弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 被告は,原告に対し,金11万7600円及びこれに対する平成15年11
月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担
とする。
4 この判決の第1項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 原告の請求
被告は,原告に対し,金122万4290円及びこれに対する平成15年1
1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因
(1) 本件売買
原告は,平成15年7月10日,被告から,その走行距離が9万9544
キロメートルであるという平成7年式A社製の事故車(以下「本件自動車」とい
う。)を,代金14万7000円(消費税込み)で購入した(以下「本件売買」と
いう。)。
(2) 隠れた瑕疵の存在
原告は,本件自動車の修理を行った上,同年8月30日開催のオークショ
ンに出品して売却することを訴外有限会社Bに委託した。
ところが,同オークションにおいて,本件自動車は,平成14年11月2
日のオークションに走行距離13万4620キロメートルとして出品されたことが
あり,不正に走行距離が改ざんされていることが判明し,その結果,原告は本件自
動車を売却することができなかった。
(3) 原告の損害
本件自動車につき,走行距離の改ざんという隠れた瑕疵があったことによ
り原告が被った損害は次のとおりである。
ア 本件自動車購入代金      14万7000円
イ 購入費用(本件自動車配送費)    6300円
ウ 本件自動車修理代金      42万2100円
エ 名義変更,登録料        2万5790円
オ オークション出品費用      2万3100円
カ 訴外有限会社Bに支払った迷惑料
10万円
キ 原告の被った迷惑料          10万円
ク 原告の売上減少による損害       40万円
本件自動車にメーター改ざんの瑕疵があったことから被告との関係が悪
化し,被告からの事故自動車の仕入が困難となり,原告の売上が減少したことによ
る損害である。
ケ 以上合計          122万4290円
(4) よって,原告は,被告に対し,上記損害金合計122万4290円及びこ
れに対する本件訴状送達の日の翌日である平成15年11月21日から支払済みま
で民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する被告の認否及び主張
(認否)
(1) 請求原因(1)の事実は認める。
(2) 同(2)の事実は不知,同(3)は争う。
(主張)
仮に本件自動車に隠れた瑕疵があったとしても,原告の主張する本件売買に
基づく損害は被告からの購入代金を上回ることはないはずである。
原告は,本件自動車の修理を実施し,瑕疵がなければ本件自動車をオークシ
ョンにおいて高額で販売できたはずであると主張し,その逸失利益を損害と主張す
るようである。しかし,本件自動車は原告の所有であり,原告の修理によって客観
的価格が増加したものとして存在しており,原告に損害はまったくない。本件のよ
うないわゆる事故車売買においては,修理の上再度オークションに出品されること
は希であり,各販売店においていわゆる修理車であることを明示した上で直接エン
ド・ユーザーに販売するのが通常であり,現時点においても,客観的には少なくと
も修理代金相当額の自動車として販売可能なはずである。原告の主張は自らの販売
能力のなさを身勝手に損害に転嫁しようとするものであり,原告の主張するような
損害と瑕疵との間に因
果関係が存しないことは明らかである。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因(1)の事実(本件売買)は,当事者間に争いがない。
2 証拠(甲5,6)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(2)の事実(隠れた瑕
疵の存在)が認められる(ただし,原告は本件自動車の修理に42万2100円を
要したと主張し,これを裏付けるものとして甲2,3を提出するが,一方で,原告
は,被告から平成15年7月中に8台の事故車を購入し,その修理代金,手数料等
に1台当たり平均10万円を要したと主張している〔原告の平成16年2月29日
付準備書面。第1回弁論準備手続期日に陳述〕ことと対比して,本件自動車に限っ
て,40万円を超える修理費用を要したものとはにわかに措信できず,他に,その
修理代金につきこれを的確に認めるに足りる証拠はない。)。
3 そこで,上記メーター不正改ざんの瑕疵により,原告が被った損害につき検
討するに,本件自動車の被告からの購入価額14万7000円は,メーターの不正
改ざんがないことを前提とした価額であるところ,実際には,平成14年11月2
日時点で既に走行距離13万4620キロメートルに達していたのが,平成15年
7月10日時点で走行距離9万9544キロメートルとされていたものであること
からすれば,その改ざん判明による本件自動車の価値減価はかなり大きなものがあ
るといわざるを得ず,その減価による原告の損害は,原告が購入した価額の8割に
相当する11万7600円と認めるのが相当である。
これに対し,原告は,メーター不正改ざんの瑕疵がある本件自動車は,売却
不能の無価値な自動車であるとして,その購入代金全額及びその購入費用のみなら
ず,修理代金,名義変更,登録料,オークション出品費用等合計122万4290
円が本件自動車のメーター不正改ざんの瑕疵によって原告が被った損害であると主
張する。
しかしながら,本件自動車は,メーターの不正改ざんの発覚により,価値減
価がかなり大きく認められるとしても,事故車であった本件自動車がオークション
に出品可能なまでに原告によって修理されていたことは間違いないことからすれ
ば,原告が行った修理内容の詳細は定かではないものの,その行われた修理に見合
うだけの客観的な価値の増加はあると認められるし,これを,修理自動車として,
オークションによらずに個別に販売することも十分可能であると認められる。そう
とすれば,メーターの不正改ざんの瑕疵によって原告が被った損害は,前記認定の
価値減価分に限られ,その価値増加のための修理代金や,名義変更料,登録費用等
本件自動車の使用ないし転売のために要した費用は,本件瑕疵による損害には含ま
れないというべきである
。また,原告は,原告の売上減少までもが,本件自動車のメーターの不正改ざんの
瑕疵による損害であると主張するが,原告の売上減少と本件自動車のメーター改ざ
んの瑕疵との間に因果関係があるとは認めがたい。
以上の次第で,前記認定の価値減価分を超える損害があるとの原告の主張は
これを認めることができない。
4 よって,原告の請求は,11万7600円及びこれに対する本件訴状送達の
日の翌日である平成15年11月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容する
こととして,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第4民事部
裁 判 官  上  田  昭  典

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