弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
 被申請人は申請人を従業員として仮に取扱い、申請人に対し金四七万四、三〇三
円および昭和四七年六月二五日限り金三万六、三六一円ならびに昭和四七年七月一
日以降本件本案訴訟の第一審判決の言渡があるまで毎月二五日限り一ケ月金四万
六、三六一円の割合による金員を仮に支払え。
 申請人のその余の申請を棄却する。
 申請費用は被申請人の負担とする。
       事   実
第一、当事者の求めた裁判
一、申請人
 被申請人は申請人を従業員として仮に取扱い、昭和四三年七月以降本件本案訴訟
の第一審判決言渡あるまで毎月二五日限り一ケ月金四万六、三六一円の割合による
金員を仮に支払え。
二、被申請人
 本件申請を棄却する。
第二、当事者の主張
一、申請の理由
1 被申請人(以下会社という)は肩書地に本店を有し、四国電力株式会社の委託
工事および一般電気工事、電気土木、水道衛生、冷暖房工事の設計、監督、施行等
を営業目的とする会社であり、申請人は昭和三三年一一月右会社愛媛支店の従業員
として雇用されたものである。
2 会社は昭和四三年六月二九日申請人に対し就業規則第七五条第三号および第五
号に基づき懲戒解雇を言渡し、予告手当金四万六、三六一円を提供して申請人の従
業員としての地位を争つている。
3 しかし、右解雇の意思表示は左の理由により無効である。
(一) (不当労働行為)申請人は昭和三八年四月より南海電工労働組合松山支部
執行委員に、昭和四一年七月四国電気工事労働組合松山支部副支部長に、昭和四二
年四月より今日に至るまで松山支部長として活動してきたものであるが、会社は昭
和四一年末以来申請人所属の組合に対し職制の家庭訪問その他悪質極まりない分裂
工作を展開し、その結果現在組合は二分され申請人を解雇した当時会社側の不当労
働行為をめぐり地労委において審問中であり、現在においても会社側の分裂工作は
あとをたたず、会社側と申請人所属の第一組合とは激烈な抗争状態にあつたその中
で申請人は松山支部長として第一組合の団結と結束に指導的役割を果していたもの
であつて、会社の解雇事由とするところは後記のように事実に相違し、会社がかか
る不実の事由を掲げて、強いて申請人を解雇しようとするのは、全く前記の如き申
請人の組合活動を封殺し、第一組合の破壊を企図したものであり、従つて右解雇は
憲法第二八条、労働組合法第七条第一号および民法第九〇条に違反し無効である。
(二) (解雇権濫用)仮に、右解雇が不当労働行為に当らぬとしても、被申請人
の主張5で述べている申請人の非行は、以下の点について事実に相違している。即
ち申請人は申請外Aに顔面で手拳で殴打されてから、自宅に帰り、組合分裂後の右
Aの言動などを思い、第二組合の若い者に殴られたまま黙つていては、第一組合の
士気にも影響すると考え、脅かしてやれば反省もするだろうと思い、酒の酔いも若
干手伝つて、自宅の菜切包丁をもつて、久保旅館へ行つたのであり、右Aを殺傷す
る意思は毛頭なかつたものである。また久保旅館で右Aは布団の中に入ろうとして
いたので、申請人は包丁を振り上げて「A、わしをやつたねや」と言つたところ、
その場にいたBとCが申請人の両腕をとつてとめたので、申請人はもともと実際に
危害を加える意思はなく右Aに反省を求める意思でやつたにすぎぬから、直ちにそ
のまま制止したのである。被申請人主張5のその余の事実は認める。申請人の非行
には申請人に責められるべき点があるとしても、右は就労時間外の個人的な喧嘩に
すぎないから、これを懲戒の対象となし得ない。仮に、懲戒の対象となし得るにし
ても、会社外のそれは企業秩序の破壊と同視し得べき程度の性格内容を持たねばな
らず、右非行は被害者Aの挑発によるものであり、かつ実害が発生していないので
あるから、社会通念上解顧をもつて擬すべき程の非行事実ではなく、解雇権の濫用
であり、本件解雇は無効である。
(三) 被申請人主張4(懲戒手続)、同6(通常解雇)は争う。但し、被申請人
主張の合併前の伊予電気工事株式会社の就業規則が申請人に適用されること、昭和
四三年六月二八日行政官庁の除外認定が得られなかつたことは認めるが、行政官庁
の除外認定を受けなて懲戒解雇は無効である。
4 (仮処分の必要性)申請人は会社から支給される賃金を生活の資源とする労働
