弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を広島高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 一 本件各公訴事実(被告人Aについては訴因変更後のもの)の要旨は、被告人
Aは、昭和五一年一二月五日施行の衆議院議員総選挙に際し、島根県選挙区から立
候補したBに投票を得させる目的で、同月三日頃、同選挙区の選挙人方五戸を戸々
に訪問して同候補者のため投票を依頼し、被告人Cは、右選挙に際し、同様の目的
で、同月一日頃から四日頃までの間、同選挙区の選挙人方七戸を戸々に訪問して同
候補者のため投票を依頼し、もつていずれも戸別訪問をした、というのである。原
判決は、被告人両名が戸別訪問をした事実を認めることができるとしながら、戸別
訪問の禁止が憲法上許される合理的で必要やむをえない限度の規制であると考える
ことはできないから、これを一律に禁止した公職選挙法一三八条一項の規定は憲法
二一条に違反するとし、同じ結論をとり被告人両名を無罪としていた第一審判決を
維持し、検察官の控訴を棄却した。
 検察官の上告趣意は、原判決の判断につき、憲法二一条の解釈の誤りと判例違反
を主張するものである。
 二 公職選挙法一三八条一項の規定が憲法二一条に違反するものでないことは、
当裁判所の判例(最高裁昭和四三年(あ)第二二六五号同四四年四月二三日大法廷
判決・刑集二三巻四号二三五頁、なお、最高裁昭和二四年(れ)第二五九一号同二
五年九月二七日大法廷判決・刑集四巻九号一七九九頁参照)とするところである。
 戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表
明の手段方法のもたらす弊害、すなわち、戸別訪問が買収、利害誘導等の温床にな
り易く、選挙人の生活の平穏を害するほか、これが放任されれば、候補者側も訪問
回数等を競う煩に耐えられなくなるうえに多額の出費を余儀なくされ、投票も情実
に支配され易くなるなどの弊害を防止し、もつて選挙の自由と公正を確保すること
を目的としているところ(最高裁昭和四二年(あ)第一四六四号同四二年一一月二
一日第三小法廷判決・刑集二一巻九号一二四五頁、同四三年(あ)第五六号同四三
年一一月一日第二小法廷判決・刑集二二巻一二号一三一九頁参照)、右の目的は正
当であり、それらの弊害を総体としてみるときには、戸別訪問を一律に禁止するこ
とと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができる。そして、戸別訪
問の禁止によつて失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見
表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方
法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度
での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問
という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であ
るから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいということができる。
以上によれば、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法一三八条一項の規定は、
合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法二一条に違反す
るものではない。したがつて、戸別訪問を一律に禁止するかどうかは、専ら選挙の
自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題であつて、国会がその裁量の範
囲内で決定した政策は尊重されなければならないのである。
 このように解することは、意見表明の手段方法を制限する立法について憲法二一
条との適合性に関する判断を示したその後の判例(最高裁昭和四四年(あ)第一五
〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・刑集二八巻九号三九三頁)の趣旨にそうと
ころであり、前記昭和四四年四月二三日の大法廷判例は今日においてもなお維持さ
れるべきである。
 三 そうすると、原判決は、憲法二一条の解釈を誤るとともに当裁判所の判例と
相反する判断をしたものであつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるから、破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて、刑訴法四一〇条一項本文により原判決を破棄し、同法四一三条本文にし
たがい本件を原審である広島高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
 検察官瀧岡順一 公判出席
  昭和五六年六月一五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    宮   崎   梧   一
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶

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