弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
      本件控訴を棄却する。
      控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 控訴人が,被控訴人に対し,平成15年3月11日付けでした,控訴人が
多治見市α6-113の土地内に小規模産業廃棄物処理施設を設置する旨の届出に
対し,被控訴人が岐阜県産業廃棄物の適正処理に関する指導要綱(本件指導要綱)
13条2項の適合通知書を控訴人に交付しないことは違法であることを確認する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
   主文同旨
第2 事案の概要
 1 本件の事案の概要は,次のとおりである。
  (1) 控訴人は,被控訴人に対し,小規模産業廃棄物処理施設(本件施設)を設
置しようとして,岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例(本件条例)21条1項
による届出(本件届出)をし,被控訴人は,これを受理したのであるから,直ちに
本件指導要綱13条2項の適合通知書を控訴人に交付すべきであるのに,これを交
付しないのは違法であるとして,その確認を求めた。
  (2) 被控訴人は,①不作為の違法確認の訴えは,行政庁が法令に基づく申請に
対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきにもかかわらず,これをしな
いことについての違法の確認を求める訴訟である〔行政事件訴訟法(行訴法)3条
5項〕ところ,<ア>本件届出は,岐阜県行政手続条例2条1項8号にいう「届出」
であり,同項4号にいう「申請」ではなく,また,上記通知書の交付は,行政指導
であり,行訴法3条5項にいう「行政庁・・の処分」とはいえない,<イ>したがっ
て,控訴人は,同法37条の「処分又は裁決についての申請をした者」に当たら
ず,当事者適格がない,②<ア>控訴人が本件施設の設置工事に着手することは届出
の対象にすぎず,被控訴人は処分の義務を負わない,<イ>仮に,処分の義務を負う
としても,控訴人は,被
控訴人からの届出書の補正指示に対する回答を懈怠しており,被控訴人に義務の懈
怠はないとして争った。
  (3) 原審は,本件届出は,本件条例上,知事が諾否の応答をすべきものとされ
ておらず,適合通知書の交付又は不交付は,本件指導要綱上,行政指導に該当し,
強制力を伴う効果を生じさせるものではないから,上記届出及びこれに対する適合
通知書の交付は,行訴法3条5項にいう「法令に基づく申請」及びこれに対する
「行政庁の処分」には該当せず,不作為の違法確認の訴えの要件を欠き,かつ,控
訴人は,同法37条の定める当事者適格を有しないとして,控訴人の本件訴えを却
下したため,控訴人が,これを不服として控訴した。
 2 争いのない事実等,争点及びこれに対する当事者の主張は,次項で原判決の
訂正をするほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1,2のとお
りであるから,これを引用する。
 3 原判決の訂正
   原判決6頁10行目から16行目の記載部分を原判決7頁15行目の次に移
し,改行して加える。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,控訴人の本件訴えは却下されるべきものと判断する。その理由
は,次項で原判決の訂正をし,3項で控訴理由に対する判断をするほかは,原判決
「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」1のとおりであるから,これを引
用する。
 2 原判決の訂正
  (1) 原判決8頁19行目から20行目にかけての「知事が,」から同行目の
「定めている」までを「知事が,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理
法)15条の2第1項の規定の例により審査の上,同項に適合していると認めると
きは,適合通知書を交付することを定めている」に,22行目から9頁1行目にか
けての「着手すべきもの」を「着手するものとする」に,それぞれ改める。
(2) 原判決9頁1行目の「勧告をし,」を「要綱の施行に必要な限度におい
て,報告を求めたり,必要な勧告をすることができ,」に,2行目の「公表するこ
とがある」を「公表することができる」に,10行目の「いえない。」を「いえ
ず,それによって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが
法律上認められているとはいえないから,本件届出をした者に何らかの利益を付与
する処分であるともいえない。」に,12行目から13行目にかけての「適合通知
書の交付・不交付は,本件指導要綱上,」を「本件指導要綱上,本件施設の設置等
に係る届出の内容が,廃棄物処理法15条の2第1項に適合していると認めるとき
は,適合通知書を交付するというにとどまり,その交付,不交付は,」に,それぞ
れ改める。
 3 控訴理由に対する判断
   控訴人は,本件施設の設置は,本件条例上届出制とされているが,廃棄物処
理法(15条1項)上の許可を必要とする上記施設以外の産業廃棄物処理施設とほ
ぼ同様の審査手続及び審査内容によるのであり,適合通知書が交付されないと,本
件施設の設置等の工事に着手することができず(本件指導要綱12条1項),仮に
着手したとしても,中間検査による適合の確認(同条4項)や使用前検査適合通知
書の交付(同条5項)を受けられず,上記施設を完成させても,これを稼働させる
ことができない(同項)上,産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者
あるいはその収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲の変更をしようとする者に対
する知事の許可〔廃棄物処理法(平成15年5月16日法律第43号による改正前
のものとの趣旨と理
解できる。)14条1項,4項,14条の2第1項〕はなされず,本件指導要綱1
3条2項の適合通知書の交付は,事実上許可と同じ効力を有しているから,「処
分」に該当し,「法令に基づく申請」に該当すると主張する。
しかしながら,そもそも適合通知書は,条例ではなく本件指導要綱〔県民の
生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として,産業廃棄物処理施設
の設置等に関し,必要な事項を定めたもの(1条)〕に定められたものであること
は,前記(原判決)のとおりである。そして,本件指導要綱上,本件施設の設置者
は,本件指導要綱13条1項の適合通知を受けて工事に着手するものとされ(本件
指導要綱12条1項),施設完成時には視認できなくなる設備等については,中間
検査を受けて設置等届出の内容に適合している旨の確認を受けなければならず(同
条4項),施設完成時には,知事に申請して使用前検査適合通知書を受理した後に
施設を稼働するものとされている(同条5項)が,上記のとおり,遵守違反者に対
しては,報告を求めた
り,勧告をしたりすることができる(17条)にとどまり,適合通知書の交付によ
って,本件施設の設置に関し,何らかの法的拘束力が生じるものではないから(当
然,産業廃棄物処理業の許可,不許可といった効果を生じさせるものでもな
い。),これを許可と同視することはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
第4 結論
以上によれば,控訴人の本件訴えは不適法であり,これを却下すべきである
から,これと結論を同じくする原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,
これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
        裁判長裁判官     田中由子
           裁判官     佐藤真弘
           裁判官     山崎秀尚

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