者であり、右賃金により妻および二人の子供を扶養しているのであるから、申請人
が会社の従業員として取扱われず、かつ賃金の支給を受けない時には、申請人の精
神的経済的生活に重大な支障を及ぼすことになる。なお申請人の平均賃金は一か月
四万六、三六一円でありその支給日は毎月二五日である。
 よつて申請の趣旨記載の裁判を求める。
二、被申請人の答弁および主張
1 申請の理由1、2はに認める。
2 同3(一)(二)(三)のうち申請人の組合歴は不知。その余は争う。
3 同4のうち申請人の一か月の平均賃金が四万六、三六一円であつたことおよび
その支給日が毎月二五日支払であることは認め、その余は争う。申請人は本件解雇
後失業保険金の受領、申請外森田電気、同向井電気等へ就職、その後の自営等によ
り、申請人主張の平均賃金は十分得ているから仮処分の必要性はない。
4 会社は昭和三八年五月一日松山市にあつた伊予電気工事株式会社と四国の他の
三県にあつた電気工事会社が合併して設立された(但し、昭和三八年五月一日から
昭和四〇年一一月三〇日までは南海電工株式会社の商号で、昭和四〇年一二月一日
から現商号になつた。)ものであるが、商号変更前の南海電工株式会社当時の昭和
三八年九月一七日従業員組合である南海電工労組との間に右同日より南海電工株式
会社愛媛支店では旧伊予電気工事株式会社の就業規則をそのまま適用する旨合意が
成立しているので、申請人にも右就業規則の効力が及ぶものであるところ、右就業
規則には懲戒解雇に関する規定が存し(第五二条本文および第五号)その懲戒解雇
事由として「会社の体面をけがしたとき」(第七五条第三項)および「その他特に
不都合な行為があつたとき」(第七五条第五項)と規定されている。
 ところで、会社は昭和四三年六月四日懲戒委員会の議を経て同月二九日申請人に
対し後記の事由をもつて右就業規則に定める懲戒解雇条項第五二条本文および第五
号、同第七五条第三号、第五号を適用して即時解雇する旨の意思表示をなし、同日
三〇日分の賃金四万六、三六一円を提供したので、同日をもつて会社と申請人との
雇傭契約は終了した。
 なお、就業規則第五二条但書によると「第五号により解職する場合は予告又は平
均賃金の支給は行わない。」とあるが、これは労働基準法第二〇条第三項により所
轄労働基準監督署長の認定を得た場合をさしているのであり、右認定が得られない
ときは、労働基準法第二〇条第一項本文によりいわゆる予告手当を支払わねばなら
ないことを規定しているのであるところ、昭和四三年六月二八日会社のなした右行
政庁に対する除外認定申請が拒否されたため、予告手当を支払つて懲戒解雇したも
のである。従つて、右規則第七六条第六号には「行政官庁の認定を受け即時解雇す
る」とあるが、これは即時解雇する時行政官庁の認定が必要なことを規定したにと
どまり、行政官庁の認定が得られない時は懲戒解雇できないことを規定したもので
はない。
5 (申請人の非行)
 昭和四三年五月二三日午後七時頃翌日の早期作業のため会社の従業員一七名が宿
泊予定になつていた松山市<以下略>久保旅館において、申請外Aが同僚から夕食
を勧められた際「親分が帰つて来てから一緒に食べる」と答えたことに、申請人が
「親分とは何んぞ」とからんだことから口喧嘩になり、あまりうるさくからむ申請
人の態度に右Aが素手で申請人の頬をなくつたが、居合わせた者の仲裁でその場は
おさまり申請人は久保旅館を出た。ところが、申請人は若造(A)に殴られ殴りか
えせなかつた腹立たしさに包丁で殺傷して仕返しをしてやろうと考え、同日午後九
時頃になつて包丁を上衣の下へ隠し持つて、Aの居そうなバー街を探したうえ、同
日午後一〇時頃再度右旅館に行き二階四帖半の部屋に右Aが外二名と寝そべつてい
るのを見つけるや、「Aおるか」と言いながら包丁を右手に握つて右Aの背中めが
けて突きかかり、同人が反転して避けると、又突きかかつたが、同じ部屋にいた
B、同Cが申請人の腕をおさえ制止したので畳や布団を傷つけたにとどまり、申請
人殺傷行為は未遂に終つたものである。なお、申請人は、右行為につき昭和四三年
一二月一九日に暴力行為等処罰に関する法律違反と銃砲刀剣類所持等取締法違反の
罪名により略式命令で起訴されて二万五千円の罰金に処せられ、その頃同略式命令
は確定した。
6 (通常解雇)仮に、本件懲戒解雇が認められないとしても、会社は就業規則第
