弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件申立てをいずれも却下する。
理由
1 申立ての趣旨
 当庁平成17年(行ウ)第16号異議申立に対する決定取消請求事件の被告高
田町選挙管理委員会を被告高田町に変更することを許可する。
2 申立ての理由
(1) 行政事件訴訟法46条1項(平成16年法律第84号による改正法,以下
「改正法」といい,これによる改正前の法律を「旧法」という。)は,「行政庁
は,取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には,当該処分又は
裁決の相手方に対し,次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。」と規定
し,その1号において,「当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者」と
規定するところ,高田町選挙管理委員会は,平成17年4月5日付け決定書におい
て,「なお,この決定に対し不服のある者は,地方自治法第74条の2第8項の規
定により,その決定のあった日から14日以内に高田町選挙管理委員会を被告とし
て,地方裁判所に出訴することができる。」と誤って教示したので,申立人らは,
平成17年4月19日
,高田町選挙管理員会を被告として,本件訴え(当庁平成17年(行ウ)第16号異
議申立に対する決定取消請求事件)を提起した。
(2) また,改正法は,平成17年4月1日に施行されたが,旧法11条1項
は,処分の取消しの訴えは,処分をした行政庁を被告として提起しなければならな
いと規定していたこと,本件訴えは,改正法施行後間もない時期に提起したもので
あった上に,本件訴えは,決定を知った日から14日以内という極めて短期間に提
起すべきとされていること,申立人ら訴訟代理人らが日常的に使用している六法に
おいて,「この法律は,平成18年4月1日から施行する。」(平成16年法律第
105号・附則1条)と記載されていることから,申立人らは,本件訴え提起時に
も改正法ではなく,旧法が適用されると誤信した。
(3) よって,申立人らは,改正法15条1項により,被告高田町選挙管理員会
を被告高田町に変更することを許可する旨の決定を求める。
3 当裁判所の判断
(1) 一件記録によれば,申立人らは,弁護士である訴訟代理人3名に委任して
本件訴えを提起したこと,高田町選挙管理委員会作成に係る平成17年4月5日付
け決定書には,「なお,この決定に対し不服のある者は,地方自治法第74条の2
第8項の規定により,その決定のあった日から14日以内に高田町選挙管理委員会
を被告として,地方裁判所に出訴することができる。」との記載があること,申立
人ら訴訟代理人らが日常的に使用しているという六法の250頁には,「この法律
は,平成18年4月1日から施行する。」(平成16年法律第105号・附則1
条)との記載があること,同六法の249頁には,「この法律は,公布の日から起
算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」(平成16
年法律第84号・附則
1条)との記載があることが認められる。
(2) 改正法11条1項によれば,処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体
に所属する場合には,処分又は裁決の取消しの訴えは,当該処分又は裁決をした行
政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならないと規定されて
おり,高田町議会解散請求者名簿の署名に関する申立人らの異議の申し出に対する
決定を行ったのは高田町選挙管理委員会であるところ,高田町選挙管理委員会は,
高田町が設置する選挙管理委員会であり(地方自治法180条の5第1項2号,1
81条1項),高田町に所属しているので,上記異議申し出に対する決定の取消し
の訴えは,高田町選挙管理委員会の所属する高田町を被告として提起しなければな
らないことは明らかである。
 そして,行政事件訴訟法が平成16年に改正され(平成16年法律第84
号),平成17年4月1日に施行されたこと(平成16年政令第311号)は公知
の事実であり,訴訟代理人らとしては,これを当然知っていたはずで,仮に知らな
かったとしても,改正法の施行期日を調査しさえすれば,本件訴えの被告とするべ
き者が高田町であることを容易に知り得たものといえる。
 それにもかかわらず,申立人ら訴訟代理人らは,本件訴状に,被告を高田
町選挙管理委員会と誤って表示したまま本件訴えを提起したのであるから,その誤
りは,弁護士として当然払うべき多少の注意を怠ったことに起因するものであり,
かかる過失は,改正法15条1項にいう「重大な過失」といわざるを得ない。
(3) この点について,申立人らは,高田町選挙管理委員会が,被告とすべき者
を誤って教示した,申立人ら訴訟代理人らが日常使用する六法には,改正法の施行
期日は,平成18年4月1日と記載している旨主張するが,改正法46条が,処分
又は裁決の相手方に,処分又は裁決を争う方法について適切な情報を与え,権利利
益の救済を得る機会を十分に与えるための制度であるとしても,弁護士が申立人ら
の訴訟代理人として受任している以上,高田町選挙管理委員会の教示内容いかんに
かかわらず,弁護士自ら被告とすべき者がだれであるかを調査すべきことは当然で
あり,被告とすべき者がだれであるかは,改正法の施行期日さえ調査すればたやす
く判明したものであること,申立人ら訴訟代理人らが日常的に使用しているという
六法についても,2
49頁に平成16年法律第84号の附則1条として,「この法律は,公布の日から
起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」と規定し
ており,250頁の「この法律は,平成18年4月1日から施行する。」との規定
は,平成16年法律第105号(年金積立金管理運用独立行政法人法)の施行期日
であることはその記載から明らかであり,平成18年4月1日に施行される法律
が,改正法ではないことは,弁護士として多少の注意を払えば容易に知り得たはず
であること等からすれば,申立人らの主張する事情があったとしても,その過失は
重大であるといわざるを得ない。
(4) よって,申立人らは,重大な過失により被告とすべき者を誤ったので,申
立人らの本件申立てはいずれも理由がなく,被告の変更を許可することはできな
い。
4 結論
以上によれば,申立人らの本件申立てはいずれも理由がないからこれを却下
することとし,主文のとおり決定する。
平成17年5月18日
福岡地方裁判所第6民事部
裁判長裁判官野尻純夫
裁判官川崎聡子
裁判官森中 剛 

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