弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人寺井俊正の上告趣意第一点について。
 刑訴法三二一条一項二号但書に規定する「公判準備又は公判期日における供述よ
りも前の供述を信用すべき特別の情況」の判断は事実審の裁量認定に関する事項で
あり(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、集五巻一二
号二三九三頁参照)またその理由を判決に明示することを法律上要求されているわ
けではないから所論判例違反の主張は既にその前提において採用できない。
 同第二点について。
 所論は、本件につき強盗致死罪の訴因に対し訴因罰条の変更の手続を経ないで傷
害致死罪を認定した一審判決を是認した原審の判決は高等裁判所の判例に背反する
というのであるが、元来訴因又は罰条の変更につき一定の手続が要請される所以は
裁判所が訴因又は罰条を異にした事実を認定することによつて被告人の防禦権行使
の機会を失わしめ又はこれを徒労に終らしめることを防止するにあるところ、本件
において強盗致死罪の訴因に対し、財物奪取の点を除きその余の部分について訴因
に包含されている事実を認定し、これを傷害致死罪として処断しても右のような虞
れはないと考えるから、この点に関する原審の判断は正当である。論旨引用の各判
例はいずれも本件に適切でなく所論は採用できない(昭和二六年(あ)第七八号同
年六月一五日第二小法廷判決、集五巻七号一二七七頁参照)。
 同第三点について。
 記録によると原審は弁護人寺井俊正の第一回公判期日の変更申請を許容したとこ
ろ更に第二回公判期日の変更申請があつたがこれを許容せず国選弁護人を選任し右
弁護人は曩に私選弁護人が提出した控訴趣意書に基づき陳述をなし審理を終結した
ことが判る、所論は私選弁護人がある場合に裁判所が国選弁護人を選任する法的根
拠がないというけれども、本件のような必要的弁護事件において弁護人が出頭しな
いときは裁判所は職権で弁護人を附すべきものであるから右の非難は当らない(刑
訴四〇四条、二八九条参照)。従つて刑訴法の違反を理由とする所論違憲の主張は
その前提を欠くものである(昭和二五年(あ)三一一七号同二七年七月八日第三小
法廷判決参照)。
 同第四点について。
 本件国選弁護人の選任が適法であることは論旨第三点につき説明したとおりであ
るから被告人にこの費用の負担を命じた原審判決は正当であり引用の判例は本件に
適切でない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二九年一二月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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