五二条第五号の規定に準じて、本件懲戒解雇理由と同一理由で昭和四三年六月二九
日申請人に対し予告手当四万六、三六一円現実の提供をして通常解雇したので、同
日付をもつて申請人は会社との雇傭契約は終了した。すなわち、就業規則第五二条
第五号は「懲戒委員会の決定により懲戒解雇処分に付せられたとき」解雇すると規
定し、懲戒解雇理由をもつて通常解雇できる旨直接規定していないが、懲戒解雇処
分に付せられるに相当するだけの事由があるときは、懲戒解雇処分に付さないで、
通常解雇にすることは従業員にとつて利益になることであるから、右条項を準用し
て通常解雇を行ない得るものと解し、通常解雇したものである。
第三、疎明(省略)
       理   由
一、申請の理由1、2は当事者間に争いがない。
二、被申請人主張4(懲戒手続)について判断する。
 会社愛媛支店では合併前の旧伊予電気工事株式会社の就業規則を適用すること、
申請人の懲戒解雇にあたり昭和四三年六月二八日除外認定申請が拒否されたことに
ついては当事者間に争いがない。
 成立に争いのない乙第三号証によれば、就業規則第七六条第六号に「懲戒解雇、
行政官庁の認定を受け即時解雇する」、同第五二条に「従業員が左の各号の一に該
当するときは三〇日前に予告するか又は三〇日分の平均賃金を支給して解職する
(本文)。但し第五号により解職する場合は予告又は平均賃金の支給は行わない。
(但書)。懲戒委員会の決定により懲戒解職処分に付せられたとき(第五号)。」
と規定されていること、他に懲戒解雇できる旨の規定のないことが認められる。
(関連条文別紙参照)
 本件懲戒解雇処分につき行政官庁の認定を受けていないこと前述のとおりである
が、会社は右第七六条第六号は即時解雇する場合行政官庁の認定を得なければなら
ない旨の労働基準法第二〇条第三項の趣旨を規定したにすぎず、行政官庁の認定が
得られなければ懲戒解雇できないことを規定したものではなく、平均賃金三〇日分
を支給すれば懲戒解雇できる旨主張し、本件懲戒解雇の根拠を労働基準法第二〇条
第一項本文、就業規則第五二条本文および第五号に求めている。
 なるほど、労働基準法第二〇条第三項の趣旨は、同法第一一四条、第一一九条の
制裁規定と相まつて使用者の恣意的な解雇を行政的に監督防止するにあり、除外認
定を得ることをもつて即時解雇の有効要件とした趣旨ではないと解するのが相当で
あるけれども、これとは別に、就業規則において懲戒解雇の効力を除外認定の有無
にかからせる趣旨の規定を定めることはもとより差しつかえなく、かような就業規
則の規定は解雇の自律的制限として使用者を拘束するものというべきである。これ
を本件についてみると、以下の理由により、就業規則第七六条第六号は、単に前記
法条と同一の趣旨を再言したというにとどまらず、懲戒解雇には必ず除外認定を要
する旨を明示したものと解すべく、会社主張の如く除外認定を得なくとも懲戒解雇
をなし得る旨を定めたものとは解し得ない。すなわち、右解釈は就業規則第七六条
第六号の文理に忠実な解釈であるばかりでなく、解雇できる場合をすべて規定した
就業規則第五二条において、同条本文および第一号ないし第四号で通常解雇には予
告又は平均賃金を支払い、同条本文但書および第五号で懲戒解雇には予告又は平均
賃金の支給はしないと明確に規定し、平均賃金を支払えば行政官庁の認定を受けな
くても、懲戒解雇できる旨の明文規定が右就業規則に見当らず、またそう解すべき
余地のある規定もうかがえないし、就業規則の歴史的沿革、社会的機能からして、
就業規則の労働条件に関する規定は、使用者の恣意的判断から労働者を守ることが
最も重要な存在理由になつているのであるから、その解釈にあたつては労働者を保
護する方向に厳格にこれをしなければならないからである。
 そうすると、行政庁の除外認定を受けないでなされた申請人に対する本件懲戒解
雇は就業規則第七六条第六号に違反し、その効力を生じないものと言わなければな
らない。
 よつて、その余の点について判断するまでもなく、申請人に対する本件懲戒解雇
は無効である。
三、被申請人主張6(通常解雇)について判断する。
 会社は労働者の非行が就業規則所定の通常解雇事由に該当しないが懲戒解雇事由
に該当する場合に、これを懲戒解雇しないで、懲戒解雇理由と同一の理由で通常解
雇することは、労働者にとつて懲戒解雇されるよりも利益であるから、右就業規則
第五二条第五号の規定に準じて許されると主張するので判断する。
