弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人田島政吉名義の控訴趣意書記載のとおりであるからこ
こに引用するが、所論は原判決挙示の全証拠によつても被告人が原判示日時に原判
示場所に臨席した事実は格別、原判示酒食の饗応を受けた事実は全く認められず、
却つてそのうち被告人の夫々司法警察員及び検察官に対する供述調書や原審公判に
おける供述によれば、被告人は当夜既に夕食もすましまた日頃酒を好まないところ
から原判示酒食には全然手をつけず、ただ茶を飲み漬物を口にしたにすぎないこと
が認められる。しからば原判決はその理由にくいちがいがあり、また判決に影響を
及ぼすことが明らかな事実の誤認を敢てしていることに帰するので到底破棄を免れ
ないというのである。
 <要旨>しかし、饗応とは飲食物の供与という物質的な方法により人に歓楽を得さ
せるという精神的作用を企図する行為であるから、饗応の場たることを認識
して参集した者においてその場に供与された飲食物の全部又は一部を現実に喫しな
かつたとしてもその場における和楽の雰囲気を享受したと認められる以上、これを
以てその饗応を受けたものといつても差支えないものと解する。これを本件につい
て看るに、原判決挙示のA、Bの夫々司法警察員及び検察官に対するCの司法警察
員に対する各供述調書によると、原判示選挙に立候補したDの選挙運動者であるA
は、昭和三四年四月一七日夜a村部落における同候補の個人演説会の帰途E方にB
ら一〇名ぐらい相寄つた席上、投票日も迫つたので一日連絡通知の余裕をおいた同
月一九日夜C方に同候補に心を寄せる者を参集せしめて同候補のため投票ならびに
投票取纏め等の選挙運動を依頼し酒席を設けてその労をねぎらうとともにさらに最
後まで強力に該運動を推進させるべく気勢を挙げんことを提唱して一同の賛成をえ
たので、同月一九日午後七時半頃C(父F)方に赴き当夜の費用はすべて同候補の
親類筋にあたる選挙運動者Gが負担するものと考えてHらと相談して原判示酒食
(原判決挙示のIの司法警察員に対する供述調書によれば炊飯三升、味噌汁、同J
の司法警察員に対する供述調書によれば焼酎三升一〇三五円相当、同Kの司法警察
員に対する供述調書によれば魚類罐詰二〇個八四五円相当。同Lの司法警察員に対
する供述調書によつて認められる菓子三〇〇円相当は後刻酒宴中に追加)を炊さん
購入して同家表座敷にならべて準備したこと、一方同じく被告人の司法警察員及び
検察官に対する供述調書によると、被告人はかねて世話になつているGとの関係か
ら原判示選挙においてa村部落内のG派としてD候補を支持していたのであるが、
原判示当日夕刻帰宅した際母Mから留守中義兄Bから当夜F方に来てくれとの伝言
があつたと聞いて、当時同候補のための選挙運動が旺盛で且つF方がG派に所属す
るところから当夜のF方における会合が同候補の当選を期するためのものであるこ
とを充分承知して同夜九時頃F方に赴き同家表座敷に着坐したが、すでに同所には
G派ひいてD候補支持と目されるものが一四、五名ほぼ半円形に坐つていて目前に
並べられた前示酒肴に手をつけている者もあり、ついでAから「選挙が近づいて来
たので一同D候補に協力してくれ、対立候補のN派の者が切りこんでくるかも知れ
ぬから警戒してくれ、異状があつたら自分に連絡してくれ」との挨拶があつた後前
示炊飯や味噌汁もその席に出されたが、これらの酒食はAらにおいて一同に対し、
原判示選挙においてD候補に投票してくれ、同候補を当選させるために山本候補の
選挙運動者が部落内に切りこまないよう警戒しまた選挙情報を提供してくれと依頼
する趣旨でその席に出されたと思つたが、しかし被告人はすでに夕食もすましてお
り酒も好まないのでCの妻が湯呑茶碗に茶をついでくれたのを飲み、同女がはさん
でくれた漬物大根を一、二切れ食して近くに坐つていたOやBらと政治論や雑談を
交して午後一一時頃帰宅したことが認められる。そうすると被告人は原判示日時原
判示場所において原判示選挙に立候補したDの当選を期するための話し合いがなさ
れることを意識して同所に臨み、そこで原判示趣旨の宴席が設けられていることを
認識してこれに加わる意思を以て前示時間在席歓談したのであるから原判示酒食そ
のものには全く手をつけず単に茶、漬物を喫したにすぎないとしても主催者の意図
を諒としてこれを受けたに外ならないので、さきに説示したところに従いこれを以
て公職選挙法第二二一条第一項第四号にいう饗応を受けたと認定してもすこしも支
障はないといわなければならない。しからば原判決には毫も事実誤認もなければま
た理由のくいちがいも存しないので論旨は採用できない。
 よつて刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却し、同法第一八一条第一項本
文により当審における訴訟費用を被告人に負担させることとし、主文のとおり判決
する。
 (裁判長裁判官 二見虎雄 裁判官 淵上寿 裁判官 蕪山厳)

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