弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐山武夫の上告趣意一、二点は単なる法令違反の主張であり、同三点は事
実誤認、同四点は量刑不当の各主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらな
い。
 なお、所論の一、二点にかんがみ職権をもつて調査するに、本件記録によれば、
被告人の本件各所為すなわち(一)昭和四〇年六月四日柳川市Aにおける腕時計二
四七個等の窃取、(二)同四一年一二月一二日延岡市Bにおける腕時計四一九個等
の窃取、(三)同日同市Cにおける黒皮手堤鞄二個等の窃取、(四)昭和四二年一
月二八日熊本市D株式会社における現金三万一〇一一円等の窃取、(五)同日同市
Eにおける腕時計六二一個等の窃取、以上の点は、包括して盗犯等の防止及び処分
に関する法律三条に該当する常習累犯窃盗の一罪として起訴され、第一審判決もこ
れをそのまま有罪と認定し、被告人に懲役五年の刑を言渡したものであることが明
らかであるが、被告人はまた右(一)と(二)の各犯行の中間である昭和四一年二
月五日大牟田市のスーパーFほか一か所において角砂糖等食品六点などを窃取した
事実により、同年六月二四日大牟田簡易裁判所において窃盗罪として懲役一〇月の
判決言渡をうけ、右判決は同年一〇月二六日確定したことも記録上明らかである。
そして右大牟田市における各窃盗犯行の態様と本件第一審判決が罪となるべき事実
の冒頭に掲記している被告人の各前科受刑の事実(盗犯等の防止及び処分に関する
法律三条にいう「此等ノ罪」には同法二条に掲記された刑法各条の罪の従犯をも含
むものと解すべきであり、この点を消極に解し、第一審判決の掲記する右前科のう
ち窃盗幇助等の罪によるものは右法律三条の予定する前科にあたらないとした原判
決は失当である。)とを総合すれば、右大牟田市における各窃盗も盗犯等の防止及
び処分に関する法律三条所定の常習累犯窃盗に該当するものとみるべきであり、ま
た前記の本件(一)の所為も右確定判決前の犯行であるから、右大牟田市における
各窃盗犯行と共に一個の常習累犯窃盗罪を構成すべきものであつたといわなければ
ならない。しからば、右一罪の一部について既に確定判決があつた以上、本件にお
ける前記(一)の所為については免訴とされるべきであり、この点を看過し前記の
ように右(一)の所為をも本件の有罪事実に含めた第一審判決ならびにこれを認容
した原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があることになる。
 しかしながら、右(一)の所為を除く前記(二)ないし(五)の所為についてみ
ても、第一審判決の掲記している前記各前科受刑の事実(窃盗幇助等の罪による前
科も含まれること前記のとおりである。)との関係において、盗犯等の防止及び処
分に関する法律三条該当の常習累犯窃盗罪を構成すべきことに変りがなく、また右
(二)ないし(五)の各犯行の態様、被害額、被告人の前科等によつて考えれば、
原判決の認容する第一審判決が被告人を懲役五年に処した点が甚だしく不当である
ともいい得ない。これらの点からすれば、原判決の前記違法については、いまだ原
判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
 よつて刑訴法四一四条、三九六条、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意
見で主文のとおり判決する。
 検察官岡嵜格 公判出席
  昭和四三年三月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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