 一般的に言つて使用者は就業規則に通常解雇事由およびその手続を定めた場合に
は、その規則に拘束され、自由に通常解雇できず、労働者もその利益を有するので
あるから、原則として通常解雇事由として定められた事由以外の理由および自由な
手続で通常解雇することは許されないが、懲戒解雇がその事由および手続上許され
る場合に、懲戒解雇しないで通常解雇することは労働者にとつても利益であるから
許されるものと解すべきである。しかしながら、会社の右主張は懲戒解雇がその事
由および手続上許されることが前提になつて始めて、労働者にとつて通常解雇され
る方が利益だとの判断が出来るところ、本件懲戒解雇がその手続上許されないこと
前述のとおりであるから、就業規則第五二条第一号ないし第四号に規定する通常解
雇事由のない(この事由の存在については主張も立証もない)申請人に対し労働者
に利益だからとの理由で就業規則第五二条第五号を準用して通常解雇することは許
されないものと言わなければならない。
 よつて、その余の判断をするまでもなく、会社の通常解雇の主張は採用すること
ができない。
四、(賃金請求権) 以上のとおり、不当労働行為その他の主張について判断する
までもなく、本件解雇は無効であるから、申請人と会社との間には依然雇傭関係が
存続し、申請人は会社に対し雇傭契約上の権利を有するものと言わなければならな
い。
 そして、申請人が本件解雇前会社から賃金として一か月平均四万六、三六一円を
毎月二五日限り受領していたことは当事者間に争いがなく、申請人本人尋問の結果
によれば、申請人は解雇無効を主張して引続き労務の提供を申出しているのに、会
社は申請人の就労を拒否している事実が認められるから、申請人は会社に対し本件
解雇の翌日である昭和四三年七月三〇日以降毎月右支給日に四万六、三六一円の支
払を請求する権利があるものである。
五、(本件仮処分の必要性)
 申請人本人尋問の結果によれば、申請人は借地上に自宅を有するほかは、特別の
資産を有せず、会社から受ける賃金を唯一の生活源としている労働者で、その妻と
嫁入り前の娘(二三才)を扶養していること、(但し妻は中矢製麺所に勤め一か月
二万二、五〇〇円の収入がある。)申請人は解雇後の昭和四四年一月から同年四月
まで北条市の森田電気店へアルバイトに行き毎月一万八、〇〇〇円を、同年五月か
ら昭和四五年五月まで松山市<以下略>の向井電気店等へアルバイトに行き毎月四
万円を、同年六月から本件口頭弁論最終日である昭和四七年六月五日まで手間請仕
事といつて電柱一本をいくらで建て手間賃を得る仕事を四人共同でやり毎月六万円
の割合の臨時収入を、それぞれ得ている事実が認められる。
 右事実によれば、賃金を唯一の生活源とする申請人にとつて従業員たる地位確認
等の本案訴訟の第一審判決言渡まで被解雇者として取扱われることは、本人および
その家族に回復し難い損害を蒙むることは明らかであるから、本件地位保全仮処分
はその必要がある。
 賃金支払仮処分については、解雇による被解雇者の経済的困窮を救済する緊急の
必要があるために認められるものであるから、右仮払の必要性は、被解雇者および
その収入によつて生活している家族の生計を維持するに必要な限度においてのみ存
するものと解すべきである。そして、申請人のような妻および娘を扶養する申請人
にとつて、その生活を維持するためには少なくとも毎月前記平均賃金程度の収入は
必要であると認めて差支えないと考えられる。そうすると、会社から支払を受ける
賃金によつて生活して来た申請人は、本件本案の第一審判決の言渡あるまで、毎月
平均賃金を申請人に対し仮に支払うよう会社に命ずる必要があることになる。ただ
し、昭和四三年七月から同年一二月末までは右平均賃金の全額(小計二七万八、一
六六円)の仮払いの必要性があり、また申請人は昭和四四年一月から同年四月まで
毎月一万八、〇〇〇円の臨時収入があるので、右期間内は右平均賃金から臨時収入
を控除した毎月二万八、三六一円の限度で(小計一一万三、四四四円)、昭和四四
年五月から昭和四五年五月まで毎月四万円の臨時収入があるので、右期間内は右平
均賃金から臨時収入を控除した毎月六、三六一円の限度で(小計八万二、六九三
円)、仮払いの必要性が認められ、昭和四五年六月から昭和四七年五月までは毎月
の臨時収入が右平均賃金を上回つているので仮払いの必要性がないと認められる。
