弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は,事実誤認,単なる法令違反の主張であって,少年法35条1
項の抗告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み,保護処分終了後の保護処分取消し申立て事件において,保護
処分決定で認定された日には非行事実の存在が認められないが,これと異なる日に
同一内容の非行事実が認められる場合における取消しの可否等につき,職権で判断
する。
1原決定及び記録によれば,次の事実が認められる。
(1)申立人は平成14年1月7日強姦未遂保護事件により中等少年院送致決定
(以下「本件保護処分決定」という。)を受けた。同決定で認定された非行事実の
要旨は,申立人が,共犯者9名と共謀の上,当時15歳の女子高校生を姦淫するこ
とを企て,平成13年9月16日午後9時50分頃から同日午後11時頃までの
間,静岡県御殿場市内の御殿場市中央公園内において,同女に暴行を共同して加
え,その反抗を抑圧して,強いて姦淫しようとしたが,その目的を遂げなかった,
というものであった。
申立人は,逮捕当初は身に覚えがないと否認していたが,捜査段階の途中から事
実を認め,審判においてもこの自白を維持し,本件保護処分決定を受けた。同決定
は抗告されることなく確定した。申立人は,同決定に基づき中等少年院に収容さ
れ,仮退院中の保護観察を経て,平成17年9月9日,保護処分を受け終わった。
(2)本件保護処分決定が確定した後に行われた共犯者の刑事公判手続におい
て,被害者は,本件被害に遭ったことは間違いないものの,被害に遭った日は当初
述べていた平成13年9月16日でなく,その1週間前の同月9日であると供述を
変えた。そこで,申立人は,本件保護処分決定で認定された強姦未遂の非行事実は
存在せず,また,同月9日にはアリバイがあるなどとして,本件保護処分取消しを
申し立てた。
原々審は,申立人の主張を踏まえ,第1回審判期日の冒頭において,申立人に対
し,本件保護処分決定で認定された非行事実に加え,同月9日を犯行日とする同一
内容の強姦未遂の事実につき,その各要旨を告げて陳述の機会を与えた上,その後
も専ら同日を犯行日とする強姦未遂の事実に関する審理を進め,申立人に同日のア
リバイ立証を含めて反証をさせるなどした。そして,原々決定は,審理の結果,同
月16日の被害者に対する強姦未遂の事実は認められないが,同月9日の同一内容
の強姦未遂の事実は認定できるとし,本件保護処分取消し申立てを棄却した。
(3)原決定は,原々決定の事実認定を是認した上,本件強姦未遂の犯行日は平
成13年9月9日であり,本件保護処分決定が認定した犯行日である同月16日と
は異なるにしても,被害者,犯行場所,共犯者,犯行に至る経緯,犯行態様等の事
実関係が同一であり,犯行の時間帯にも重なりが認められるから,両事実は,基本
的事実関係が同一で非両立の関係にあり,同一性を認めることができ,さらに,原
々審において,アリバイ主張を始めとする申立人の陳述が十分にされるなど防御権
を保障するに足りる審判手続が行われているから,同月9日を犯行日とする強姦未
遂の事実を認定して本件保護処分取消し申立てを棄却した原々決定は相当であると
した。
2所論は,①少年法27条の2第2項の「審判に付すべき事由」とは,保護処
分決定で認定された非行事実自体であり,これと同一性のある事実まで含むもので
ないから,本件のように,保護処分決定で認定された非行事実(平成13年9月1
6日の強姦未遂の事実)を認めることができない以上,同一被害者に対する同月9
日の強姦未遂の事実を認めることができるとしても,保護処分を取り消すべきであ
る,②仮に,保護処分決定で認定された非行事実からの認定替えが許されるとして
も,本件では保護処分決定から相当期間が経過しており,申立人に対し,著しく困
難な立証活動を一方的に課すものであって,告知聴聞の機会は形骸化し,防御権が
保障されているとはいえない,などという。
しかし,同法27条の2第2項の「審判に付すべき事由」とは,保護処分決定で
認定された非行事実と事実の同一性があり,構成要件的評価が変わらない事実をも
含むものと解するのが相当であるから,保護処分決定で認定された非行事実につい
て,犯行日とされた日にその非行事実が認められないにしても,これと異なる日に
同一内容の非行事実が認められ,両事実が両立しない関係にあって基本的事実関係
において同一であり,事実の同一性が認められる場合には,審判に付すべき事由は
存在したということができ,同条項により保護処分を取り消さなければならないと
きには当たらないというべきである。また,保護処分取消し申立て事件において,
事実の同一性がある範囲内で保護処分決定と異なる非行事実を認定するには,申立
人に防御の機会を与える必要があるところ,本件においては,保護処分決定から相
当期間が経過している事情を考慮しても,原々審は,本件保護処分決定で認定され
た強姦未遂の事実と同一性が認められる異なる日の同一内容の強姦未遂の事実を認
定するに当たり,上記のとおり,審判期日で申立人にその事実の要旨を告げて陳述
を聴いた上,更にその日のアリバイ立証を含めて反証をさせるなど,十分に防御の
機会を与えており,原々審の審判手続に所論の違法はない。これと同旨の見解の
下,上記のとおり説示して,本件は同条項により保護処分を取り消す場合に当たら
ないとした原決定は正当である。
3よって,少年法35条2項,33条1項により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官櫻井龍子裁判官宮川光治裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

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