弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 特別抗告人山田盛の抗告理由
 被告人Aに対する強盗予備銃砲等所持禁止令違反事件の本記録を調べてみると、
被告人は昭和二四年三月一六日勾留状を執行せられ、同年四月五日保釈決定を受け
同月七日釈放されたのであるが同年五月一七日横浜地方裁判所横須賀支部に於て懲
役二年に処する旨の判決を宣告されたので、刑訴第三四三条により同日収監された
ものである。弁護人山田盛は、即日被告人の保釈を請求したが、横浜地方裁判所横
須賀支部は、被告人に刑訴第八九条第三号及第四号に該当する理由ありとして、こ
れを却下した。そこでこの保釈請求却下の決定に対して弁護人から抗告を申立てた
ところ、東京高等裁判所はこれを棄却したので、弁護人から更らに本件特別抗告を
申立てたのである。その抗告の趣旨は、原決定における、「被告人の陳述は証拠と
なり得るものであるから被告人が一旦為した自白を翻すことは罪証を隠滅すること
となるものと解するを相当とする」という判示は、憲法第三八条に違反することに
なる。仮りにそれが罪証を隠滅することになるとしても、之に因つて保釈請求を却
下し或は保釈を取消すことは、保釈に関する職権に名を籍りて、実質上違憲処分を
為すことに帰するというにある。
 なるほど原決定に示された右のような理由によつて保釈請求を却下しては、勾留
によつて自白を強要されるおそれがないとはいえないから憲法第三八条第一項の精
神に副わないこととなる。
 しかし被告人は本年五月一七日懲役二年の刑に処する判決を受けたのであるから、
その後に於ては刑訴第三四四条により、刑訴第八九条の適用はなく、保釈の請求が
あつても必ずこれを許さなければならないということはない。裁判所は適当と認め
た場合に限り職権を以て保釈を許せば足りる。従つて横浜地方裁判所横須賀支部が
保釈請求を却下したことは違法ではない。同支部が右の請求を却下した決定の理由
並に原決定がこれを維持した理由が所論のように誤つていたとしても、その結果に
おいては正当であるから、論旨は採用することができない。
 よつて刑訴第四二六条第一項後段に従い主文の通り決定する。
 この決定は裁判官全員一致の意見によるものである。
  昭和二四年一二月二〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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