弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人吉沢祐三郎の上告理由第一点について。
 訴外Dが上告人(控訴人)Aより本件不動産を判旨の約定の下に代金一二〇万円
で買い受けた旨の原判決の事実認定は、挙示の証拠により是認でき、その間、論旨
の違法は認められない。所論は採るを得ない。
 同第二点について。
 訴外Dと上告人A間の不動産売買契約における目的物件の範囲は、所論の湯殿お
よび仕事場を含む旨の原判決の亊実認定は、挙示の証拠により是認でき、その間、
論旨の違法は認められない。所論は採るを得ない。
 同第三点について。
 訴外Dが本件不動産を被上告人(被控訴人)に贈与したものであり、右贈与は、
通謀虚偽表示であること、または訴訟を行なわせることを主たる目的としてなされ
たものであることを認めることができない旨の原判決の認定、判断は、挙示の証拠
関係および本件記録に照らし是認でき、その間、論旨の違法は認められない。なお、
所論は原判決の乙第一五号証の二に対する説示の違法をいうが、原判決は、右乙第
一五号証の二にはDが被上告人に本件不動産を「譲渡」し、同人の所有となつたこ
とを記しているにすぎないから、原判決の認定した贈与の事実を動かすに足らない
旨を判示したものであり、右判断は正当であり、その間論旨の違法は認められない。
また、原判決は、訴外Dが、本件不動産を上告人Aから買い受けたが、本件不動産
の所有権をやがて被上告人に帰属させることを予想し、昭和二八年一一月二七日、
上告人Aの承諾を得て、登記簿上被上告人名義で所有権移転登記手続を経由し、昭
和三四年八月ごろ被上告人に右不動産を贈与した旨の事実を確定していることは判
文上明らかである。かかる事実関係の下においては、登記の際被上告人自身がこれ
に関与しておらず、また被上告人の本件不動産の所有権取得の日が、右登記手続の
日より後であるからといつて、登記が実体的権利関係と結局一致するものである限
り、被上告人において右自己名義の登記をもつて、第三者に対する所有権取得の対
抗要件とすることを得ないものと解すべきいわれはない。論旨の違法は認められず、
所論は採るを得ない。
 同第四点について。
 所論の準備書面は、原審口頭弁論において陳述されておらず(記録三八五丁参照)、
従つて、その陳述を釈明しなかつたからといつて、原審の訴訟手続に所論の違法は
認められない。
 同第五点、第六点について。
 所論は結局原審の裁量に属する証拠の取捨を非難するに帰し、原判決には所論の
違法は認められない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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