(したがつて、昭和四三年七月から昭和四七年五月まで合計四七万四、三〇三円の
仮払の必要性がある。)将来(すなわち本件口頭弁論終結日より後に履行期の到来
するもの)の右平均賃金の仮払いのうち、昭和四七年六月分は、右認定のとおり、
同月五日までに一万円(6万×5日/30日)の臨時収入を得ているから、右一万
円を控除した三万六、三六一円の仮払の必要性があり、同年七月分以降の右平均賃
金の仮払についてはその全額についてこれを命ずる必要性があると解する。なぜな
ら、前記のように右平均賃金の額は、申請人およびその家族の生計を維持するため
には必要な収入額を超えるものではなく、また現在申請人は不安定に臨時の請負工
事のごとき仕事をしていていつその収入を失うやも知れず、かつ現在まで会社は本
件解雇の有効性を主張し、申請人に対する賃金の支払を拒否して来ている状況に徴
し、申請人が会社の従業員たる地位を有することを仮に定める本件仮処分判決がで
ても会社が申請人に対し任意に賃金の支払をするとは考え難いからである。
 従つて、会社は申請人に対し、すでに履行期の到来したと一応認められる本件解
雇後の昭和四三年七月一日から昭和四七年五月末日までの平均賃金の合計額のうち
前記四七万四、三〇三円および昭和四七年六月二五日かぎり三万六、三六一円なら
びに昭和四七年七月一日以降本件本案の第一審判決言渡があるまで毎月二五日限り
四万六、三六一円宛を仮に支払う義務がある。
六、よつて本件申請は、右判示の限度でその理由および必要があるから保証を立て
させないでこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、申請費用の負担
については民事訴訟法第八九条、第九二条但書を適用して主文のとおり判決する。
別紙
就業規則
第五二条 従業員が左の各号の一に該当するときは三〇日前に予告するか又は三〇
日分の平均賃金を支給して解職する。
 但し第五号により解職する場合は予告又は平均賃金の支給は行わない。
一、傷病の為精神又は身体に故障を生じ業務に耐えないと認められるとき。
二、労働能率又は技術が劣悪であつて向上の見込がないと認められるとき。
三、業務上の傷病により打切補償を行つた者について解職の必要があるとき。
四、第四二条第三号の該当により休職を命ぜられた者の休職期間が満了したとき。
五、懲戒委員会の決定により懲戒解職処分に附せられたとき。
第七五条 従業員が次の各号の一に該当するときはこれを懲戒する。
一、職務を著しく怠つたとき。
二、会社の諸規定命令に違反したとき。
三、会社の体面を汚したとき。
四、故意又は重大なる過失によつて会社に不利益を及ぼしたとき。
五、その他特に不都合の行為があつたとき。
第七六条 懲戒は次の区分により、その行為の軽重に従つてこれを行う。
一、譴責 始末書をとり将来を戒しめる。
二、減給 始末書をとり一回につき平均賃金の半日分、総額において当該賃金支払
の総額の一〇分の一を超えないで行う。
三、出勤停止 始末書をとり七日以内出勤を停止し、その期間欠勤の取扱とする。
四、停職 始末書をとり三ケ月以内の期間を定めて行いその期間欠勤の取扱とす
る。
五、諭旨解雇 譴責した上で退職願を提出させる。
六、懲戒解雇 行政官庁の認定を受け即時解雇する。
第七八条 懲戒は懲戒委員会の議を経てこれを行う。
この点については被申立人の弁明すら徴しておらず、②まして、審問における証拠
の取調べに際しては、利息相当額の付加支払の必要性について全く念頭におかれて
いなかつたものであり、③本件において、分会員に対する年末一時金の支給に利息
相当額を付加しなければ救済としていちぢるしく不十分であるとは認められないか
ら、年一割の利息の付加を求める申立は、その利率について論ずるまでもなく、こ
れを認容しないこととした。
第三 法律上の根拠
 以上の次第であるから、会社が前提条件を固執し、年末一時金について分会と妥
結せず、これを支給しなかつたことは、労働組合法第七条第一号および第三号に該
当する。
 なお、申立人はポスト・ノーテイスをも求めているが、本件の救済としては主文
の程度をもつて足りると判断する。
 よつて、労働組合法第二七条および労働委員会規則第四三条を適用して主文のと
おり命令する。

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