弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中上告人に抵当権設定登記の抹消登記手続を命じた部分を破棄す
る。
     右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人安藤信一郎の上告理由について。
 登記が有効であるためには登記の記載に符合した実体法上の権利関係が存在しな
ければならないが、登記の記載が実体関係と厳密に一致しない場合でも、登記の記
載と実体関係との間に同一性が認められるときは、なお有効であり、右登記の抹消
を請求することは許されない。これを本件についてみると、抵当権設定者および被
担保債権の内容につき本件登記の記載と実体関係との間に存する原判示の程度の不
一致をもつてしては、いまだ両者の同一性あることを否定するに足りないから、右
同一性がないという理由で被上告人らの本件抵当権設定登記抹消請求を認容すべき
ものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤つたものであり、該違法は後述する
原判決のかしとあいまつて、判決に影響を及ぼすこと明らかといわなければならな
い。
 次に、抵当権の目的物件について、原審の判示によれば、上告人の被上告人Bに
対する六万円の貸金債権を担保するため本件(一)建物に抵当権を設定するにつき
両者の合意をみたというのであるが、甲第一四号証(固定資産課税台帳登録説明申
請書)の記載、証人Dの供述(記録一一五丁・二二一丁・二二四丁)など本件(二)
(三)建物が(一)建物の付属とされ従物であるかのごとく窺われる証拠がないわ
けではなく、しかも、抵当権設定の合意にあたつて本件(二)(三)建物を除外す
る旨の別段の意思表示をしたとの点は原判決の明示しないところであるから、民法
八七条二項の規定により、本件(一)建物に対する抵当権設定の合意は(二)(三)
の建物についてもその効力を生じたるやも計り難いにかかわらず、原審は、本件(
二)(三)建物が前示従物であるかどうかの点につき、なんら、考慮を廻らした形
跡なく、本件(一)建物のみが抵当権の目的物であると断じ、この前提に立つて登
記の記載と実体関係との間に同一性がないとの理由のもとに本件抵当権設定登記の
抹消請求を認容したことは、前示前提判断において審理不尽・理由不備の違法ある
ものといわなければならない。
 のみならず、登記の記載と実体関係との間に同一性が認められないからといつて、
常に、該登記の抹消請求を認容することが適法となる筋合いのものではなく、本件
において、仮りに抵当権が設定されたのが本件(一)建物のみであり、したがつて、
右建物を主たる建物、本件(二)(三)建物を付属建物とし、これらを一体として
目的物と表示する抵当権設定登記の記載と実体関係との間に同一性を肯認すること
ができないとしても、本件(一)建物に対する抵当権設定の事実が厳存する以上、
抵当権設定登記は、本件(一)建物を目的物と表示する部分おいては一部実体関係
に符合しているわけであるから、本件(二)(三)建物を目的物と表示する部分に
おいて実体関係に符合しないからといつて、右抵当権設定登記の全部の抹消を求め
ることは、許されないものといわなければならない。しかして、このような場合、
実体関係に符合しない登記部分のみの抹消登記が許されないとすれば、原審におい
て、被上告人らが本件抵当権設定登記全部の抹消を求める請求に代えて、前示不一
致部分の是正を目的とする別途の登記請求を主張する意思がないかどうか、もし意
思があるとすればいかなる内容の請求をするかの諸点につき、趣意を釈明すること
は、本件請求の審理範囲に属することとしてもとより許されるところであり、むし
ろ、事実審裁判所として当然とるべき措置というべきである。しかるに、原審が、
一方において本件(一)建物が抵当権の目的物と合意された事実を確定しながら、
右建物を目的物として包含する本件抵当権設定登記全部の抹消を求める本件請求を
全面的に認容すべきものと判断したことは、法令の解釈適用を誤り、延いて、審理
不尽、理由そごの違法を蔵するものといわなければならない。
 叙上いずれの点よりしても、論旨は結局理由あり、したがつて、原判決中上告人
に対し本件抵当権設定登記の抹消を命じた部分は破棄すべきものである。よつて、
民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