険で悪質極まりないというべきである。その
結果,格別落ち度など
が考え難い被害者は,わずか26歳の生涯を閉じなければならなかったのであり,
被害者自身の無念さは勿論のこと,その将来を期待していた両親ら遺族の悲嘆の程
度は甚大であり,被害者の遺族の怒りが依然として融和しないでいることも誠にも
っともというべきである。しかも本件犯行は,電車施設等の多衆が目撃した中で公
然と敢行されており,その社会に及ぼした影響も軽視できない。
 そうすると,被告人が率直に事実関係を供述しており,反省の態度は顕著である
こと,実父が被害弁償の一部として現金1300万円を支払っており,これが受領
されていること,実父ら関係者が被告人の監督を誓約していること,その他被告人
に有利に考慮すべき諸般の事情を勘案しても,本件犯行の重大さに鑑みれば,被告
人を主文掲記の実刑に処するのが相当である。
〔検察官中川深雪,私選弁護人(主任)加藤裕也,同今野勝彦,同八百屋伴声各出
席〕
平成14年3月26日
 東京地方裁判所八王子支部刑事第2部
     裁判長裁判官  大  渕  敏  和
     裁判官  片  山  隆  夫
     裁判官  山  田  裕  文

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