弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人渕辰吉の上告理由について。
 第一点について。
 所論は、婚姻がこれを破壊しようとする外力によつて破壊されたときは婚姻当事
者はその外力を加えた者に対して不法行為の責任を問い得る筈であるのに、原審が、
被上告人Bの責任につき、婚姻生活は両性の合意のみに基づいて成立し(憲法二四
条)、両性相互の信頼と努力によつてのみはじめて維持し、深化し、浄化せしめ得
るとし、それに基づいて姑の若干の礼儀作法上のきびしい言動を以て結婚生活を破
棄する法律上違法視すべき行為というのは相当でないと判示したのは憲法二四条の
解釈を誤つたものであるという。婚姻関係にある者に対してその当事者以外の者が
違法な侵害行為をなした結果右婚姻関係が破棄されるに至つたときは婚姻当事者は
その侵害者に対して不法行為の責任を問い得ることのあるのは所論のとおりである
が、原審は、被上告人Bが上告人に対して非難虐待にあたる行為をなしたことはこ
れを認めるべき証拠がなく、同被上告人が上告人に対していわゆる嫁いびりをする
姑でなかつたものと判示し、さらに、上告人側において新たな環境に入るに伴う或
る程度の苦痛を克服する心掛に欠けていたものであり、同被上告人において上告人
に対する虐待非難に類似する言動があつたとしても、それは本件婚姻予約関係の破
棄を意図したものでもまた必然的に破棄をもたらすものでもなく、上告人に精神的
打撃を与えたものがあつたとしても、これは嫁して間もない上告人に対する新しい
しつけと見るべきものであつて未だこれを以て本件婚姻予約関係の破棄に結びつく
違法行為と見ることはできないと判示しているのであり、挙示の証拠関係に照せば
原判示の判断は相当であり、原判決の憲法二四条に関する記載はいわば傍論的記載
に過ぎないものというべきであるから、この点に関する所論については判断の必要
はなく、所論は結局理由がない。
 同第二点について。
 所論は、原審に於て主張していないこと及び独自の見解に基づき原審のなした事
実認定判断を非難するに過ぎないから、理由がない。
 同第三点について。
 所論は、原審が上告人の本訴請求に対して慰籍料額金一〇万円しか認容しなかつ
たのは、原判決の認定事実に比して著しく安きに失し、衡平の理念に反し、個人の
尊厳と両性の本質的平等を規定した民法一条ノ二の理念に反するものであるという
が、慰籍料額の認定は原審の裁量に属する事実認定の問題であり、ただ右認定額が
著しく不相当であつて経験則もしくは条理に反するような事情でも存するならば格
別、原判決認定の事実に照せばそのような特別の事情も認められないから、所論は
採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊

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